(爆弾のタイマー音)
(大森恵)ちょっと…話が違うじゃない!お願いだから見捨てないで!助けて!
(ドアの閉まる音)
(爆弾のタイマー音)
(爆発音)
(遠山修介)ご苦労さまです。
今日早いっすね。
(糸村聡)うん…。
ここが被害者の位置です。
3.5。
3.5!だいぶ飛ばされてるな。
被害者の名前は大森恵。
39歳。
住所は目黒区西目黒。
勤め先はOFFICESEAGULLという会社です。
(水沢響子)あれ?この人って…。
愛川みちるのチーフマネジャーの大森といいます。
愛川みちるのチーフマネジャー。
え?
(仙堂卓巳)救急隊員から話聞いてきました。
被害者は全身にやけどを負い意識不明の重体だそうです。
それから発見当時被害者は両手足をロープで縛られていたそうです。
えっ!?
(森田宗介)おい!
(仙堂・遠山)はい。
(森田)タイマーのカケラだ。
恐らく犯人は被害者に恐怖を味わわせた上で殺そうとしたんだ。
あれ…?ちょっとすいません。
どうしました?糸村君。
ルビー…?おいカメラ。
はい。
(村田)これ撮ってくれ。
(東孝彦)おい。
また爆発騒ぎだって?おはようございます。
被害者は1名。
意識不明の重体です。
あの…森田さんどこ行くんですか?俺が何調べようと勝手だ。
(ため息)所轄の刑事なんかとは一緒に捜査は出来ませんか…。
おいよせ。
所轄には所轄のプライドがあるだろ。
署長の言うとおりよ。
とにかく糸村君あの…遺留品の選別お願い。
はい。
ちょっと前ごめんなさい。
ではまず爆発物並びに携帯電話の解析それからクレジットカードキャッシュカードの確認。
そしてこのルビー…ですかね。
それ本物なの?まだ調べてないのでわかりません。
はい。
じゃあ捜査開始。
仙堂と遠山は職場の聞き込み。
それから横山は遺留品の洗い出しね。
(3人)はい。
あと糸村君は…。
出かけてきます。
まだなんの指示も出してないんだし…。
水沢君も大変だなぁ。
面倒な部下ばっかりで。
人事みたいに言わないでくださいよもう。
ではいってきます。
いってきます。
いってきます。
よし…。
みんな頼んだぞ。
返事!お待たせ致しました。
あっすいません。
こちら合成コランダムですね。
ルビーじゃないんですか?ええ。
科学的に合成された宝石でほとんど価値はありません。
(筧英雄)大森はうちのチーフマネジャーです。
所属モデルのスケジュール管理の責任者をやってます。
(仙堂)大森さん最近何かトラブルに巻き込まれてませんでしたか?特にそういった事は…。
ただ…。
ん?なんでしょう?最近ちょっと羽振りがいいというか高級ブランドの腕時計やバッグをよく買ってました。
宝くじでも当たったのかと冷やかしたらそういう事にしといてくれと笑ってました。
失礼します。
(遠山)糸村さん…。
私月島中央署の糸村と申します。
あの…遺留品について少しお話を伺いたいんですが…。
あの…見てわかりません?今我々が事情聴取してるとこなんですけど…。
僕は大丈夫だから。
あの…このルビーに似た石なんですがこれ大森さんの持ち物でしょうか?いや見た事ないですね。
そうですか…。
被害者のものじゃないとすると犯人が現場に落としていったのかな?で大森さんについてですね…。
ん?あの…このファイルは…。
うちのモデルが掲載された雑誌のスクラップです。
あっ…お借りしてもよろしいでしょうか?ちょっと…。
ええ構いませんけど。
ありがとうございます。
ご協力ありがとうございます。
あっすいません紙袋か何か…。
大きい方がいいですか?できれば2つ3つ…。
ちょっとお待ちください。
ご協力ありがとうございます。
(森田)共映撮影所で起こった爆破事件と今回の爆破事件の火薬残渣の成分が一致しました。
恐らく犯人は同一犯である可能性が高いです。
管理官撮影所を鑑識にもう一度調べさせてください。
(金子丈弥)被害者はまだ死んでないんだろ?意識が戻れば犯人の正体なんかすぐわかるじゃないか。
いやしかし…。
殺人事件でもないのに無駄な兵隊は出せんよ。
被害者の仕事関係者に話を聞いてみましたが特に目立ったトラブルはありませんでした。
(横山恵一)課長!大森さんの銀行口座なんですがちょっと見てください。
(横山)この1か月の間にカイヌマコウイチという人物から分割で500万もの金が振り込まれています。
カイヌマコウイチ…。
しかも最近2人は携帯で頻繁に連絡を取り合っています。
課長オフィスシーガルと取引のある編集プロダクションの社長に同姓同名の人物がいます。
すぐ当たってみて。
(横山・仙堂)はい。
あっそれから糸村君見なかった?横山。
えっ…。
それが例の宝石にはまっちゃってまして…。
糸村君何やってるの?あっ課長。
ちょっとこれ見てくださいこの子。
この指にはめてる指輪。
これこの石と同じ物に見えませんか?言われてみれば…。
糸村さん…お手柄ですよ!課長このルビーこの子が現場に落とした物かもしれませんよ。
えっじゃあ何?この子が犯人だって言うわけ?長澤絵里…。
糸村さん事務所行きましょう事務所!ん?長澤絵里の事務所ですよ!早く!なんで…?
(横山)よしお手柄だぞこれは。
(貝沼孝一)大森さんが殺されかけた?
(仙堂)貝沼さんあなたこのひと月ほど500万もの金を彼女の口座に振り込んでますよね?
(貝沼)まさか私を疑ってるんですか?
(遠山)ああいや…そういうわけではありません。
ただ金額が金額ですから。
(貝沼)実は以前…私たち付き合っていたんです。
その頃会社が傾きかけた事があって大森さんに金を工面してもらった事があるんです。
(遠山)つまり500万は借金の返済という事ですか?ええ。
失礼ですが別れたのはいつ頃です?つい最近です。
別れた理由は?ハハ…まあ一言で言えば価値観の相違です。
私に結婚する意思がないとわかって大森さんの方から離れていきました。
(林愛子)そんなの嘘に決まってますよ。
(仙堂)嘘?はいオッケー。
はい。
別れた理由はこれ。
新しい女が出来たんです。
相手はどんな方ですかね?
(カメラマン)麻美ちゃんお願いします。
(北原麻美)よろしくお願いします。
(カメラマン)お願いします。
北原麻美。
彼女オフィスシーガルの稼ぎ頭だし大森さん何も言えなかったそうよ。
でも腹ん中じゃ怒りが収まらなかったんじゃないかな。
若い子に乗り換えられてさ。
(カメラマン)ああいいよ。
(遠山)大森さんの通帳を見る限り貝沼に500万を貸した形跡は見当たりませんね。
(仙堂)もしかしたら貝沼は三角関係のもつれから慰謝料を請求されていたのかもしれません。
それで大森さんが邪魔になった。
だからって何も殺す事はないんじゃない?まあ男ってのは追い詰められると何するかわかりません。
とのかくあの…貝沼をもう一回叩いてみて。
残念ですが長澤絵里は1か月前に亡くなりました。
えっ…。
事故ですか?自殺です。
自殺!?
