「We love you. Welcome to Facebook」
10日におよぶ8回の面接の末、フェイスブックから届いた入社合格通知メールの件名である。この頃の僕はまだケンブリッジに住んでおり、面接の度に当時ロンドンのオックスフォードストリートにあったオフィスまで2時間かけて出向いていた。面接8回というと多く感じるが、一緒に仕事をする仲間からカリフォルニア本社の副社長レベルまで、一通り顔を合わせて話をするためこの数になる。入社の条件は面接官全員から満場一致で合格を勝ち取ること。なので、面接官のうち一人でも反対意見があればその場で採用プロセスは打ち切られ、次の面接に呼ばれることはない。ロンドンから帰る電車の中で面接通過の電話があるたび、周りに気付かれないくらいの小さなガッツポーズを取っていたことを今でも思い出す。
フェイスブックやグーグル、アップルといったシリコンバレーのIT企業は「超」がつくほど人気が高く、国際都市ロンドンという土地柄もあって世界中から「我こそは」と思う人材が応募をしてくる。必然的に倍率は天文学的なものになり「宝くじを当てられる運の持ち主か、天才でないと入れない」といったレッテルが貼られるようになっているほどだ。しかし、僕はポイントを押さえれば不可能なことではないと思っている。ここではフェイスブックでどのような人材が求められているのか、なぜオックスブリッジの卒業生がキーポジションに多く採用されているのかを、自分の体験を振り返りながら書いていきたい。
社会貢献を目指す高い志の持ち主
何よりも大切なのは、「Make the world more open and connected」というフェイスブックのビジョンを理解し、それを自分のもつビジョンとすり合わせることだ。マーク・ザッカーバーグ社長は、世界はつながることでより良くなると考えており、internet.org (全人類にネット接続を提供するイニシアティブ)などの短期的利益がはっきりしないような事業にも多額の投資をしている。これも、ソーシャルネットワークのもつ力や可能性を正しい方向に使っていこうというビジョンが根幹にあるからだ。
この点、オックスブリッジでは「noblesse oblige」の精神、つまり恵まれた環境で教育を受けられたことの社会的責任を重く受け止め、 自分の研究や仕事が如何に世界に貢献するのかをデフォルトで考えさせられる伝統がある。実際に、オックスブリッジ卒の社員はフェイスブックで何をするのかではなく、この会社を通じて世界に何をもたらすのかを他の社員より深く考えている傾向があると人事の担当に聞いた事がある。僕自身もケンブリッジで広告業界がどのように世界に貢献しないといけないのか等の討論を夜な夜な繰り広げたので、面接の際に筋の通った話が出来たと実感した。
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