青年海外協力隊が活動を始めて今年で50年を迎えた。1965年に最初の5人がラオスに飛び立って以来、のべ4万人の若者が88カ国に赴き、現地に溶け込みながら各国の発展に尽くしてきた。日本の存在感を高めるうえで果たしてきた役割も大きい。
しかし、協力隊を受け入れる国も、送り出す日本もこの半世紀の間に大きく変わった。経験を生かしつつ、次の半世紀に向けた協力隊の姿を考えるときだ。
協力隊は政府開発援助(ODA)をもとに国際協力機構(JICA)が実施するボランティア事業だ。重要なのは開発や復興への貢献に加え、長年にわたり相手国との人間関係を築いてきた点だ。
ラオスやケニアでは協力隊の教え子から、閣僚や政府幹部が生まれている。草の根レベルから積み上げる信頼は、日本の存在感を高める強力なソフトパワーだ。
しかし、協力隊も曲がり角にある。派遣者数は2009年を頂点に減少傾向にある。男性に限れば、もっと前から頭打ちが続く。
帰国後の就職などに不安があるためだ。人口減少時代を迎え、今後も同じ規模で隊員を確保していくのは難しい。志ある若者が安心して参加できる体制を充実させていかねばならない。
異なる文化や習慣に身を置いた協力隊の経験者は、グローバル人材としても魅力があるはずだ。帰国後の隊員を対象にした求人件数は5年で8倍に増えたが、もっと認知してもらう必要がある。
JICAは12年度から企業の社員を協力隊員として派遣し、自社の海外展開に備えた人材育成に生かしてもらう制度を始めた。協力隊の活動を単位として認める大学もある。ボランティア人材を育て、生かす仕組みを、社会全体に組み込んでいくことが重要だ。
IT(情報技術)や環境対策など途上国が求める協力分野は広がっている。スポーツの普及や競技力向上など新しい活動に対応していくためにも、幅広く人材が集まる体制を整えなければならない。