2011年5月1日、ホワイトハウスの地下にあるシチュエーションルームで、ウサマ・ビンラーディン容疑者を狙った米海軍特殊部隊「シールズ」の作戦行動をモニター画面で見守るオバマ米政権の要人たち=米国・首都ワシントン(ホワイトハウス提供、ロイター)【拡大】
その中で、ハーシュ氏が米政権による“最も露骨な嘘”と非難したのが、パキスタン軍の複数の最高幹部が殺害作戦について何も聞かされていなかったということだ。
記事によると、実際は作戦実行前、米軍とパキスタン当局は綿密な打ち合わせを行っていた。容疑者は01年から、パキスタン北部からアフガニスタン南部にまたがるヒンズークシ山脈に潜んでいたが、近隣住民の裏切りでISIに捕らえられ、06年からパキスタン北部アホダバードの邸宅で家族とともにISIの警備員に護衛され、軟禁状態にあったという。
銃撃戦なし、山に遺体投棄
さらに米政権は、容疑者の居場所は、アルカーイダが容疑者宛てに送った宅配便を米側がたどって割り出したと説明してきたが、ハーシュ氏によると、米政権はパキスタンの元諜報活動員に2500万ドル(約30億円)の報酬を支払って居場所を知った。
作戦実行の模様も米政権の発表とは全く違う。容疑者を殺害したのは確かにシールズだが、作戦実行日、ISIは容疑者が住む邸宅周辺の電力を遮断するなど後方支援を行った。3階にいた容疑者は弱々しく、武器も持っていなかったため銃撃戦はなく、あっけなく射殺されたという。