個人が企業からインターネット経由で仕事を受注する。そうした在宅での働き方が増え始めている。企業と個人を仲介するサイトで仕事を見つけて契約する。
仕事量の割に低賃金の場合があるなどの指摘もあるが、就労機会を広げる面があるのは確かだ。仲介サイトの運営会社や発注元の企業には労働者保護の徹底を求めたい。問題点は改善しながら、IT(情報技術)を活用した新しい働き方を浸透させていくべきだ。
ネットを使った仕事の発注は「クラウドソーシング」と呼ばれる。受注する個人は現在、150万人にのぼるとみられている。
受注する内容は企業のホームページに載せる商品紹介文の作成や、広告チラシ、製品のデザインなどさまざまだ。仕事に充てる時間帯を自分で決められるため、子育て中の女性なども働きやすい。定年退職者も経験を生かせる。
人口減少で労働力不足が深刻になるなかでは、女性や高齢者の活用が欠かせない。クラウドソーシングによる働き方は、そうした潜在的な労働力を生かせる。
仕事の少ない地方に住む人も大都市の企業から受注できる。宮崎県日南市など、この働き方の普及に力を入れる自治体もある。地方の就業促進効果も見逃せない。
一方で新しい働き方なだけに、懸念も少なくない。仕事ごとの契約になることもあって、収入が不安定になりがちともいわれる。健康管理を心配する声もある。
受注する人は発注元に雇用されているわけではないため、最低賃金法は適用されない。このため仲介サイト運営会社の間では、個々の仕事に最低保証額を設ける動きもある。待遇改善につながろう。
サイト運営の大手企業リアルワールドは今夏にも、仕事を受注した人が使う情報機器の稼働状況から労働時間をつかむなど、健康管理の支援を始める。ITを健康確保に十分に生かすべきだ。
同業のクラウドワークスは仕事の受注者が掛け金を積み立て、病気や出産時にお金をもらえる共済の制度を検討している。働く人の生活の安定の助けになりそうだ。技能向上の支援もみられ、ランサーズ(東京・渋谷)はホームページなどのデザインの講座を割安で受けられる制度を設けている。
クラウドソーシングは働き方の選択肢を広げる意義がある。新しい働き方を安心して選べるよう、労働者保護に力を尽くしたい。