Updated: Tokyo  2015/05/15 00:38  |  New York  2015/05/14 11:38  |  London  2015/05/14 16:38
 

篠塚元日銀委員:量的緩和は「海図なき航海」、リフレ派理論成立せず

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  (ブルームバーグ):元日銀審議委員の篠塚英子・お茶の水女子大名誉教授は日銀の量的・質的緩和について「2年で2%の物価上昇が達成されるようなシナリオはどこにもない」と述べ、現行の金融政策の見直しを求めるとともに、マネタリーベースの積み上げに着目したリフレ派の理論はもはや成り立たないとの認識を示した。

篠塚氏は12日、ブルームバーグとのインタビューで「伝統的な金融政策は金利の操作だ。金利ではない非伝統的な政策はデータがなく検証できず、一時的な便宜でしかない」と述べるとともに、消費者物価について「2年で2%と言っているが、ほんのわずかしか上がっていない。それがおかしいとなれば見直すべきだ」との認識を示した。

潤沢な資金供給がデフレ脱却につながると主張するリフレ派の考え方に対しても、「もはや成り立たない。ゼロ金利時にもマネタリーベースをもっと増やせと言っていた。銀行にお金が積み上がっても企業がお金を借りない時に、お金をもっと出してどうするのか。今も足りないから出せと、同じ事を繰り返している」と反論する。

日銀は13年4月、異次元金融緩和に踏み切り、マネタリーベースが年間約60-70兆円相当のペースで増額する操作目標を設定した。昨年10月にはさらに保有残高を年間約80兆円に上積みする追加緩和を実施したが、原油価格下落の影響もあり、消費増税の影響を除いた3月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI )は0.2%と伸び悩んでいる。

日銀企画局が1日に発表した量的・質的緩和導入から2年を検証する論文からは「マネタリーベース」の文言が消えていた。篠塚氏は「意図的に外したということはもはやマネタリーベースではできない、難しくなっているということだ」と断言する。

海図なき航海

篠塚氏は1998年4月施行の新日銀法下で民間から選出された政策委員会の初代審議委員の1人。金融調節の操作目標を無担保コール翌日物金利から日銀当座預金残高に変更する量的緩和の導入を決定した2001年3月19日の金融政策決定会合では1人反対票を投じた。

篠塚氏が反対したのは「実体が全然分からなかったから」。会合の前日、当時の故速水優総裁に量的緩和は「海図なき航海」を意味すると、金利操作によるゼロ金利政策に戻すよう訴えたが、一度やってしまった政策を持ち出しても効果はないと一蹴されたという。

篠塚氏は「FRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和を手仕舞いしようとしているのは、非伝統的な手段を潔しとしていない、危ないと思っているからだ。それをどうして黒田東彦総裁がまだ大丈夫だ、いくらでも手段があると言うのか分からない」と指摘する。

財政ファイナンス

さらに、「量的・質的緩和を延ばせば延ばすほど日銀が国債を買う。一方で、財政の大赤字をいかにして減らすかというシナリオがまだない。黒田総裁が財政ファイナンスを目的に緩和をやっているわけではないのは分かるが、結局そうなっている」と問題視する。

その上で、篠塚氏は「政府が責任を持って財政健全化のシナリオを描くしかない。財政が国債発行し、そのまま日銀に引き受けさせている。そこを断ち切らなければならない」と述べ、社会保障改革を柱に財政再建に向けた明確な道筋を示す必要性を強調した。  

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記事についての記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 持田譲二, 谷合謙三

更新日時: 2015/05/14 10:25 JST

 
 
 
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