(筧)彼女は事務所に入ってまだ2年足らずの駆け出しでしたが上昇志向の強い子で一躍トップモデルになった逸材でした。
(カメラのシャッター音)
(カメラマン)ラストいこう。
(カメラのシャッター音)
(カメラマン)オッケー!
(長澤絵里)ありがとうございました。
(筧の声)無邪気で自由奔放でカメラマンやクライアントからも随分かわいがられてました。
前途洋々だったんですね。
しかしそんな彼女がなぜ自殺なんか…。
それが夜遅くに仕事から帰宅する途中何者かに歩道橋から突き落とされたんです。
(筧)その時顔に傷がついてしまい絵里はもう二度とモデルの仕事は出来ないと絶望し遺書を残して投身自殺を図ったんです。
じゃあとにかくその家族の話聞いたら糸村君連れ戻して。
(ため息)捜査の状況は?何かわかったのか?森田さん勝手に調べるんじゃなかったんですか?俺はただ一刻も早く犯人を捕まえたいだけだ。
都合のいい事ばっかり言って。
そういうとこ昔から全然変わってないですよね。
甘いものが大好きなところも。
お前のその小姑みたいに口うるさいところもな。
被害者に500万強請られてた男がいました。
共映撮影所に出入りしてる人間か?雑誌の仕事してるみたいです。
念のため相馬が殺された夜のアリバイも調べてくれ。
なんか繋がりがあるんですか?糸村どこだ?遺留品のルビー調べてます。
事件と何か関係があったのか?横山君によるとどうも空振りみたいですけどね。
じゃあなんでまだ調べてる?それが糸村君っていう人なんですよ。
何やってんだあいつは。
ちょっと…森田さん。
こっちの質問にもちゃんと答えてください。
相馬が殺された夜現場が爆破されたろ。
(爆発音)あれは殺人事件のどさくさに紛れて何者かが大量の火薬を盗み出し証拠隠滅のために行ったものだ。
あの時の火薬残渣と今回の火薬残渣の成分が一致した。
どうしてそんな大事な事黙ってたんですか?俺はもう一度相馬殺しの関係者を洗い直してみる。
ここみたいだね長澤絵里さんのご実家って。
(長澤裕一)モデルの仕事が出来なくなったからって命を絶つとはね。
事務所の社長さんのお話では彼女亡くなる前に遺書を残されたそうですが…。
ええ私の携帯宛てにね。
娘から最初にもらったメールが遺書ですからね。
最初はイタズラかと思いました。
この宝石に見覚えありませんか?娘が肌身離さず身に付けていた指輪に似てますね。
その指輪は今どこに?さあ覚えてませんね。
亡くなられた時の遺留品は…。
警察から受け取ったものは全部娘の部屋に保管してあります。
念のために拝見してもよろしいでしょうか?ええ構いませんよ。
自宅は最上階です。
家政婦がいるんで連絡しときます。
家政婦…。
あの…奥様は?4年前に他界しました。
(家政婦)こちらです。
お手数おかけします。
広〜…。
失礼します。
あれ?もしかして開封せずにそのまんまですか?旦那様は全く興味がないようです。
親子関係そんなによくなかったんですか?私の知る限り他人同然でした。
終わったら声かけてください。
どうぞお構いなく。
(横山)あっ…。
彼氏ですかね?あっ…同じ指輪だ。
って事は…。
なんだよ現場にあったルビーは別人のものだったのか。
あっあのねこれ合成コランダムっていってルビーじゃないそうだよ。
言わなかったっけ?聞いてないっすよ。
あっよく見ると色が違う。
こっちの方がきれいじゃないですか?うん…。
横山君…。
(横山)はい?村木さんに連絡取ってもらえる?
(横山)えっ…村木さん!?うん。
(村木繁)こんなもの調べて本当に捜査の役に立つんですか?「行動せよ。
されば結果はおのずと与えられん」って誰かが言ってました。
勝手に経費使ってまた課長に叱られても知りませんよ。
それとこの2つの宝石の鑑定も併せてお願いします。
全然聞いてないよ。
はぁ…。
よっおめでとう!おめでとう!おめでとうございます。
(拍手)何があったんですか?僕の後輩が婚約したそうです。
そうですかまた1人見送ったんですね。
余計なお世話でしょ。
大体僕の婚期遅れてるのはあなたのせいでもあるんですからね。
えっどうしてでしょう?どうして…?あなたが余計な仕事を持ち込む度に僕のプライベートタイムがどんどん削られてるの。
大丈夫ですよ。
村木さんには必ず神様がご褒美くれますから。
ね。
はぁ…。
よろしくお願いしますね。
(ため息)あなたにだけは言われたくない。
失礼します。
(池田洋司)いらっしゃいませ。
すいません池田洋司さんですか?はい…。
絵里と別れたのはもう2年も前ですよ。
この指輪を贈ったのは…これなんですが。
あなたですか?いいえ。
では誰から?絵里のお母さんです。
4年前に亡くなられた?そっちじゃなくてもう一人の…。
えっ彼女にはお母さんが2人いたの?あいつ生まれてすぐ今の両親に引き取られたんです。
その指輪と一緒に。
つまりこの指輪は絵里さんの産みの母親との思い出の品という事ですか。
そんなきれいな話じゃありませんよ。
(絵里)冗談じゃないっつーの。
お腹を痛めて産んだ子を平気で捨てるなんて最低だよ。
そんな母親こっちから願い下げよ。
高校を卒業する直前突然絵里さんはモデルになると言ったそうですがどうしてなんでしょう?さあ…知りません。
(仙堂)貝沼さんの新しい彼女一回り以上年下らしいですね。
しかもそれが自分の会社の売れっ子だったなんて大森さんもショックだったでしょうね。
私だったら相手に受けた仕打ち言いふらして人生ボロボロにしてやります。
(貝沼)いや…ちょっと待ってくださいよ。
明日辺り業界に妙な噂が広まってるかもしれませんね。
私を…脅す気ですか?貝沼さん何があったのか素直に話してくださいよ。
私ねモテる男見ると足引っ張りたくなるんです。
本当の事話してもらえませんかね。
(携帯電話の振動音)はいもしもし?
