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 配られた茶封筒の中身を見て、女性(62)は言いようのない不安を感じた。「集会に顔を出しただけでこんなにもらっていいのだろうか」

 4月下旬、沖縄県宜野座(ぎのざ)村。「区」と呼ばれる地域ごとの住民自治会の年次総会後、世帯ごとに配られた封筒には、現金5千円が入っていた。

 宜野座村は、村の面積約3千ヘクタールの半分ほどを米軍基地「キャンプ・ハンセン」が占める。基地内に村有地があるため、村には毎年、約20億円の軍用地料が国から入る。集会で配られた現金は、村が区に分配した軍用地料の一部だ。

 沖縄の41市町村のうち21市町村が米軍基地を抱える。このうち市町村有地が基地内にあり、軍用地料を受け取っているのは17自治体。2013年度、宜野座村の歳入に占める基地関係収入の割合は31・8%で、県内で2番目に多かった。

 軍用地料は道路や下水道の整備などに使われる。このほか、元々地域住民が管理していた公有地が基地に使われている場合は、自治体は軍用地料を区に分配している。区は住民への現金支給や農薬購入費の補助、奨学金などに充てている。

 女性は毎年、軍用地料の分配金約30万円を受けている。「地域の発展のために使おうと思うが、もらえて当然と考える人も多い。これでは、『基地を返せ』という声も大きな訴えにはならない」

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 沖縄の本土復帰から15日で43年。基地を抱えるがゆえに入る基地マネーは、地域を分断する因子にもなっている。