2013年3月8日に行われた衆院予算委員会での中山成彬衆議院議員(日本維新の会)の質問に関して、もう一つ気になった点があります。それは中山議員が創氏改名に関して質問した際の下村博文文部科学大臣の答弁です。 中山成彬議員 「下村大臣、この教科書検定は事実に基づき行われるべきだと思います。このに提示した3つの教科書、いずれも明らかに間違ってますよね。これで学んだ学生が大学入試で、創氏改名は強制と答えた場合、これは○か×ですか? 非常に大きな問題なんです。本来であれば回収すべき。そうでなくともこれを使ってる学校へ正誤表を配布するなどしてもよいのでは?」 下村博文文科相 「現在の教科書検定においては学習指導要領に基づき、教科書検定審議会の学術的、専門的な審議に基づいて行われ、申請図書の具体の記述について、その時点における客観的な学問的成果や政府見解、適切な資料等に照らして欠陥を指摘するものです。これが欠陥かどうかでございますが、現在、日本史大事典、国史大辞典においても強制したという記述が表現されている中、教科書検定においても、これは欠陥には当たらないと判断されているところです」 中山成彬議員 「そこをですね、やっぱり・・政治主導で下村大臣、やっぱり間違っている事は間違っている。それをねえ、こう・・ちゃんと訂正すべき・・・訂正すべきじゃないかと・・まあこのように思いますが。」 この「日本史大辞典」や「国史大辞典」は日本最大の歴史百科事典ともいうべき本なのですが、具体的にどういうことが書いているのか、その出典はどういうものなのかが非常に気になったのですが、ブログ「worldNote」さんが紹介しています。
結局、「日本史大辞典」にしても「国史大辞典」にしても、「創氏改名」に関しては金英達さんや宮田節子さんの研究に行きついていくようですが、「強制した・名前が奪われた」と言う事に関しては、文定昌『軍国日本朝鮮強占三十六年史』(1965)と言う文献が引用され、次のような記述になっていることが多いようです。 1 学校への入学・進級拒否 2 創氏しない児童を日本人教師が理由なく叱責、殴打。父母へ哀訴させる。 3 総督府関係機関に非採用、現職者も罷免。 4 行政機関で事務取り扱い拒否。 5 非国民、不逞鮮人と断定、警察手帳に記入、査察・尾行。優先的に労務徴用の対象とし、食料・物資の配給対象から除外。 6 鉄道局、配送店で、荷物取り扱い拒否。 ただこの「軍国日本朝鮮強占三十六年史」の記述に関しては、金栄達さんも韓国文化研究振興財団が1998 年 3 月に発行した「青丘学術論集第一二集」に『文定昌「軍国日本朝鮮強占三十六年史」の記述の悲観的検討』と言うのを書いているようです。 また「創氏改名の研究」(未来社、1997年)の中で金栄達さんは、その引用元が鎌田沢一郎「朝鮮新話」(創元社、1950年)だと書いているようです。つまり「朝鮮新話」を「軍国日本朝鮮強占三十六年史」が引用し、「さらにそこから孫引きの形で引用され」史実として伝わっているということです。 「創氏しない児童を日本人教師が理由なく叱責、殴打。父母へ哀訴させる」と言うことは「朝鮮新話」の中にもあるそうで、次のように書かれています。 悲劇は至るところで発生し、それが猛烈な反日思想に発展し、対日非協力の地下運動になつて行つた。 その一例に全羅北道高敞郡に「薜鎭永」といふ中地主の奮家があつた。主人は実に真面目な愛国者で戦争が段々と進んで軍糧米が次第に不足になつて来たころ、自家の一年分の小作米全部二千石を献納して、朝鮮軍司令部をあつと驚かせた。一年分の小作米収入がなくとも、どうやら税金と小使銭は若干の貯金で賄へるから、お国の為になつて真裸身になつて御奉公したいといふ奇特な申出であつたのだ。 その特志家の家へも、御多分に洩れずに、ぜひ創氏改名せよと面長や郡守から強制して来た。しかしこればかりは許して貰ひたいといつてどうしても肯かない。それは朝鮮の大家族主義は系譜を非常に尊重する。特にこの薜鎭永の家は奮家としての誇りがあつて、祖父から系譜を大切にせよ、名を汚すなと言はれてゐた。だから整然たる系譜をもつこの家名だけは残しておきたいから諒承を乞ふ、決して反日感情のためではない。愛国者として人後に落ちないことはすでに皆さん御承知の通りなのですと、実に筋道の通つた話なのだ。 ところがこの薜家が改名しなければ、その附近の村落全部に於て一人として改名するものがない。あせった當局はその愛児の通ふ小学校の教員を動員して、創氏しなければ学校の進級をとめるぞと脅迫したものだ。子供は泣く泣く帰宅して、之を父に訴へぜひ創氏して欲しい、それでなければ学校へゆけないとせがまれて、薜鎭永氏は子供可愛さに遂に決心し、翌日面事務所へ行つて、創氏改名の手続きを完全に済ませ、学校へも届けて子供を喜ばせた上、その翌日、石を抱いて井戸に沈み祖先への申譚を死によつて果したのであつた。 