(仙堂)「貝沼が全部吐きました」
(仙堂)大森恵に恐喝を受けていたのは北原麻美の方で貝沼は支払いの肩代わりをしていたそうです。
恐喝って北原麻美は何か弱みでも握られてたわけ?2か月前彼女は仲間のモデルを階段から突き落としたそうです。
大森さんは貝沼の浮気相手を調べるためにオフィスに盗聴器を仕掛けたまたまその事実を知ったそうです。
(麻美)あいつさちょっとむかついたから階段の上から突き落としちゃった。
フフ…いい気味。
悪い子だね。
これで動機はハッキリしました。
これから北原麻美を署に連行します。
はい。
(森田)確かですね?皆さん一緒にいたんですね?なあ。
どうもありがとうございました。
こいつだけアリバイなしか…。
(カメラマン)はいじゃあいこう。
いいよ。
そうそう。
はいじゃあラスト。
いいね麻美ちゃん。
はいオッケー!
(麻美)ありがとうございました。
ちょっと一緒に来て。
すいません。
月島中央署の者ですが北原麻美さんいらっしゃいますか?
(スタッフ)麻美ちゃん…麻美ちゃんは?
(チャイム)
(エレベーターの到着音)ちょっと待て。
永井涼子だな?
(森田)一体なんのマネだ?
(ため息)大森さんを殺害しようとしたのはあなたなの?失礼します。
(永井涼子)あの女まだ生きてるんですか?悪運の強い女。
あなた自分が何をしようとしたか本当にわかってる?爆弾に使用した火薬は撮影所から盗んだものだな?
(森田)あんたはあの夜遠野麻理子の犯行現場を目撃した。
現場を爆発させたのは証拠を隠滅するためか?麻理子さんの様子がおかしかったのであとをつけたんです。
あっ…!
(涼子の声)その時火薬がある事に気づき私は倉庫を爆発させました。
(爆発音)麻理子さんには母の事で色々お世話になりましたから。
大森恵を殺害しようとした動機は?ちょっといいですか?
(横山)あっ…。
この子って…。
(森田)誰だ?長澤絵里さん。
1か月前に自殺をしたモデルさんです。
大森さんはこの子を階段から突き落としたのが北原麻美だという事を知って北原麻美を恐喝し始めた。
大森さんを殺そうとした事とこの子と何か関係があるの?あの女は最低です。
生きる価値なんてない。
(もがき声)話すわ!本当の事を話すから命だけは助けて!なぜ長澤絵里をあそこまで追い詰める必要があったの?私は悪くない。
悪いのは全部北原麻美よ!どういう事?
(恵)あの女が私から貝沼を奪ったりしなきゃ絵里を…絵里を追い詰める必要なんてなかったのよ。
絵里が自殺した原因を作ったのだって…。
そう。
あの女が階段から突き落としたりしなければこんな事にはならなかったのよ!
(恵の荒い息遣い)北原麻美…?なぜ長澤絵里さんのためにそこまで…。
あなたと長澤絵里さんはどんな関係なの?お母さんなんじゃありませんか?えっ?あなたは長澤絵里さんを産んだ実の母親なんじゃ…?どういう事?長澤絵里さんは生まれてすぐに今のご両親に引き取られてるんです。
20年前私は妻子ある男性の子を身ごもりました。
当時私はモデルになる夢をつかんだばかりの時でした。
でもどうしても産みたかった。
(涼子)生を受けた以上幸せになってもらいたかった。
だから…生まれた子を引き取ってくれる親を探してもらったんです。
その後私は事故で足が不自由になりモデルを引退しました。
そして同じ事務所に所属していた遠野麻理子さんの付き人になったんです。
ようやくその仕事にも慣れてきた頃ふと…娘に会いたくなったんです。
はいいくよー!はーい。
(カメラマン)よーし絵里ちゃん。
はい!
(カメラのシャッター音)
(カメラマン)いいねえ〜。
そうそうそうそう。
あご引いて。
そうそうそう!その帽子をしてみようか。
(涼子の声)20年ぶりに見た娘は不思議な事に私と同じ道を歩んでいました。
(涼子の声)違ったのは…彼女は若くして成功した事。
(涼子の声)私は陰で彼女を応援しようと思いました。
(涼子の声)でも…。
こんな話はもう…。
娘の復讐はまだ終わってないんです。
まさか…現場から北原麻美を連れ去ったのって…。
教えて。
北原麻美は今どこにいるの!?爆弾のタイマーは夜の7時にセットしてあります。
彼女に死の恐怖を味わわせ自分の罪深さを思い知らせてやるんです。
バカな事…!そんな事してもねなんの解決にもならないのよ!罪は償います。
死刑にでもなんでもしてください。
彼女を殺したら私も死ぬつもりだったんです。
唯一の気がかりだった母も亡くなったし。
もう思い残す事はありません。
永井涼子が言ってる事が本当だとしたら爆発まで3時間しかないぞ!あの様子じゃ恐らく嘘はついてないでしょう。
ああ。
じゃあとりあえず爆発物処理班に待機してもらってくる。
みんなは監禁場所の割り出しを急いでくれ!
(2人)はい!
(東)邪魔だよ!ああもう!糸村さん。
あれ?村木さん。
どうしたんですか?頼まれた遺留品の鑑定結果。
近くまで来たんでついでに届けにきました。
ありがとうございます。
ちょっと糸村君!また勝手に頼んじゃったの!?もう…。
村木さん本当いつもすいません!糸村が無茶ばっかり言って。
あっいや…。
捜査のお役に立つ事が我々の使命ですから。
ああ…。
ちょっと貸して!今見てるんでしょ…。
例の2つのルビーというか合成コランダム同じものでした。
色の違いは単なる汚れですね。
やっぱり…。
それからインクの方はフランスのレグラ社。
自社製品に合わせて生産している特殊なものでした。
レグラ社…?それからこの紙なんですが恐らくベッツィー社のものですね。
あああの…高い宝石で有名なとこ?そうそうそう!あの会社は契約書なんかに特殊な加工をしていまして水に浸すと社名が浮かびあがるんです。
子供の頃スパイ手帳とか…。
課長お願いがあります。
な…何?遠山君と仙堂君お借りしてっていいですか?えっ?なんで…。
はい行きますよ。
(遠山)課長すいません。
(仙堂)じゃあいってきます。
あっ…。
ありがとうございました。
忘れました。
村木さんチーフ出すぎてます。
(横山)森田さん!行け!先に行け!あっもしもし。
永井涼子が借りたレンタカーにホームセンターのレシートがあった。
日付は今日の午後1時。
監禁場所の近くかもしれない。
永井涼子を揺さぶってみてくれ。
(おびえる声)了解。
(ノック)
(筧)はい。
失礼します。
刑事さん?すいません。
筧社長に伺いたい事があります。
長澤さんが自殺する直前ベッツィー社からモデルの専属契約の話がきてますよね?あなたが長澤絵里さんを猛プッシュして来年度のイメージキャラクターに抜擢されたと担当者が証言してるんですけどね。
しかし契約の直前長澤さんは自殺し契約はご破算になってしまった。
確かにおっしゃるとおりです。
(筧)絵里にももう少し早くその仕事の話を知らせていれば死なせずにすんだのかもしれません。
長澤さん知ってたはずですよ。
えっ?なぜなら彼女はほんの一部分ですが契約書持ってましたから。
これはベッツィー社が契約書に使用している特殊な紙なんだそうです。
それからここに使われているインク。
これはあなたが今使っていたこのインクと同じメーカーのものでした。
(仙堂)筧さんあなた長澤さんが自殺した日に電話をかけてこう言ったそうですね。
「長澤絵里が投身自殺を図ったので契約を白紙に戻したい」と。
あなたなぜそんな事言ったんですか?なぜって…警察から連絡があって…。
担当刑事はその時名前は伝えなかったと証言しています。
いや正確には伝えられなかったんです。
なぜなら長澤さんはその時身分を証明出来るものを何ひとつ持っておらず偶然システム手帳に挟まっていたあなたの名刺の電話にかけただけだったんですから。
警察も名前を把握していなかったのになぜ長澤絵里さんが死んだと言えたんですか?永井さんお願い考え直して。
北原さんだって絵里さんが自殺するとは思ってなかったかもしれない。
もしかしたら良心の呵責に苦しんでるかもしれないでしょ?いいえあの女は人殺しです。
絵里から全てを奪い死に追いやったんです。
あの子がどれほどの絶望感で…。
(ドアの開く音)永井さん僕に3分だけ時間をもらえませんか?今さら話す事なんて…。
あなたは間違った復讐をしようとしています。
絵里さんは自殺をしたんじゃありません。
殺されたんです。
えっ…どういう事?犯人誰?じゃあ。
事務所の社長の筧です。
絵里さんをもう一度表舞台に立たせたいと思っていた筧は必死で営業活動を行い結果ベッツィー社との契約を勝ち取りました。
ところが絵里さんは…。
この仕事出来ません…。
お前何言ってんだよ。
ベッツィー社と契約出来ればもう一度トップモデルに返り咲く事が出来るんだぞ。
顔の傷だって整形でもメークでもどうにでもなるんだ。
いやそういう事じゃなくて…。
じゃあなぜだ?よその事務所に移るからか?
