佐野洋サスペンス「密会の宿7 奇妙な客が死んだ夜」 2015.05.05



隆:悠久の時が流れる古都鎌倉。
その山あいにひっそりと佇む隠れ家のような宿くわの。
誰が呼んだのか…密会の宿。
わけありの男と女の宿として有名らしく…。
ですが女将の桑野厚子をはじめとして私たち従業員にはそうした思いはなくごくごく普通の旅館として…
(千秋)女将さん!女将さん大変です!お客様とお客様がもめてそれに隆さんが巻き込まれて…。
(厚子)えっ!?
(悦子)ちょっとあなたね!落ち着いてくださいお客様…。
隆さんどうしたの?女将さんあの…。
お客様何か?
(悦子)何かじゃないわよ!この女私たちにわざと聞こえるように「あ〜やだ不倫のカップル。
ここは不倫専門の宿なの?来るんじゃなかった」って!あのそれは…お客様の聞き間違いではないかと…。
(留美)言ったわ。
正直な感想だもの。
ちょっと!お客様!言っときますけどね!私たちは不倫じゃないの。
れっきとした夫婦なの。
ね?あなた。
(佐久間)そう!夫婦。
(留美)ウソばっかり。
じゃそんなに怒ることないじゃない。
それに2人のつけてる指輪も違うし。
でもいいわ。
いまさら宿探すの面倒だし…。
お部屋案内して。
はい。
(勝江)どうぞ。
こちらへどうぞ。
はい…はいどうぞ。
悔しい!でもホントに私たち夫婦なんですよ。
わかってます。
すみませんご気分悪くさせて…。
隆さんお部屋は?萩の間です。
じゃ珠子さんお願い。
(珠子)こちらでございます。
どうぞ。
ごゆっくり!お荷物お持ちいたします。
(敏子)しかしなんなんですかねあの若いほうの女。
別に誰が不倫してようと関係ないじゃないですかね。
わかった!不倫で男に捨てられての傷心旅行。
センチメンタルジャーニー。
隆さん!敏子さんもそういろいろと詮索しないの。
(和江)ほらまた怒られた!キミってホント半人前ね。
番頭見習い君。
いや佐々木様…。
でも女将さんって大変ね。
いろんなお客様がいるから…。
あのそれで作品のほうは…。
全然ダメよ。
やっぱり作家と編集者じゃ使う頭の場所が違うのね。
でしょ!だったらここらでどうですかね…。
その…未曾有の大型新人でも発掘なさっては…。
アハハハハ!それってまさかキミのことじゃないわよね?キミそんな悪い冗談言うようなタイプじゃないもんね。
きつかったかしら?
このお客様は有名なミステリー雑誌の編集長をなさっている佐々木様という方でなんでも締め切りを守らない作家たちに呆れ一念発起して自分で書くとおっしゃってこのくわのに長逗留なさっています
(翔太)おじちゃ〜ん!おう翔太。
おかえり。
パイロットだよ!パイロット!パイロット?
(瞳)くわのの方ですか?はい。
先ほど電話した高橋ですが。
あぁ…どうも。
わかりづらいかと思って今お迎えにあがろうと思ったんです。
(勲)姉さん…本当に泊まるのかい?別に泊まらなくたって…。
お姉様?じゃあご兄弟で?私たちがどういう関係だろうとあなたに関係ないでしょ。
泊まると決めたんだからぐずぐず言わないでよ!姉さん!まいったな…。
すみません。
ちょっとケンカしていたので姉の機嫌が悪くって…。
あ…いえいえ。
どうぞ。
何か事情でもあるのかパイロットの方が制服でお泊まりになるというのが気になりました。
それと姉という人の不躾な態度。
そのときすでに恐ろしい事件は始まっていたのです
〜「命みじかし」「恋せよ乙女」〜いやらしい!おぉ…怖…。
ねぇそれでパイロットとしてどのくらい空飛んだの?そうだなぁ…5,300時間くらいかな。
すごい!お母さん聞いた?5,300時間だって!翔太いいかげんにしなさい。
お客様お困りじゃない。
すみません。
この子パイロットになるのが夢なんです。
いえいいですよ。
僕も翔太君と話をしていて楽しいんです。
子供の頃の自分を見てるみたいだ。
じゃあおじさんもパイロットになるのが夢だったの?あぁ。
努力したよ。
よしそこまでだ翔太。
お前もちゃんと努力しなくちゃな。
おじさん勉強教えてやるから。
さぁ行こう。
