米空軍の新型輸送機オスプレイが、東京の空を飛ぶ。

 米国防総省が、空軍の特殊作戦部隊が使うオスプレイ10機を横田基地(東京都福生市など)に配備すると発表した。17年後半に3機、残り7機は21年までに配備を完了する。

 米軍のオスプレイは現在、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に24機配備されている。本土へのオスプレイ配備は初めてで、中谷防衛相は低空飛行や夜間飛行訓練の実施に言及した。

 ただ、本土に配備されるからといって沖縄の負担が軽減されるわけではない。米空軍の特殊作戦部隊は米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)に所在しており、横田のオスプレイが沖縄に飛来する可能性が大きい。

 もともと米空軍は、嘉手納を配備先として検討していた。だが、普天間問題がこじれたことから本土への配備が模索され、消去法で横田に落ち着いたのが実情だ。沖縄での訓練は当然、視野に入るだろう。

 そうだとすれば、普天間の24機と横田の10機が沖縄の空を飛び回ることになる。

 安倍首相は「負担を皆で分かち合うことが大切」と述べてきた。負担の「分散」「軽減」と言えば聞こえはいいが、実のところ、オスプレイの横田配備は東京にとっても、沖縄にとっても、負担の「純増」以外の何ものでもない。

 日本政府は「抑止力の向上」などオスプレイ配備の効用を強調している。だが、事故の不安が消えたわけではない。当初より機体の安全性は高まったとしているが、リスクや騒音などの影響についても丁寧な説明が欠かせない。

 その意味でも、唐突な通告で横田配備を決めてしまった日米両政府の姿勢は容認できない。日本政府はこれまで横田への配備を否定してきており、住民にとっては、まさに「寝耳に水」だったに違いない。

 普天間でも日本政府はオスプレイが来ることを否定し続けたが、結局、配備されることになった。誠実とは言えない姿勢が地元の不信を買ったうえ、日米間で合意したはずの飛行ルールが守られていない実態もあり、その後の強い反対運動につながっている。

 いくら日米関係が重要だからといっても、日本政府が地元をないがしろにすれば、かえって米軍基地の安定的な運用を損なう。そのことは、沖縄の現状がはっきりと示している。

 政府は納得のいく説明ができるのか。国民不在の安保政策はありえない。