(絵里)え…?俺が知らないとでも思ってるのか!?お前が引き抜きにあってる事を。
違います!じゃあなぜこんないい話を断る!?俺をバカにするのもいい加減にしろ!絵里?絵里!絵里!
(涼子)どうして…。
どうして彼女は契約を断ったんですか?原因は恐らくこの指輪です。
これはあなたが絵里さんを手放した時に持たせてあげた指輪です。
絵里さんはこの指輪をいつも身に着けていました。
知ってます。
雑誌で見ましたから。
でもこの指輪が私からの贈り物だという事はきっと彼女は知らなかったと思います。
いえ絵里さんはこれがあなたから贈られたものだと知ってました。
絵里さんは自分の生い立ちを知ってました。
そしてあなたの事を恨んでいました。
ある時までは。
これは絵里さんの検視報告書です。
ここを見てください。
糸村君これって…。
はい。
絵里さんには妊娠中絶の経験がありました。
お相手は高校時代の恋人です。
すいません!俺嘘ついてました…。
(絵里)可哀想な事しちゃったな…。
私さやっとわかった。
何が?私を産んでくれたお母さん私を愛してたんだと思う。
幸せになってほしかったんだと思う。
だから諦めずに産んでくれたのよ。
私だって…本当はそうしたかったよ。
自分の子をギュッて抱きしめたかったよ…。
絵里さんがモデルになると宣言したのはその直後だったそうです。
ところがベッツィー社との契約書の中にはこんな一文がありました。
「契約期間中は当社のアクセサリー以外は一切身に付けてはいけない」これが絵里さんにとっては一番の問題だったんです。
それはどういう事ですか…?この指輪を着けて雑誌に載り続けていればいつか自分を産んだ人が気づいてくれるかもしれない。
会えるかもしれない。
そう思ってモデルとなり指輪を着け続けていた絵里さんにとってはこの一文はどうしても受け入れる事が出来ないものだったんです。
絵里さんは亡くなる直前まで希望を持ち続けていました。
いつかあなたに会えるという希望を。
絵里…。
どうして…?私は気づいてたのに…。
もうとっくに気がついてたのに…。
絵里ちゃん見て。
きれいね。
ねえ。
フフフ…。
絵里ちゃん。
きれいね…。
(笑い声)永井さん。
お願いです。
教えてください。
北原さんは今どこにいるんですか?今病院から連絡があって大森さんの意識が回復したそうです。
それから…これを。
娘さんの形見です。
あなたが持っていてあげてください。
ありがとうございます…。
甘っちょろいな水沢。
その甘さが悲劇を引き起こすって事にまだ気づかないのか?糸村。
お前もあまり調子に乗るなよ。
「秘密にしてる事とかってあります?」
(チャイム)「隠してる事みたいなね。
言っちゃおう!何かあれば…」「彼が…浮気してると思ったんですよ」「彼が?はいはいはいはい…」
(宗方咲枝)栞…入るわよ?栞?いるんでしょう?
(テレビの音声)あぁ…!栞…!
(パトカーのサイレン)
(仙堂卓巳)お疲れさまです。
(水沢響子)男女の自殺体?心中ですねえ。
遺書もありました。
(森田宗介)第一発見者は?あぁえっと…死亡していた女性の叔母です。
(遠山修介)その時の状況は…。
ゆうべから電話が繋がらなかったもんで…ちょっと様子を見に来たんです。
そしたらあんな事に…。
(遠山)彼女の親御さんは?いません。
あの子がまだ小さかった頃に母親が蒸発して…父親も5年前に病死したんです。
それからはずっと一人暮らしで。
(仙堂)あと…こちらで自殺が行われたようですが。
で身元ですが女性のほうがこの部屋の住人で宗方栞25歳。
新宿のクラブに勤務していたそうです。
で男のほうは…財布に免許証がありました。
汐見悟志23歳。
遺書は?あっえーっとですねこれですね…。
よいしょ!はいっ!「生きることに疲れました愛する人と天国に行きます」普通遺書ってさパソコンで書く?んー…まあ今時はこんなもんなんじゃないっすか?指紋は今調べてもらってます。
争った形跡はなさそうだな。
ええ。
室内はきれいなもんでした。
(糸村聡)ん…。
今日はちょっと早かったのね糸村君。
おかしいんですよねえ…。
何が?調理器具が何一つないんです。
包丁すらないんですよ。
そんなのたまたま料理が苦手だったとかそういう事じゃないの?でも…普通果物ナイフぐらいあるでしょう?事件と関係ないだろうが。
(横山恵一)糸村さん。
はい?男性の上着にこれが…。
ありがとう。
ん?プレゼントかな…?あっ鑑識さん。
はい。
これ開けてもいいですか?どうぞ。
ありがとうございます…。
ん?ああ…彼女にプレゼントしようとしたんですかね?でもだとしたらおかしいよねえ。
プレゼントなら心中する前に開けるはず…ですよね?知らねえよ!