それよりおじさんも夢叶えたほうがいいんじゃない?小説家になるのが夢なんでしょ?あぁそうなんですか…。
いやその…なんというか…。
翔太お前余計なこと言うんじゃない!ヘヘヘ!まったね〜!おやすみ!おやすみ。
まったく生意気になって。
誰に似たんだかもう…。
きっと私でしょ。
あいや…女将さんが生意気とかそういうことじゃないんですよ。
(悲鳴)なに!?2階です!どうしたの?珠子さん。
わかりません。
今この部屋からいきなり悲鳴が…。
うわ〜っ!キャーッ!ごめん!どうかしてた!部屋間違えて…。
あなた!?バカね!だからお酒飲んでお風呂入っちゃダメだって!許さない!警察を呼んで!この男は私の布団の中入ってきて私の体を…!だから謝ってるじゃないですか!信じてくださいよ!ホントに私は部屋を間違えただけなんだ!ちょっと待ってください。
詳しいお話聞かせてもらえますか?冗談じゃないわ!私は体を触られたって言ってんのよ!この旅館はチカンの味方なの!?そうじゃないですけどちゃんとした事情をお聞きしないと…。
なに黙ってんの!ここを治めるのがアンタの役目でしょ!あの…お客様…ですがあの…その…酔っていたりですね心神耗弱の場合ってのはその行為を犯罪として立件をするってのはとても難しいことでして…。
あっそう。
この旅館じゃチカンをされた私のほうが悪者なのね。
いや…。
どの顔もつまらないことで騒ぎたててって顔に書いてある。
もういい!出るとこ出て話し合おうじゃないの!み〜んな共犯で訴えてやる!
(勲)よせよ姉さん!この人も謝ってるんだ。
いいじゃないかもう。
あなたまで…。
あそう!こんな旅館いられない!帰る!姉さん!ホントに…ホントに申し訳ない!いいですよ。
はぁ〜姉は一度言い出したら聞かない人間です。
チェックアウトお願いします。
本当に申し訳ございませんでした。
ご気分を害してしまって。
でも翔太君に言っておいてください。
キミと話ができて嬉しかったって。
あっはい。
いい方ね弟さん。
ですよね。
背は高いしかっこいいし。
もっともめればいいのに。
〜うわ〜っ!キャーッ!〜おいどうした!おいしっかりしろおい!おい生きてる?どうした。
くわのに殺された…。
何だってえっ?くわのに殺された。
(サイレン)〜
(番場)はいご苦労さん。
あなたが第一発見者ですか?はいそうです。
でどういう状況だったんですか?ええここにおられる女性の方が死ぬ間際に「くわのに殺された」って言いました。
くわのに殺された?本当に彼女はそう言ったんですか?ええ間違いありません。
はっきりとくわのって言いました。
くわのってこの上の旅館ですよね。
ああ。
(六波羅)バンバさん!あっ?バンバじゃない番場だよ。
すみません。
何だ?これ見てください。
えっ?おおみごとな彫りもんだな。
昨日はホントにお騒がせいたしました。
またのお越しをお待ちしております。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
〜この人たちは?今朝発見された遺体です。
死因はおそらく崖の上から落ちたときの脳挫傷。
女性のほうは発見されたときまだ息が残ってたらしくてちょっと言いにくいんですがね「くわのに殺された」と言ったそうです。
えっ?ちょっと待ってください番場さん。
まさかそれ信じてんじゃないでしょうね?うちの人間に犯人がいるって。
いやそうは思いたくないけどさ。
一応はお前を筆頭として女将さんと従業員の夕べの8時以降のアリバイを聞きたい。
ちょっと調べて。
はい。
それと宿泊客の名簿を見せてもらいたい。
ええ。
あのでもほとんどのお客様がもうお帰りで。
ああそうですか。
あっ私いますけど。
あなたは?こういうもんです。
月間ミステリーワールド編集長佐々木和江さん。
職業柄っていうわけじゃないんですけど詳しく聞かせていただけませんか?あっもちろん私にはアリバイがあります。
部屋でずっと書きものしてましたから。
佐々木様あの昨日うちに来られたパイロットのお客様とお姉様が亡くなられたようなんです。
