「ビーフなのに魚」
1回聞いただけではちょっと意味が分からない。そんな研究成果がこの5月11日に中国から発表された。
遺伝子改変技術により肉牛に魚の油を作せるようにして、健康なビーフを実現したという内容だ。
いったいどういうことなのか?
健康効果が続々のオメガ3脂肪酸
中国の西北農林科技大学を中心とした研究グループが、バイオ技術分野の国際誌であるバイオテクノロジー・レターズ誌で報告した。
同じ油でも魚の油は、健康への効果の面で別格であると次々と判明していた。魚の油に含まれている、「オメガ3系長鎖多価不飽和脂肪酸」、簡単に言えば「オメガ3不飽和脂肪酸」「オメガ3脂肪酸」が有効と分かっている。こうした脂肪酸は、DHA、DPA、EPAなどという名前で呼ばれている。日本では「頭が良くなるイワシなど青魚の油」とよく知られるようになった。
最近では、脳や神経の機能を高める効果にとどまらず、心筋梗塞や脳卒中をはじめとした心臓や血管の病気を抑える効果、がんを防ぐ効果、目を保護する効果、肺の病気を緩和する効果などが報告されている(魚の油から作られる成分、失明や脳梗塞を防止、遺伝子の相互作用を解明を参照)。炎症を抑えるといった働きにより病気を防いでいると見られる。
研究グループは、そうした良い効果が分かっている半面で、オメガ3脂肪酸を取る機会が減っていると問題視する。
魚を食べなくなっているといった問題が背景にありそうだ。受け入れるのではなく、変えてしまおうと研究グループは考えた。
5倍増に
代わって取る量が増えているオメガ6脂肪酸をオメガ3脂肪酸に肉の中で変換してしまうという発想だ。
中国の研究グループは今回、線虫から取り出した「fat1」という遺伝子を肉牛に導入した。この遺伝子を入れると、オメガ6脂肪酸をオメガ3脂肪酸に変換するような酵素を肉牛が作れるようになる。結果として、脂肪に多くのオメガ3脂肪酸を含むようになる。
検証したところ、オメガ3脂肪酸を5倍含むビーフを作ることに成功した。「栄養価の高いビーフを作る肉牛を初めて作り出した」と研究グループは意気軒昂だ。
これまで魚、豚、乳牛、羊で同様に遺伝子改変を行った研究グループはあり、さらに肉牛で成し遂げ、しかも直接ビーフで魚の油を増やせると示したところが重要だ。
「健康牛肉目指す」
生まれる前の段階で遺伝子導入しており、14頭が無事生まれ、そのうち11頭は4カ月までに死んでいる。今後は、異常なく健康なビーフを作れるような肉牛にしていきたいといい、人が食べられるところまで持ち込みたいと意気込む。
健康な食品はいろいろ分かっている。例えば、ブルーベリーのアントシアニンが心臓や血管に良いといった研究報告のようなものだ(ブルーベリーが心臓や血管の病気を防ぐを参照)。どの栄養が良いのかが特定できると、こうして思わぬ食品を変化させるという研究も可能になっているというわけだ。広がっていくか。
文献情報
First beef with the goodness of fish
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