(汐見徹三)孫の悟志に…間違いありません。
すみません…こちらの女性に面識は?いやありません。
ただ結婚したい相手がいるって話は悟志から聞いておりました。
そうですか…。
宗方栞さんとおっしゃるんですが…。
そうですか。
娘の葬式を出したばかりだっていうのに…。
今度は…孫まで…!2か月前に新宿で主婦が暴漢に殺害された事件がありましたよね?確かまだ犯人捕まってないわよね。
ええ。
あの被害者が汐見悟志の母親だったんです。
えぇ!?
(仙堂)宗方栞も両親がいなかったみたいだし2人とも境遇が似てますよね。
こちらの男性なんですが…。
そうです!この方です買っていかれたのは。
私が担当したんでよく覚えてます。
そうですか…。
はい。
これですね?同じ商品は。
(店員)ええ。
試してみてもいいですか?ええどうぞ。
これ原料はバラなんですよ。
そうなんですか。
ありがとうございます。
お好きですか?
(くしゃみ)あっ…この方このお店に来られたのはその時が初めてですか?いえ以前にも同じ商品を買われた事があるんで。
同じものを…?2人とも死因は頸部を圧迫された事による縊死だ。
遺書の血判も遺体の指紋と一致した。
解剖の必要もなさそうだし自殺と断定して構わんだろう。
(森田)捜査本部の設置は見送ろう。
そうですね…。
じゃあとりあえず捜査は切り上げて…調書だけまとめといて。
わかりました。
(東孝彦)いやー自殺で間違いないんだって?何より何より。
月島はさあほらもんじゃの町だからそうそう殺人事件ばかり起こってもらっちゃ困るんだよね。
自殺だって人が亡くなってる事には間違いないんですから署長。
あと調書を出して終了だよな?
(仙堂)ええ。
じゃあ今夜辺りみんなでどうよ?おっ!久しぶりっすねえ…。
最近でかいヤマが続いてましたしね。
森田さんと横山君の歓迎会もまだだしね。
おぉそうだったね。
えっ?森田さん完全に異動が決まったんですか?俺はまだ一課の所属だよ。
まあまあまあいいじゃないそういう堅い話は…ねえ。
あっじゃあ俺けんちゃんに予約するから人数どうなってたっけ?12345…。
課長。
彼で6人。
あと糸村さん…。
(遠山)汐見の勤務先で聞き込みをしてきたんですが上司も同僚たちもみんな今回の心中はおかしいって言うんです。
何?
(仙堂)確か汐見の勤務先って…。
イツビシです。
大手商社の。
汐見は資源開発のプロジェクトを任されていて数年後には海外勤務を約束されていた有望株だったそうです。
そんな男がキャリアを捨ててクラブのホステスと心中するなんてありえないって。
そうだったの?ええ。
それ…確かに違和感あるわよね。
しかも汐見には結婚を約束した相手がいたそうです。
だからそれがこの…宗方栞さんなんじゃないの?いいや違うんです。
全くの別人なんですよ。
(橘千晶)ありえない…心中なんて…。
年内には式も挙げようって式場も見学に行ったのに…。
じゃあ…彼がその…クラブの女性と…。
ありえません…!仕事の付き合いでそういう店に行った事があるって聞いた事があります…。
でも…4月から大きなプロジェクトを任されてはりきってたし残業続きでそんな暇あるわけないです。
彼ふた月前にお母さん亡くされてますよね?もしかして…それとこの事件って何か関係があるんじゃないのかしら?すごく落ち込んではいました。
母一人子一人でしたから。
それでも毎日メールはくれたし…来週の私の誕生日には一緒に過ごそうって私が驚くようなサプライズも用意するからって…。
誕生日…?じゃああれ…あなたへのプレゼントだったんですかね?
(横山)彼の上着のポケットに入っていたんです。
違うと思います…。
え?
(千晶)その香水…去年のクリスマスに彼からもらいましたから。
(遠山)この人なんですけどね…。
あぁ…あんまり見た事ないですねえ。
1〜2回は来た事あるかもしれませんけど常連さんじゃありません。
じゃあ栞さんには最近何か変わった様子はなかったかな?なんか悩んでる感じあったよね。
うん…。
なんかイトちゃん暗かった。
(遠山)イトちゃん?あの子の源氏名「ITOKO」っていうんで。
なんか…随分古風だねえ。
(遠山)ああそうですよねえ…随分渋い感じなんだね。
店長の趣味だから…。
私なんかKOMACHIですよKOMACHI。
私はYAEです!わざわざどうも…。
…で!彼女何に悩んでたのかな?多分彼氏の事だよね…?彼氏?はい…歌舞伎町のホストと付き合ってたんですけどこれが最低な男で…。
やっぱりこれ事件ですよ。
心中した2人とも別に交際相手がいたんです。
えっ!?しかもその彼氏ってのが怪しい奴で…新庄彰俊28歳。
歌舞伎町のホストクラブに勤務していますがちょうど事件の日から行方をくらませてます…。
事件の日から!?ええ。
課長こうは考えられませんかね?新庄は宗方栞が汐見悟志と浮気していた事を知って逆上して2人を殺害した!…で心中に偽装したって事?ええ。
(森田)だったら現場に争った形跡が残るはずだろう。
2人を殺害して首つりを偽装するなんて睡眠薬でも飲ませない限り不可能だ。
けど遺体から薬物反応はなかった。
お前ら刑事ドラマの見過ぎなんだよ。
じゃあ別の恋人がいた事をどう説明するんすか!?浮気をしていたからこそ罪悪感にかられて心中したって事も考えられるだろう!そりゃあそうですけど…。
他にもやる事は山ほどあるんだ。
このヤマは心中で決まりだ。
さっさと調書まとめろ。
はい…。
戻りましたー。
(くしゃみ)
(横山)どうしたんですか?それ。
ん?香水の試供品。
参考にっていくつかもらってきたんだけど。
いる?いいんですか!?
(遠山)おい横山!課長あの香水購入したのはやっぱり汐見悟志本人でした。
…となるとやっぱり気になるんですよねえプレゼントを渡しもしないで自殺するなんて考えられませんからね。
あっいやあの…。
あれ?仙堂さんそれなんですか?ちょっ…。
「心中自殺事件…」あっあれ?あっこれって…殺人事件でしたよね?いやそれは…。
(湯飲みを強く置く音)もうこんな奴放っとけよ。
俺は無駄な作業をするつもりないからな。
…んだよ!?あの態度!仙さん…深呼吸しましょう。
誰か大福食べますか?