お前なんでパイロットだってわかったんだ?その制服からか?しかしパイロットはこんな刺青なんかしてない。
あら!あっ!うわっ!女将さん。
何か気づいたことあったら何でもいいですから言ってみてください。
私にはそんなウソをつくような人には見えませんでした。
刺青してたなんて…。
そうですか。
コイツヤクザだったんですか。
(勝江)私も変だと思ったのよ。
(珠子)私もね何かあると思ってたんですよ。
で問題はなぜこの女性が「くわのに殺された」と言ったかだ。
(山形)やはりこの宿泊客の中年男が怪しいんじゃないですか?恥をかかされ追って行きカッとなって殺した。
いや自分はですねこの男がこの女性に暴行を働いたんじゃないかと思います。
このスタンガンには女性の指紋だけが残っていましたし男の目のあたりにはこのようにスタンガンをつけられた痕があります。
じゃあ何か?男が女に暴行を働こうと思ったが思わぬ抵抗にあって転落した。
その線か?はいそうです。
じゃあなんで女は自分に暴行を働くかもしれない男とくわのに宿泊なんかしたんだ?しかも姉とパイロットに偽ってだよ。
いやそれは…。
なんだそれだけかお前。
情けねえな。
謎の多い事件だな。
なぜパイロットの制服を着ていたんだ?はい。
いずれにしろ身元が明らかにならないことには。
はい。
主任!男の身元が判明しました。
わかったか!犯歴カードの指紋と遺体の指紋が一致しました。
元銀友会構成員篠原勲…おい山形!はい。
すぐにこの男当たってくれ。
はい。
他の者はこの女性の身元を割り出す。
始めてくれ!
(一同)はい!
(ノック)はい。
失礼します。
篠原勲と一緒に暮らしていた内藤由香里さんです。
確認していただけますか。
篠原さんに間違いありませんか?なんでなんでなの?勲!勲!勲!バンバさん。
番場だよ。
あっそうでしたすみません。
亡くなった女性の身元がわかりました。
そうか。
由比ヶ浜のイタリアンレストランのオーナーシェフの奥さんで根岸瞳さん37歳。
あちらがご主人の根岸さんと瞳さんの友人でレストランの経理を手伝っている小島郁美さんです。
あっどうも捜査主任の番場です。
早速で申し訳ないんですけどもこの写真の男に見覚えありませんか?ありません。
あっでも…。
えっ?妻は半月くらい前からヤクザみたいな男につけ回されてるって言ってました。
つけ回されてた?だけど私は仕事に忙しく妻の話に耳を傾ける余裕がなかったんです。
だからこんなことに…。
私知ってます!この男の人。
本当ですか!?間違いありません。
瞳この男につけ回されてるって言ってました。
私と一緒にいるときもそうでした。
瞳行くところ行くところにこの男がいて怖いって。
おい山形!別のところへ移して。
ウソよ!そんなのウソ!刑事さん!この人ウソ言ってる!勲は女の人なんかつけ回さない!本当のこと言いなさいよ!言って!本当のこと!奥さん!ちょっと落ち着いて!奥さんも見たでしょ?ご主人の額のところには根岸瞳さんの持っていたスタンガンで傷つけられた痕が残っていたでしょ。
そうだよ!瞳は何かあったら困ると思ってスタンガンだけは持ってたんだ。
身を守ろうとして瞳は…。
この男に殺されたんだよ!ウソ…そんなのウソ…。
信じたくない…。
おいおい!向こうにお連れしろ。
さぁ奥さん行きましょう。
勲:ほら!なぁに?これ!結婚指輪だよ安物だけどな。
俺も持ってる。
あれ?入んねえ指太すぎて。
チッ!ちくしょう!ダメだな質流れ物は。
大丈夫よ!広げればちゃんと使えるわ。
でも…金かかんだろ?そういうの。
よしっ!それじゃそれまではこれは俺のお守りだ。
今はこんな安物だけどよそのうちちゃんとしたのを買えるように俺頑張るから!この指輪に約束するよ。
生まれ変わったように頑張るから!勲…。
篠原様?いえ昨日そのようなお名前のお客様はお泊まりになってませんが。
泊まってはいないと思うんです。
途中女性の方と一緒に帰ったパイロットの格好をした。
え…パイロット?女将さん!こちらの方が昨日来られたパイロットの方のお話をお聞きしたいと。
え?失礼ですけどあなたは?勲とは一緒に暮らしていました。
