西前頭2枚目の安美錦が、あと1歩まで横綱白鵬を追い詰めた。支度部屋に戻ると、15年半付け人を務めた元幕下扇富士の中沢利光氏(38)への思いを口にし、涙を流した。
4月30日付で引退し、日本相撲協会営繕部で働き始めた中沢氏は、職場のテレビで取組を見た。
「取組中は『いけ、いけ!』と思ってみていましたが、終わったら足のケガが心配になりました。休んでもおかしくない状態なんです。痛かったでしょうね。気持ちが伝わる相撲でした」。支度部屋で安美錦が、共に練り続けた作戦を思い出し、涙したことを伝え聞くと、中沢氏もこらえ切れなかった。
「勝負は勝たなきゃいけないけど、これも相撲の醍醐味(だいごみ)。ああいう相撲を見せられると、一緒にやってきて良かったなと思いました。まだ場所は始まったばかりですから、勝ち越して、ケガをしないで…、それだけです」と声を絞り出した。