自衛隊:「電話閣議で出動」明示…グレーゾーン時 政府案

毎日新聞 2015年05月11日 21時09分(最終更新 05月11日 22時21分)

グレーゾーン事態での自衛隊出動の手順
グレーゾーン事態での自衛隊出動の手順

 政府は11日、安保法制に関する与党協議会に、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」で自衛隊を出動させる際、電話で閣僚の了解を得て閣議決定できるようにする文書案を示した。「海上警備行動」や「治安出動」の発令を迅速に行えるようにするのが狙いで、メールでの連絡も認める。国家安全保障会議(NSC)の審議も電話で可能とする。14日に閣議決定する。

 電話閣議を認めるのは(1)日本領海内での外国軍艦による違法な航行(2)武装集団が離島に上陸するおそれのある事案(3)公海上での日本の民間船舶への侵害行為−−の3事態。外国艦を領海外に退去させたり、武装集団を逮捕したりすることが、警察や海上保安庁だけでできない場合に自衛隊が出動する。

 現在も閣僚の署名を集める「持ち回り閣議」があるが、閣僚が地方にいたり、深夜だったりすると手続きが遅くなることから、時間短縮を求める声が政府・与党内から出ていた。

 文書案は、3事態が起きた場合に▽防衛省など関係省庁が連携して状況を把握▽各省庁が情報を共有し協力して対処▽警察・海保の能力では対応できない場合、自衛隊に「海上警備行動」または「治安出動」を命じるための閣議決定を電話で実施−−などの手順を定めている。

 また、「大臣全員が参集しての臨時閣議開催が困難な時は、電話等で了解を得て閣議決定を行う」とし、「連絡が取れなかった大臣には事後に速やかに連絡を行う」とした。関係省庁が普段から訓練を行うことなども定める。

 海上警備行動と治安出動では、自衛隊は相手の行動や能力に応じた武器使用しか認められないため、政府は「戦争や紛争に発展する恐れは少ない」としている。ただ、グレーゾーン事態で自衛隊が出動した場合、相手国に「日本が先に武力行使してきた」との口実を与える可能性がある。自民党内には「海保・警察が対応する原則は変わりなく、実際に自衛隊が出動する例はほとんどないのではないか」との意見もある。【青木純】

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