お願いします。
あの人がここに来たときどんな様子だったのかそれを聞かせてください。
私信じられないんです。
なんでパイロットの格好をしてたのか?そんな女の人と一緒だったのかを。
警察は勲がその女の人をつけ回し暴行しそれで誤って崖から落ちたんじゃないかって。
警察はそんなふうに…。
お願いします!私あの人がそんな人間じゃないってことをどうしても証明したいんです。
あの人がどんな様子だったのか聞かせて…イタッ…。
大丈夫ですか?お客様!ちょっと大丈夫?隆さん救急車!女将さんどうしたんですか?この方。
救急車早く呼んで!はい!大丈夫ですか?精神的ストレスから内臓にかなり負担がかかっているようです。
お腹の赤ちゃんのこともありますから入院してしばらく様子を見てみましょう。
そうですか。
ありがとうございました。
どうでした?流産する一歩手前だったって…。
でもなんとか無事で。
そうですか…。
なんだか心配で。
由香里さん!何してるの!?やめなさい!死なせて!死なせてください!生きてたってしようがないんです!何言ってるのよ!あなたのお腹の中には赤ちゃんがいるのよ!勲さんとの大切な赤ちゃんでしょ!そう…大切な赤ちゃん。
でも勲にとっては違ってたのかもしれない。
今日病院に行ってきてわかったの。
赤ちゃんができたのよ。
勲お父さんになるんだから。
俺が…本当か!?やった!なぁ産めよ。
産んでくれ!俺絶対やり直すから。
ちゃんと真面目に働くから産んでくれ!全部ウソだったのかもしれない…。
その指輪は?勲にもらったんです。
勲も同じもの持ってて。
お守りだからって。
そう…ステキなお守りね。
そのときの勲さんの気持ち今でも信じていいと思う。
私から見ても勲さん悪いことするような人に見えなかった。
うちの子と遊んでくれてとってもきれいな爽やかな目をしてたわ。
私もそう思うわ。
悪いのはあの娘よ。
あの娘性悪なのよ。
あの娘って?あの娘じゃわからないわよね。
勲さんの姉を名乗ってた女。
あの女が何か勲さんを悪いことに巻き込もうとしてたような気がする。
由香里さん今はお腹の赤ちゃんだけのことを考えて。
あなたと勲さんの大事な赤ちゃんでしょ。
勲さんの身の潔白は私がきっと証明する!女将さん…。
私も協力する!だけどさ何の手がかりもないんでしょ?ありますよひとつだけ。
その殺された根岸瞳って女が言い残した「くわのに殺された」って言葉。
それよそれ。
私アリバイあるからね。
(笑い声)誰も勝江さんを疑ってなんかいませんよ。
バカねウチの連中はみんなあるのよ。
ないのはお客様。
みんな部屋にいたって言ってるけど誰も証明できる人間いないでしょ?そうそう。
それにほら瞳って女の部屋に間違って入り込んだ酔っ払いの中年親父!
(敏子)そうそう!そうそう!あの親父だって一緒にいた女と示し合わせれば殺すことだってできますよね。
(勝江)だけど部屋間違えてバカにされたって殺す?
(笑い声)
(珠子)そんなんで殺すわけないじゃない。
あの中年男タヌキだなんて言って食事もしないでお酒ばっかり飲んでるからいけないのよ。
タヌキ?ねぇ珠子さん。
今のホント?あのお客様がタヌキって言ってたって。
ええ…おっしゃってましたけど。
そう…同業者だったんだ。
あの人…。
女将さんなんでタヌキで同業者だと?カタカナでタヌキって書いてみて。
カタカナで?うん。
タヌキ。
ああわかった!「タ」ってのはつまり「タ」じゃなくて夕方の夕つまり夕食抜きってことですか。
そういや仲居さんたちが隠語を使ってるの聞いたことありますよ。
それで同業者じゃないかと思ったわけ。
それで旅館組合の会員名簿を開いてみたら飯山温泉にいたのよあの人が。
同じ顔して写真に載ってた。
うわっタヌキでかっ…。
これがその旅館ですか?ええ。
いらっしゃいませ。
どうも。
あっ…。
あっ!あの…ちょっと…ちょっといいですか?ちょっとあの…ちょっとお客様よろしいですか?もう随分捜したんですよ。
こちらにいらしたんですか。
いえ…その…あの…。
ちょっとお話聞きたいんですよ女将さん。
いいですか?