この話は、『「創氏改名」を考える その3』でも紹介しましたが、創氏改名に関して有名な小説に「族譜」(梶山季之)につながったエピソードですが、よく読むと「創氏と改姓」を混同しています。また「創氏しなければ学校の進級をとめるぞと脅迫した」ということですが、期日になれば姓と同じ氏が作られるので「創氏しなければ・・」と言うことはあり得ないのです。 金栄達さんによれば、「薜鎭永」という名前は「族譜の名前」でした。戸籍上の名前は「薜鎭昌」であり、「1922年の朝鮮戸籍令実施により、『鎭昌』の名が日帝の戸籍に載せられるや、名が汚されたとして『鎭永』に改名」したそうです。それに地主ではなく、「儒者」でした。しかも親日家どころか義兵に参加していたこともありました。さらに薜鎭永は1869年12月生まれで、創氏改名が行なわれた1940年には満70歳になっていて小学校に通っているような幼い子供がいるとは思えないとしています。 薛鎮昌と言う人は一族協議の上「玉川」と創氏する事になりましたが、これに抗議して「誓不改姓」と題した遺書を残し自決したということです。「誓不改姓」と言うこと自体、創氏を改姓と誤解したと言える不幸な出来事です。 この話は、創氏改名に関して有名な小説に「族譜」(梶山季之)に繋がったり、研究論文に記載されたりもしてしまいます。 金栄達さんは、こういう話を、その引用文献等を丹念に調べた結果、「根拠の無いものが多い」という結論に至ったようです。例えば創氏改名に関して良く見かける「「犬糞倉衛(いぬくそくらえ)」と創氏改名したけれども役所で受理しなかったということがネットで見られますが、このエピソードそのものが、1965年「朝鮮日報」連載の新聞小説からの引用だったそうです。(http://www10.ocn.ne.jp/~war/sousi.htm) 創氏改名の研究第10章「役人による盗人創氏は実際にあったか」書かれている(と思われる・・・・読んでないのですがネットで紹介してたので・・・(^^ゞ )事例を紹介します。1982年年8月17日付「東亜日報」に「役人に勝手に『創氏』された」と言う記事のことです。 紙面の1/4を使った「金善集」という署名入りの大きな記事で、「氏ノ届出為サザルニヨリ昭和15年8月11日金子氏トス」として、金さんの氏を戸籍係が勝手に金子と日本式に創氏したという記事です。 しかしこの記事は金善集と言う人が単純に誤訳をしてしまった結果、「戸籍係が勝手に日本式に創氏した」と思い込んでしまって記事です。ここに書かれているのは「昭和15年8月11日金子氏トス」ではなく「昭和15年8月11日金ヲ氏トス」なのです。「ヲ」を「子」に誤訳してしまったのですが、創氏する場合の書式等知っていれば簡単に分かったことなのですが・・・・。 東亜日報に載っている届出と正しい届出を見てみます。 右の届出は「創氏」はせずに亡くなったご主人の姓を氏とした例ですが、朝鮮式の姓の横に縦線を引いてその横に新たな氏を書きます。従って金さんが金子さんに創氏した場合は新たに金子を金の横に書き加える必要があるのです。こういった書式等知っていれば自分が誤読をしていることは直ぐに分かったはずです。 金栄達さんはこういう事例をきちんと調べ、事実と違うこととは否定している点は評価できます。しかし「日本式に改名することは「皇民化の指標」とみなされ」とか「各級行政官庁はそういう者の事務を取り扱わない、食糧をはじめすべての配給対象から除外」など「有形無形に強要」」ということになって、結果的に名前を奪われたとして「日帝の七奪」になっているのは残念です。 当時の新聞記事を紹介します。朝鮮総督府に関連した記事です。その総督府がどういう状況だったのかが良くわかる記事です。 1940年3月28日付の総督府関連辞令に関する記事です。 創氏していない人も人事発令されていることがわかります。では期日近くではどうでしょう。創氏期日直前の8月7日の記事で、朝鮮総督府卓球部主催の総督府各局対抗卓球大会の記事で、農林局が全勝で優勝したそうですが、選手の多くは創氏をしていない人です。 また期間中に行われた面会議員選挙に関して当選者による御礼広告が載っていました。 「國本漢龍」と言う人は創氏だけのようですし「長江義夫」と言う人は日本人かもしれませんが創氏も改名もした人かもしれません。しかし期間中の総督府各局対抗卓球大会や面会議員選挙で創氏もしていない人の記事を見ると強制とか強要というのが感じられないほど「ゆる〜い」状態だったと感じるのは私だけでしょうか。
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