あのころ誰もが憧れた背番号3。
そして背番号1。
74歳となった王貞治さん。
79歳の長嶋茂雄さんです。
(長嶋)はいこんにちは。
(星野)どうもご無沙汰してます。
ご無沙汰。
どうもありがとうございます。
(王)お久しぶりです。
ようこそ。
よろしくどうぞ。
およそ10年ぶりに実現したON対談です。
お元気そうで何よりですね。
華麗なプレーでミスタープロ野球と呼ばれた長嶋さん。
一本足打法で世界のホームラン王となった王さん。
昭和という時代を代表するスーパースター。
ONとは何だったのか。
共に歩んだ栄光の日々。
背負い続けた期待と責任。
長嶋茂雄と王貞治。
その全てを語ります。
今日は本当にお忙しい中ありがとうございます。
星野仙一さんを聞き手に行われた今回の対談。
まずはON誕生の思い出から。
始まりは昭和34年。
5歳年下の王さんが巨人に入団しました。
春のキャンプで2人は相部屋に。
しかし共同生活は10日しか続きませんでした。
だから多分これは別に何とも僕はあれなんですけど…移動させられたというのはいびきですか?多分安眠できなかったんじゃないですかね。
そんなに悪かったんですか?昔から悪かったです。
私はもう。
あれだけきちっとこう一本足で押しても倒れなかった人が。
高校時代はエースで4番。
甲子園も制し鳴り物入りで入団した王さん。
一方の長嶋さんはその1年前にプロ入りしいきなりホームラン王と打点王の2冠を獲得。
既にスターとしての輝きを放つ存在でした。
当時のミスターのそのスターになってるところへルーキーが入るという事はものすごく緊張するじゃないですか。
やっぱり皆さんはもっとねちゃんと…。
それで…あれいつだったですかね5月だか6月にありましたね。
長嶋さんよく覚えてる。
天覧試合が行われたのは王さんが入団した年。
ONにとって大きな意味を持つ試合となりました。
(テレビ)4対4のまま迎えた9回裏。
ジャイアンツ最後の攻撃は再び長嶋からです。
5球目。
村山の高めの速球を長嶋レフト上段にサヨナラホームラン。
歴史的な一打となった長嶋さんのサヨナラホームラン。
両陛下をお迎えしてまれに見る熱戦でした。
実はその前の7回王さんは同点ホームランを放っていました。
これが2人の…。
あとになってそういうふうな事で…長嶋さんがホームランを打った阪神村山実投手。
天覧試合では終生のライバル村山投手との逸話も生まれました。
もう亡くなる寸前まで言ってました。
ミスターはそれは絶対入ったという自信があったんですか?でも僕らそれをすぐ僕なんか並のピッチャーだから認めるから駄目なんですかね。
そうそうそう。
やっぱり村山さんのはねあの〜本当に…あれじゃあもう…3番ファースト王。
4番サード長嶋。
ONとなった2人はそれぞれのスタイルでファンを魅了します。
長嶋さんは…歌舞伎の所作をまねたというこのスローイング。
そして手のひらを開いての全力疾走。
軽やかにグラウンドを駆け回る背番号3に人々の視線はくぎづけとなります。
更に空振りしてもヘルメットを豪快に飛ばす姿。
プレーの全てが魅力的。
ミスタープロ野球と呼ばれるようになりました。
あの空振りしてもう体がねじれるような格好でヘルメットをパ〜ッと飛ばしてました。
あれ練習したんじゃないですか?でもあれは振ってるもうそこまで振ってそこまで空振りまで魅せてるっていう印象は僕ありましたね。
全てに絵になりましたよね。
全てに絵になった。
僕はね見てましてね何であんな簡単なゴロを難しく捕って派手にバ〜ッとこう見せるんだと。
ところが僕はそれ2〜3年たって分かりましてね。
時は高度経済成長期。
テレビが急速に普及していった時代でした。
(テレビ)王長嶋をはじめとする巨人打線が奮って一方的なゲーム。
ONのプレーはテレビによって全国のお茶の間へ伝えられていったのです。
(テレビ)5回までに8安打を浴びせて稲尾をノックアウト。
8対2の大差で巨人が2勝目をあげました。
ミスターは何か天才肌とかよく言われましたし王さんはものすごい努力の人という我々一般にはこうファンにはこうねありましたけどミスター自分の事どう思います?でもあの〜V9の時代に黒江さんと土井さんにお話…高田さんにも聞いたんですけどももう夜中みその旅館ですか?名古屋の。
あそこでもうパンツ一枚で夜中に振ってると。
そして最後は全部脱いでブリンブリン振って汗が飛び散って目が覚めたというお話を聞いた事あるんでそういう思い出ありますか?やりました。
はい。
それ周りの人かないませんよこれ。
要するにまあそういうものがね…ファンに見えないところで努力を重ねていた長嶋さん。
王さんは長嶋さんのバッティングに懸ける強い思いを感じていたと言います。
やっぱ長嶋さんっていうのは…だからあの〜…なるほど。
ところが…だから僕なんか投げてましてもねミスターよし詰まらしたと思うんですよ。
ところがミスターの打球は人のいないとこへ飛んでいくんですよね。