(克代)どちらさま?この旅館の女将は私ですけど。
えっ…。
えっ…あっ…その…。
あっ佐久間様!お久しぶりでございます。
お久しぶりです。
奥様ですか?ええそう…夫婦です。
私日頃から旅館組合でお世話になっております桑野厚子と申します。
旅館組合?ええ…あの今日はうちの番頭と近くを通りかかったもんでぜひご挨拶にと。
それはどうも。
ありがとうございました。
でご商売のほうは最近うまくいってますか?ええ。
もう順調ですはい。
おかげさまで。
順調で?それはよかった。
いやまいったよ。
なんとか女房はごまかしたけどなんでこんなとこまで来るのよ?あっ…まさか私の不倫を脅そうと思って…。
そうじゃないんです。
実はあの日の翌日近くの崖下であなたが部屋を間違った女性とその弟だって名乗っていた男の遺体が発見されたんです。
殺されたっていう可能性もあるんです。
新聞で読んだよ。
でもまさか私が殺したと思ってるんじゃ…。
そんなこと思ってません。
ただ警察にはあなたとそのお連れの方の話はしなくてはいけないと思ってます。
まいったな…。
女房だけにはバレないようにしないと…。
それで私たちあなたが部屋を間違ったときのことを詳しくお聞きしたいんです。
あああんときね。
変だったよ確かに。
俺が布団の中に潜り込むと…。
やっとその気になってくれたのね。
だからあのお金は2人で山分けしようって…。
誰?キャ〜ッ!!であの騒ぎになったんだよ。
ちょっと女房が…ちょっと…。
やっとその気になってくれた。
あのお金は2人で山分けしよう。
やはり篠原勲って男は根岸瞳と何かの犯罪に加担をしてたんですよ。
でそのお金の分配をめぐってもめた。
そうかしら…私にはそんなふうに…。
第一何よりあのパイロットの格好をしてたのが犯罪者くさいじゃないですか。
どっかで誰かを騙したんですよ。
俺はパイロットだ。
結婚しようとか言って。
そうですよ!それならすべて辻褄が合います。
その結婚詐欺に加担したのが根岸瞳っていう女だった。
女将さん。
和江さん。
女将さん…つかんだんです。
あの勲さんていう人がパイロットの制服を着てた理由。
ホントですか?やっぱり結婚詐欺ですか?それはわからないけど…あっ…ごめんなさい。
気になって宿帳見ちゃったんですけど…。
あっ覚えてるでしょ?あの2人の名前。
え〜と…高橋貞雄さんと光子さん。
うんそうそうそうそう。
和江さん。
あっ…ごめんなさい。
でも気になって本当に高橋貞雄っていうパイロットがいるのかどうか調べたんです。
そしたら本当にいたんです。
高橋貞雄っていうパイロットが。
それにそのパイロット7年前姉の光子っていう人と交通事故で亡くなってるんです。
7年前に亡くなった2人?じゃあ幽霊ってことですよね。
(継男)うるさい!ほっといてくれ。
(沢野)私は伯父さんと伯母さんが心配なんです。
恩着せがましいこと言ってどうせ金の無心だろう?いいから帰ってくれ!すみませんあの…高橋継男さんですか?はあ。
パイロットだった高橋貞雄さんのお父様の?お宅らは…。
あの私北鎌倉で「くわの」っていう旅館を経営している桑野厚子と申します。
実はお宅の息子さんの貞雄さんの名前を使って…。
やめてください。
妻を部屋へ連れて帰りますからそのあとでお話を。
部屋に戻ろうか?
