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中1殺害、逆送決定 川崎市・教委、対策加速も道半ば

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中1殺害、逆送決定 川崎市・教委、対策加速も道半ば

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で2月、中学1年の上村(うえむら)遼太さん=当時(13)=が殺害された事件。12日、殺人容疑でリーダー格の少年(18)、傷害致死容疑で事件当時17歳だった少年(18)ともう1人の少年(17)の計3人を検察官送致(逆送)する決定を横浜家裁が出し、今後新たな展開を迎える。一方で市や市教委は、事件の再発防止に向けた取り組みに本腰を入れているが、まだ道半ばだ。(那須慎一)

 「未成年ということもあり、きちんと更生の道を歩んでほしい。大きな課題だが、少年犯罪が起こらないよう、私たちが何ができるのかしっかり考えていかなければならない」

 同日、「3少年の逆送決定へ」との報道が一部で流れたことを受け、市教委の渡辺直美教育長は、報道陣の問いかけにこう答えた。

 市は事件発覚直後の3月3日、事実関係を把握し、市全体としての再発防止のあり方などを取りまとめる目的で福田紀彦市長を議長とする庁内対策会議を発足させた。また、市教委は、学校での対策の課題点抽出や再発防止策をまとめる目的で検証委員会を立ち上げ、現在、この2つの会議が議論を重ねている。

 市教委は、検証委員会で学校外での子供の状況把握や学校内で得た情報分析、点検のあり方などを織り込んだ報告書を今月内にまとめる方針だ。

 今回の事件を受け、学校と警察の協力に関しても一歩踏み出すことにしている。

 市教委は4月28日、犯罪などとの関係が懸念される児童生徒の個人情報を、学校と警察が共有する「学校警察連携制度」の協定を県警と結ぶ方針を決定。今後、市の個人情報保護運営審議会での議論を重ね、「年内の締結を目指すが、なるべく早く進めたい」(市教委の渡辺英一指導課長)との考えだ。

 協定の締結で、補導歴や虐待の疑いがある児童生徒の氏名や住所、現在までの経過などの個人情報を県警と共有できるようになる。

 一方、市の庁内対策会議では、今回の事件が学校外で起きていることから、緊急対策の必要性や地域の住民不安の解消など多岐にわたり議論。4月30日には弁護士ら7人の外部有識者による会議を開き、「今夏までに、相談窓口のあり方や保健福祉関係機関同士の連携などのテーマについて最終的な検証を行い、再発防止策を織り込んだ報告書を取りまとめたい」(市の和田敏一庶務課長)としている。

 事件再発の防止に向け、子供の立場だけでなく、親や住民を含めた市全体の課題として取り組み強化に乗り出したが、学校警察連携制度の実行までになお時間を要するなど、課題も多い。実効性のある取り組みを加速するためにも、市や市教委の対応が急がれる。