(仙堂)いえどうぞ!仙さん…。
ああもう…。
栞さんって誕生日以外に何か記念日ってあったんですか?記念日…ですか?はい。
栞さんと一緒に亡くなった男性が…香水のプレゼントを持っていたんですね。
ですが栞さんの誕生日は半年も前ですしどういう理由でプレゼントを渡そうとしていたのかがわからなくて…。
さあ?それは…私も見当がつきませんけど。
そうですか。
(戸の開く音)
(咲枝)夫です。
あの事件以来ふさぎ込んじゃって店も開けられないような状態で。
栞さんを…かなり支援されてたって聞きました。
本当はあの人栞を養子にしたかったんです。
(咲枝)私らには子供がないもんですから印鑑彫りを教えて店を継がせたいって…。
でも今の若い子はこんな地味な仕事嫌なんでしょうねえ。
すぐに逃げ出しちゃって。
(宗方慶一)本当に馬鹿な子だよあの子は…!急に携帯も繋がらなくなってもう…こっちも連絡取れなくて困ってるんですよ…。
結構ケンカッ早かったって聞いたんだけど。
ここら辺じゃ有名ですよ。
あの栞って子にも時々手ぇ上げてたし。
なぁ!?あの子もよく我慢してたよな。
女にまで暴力振るってたのかよ…最低だな。
どこか新庄が行きそうな場所思いつかないかな?あいつと仲がよかった常連さんならいますけど。
住所と連絡先教えてもらえる?え?客の情報まで出さなきゃいけないんですか?営業停止には…なりたくないよねえ?店長。
やっぱ大手商社マンは読んでる本も違うな〜。
ああ〜すげえ…。
これ糸村さん英語の本ですよこれ!ジエコ…エコ…。
『エコノミークラッシュ』でしょ?アーロン・パウルズの。
すげえ!知ってるんですか?さすが糸村さん。
(横山)ん?汐見が生まれた時の写真ですかね?うん…。
古い写真は…これだけみたいだね。
でもなんでこんなもの持ってたんだろう。
(横山)変ですか?だって自分が生まれた直後の写真なんてそんな大事に持ってたりしないでしょう。
横山君持ってるの?はい!見せましょうか?うん。
あやっぱりいいや。
えっ?
(女性)今寝てます。
あの…本当にあの人が犯人なんですか?それを今から調べるんです。
(新庄彰俊)うわーっ!おい!なんだよ!新庄彰俊だな?ちょっと話を聞かせてもらおうか。
(峯岡愛)あの…すいません。
生活安全課の峯岡です。
どうした?
(峯岡)実は心中事件の女性から一度相談を受けた事があったので。
宗方栞に?はい。
ひと月くらい前から誰かにストーカーされてて…。
もう一度聞くから。
なんで逃げていたの?
(舌打ち)あいつが自殺した日に…これが送られてきたから。
「死にます。
今までありがとう」俺のせいで死んだと思われたくなくって。
ただそれだけです。
お前が彼女の死に関係してるんじゃないのか!知らねえよ俺は!あいつさ心療内科に通ったりしてもともとちょっと変だったんだよ。
心療内科?あいつ心中だったんでしょ?だったら相手の男の方が俺よりよっぽど怪しいでしょう。
ねえ。
(菊池強)なんでうちのヤマを森田さんが?まさか月島中央署でホシの手がかりでも?違うよ。
この現場で殺された女性の息子がうちの管内で心中事件を起こしてな。
状況だけ知りたくてな。
(ため息)事件は夜11頃この歩道橋の上で発生しました。
てめえ何口ごたえしてんだよ!
(汐見紀子)やめなさい!
(菊池の声)男女のケンカを被害者が止めに入ったんです。
それで男に逆ギレされて…。
うるせえババア!
(紀子)ああーっ!
(菊池)その日は祝日で人出も少なくてはっきりした目撃証言が出なかったんです。
それで容疑者を絞れなくて…。
どうもありがとう。
アリバイがあったか…。
ハァ…。
事件の日渋谷のパーティー会場で新庄を見たと複数の人間が証言したそうです!ああ〜絶対怪しいんだけどなぁ。
(ため息)で森田さんは何してんの?さあ今日は見てませんね。
何か調べてるみたいですよ。
えっ?汐見のICカード乗車券の履歴を入手しろって言われたんで今申請書書いてます。
ICカード乗車券?はい。
(遠山)課長。
いや〜新庄が言っていたとおりでした。
(仙堂)ええ?宗方栞は東銀座のハートメンタルクリニックっていう心療内科に通っていたようです。
(宗方栞)ずっと眠れないんです。
怖い人に追われていて。
でもそれ以上は言えないんです。
本当に困ってるんです。
怖い人?誰だろう?きっと新庄の暴力におびえてたんでしょう。
それと彼女3年前にも通院していた事があったようでその時の症状は先端恐怖症だったそうです。
えっ?センタン?
(仙堂)ああ箸とか刃物とか先のとがったものが怖いってやつ?
(遠山)ええ。
症状が重くなるとパニックを起こす人もいるみたいで彼女も当時は必死に治そうとしていたようです。
そういう事か!だからあの部屋には包丁もナイフもなかったんですね。
それに加えてまた気になる事見つけちゃったんですけど。
これ見てください。
この写真は汐見悟志が生まれた直後の写真なんですがこここの窓の外見てくださいこれ。
このままだと小さいんですけど…。
これ東京タワーですよね?でも汐見悟志が生まれたのは名古屋市の病院とされてるんです。
名古屋市から東京タワーってこれどう見ても見えませんよね?糸村さんこれ…光の加減で鉄塔が赤く見えてるだけでしょ。
うんそう見えるね…。
はい?仕事。
はい。
(ため息)えっ光の加減?これ…どう見ても東京タワーに見えるけどなぁ。
(村木繁)ええ?これが東京タワーに見えるかって?はい。
(村木)興味ないです。
いや興味あるかないかではなく分析をしてもらいたいんですよ。
糸村さん。
はい。
確かおたくの心中事件って捜査本部すら立ってないんですよね?みたいですね。
うちはねちゃんと本部が立った事件の仕事が山積みなんですよ!そんなもん調べる時間あるわけないでしょう。
「時間がない事を言い訳にするな。
言い訳にならないように有効に時間を使え」って言った人がいます。
じゃあそれ言った人に頼んでください。
はい。
じゃあお願いします。
ええ!?言ったの村木さんでしょ?えっ?本当?有言実行でお願いします。
宗方栞が心療内科で言っていた怖い人っていうのが一体誰の事だかもう一回身辺洗い直してみましょう。
(遠山)クラブの客だった可能性もありますしね。
ちょっと森田さん。
心中の線が濃いからって単独行動はやめてもらえませんか。
いや俺も心中の線は消えたと思ってるよ。
えっ?このヤマは偽装殺人の可能性が高い。
どういう事ですか?宗方栞はひと月前にうちの生安課にストーカー相談に来てる。
ストーカー?そのストーカーの特徴が汐見悟志に似てるんだ。
汐見はちょうどひと月前から残業が激減してる。
自宅で作業をしてると同僚には話してたらしいが真っ赤な嘘だった。
これカード乗車券の履歴?
