安倍政権が重要政策の一つに位置づける特区制度が、何ともわかりにくい。

 新たに国家戦略特区法を成立させたが、「国家戦略」以外に「地方創生」「近未来技術実証」と様々な呼び名の特区があるだけではない。小泉内閣がスタートさせた構造改革特区や民主党政権が設けた総合特区も制度が続いており、発想の似通った特区があちこちに見られる。

 既にある制度の改良ではなく、新名称で国民にアピールしたい――。代々の政権のそんな思惑が伝わってくるが、特区制度の原点を忘れてはなるまい。

 自治体や民間の意欲を出発点に、中央官庁が渋りがちな規制改革を中心に特例措置をできるだけ認めていく。これが特区制度の本質だ。税財政面の優遇より規制改革に重点を置く点で、構造改革特区と国家戦略特区は相通じる点が少なくない。

 構造改革特区は地方側からの提案を国が審査する仕組みだが、国家戦略特区では国が改革を主導する――。政権は二つの特区の違いをこう説明する。

 国主導を強調するあまり、国家戦略特区では、自治体などからの提案を十分に生かせていないきらいがないか。これまで約200の自治体や企業が提案したが、認められた特区は九つ。大阪と京都、兵庫の2府1県に及ぶ広大な特区もあって単純に比較できないものの、提案の多くがお蔵入りしてしまうようでは地方側の改革意欲がなえかねない。

 構造改革特区にも改めて力を入れ、単発の規制改革提案など国家戦略特区では難しいものも構造改革特区で認めていくよう、連携をはかるべきだ。

 構造改革特区にも、今も興味深い提案が寄せられている。昨年秋の通算26回目の提案募集では、件数こそピーク時の7分の1の90件余だったが、外国人留学生が多い地元大学の卒業生が日本で就職・起業しやすくするための在留要件の緩和、空き家での体験宿泊や旅館、レストラン営業の促進、自家用車を使った運送事業の推進など、人口減少と高齢化に直面する地方からの切実な要望が相次いだ。

 関連する許認可権限を持つ省庁の姿勢は総じて硬い。「国家戦略特区で検討中だから」と拒否の理由を語った役所もある。

 もちろん、安全・安心への配慮は欠かせず、特に雇用や医療では慎重な検討が必要だろう。企業の提案には自社の利益拡大だけを狙った内容も目につく。

 しかし、「何とかしたい」という意欲こそが、地域活性化の原動力のはずだ。