アシアナ機事故:衝突2秒前に着陸やり直し…間に合わず

毎日新聞 2015年05月13日 20時41分(最終更新 05月13日 22時04分)

 広島空港(広島県三原市)でアシアナ航空機が着陸に失敗した事故で、事故機が滑走路手前約325メートルにある着陸誘導用の「ローカライザーアンテナ」(高さ約6.4メートル)に衝突する約2秒前、機長が着陸のやり直しを試みていたことが国土交通省運輸安全委員会の調査で分かった。運輸安全委が13日、フライトレコーダー(飛行記録装置)の解析結果などを公表した。着陸直前に視界が悪化し、機長は着陸をやり直そうとしたが、間に合わなかったとみられる。

 事故は先月14日夜に発生した。運輸安全委によると、韓国・仁川(インチョン)発広島行きのアシアナ航空162便(エアバスA320)に対し、広島空港の管制官は午後8時ごろに着陸を許可。滑走路付近の視界は1800メートル以上で着陸条件を満たしていたが、許可の約5分後には、視界は300〜400メートルまで悪化していた。

 事故機は午後8時5分ごろ、滑走路東側から西方向に進入を試みた。まず滑走路の手前約360メートルにある進入灯(高さ約4メートル)に接触し、更にその35メートル先のローカライザーアンテナに衝突。滑走路の進入端から1154メートルの地点で左にそれ、180度近く回転して停止。乗客ら27人がけがをした。

 滑走路の手前148メートルの緑地には胴体が接地した痕跡があった。事故機の左右のエンジンはゆがみ、車輪がある左右の主脚にはローカライザーアンテナの部品が絡み付いていた。

 フライトレコーダーの記録によると、事故機は機体自体には異常なく飛行していたが、事故の約1分前から高度が標準的な降下経路より徐々に低下。ローカライザーアンテナ衝突の約2秒前には、機長がエンジンの出力を上げて操縦かんを操作し、機首を上げて着陸のやり直しを試みた形跡があった。アンテナ衝突時点で、標準的な飛行高度より約30メートル低かったという。ローカライザーアンテナ周辺には機体後部の尾翼が散乱していたが、機首を上げた状態だったために尾翼が衝突したとみられる。

 今回の調査内容について、運輸安全委の辻康二・首席航空事故調査官は「機長が回避操作をしたので、これくらいの接触にとどまった」と説明した。【松本惇、坂口雄亮】

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