(森田)ああ。
毎日のように宗方栞の勤務先と自宅付近を電車かバスで通ってる。
じゃあひょっとして怖い人っていうのは…。
汐見の事だろう。
汐見は同僚と行ったクラブで宗方栞と会ってそこで興味を持ったんだ。
(横山)でも汐見には結婚を約束した彼女が…。
異性として興味を持ったんじゃない。
母親を殺害した犯人として興味を持ったんだ!2か月前汐見の母親は殺害された。
(男)うるせえんだよ!
(紀子)ああーっ!
(森田の声)その時争っていた男女っていうのはこの新庄と宗方栞の事だったんじゃないのか?新宿中央署もまだ犯人は絞りきれてないわけですよね?どうやって汐見は犯人を?恐らく店に行った時に気づいたんだろう。
(森田の声)何気ない会話の中で宗方栞は自分がその事件と関係している事を話してしまった。
じゃあそれで汐見はストーカーを始めたって事ですか?ああ。
そして直接本人から事実を聞き出すためにマンションに押し入った。
(汐見悟志)夜分にすみません。
ちょっとお話を伺いたいんですけど。
(森田の声)最初から殺意があったわけじゃないはずだ。
だが宗方栞が抵抗した事で状況は変わった。
(栞の悲鳴)
(森田)そして気づいたら宗方栞は死んでいた。
いやでも現場には争った痕跡がなかったと言ってたのは森田さんですよ?殺害後に隠ぺい工作をしたんだ。
じゃあなんで汐見まで自殺を?
(森田の声)自分がした事の事の重大さに気づいて良心の呵責に駆られたんだ。
そして…命を断ったんだ。
確かにその説明だったら新庄がすぐに逃げ出した事も腑に落ちるわよね。
汐見の母親を殺した事がばれると思ったから。
おかしいと思いますよそれって。
びっくりした!
(森田)なんだと?その推理ですと心中を装った理由がわかりません。
「愛する人と天国に行きます」わざわざこんな遺書まで作って心中に見せかけたその理由はなんなんでしょう?いやそれはだな…。
おいおい君たちまだ心中事件の捜査してんだって?勘弁してくれよ。
森田君が前から言ってるようにねさっさと調書だけ出せばいいんだからさ。
それより今夜こそ行こうよ…。
(森田)とにかく裏付け捜査だ。
俺と糸村とどっちが正しいかすぐにわかる。
行くぞ。
(遠山)はい。
いや…ねえもう店予約しちゃったんだけど。
遺体司法解剖に回すよ。
ですね。
すみません。
解剖ってなんの?横山君僕らも行こう。
はい!いやちょっと…。
なんだ結構みんな忙しいんだね。
あの…話ってなんですか?あ…。
糸村さん聞き込みは…。
ああこれやっぱりバラの香りだ。
は?ちょっと失礼します。
ああ。
あの…彼からもらった香水つけてませんか?そうですか。
でも香水って人によって好き嫌いがありますよね。
なぜ彼はバラの香りを選んだんでしょう。
うちの祖母が生前小さなバラ園を持っていて…。
だから私も母もうちの家族はみんなバラが好きなんです。
その事を彼に話したらクリスマスにあの香水を。
かわいい!バラが好きって言ってたでしょ?わぁ〜いい香り。
まさか他の女性にも渡してたなんて思いもしませんでしたけど。
まだそうだと決まったわけじゃありませんよ。
あっそうだ今日はですねちょっとこれを見てもらいたくて来たんですが…。
彼は名古屋の病院で生まれたそうなんですがちょっと背景見てください。
東京みたいに見えるんですよね。
でも間違いなく彼のお母さんですし…。
名古屋の病院の写真だと思います。
そうですか。
ですよね。
ご協力ありがとうございました。
あっでもちょっと…。
どうかしましたか?この赤ちゃん…悟志君じゃないです。
えっ?前に赤ちゃんの時の写真を見せてもらった事があって。
でも確か髪の毛がなくてつるつるだったから2人で笑った記憶があるんです。
でもこれ…。
(横山)あっフサフサしてますね。
お母さんは間違いなく本人ですよね?とするとこの子は一体…。
(チャイム)すみません。
はい。
(徹三)「ああ突然すみません」わたくし汐見悟志の祖父ですが…。
この写真なんですが…。
これを悟志が持っていたんですか?ええ。
そうですか。
ああ多分これは娘が…悟志の母親が最初に産んだ子供だと思いますが。
いや〜腹減った。
ねえ私も。
何食べる?
(森田)新庄だな?なんだよ?俺はアリバイが証明されたんだろ?聞きたい事がある。
2か月前に起きた路上殺害事件についてだ。
(女性)キャーッ!なんか知ってるみたいだな。
来い!ああ糸村さん?写真撮った場所わかりましたよ。
「ああその件でしたらもう結構です」見当つきましたんで。
(村木)「結構?結構!?こっちはね…」寝る間も惜しんであなたのために調べたんですよ!?大体ね僕は…。
「あんなインチキな格言を言った覚えはない!」あっ村木さん?村木さん?安心してください。
村木さんに調べてほしい事はまだありますんで。
あっそうなんですか。
…ええっ!?合掌。
メス。
はい。
確かに1人は他殺の疑いが強いですね。
通常首つり自殺の場合は甲状軟骨いわゆるのどぼとけが折れる事はないんですが1人は完全に折れてますね。
やっぱり…。
悔しいけど森田さんの推理当たってますね。
ただ…もし他殺の疑いがあるとしたら女性のほうじゃなくて男性のほうですけどね。
男性?他殺の疑いがあるのは汐見悟志のほう?はい。
法学医がそう断言しました。
(遠山)でもそれだと森田さんの推理と逆じゃ…。
そんなはずあるか!新庄は黙秘してるが明らかに殺害事件と関係している。
俺の推理に間違いはない!戻りました。
(横山)お疲れさまです!