しかもランナーがセカンドだとかサードにいる時によくやられた記憶があるんですけどもね。
そして王さん。
代名詞の一本足打法で13年連続ホームラン王に輝きました。
その栄光の裏には苦しみの日々がありました。
王さん1年目の打率は1割6分1厘。
王王三振王と呼ばれていたのです。
転機は4年目。
一本足打法を考案した荒川コーチとの出会いでした。
伝説となった日本刀での練習。
なみなみならぬ覚悟で一本足に取り組みました。
結局もう簡単なんですよ。
一本足打法を身につけた王さんは三振王からホームラン王に。
目の前でホームランを連発する王さん。
長嶋さんも王さんの姿を見つめ続けていたと言います。
そうですね。
もうだから…いつも…じゃあミスター後ろからこう王さんのこの一本足を見てあっ今日はいけそうだなとかあっ今日まずいなとか。
でもね僕ね一本足の時にちょっと星野押してみろって言った時押した事あるんですよ。
やっぱりそこでズシッていうものがねあったでしょうね。
いや僕はそのポッと押した訳じゃないですよ。
ドンと押したんですよ。
あの日現役時代の僕が。
それでもグッとした時に動かなかったいうのはあれは何か。
気持ちですね。
気持ちガ〜ッて。
だから銅像押してるみたい。
動かないんだもん。
シュッタッタ〜ン。
まねました?考えたらいや…
(歓声)昭和51年ベーブ・ルースを超える715号。
そして翌年。
(実況)第6球を投げた。
打った!グ〜ッと伸びた伸びた!入るか?入るか?入った!グ〜ッと伸びた。
入りました!入りました!出ました!出ました!王の世界新記録756号!
(歓声)王さんは世界のホームラン王となりました。
自らを天才ではなく努力の人と言った長嶋さん。
それなら王さんは自分をどう表現するのか。
僕はもうつい…9年連続日本一。
巨人のそしてプロ野球の黄金時代の立て役者となったON。
そこには名勝負を繰り広げたライバルの存在もありました。
ミスターって現役時代このピッチャーは嫌だなというのいました?嫌なの?誰だろうね。
平松だとか江夏だとか。
カミソリシュートの平松政次。
巨人キラーの異名を取りました。
400勝投手金田正一。
長嶋さんのデビュー戦で奪ったあの4打席連続三振。
そして王貞治最大のライバル江夏豊。
三振かホームランかの真っ向勝負を繰り広げました。
ええ。
それからう〜ん。
松岡だとかねヤクルトの松岡。
星野だとか。
ああいたいた。
こう構えて「さあ仙ちゃんいらっしゃ〜い」。
バッターボックスで言うんですよ。
う〜んって。
僕もそのころまあ一応エースといわれてましたから「何〜?」と思って投げたらカパ〜ンって打って。
誰よりも打倒ONに闘志を燃やした現役時代の星野さん。
6歳年上の王さんとの対決では経験した事のないすごみを感じたと言います。
あの一番印象に残ってるのはね僕はね僕はもう一生懸命この一本足をずらそうと思ってロジンバッグ持ってスパイクでマウンドこうやってじらすんですよ。
そうすると王さんが「タイム」とこう外すんですよ。
でもう一回入ってきた。
その時の集中力ってすごかったですよ。
怖い目してましたよ。
今のような優しい目してませんでした。
だからこうパッとタイムをかけて入り直して一本足でパッとした時に…そうするとそのアウト外甘のとこへス〜ッとボールが。
手が離れたら…。
離れた瞬間にあか〜んもう。
もうホームランでしたね。
そうですか。
打撃部門のタイトルを独占した長嶋さんと王さん。
競い合う2つの個性が栄光の時代を築きました。
2人きりで酒を酌み交わした事はなかったというON。
あのころ互いをどのように意識していたのか。
ライバル意識。
ONのライバル意識というか。
ありませんね。
でも世の中ではね「両雄並び立たず」なんてよく言われたり。
数々の記録と記憶を残した現役時代。
引退の時にもONらしいドラマがありました。
長嶋茂雄は最後までスーパースターでした。
(歓声)超満員のファンに届けたホームラン。
そして王さんも。
(歓声)あの天覧試合から15年。
106回目のアベックホームランでした。
試合が終わるとファンのもとへ。
長嶋さんの思いがあふれます。
私は…今日引退を致しますが我が巨人軍は永久に不滅です。
(拍手と歓声)もうお別れする時にミスターが外野をこう歩いて涙流しながらファンに挨拶。
あの時の心境を今思い出すと。
うん。
やっぱり…そうですね。
その6年後。
王さんも決断を下します。
まあ口はばったい言い方ですけれど王貞治としてのバッティングができなくなったという事です。
昭和55年引退の年でさえ30本のホームランを打ちました。
それでもホームラン王王貞治として譲れないものがありました。
まあちょっと偉そうに言う訳じゃないけど…輝くプレーで魅了した現役時代を終えONの物語は第2幕へ。
そこにあったのは栄光だけではありませんでした。
昭和50年。
