お相撲さんは、食べるのが仕事。でも、全員が食べたいだけ食べられる…わけでもない。「肉が残ってない時もあって…」。角界の思わぬ“洗礼”にも、どこかうれしそうな笑顔を見せたのは、元学生横綱で2日目の序ノ口デビュー戦を白星で飾った大輝(22=八角)だった。

 厳しい格差社会。朝稽古後のちゃんこも、番付上位から食べる。幕下以下の若い衆は後ろに立ち、先輩のご飯茶わんが空になると「おかわり」に急ぐ。食べ盛りな力士の多い部屋は食材をそろえていても、おかずがみるみる減る。角界3位の28人を抱える八角部屋も例外ではないようだ。

 埼玉栄で高校横綱、日体大2年で学生横綱になったエリートの大輝だが、幕下15枚目格付け出し資格が失効してから入門したため、角界では前相撲からのスタート。付け出しデビューなら味わうこともなかった電話番や掃除番をこなし、ちゃんこが足りないときには「チャーハンを自分で作ってます」。それでも「先輩はみんな優しいし、楽しくやってます」と、新生活に悲愴(ひそう)感はない。さまざまな経験が、心も体もたくましくしてくれるはずだ。【木村有三】