(仙堂)どこをほっつき歩いてたんですか?この写真の謎がようやく解けたんです。
(森田)おい!お前いい加減にしろよ。
こんなもんが事件となんの関係があるんだ?あったんですよ。
汐見悟志が持ってたこの写真…。
実は宗方栞さんが生まれた直後の写真だったんです。
どういう事…?つまり汐見悟志と宗方栞さんは姉弟だったんです。
姉弟!?ええ。
この母親は栞さんがまだ2歳だった時に夫の暴力に耐えかねて1人で家を飛び出したんです。
子供を残してですか?栞さんは夫がどうしても手放さなかったそうなんです。
泣く泣く1人で実家に戻ってその時にお母さんは気がついたんですね。
2人目の悟志君を妊娠していた事に。
平凡な名前だったので見過ごしていたんですが戸籍の上でも2人はちゃんと姉弟でした。
(横山)汐見悟志の母親は姉がいる事をずっと彼に秘密にしてたそうです。
2か月前に母親が殺害されて汐見悟志は遺品の中から初めてこの写真を見つけたんです。
自分の母親が見知らぬ赤ん坊を抱いている写真を見て汐見悟志はひょっとしたら自分には兄弟がいるんじゃないかと気がついたんですね。
それで宗方栞を捜し当てたって事?というよりは偶然出会ったんです。
あのクラブで。
でもどうやって自分の姉だってわかったの?源氏名です。
栞さんは自分の母親の名前を源氏名にしていたんです。
でも確か源氏名は「いとこ」だったよな?ええ。
(仙堂)汐見の母親の名前とは違うじゃないですかこれ。
紀子…。
それで紀子って読むらしいんです。
(響子・仙堂・遠山)えっ?珍しい読み方ですよね。
さっき店で聞いたらほとんどの客は間違えて「のりこ」って呼んでいたみたいです。
幼い頃に家を出て行ってしまっていたので母親の記憶はなかったでしょうが栞さんは自分の母親の名前で呼ばれる事でどこか親近感を得ていたんじゃないでしょうか。
紀子でーす。
よろしくお願いします。
(悟志)この漢字で「いとこ」って読むの?はい。
お母さんの名前なんです。
そこまではわかったよ。
じゃあどうして姉弟が心中しなきゃならないんだ?そうなんですよ。
すごく変なんです。
この遺書には「愛する人と天国に行きます」ってありますよね。
外国人ならともかく普通の姉弟がこんな表現使うでしょうか?確かに…。
それに「叔父ちゃん叔母ちゃんありがとう」…。
汐見悟志は叔父夫婦とは面識はないんです。
じゃあやっぱりこれを誰かが偽装したって事?
(物音)
(横山)村木さん…大丈夫ですか!?はい…こんにちは。
大丈夫です。
(横山)いやいやいや…大丈夫…危ない危ない危ない!
(村木)一睡もしてないからねちょっと…。
出ましたよ糸村さん。
私糸村じゃありませんけど。
(村木)うん…?あっ…。
い…いと…糸村さん…。
村木さん。
村木さん。
あっ糸村さん。
血判のために使った道具わかりました。
(遠山)血判?あの部屋にはナイフも包丁もなかったでしょう。
だから2人はどうやって指を切ったのかなと思いまして。
あのね…こういうのは科捜研の仕事じゃないんですけどね。
またまた…。
あの遺体の指の切り口から木材の成分が微量ですが検出されたそうです。
(横山)木材?うん。
ツゲの一種だそうです。
なので恐らく木材を削るための道具例えば彫刻刀とか…。
彫刻刀!?なんだ…そういう事か!だから犯人はこんな事書いたんですね。
どういう事だよ!?はい。
なんでしょうか?月島中央署の者なんですけどご主人いらっしゃいますか?ええ…。
あなた。
警察の方が…。
あなた?ちょっと失礼します。
おい!仙堂!待てコラ…!
(遠山)おいおとなしくしろ!離せ…。
(仙堂)おとなしくしろ!離してくれ…離してくれ…。
(ため息)あなたのこの彫刻刀の刃に微量ですが血液反応が残されていました。
黙ってちゃわからないんだけど。
栞さんはね怖い人に追われてるって言ってたの。
心療内科に駆け込むほど何かにおびえてた。
あなたは彼女の生活費を援助してたそうだけどそれと引き換えに彼女に肉体関係を強要していたんじゃない?すみませんでした…。
彼女の自殺を最初に発見したのはあなたね?
(慶一の声)仕事帰りに部屋に寄ったら死んでたんです。
ずっと彼女をもてあそんできたあなたは自殺の原因が自分だとすぐに気がついたはずよ。
(チャイム)ところがそこに汐見悟志君が現れた。
彼は自分が弟である事を彼女に告白しようと思って来たの。
ごめんください。
入りますよ…。
(悟志)うっ!うう…。
あなたはあたかも2人が心中したかのように偽装した。
偽の遺書まで作って…。
でもそれじゃあ遺書として真実味がないからご丁寧に血判まで押して…。
自分の仕事道具を使って指を切るなんて随分大胆だこと。
なかったんです。
あの部屋には何も…。
ナイフも…ハサミすらなかったんです。
最低ね。
あなた曲がりなりにも彼女の叔父でしょ?でも刑事さん聞いてください。
あの子の父親が死んでから私はいつも目をかけてきました。
仕事を教えてあの子に店を譲ろうとさえ思ってました。
けどそんなこっちの善意をあの子は何度も踏みにじったんです!無理。
私出来ない。
努力もしないで何を言ってるんだよ。
さあ。
無理なの。
何度言ったらわかるのよ!待ちなさい栞!恩をあだで返すような事をしたんです。
そんな事をされたら誰でも腹が立つでしょう!ふざけるな!森田さん!あの子はなあんたの恩に必死で報いようとしてたんだよ!暴力はやめてください森田さん!先端恐怖症だったの栞さんは。
それを克服するために心療内科にも通ってた。
だけどねどうしても治らなかったの。
彫刻刀を扱う仕事なんて彼女にとっては恐怖以外の何ものでもなかったのよ!そ…そんな…。
(チャイム)
(千晶の母親)「はい」月島中央署の糸村と申します。
(千晶の母親)「娘は休んでおりますが…」そこをなんとか…。
3分だけでいいんです。
お願いします。
悟志君と一緒に亡くなっていたのは生き別れた悟志君のお姉さんだったんです。
そんな大事な事なんで言ってくれなかったんだろう…。
悟志君はあなたの誕生日にびっくりするようなサプライズを用意しておくって言ったんですよね?はい。
それってきっとお姉さんの事だったんじゃないでしょうか?だって年内には挙式も決まっていたわけですしあなたをお姉さんに紹介しないわけにはいきませんからね。
自分の婚約者に会ってほしい…そうお願いするつもりで悟志君はお姉さんに会いに行ったんです。
でも何せ初めて会うお姉さんですしあなたの事をうまく紹介出来るかわからない。
そこで悟志君はこの香水を持って行く事を思いついたんです。
あなたの家族がみんな好きでだからあなたに贈ったこの香水はお姉さんも気に入ってくれると悟志君は確信していたはずです。
きっと悟志君にとってこの香水はあなたのイメージそのものだったんでしょうね。
そういえば彼よく言っていました。
ずっとお母さんと2人きりだったから結婚ももちろん嬉しいけど新しい家族が増える事もすごく嬉しいんだって…。
(千晶の声)たくさんの家族と一緒に食卓を囲むのが夢だったんだって…。
多分この香水をあげる事でお姉さんにも家族の一員なんだよって伝えたかったんだと思います…。
その小さな瓶には悟志君の家族への希望が詰まってたんですね。
2015/05/04(月) 16:00〜17:53
ABCテレビ1
遺留捜査3[再][字]
「ルビーの指輪」
「赤の香水」
詳細情報
◇番組内容
遺留品が語る、三分の真実—風変わりな刑事・糸村聡が帰ってきた!彼は事件現場に残された“遺留品”から声なき遺体が訴えたかったメッセージを読み取り、伝える…。
◇出演者
上川隆也、斉藤由貴、正名僕蔵、眞島秀和、波岡一喜、甲本雅裕、西村雅彦、三宅裕司 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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