引退の翌年に監督となった長嶋さん。
チョーさん頼むよ〜。
再び黄金時代を。
しかし1年目は球団史上初の最下位。
6年間で一度も日本一を手にする事はできませんでした。
一方の王さん。
巨人の監督を経て平成7年にダイエーの監督に。
よ〜しいいぞいいぞ。
あと3つ。
当時17年連続Bクラス。
負ける事に慣れきったチームを変える事は簡単ではありませんでした。
指揮官としての苦悩。
ONという名前は大きな足かせとなりました。
そんな中王さんが伝え続けた一つのメッセージ。
敵に勝つ。
己に克つ。
プレッシャーに克つ。
そして勝負に勝つ。
勝つ事にこだわる。
それは長嶋さんが監督として伝えようとしていた事でもありました。
その時にやっぱり…それはジャイアンツでV9をやってこられたそういう精神というものがDNAというものがお互いに染み込んでるというそっからの発想ですかね。
そらもう。
2000年。
監督としてのONに大きな注目が集まります。
(拍手と歓声)長嶋さんは背番号3を復活。
そしてこの年。
長嶋さんの巨人と王さんのダイエーが日本一を争いました。
日本シリーズON決戦です。
長嶋さんと戦わなきゃいかんのだなというのを改めて今ね感じてます。
そうですね。
来たなっていう感じですね。
先手を取ったのは王さんのダイエー。
鍛えてきた若手が躍動し東京ドームで2連勝。
しかし長嶋さんの巨人も負けてはいません。
2連敗からの3連勝。
そして…。
(実況)日本一に向けて大詰め。
ツーアウトランナーは一塁。
第3球を投げた空振り三振!ジャイアンツ日本一!巨人が劇的な逆転優勝。
ON決戦にファンは酔いしれました。
それから4連敗。
はあ〜。
3戦目から気合い入れたんですか?ミスターは。
なりましたね。
ONが生きてきたプロ野球界は大きな変化の時を迎えます。
トップ選手が次々と大リーグに挑戦。
世界を相手に戦う時代へと突入したのです。
そして長嶋さんはアテネオリンピックの代表監督に就任。
初めてプロ野球選手だけで結成された日本代表を指揮する事になりました。
バッと!バッと!まだ甘いよ。
日本中の期待。
そして日の丸を背負っての戦い。
「プレッシャーかかるな」というミスターがあんなまあ弱気というか何かプレッシャーというか「ミスターそんなミスターにプレッシャーなんかないでしょう」って。
「いや〜日の丸は重いよ」と言ったの僕はものすごく覚えてるんですよね。
長嶋さんは大会の5か月前脳梗塞に倒れます。
オリンピックを戦う事はできませんでした。
オリンピックの2年後王さんも代表監督を引き受けます。
WBCワールドベースボールクラシック。
戦いの舞台へ向かう王さん。
その胸に輝く日の丸のピンバッジ。
それは2年前長嶋さんがアテネオリンピックのために作ったものでした。
それを王さんに託したのです。
日の丸を背負い一丸となって戦った王さんと選手たち。
度重なるピンチを全力プレーで乗り越えていきます。
日本は見事に優勝。
王さんは長嶋さんの思いと共に宙を舞いました。
どういう思いで王さんにそういうピンバッジを?もう田中将大もダルビッシュもとか松井も行きましたよね。
これミスター現役の時に今のような時代だったら向こうでチャレンジしたかったという思いはありますか?ON誕生から56年。
プロ野球の黄金時代を共に生きてきた2人。
(星野)久しぶりでしょ?ツーショット。
本当本当。
何かドキドキするね。
(笑い声)
(星野)ずっと何十年も一緒にやってて?これからのプロ野球へメッセージがありました。
昭和という時代が生み出した2人のスーパースター。
長嶋茂雄と…。
王貞治。
ONという夢。
ONという運命。
そしてONという人生を生きる2人です。
2015/05/04(月) 14:05〜14:55
NHK総合1・神戸
長嶋茂雄×王貞治〜“ON”として生きる〜[字][再]
長嶋茂雄と王貞治。永遠のスーパースター2人が、星野仙一の司会で語り合う。今だから話せる秘話の数々。天覧試合の裏側や、引退の決断、そして互いへの思いとは。
詳細情報
番組内容
長嶋茂雄と王貞治。プロ野球界にさん然と輝くスーパースターが、膝を突き合わせて語り合う。呼びかけたのは、サンデースポーツ、マンスリーキャスター星野仙一。誰よりも打倒ONに闘志を燃やし、誰よりもONを愛する男だ。今だから話せる秘話の数々。あの天覧試合の裏側、記録への挑戦の日々。それぞれの引退の決断、監督としてのON対決。そして、互いへの思いとは。2人の飾らない本音の言葉をありのままに伝える。
出演者
【出演】長嶋茂雄,王貞治,【司会】星野仙一
ジャンル :
スポーツ – 野球
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
ニュース/報道 – 討論・会談
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