(キヨ)どうしたの?あなた。
貞雄と光子がまた来てくれたの?あの子たちホント優しいわ。
とってもいい子。
どういった理由であの2人はお子さんたちの名前を?ご覧になったでしょう?うちの家内を。
認知症が進んで7年前に亡くなった息子や娘たちはまだ生きてるって信じてるんです。
家内はあと少ししか生きられません。
だからその夢をわずかな間でも見させてやりたかった。
勲:俺が似てる?そっくりなんだ。
瓜二つと言ってもいい。
私は7年前に亡くなった息子が生き返ったのかと思った。
私もそうらしいの。
お嬢さんにそっくりだって町で声かけられて…。
ねっ人助けだもの。
やりましょうよ。
あなたと私で息子と娘になってこの人の奥さんを励ましてあげましょうよ。
もちろんタダではない。
それなりの謝礼はさせてもらう。
こういうやり方は嫌いなんだが。
100万円…それであの2人はあなたの息子さんと娘さんになって…。
ええ。
家内は無邪気に喜んでくれました。
あの2人を本当の息子と娘だと信じ切っていた。
嬉しかった。
あんな家内を見るのは7年ぶりです。
娘と息子が亡くなってから家内は生きる気力を失っていたから。
でもひょっとしたらあの2人が亡くなったのは私のせいかもしれない。
どういうことです?それ。
(継男)そんなことを二度ばかり続けてもらった前回あの2人が帰ったあと家内のキャッシュカードがなくなってるのに気づいたんです。
キャッシュカード?5,000万くらい入っていたかもしれない。
家内はあの2人に渡したんです。
暗証番号を教えこの金を使ってと。
もちろんお金は墓場まで持っていけない。
だからその金は家内が好きなようにしていいんです。
でもひと言あの2人からこの私に何か言ってくると思ってたんです。
でも何も言ってくれない。
電話もかかってこない。
じゃあやっぱりそのお金分け方もめて…。
それで警察には?届けてません。
とにかく心のどこかに信じたいって気持ちがあったのかもしれない。
俺もうじき子供が生まれるんです。
アンタたちのお子さんってアンタたちの子供に生まれてよかったって本当に思ってると思うんです。
だから俺もそう思われる親になりたい
(継男)そう言ってくれた。
本当に本当にそう言ったんですね勲さんは。
ええ。
やっぱり勲さん心から子供が欲しかったのよ。
その言葉にウソはなかったんだわ。
そうね間違いないと思う。
でもキャッシュカードは返してない。
生まれてくる子供のためにそのお金が必要だって思ったのかもしれないじゃないですか。
そしてそのお金を独り占めしてもめて…で亡くなった。
そんな…。
でも今高橋さんから聞いた言葉は由香里さんに伝えてあげるべきだと思う。
あなたたちの子供に生まれてよかった。
そう思われる親になりたいって。
でも隆さんが言うとおりキャッシュカードのことは…。
彼女死のうとしたのよ。
愛する人を失い心の支えをなくしその上勲さんが犯罪者じゃないかなんて言われてそんな絶望的な気持ちのままほっとくの?私にはできないわ!佐々木様のお気持ちはわかりますよ。
でも…。
わからない!わからないわよあなたたちには。
〜私ねたった一人の弟が10年前身に覚えのない罪を着せられて自殺したの。
そのときの悔しい気持ち悲しい気持ちあなたたちなんかにわかりっこないわ。
でも私には打ち込める仕事があった。
逃げ込める場所があった。
だけど彼女には…。
和江さん…でも由香里さんには赤ちゃんがいるわ。
赤ちゃんのためにも生きてもらわなくっちゃ。
その赤ちゃん勲さんが心から待ち望んでいたんだっていう話をしてあげて。
ねっ?〜
(由香里)それでパイロットの格好を…。
そうなの。
その高橋さんも言ってたけど勲さん生まれてくる子供のこととっても楽しみにしてたみたいよ。
どうしたの?嬉しくないの?勲さん本当にいい父親になりたいと思ってたのよ。
じゃあなぜ死んだんですか勲は。
そんな認知症のおばあちゃんを励ますようないいことをしててなぜ勲は死ななくちゃいけなかったんですか?それは…。
はい。
(ノック)あれ?あなたさっき高橋さんと一緒にいらした…。
はじめまして。
私はこういうものです。
(由香里)経営コンサルタント沢野信一?この方たちから今お話があったでしょ。
私はその高橋という老夫婦の甥っ子です。
まあ甥っ子といっても実の子同然のようにかわいがってもらってますが…。
その伯母の5,000万のことであなたにお聞きしたいと思って来たんです。
5,000万?あっちょっと待ってください。
私たち由香里さんにはまだなんにも…。
あなたたちは黙っててください!私はこの人に聞いてるんだ。
あなたはその篠原勲という男から伯母のキャッシュカードを渡され5,000万を下ろした。
待ってください。
私には何の話だか…。
とぼけるんじゃない。
俺にはわかってるんだ。
ちょっとやめてください!まだ何も知らないんですから。
そうよ!まるでこの人が共犯みたいな言い方して!部外者は黙ってろと言ってんだ!言え…言ってくれ。
アンタが下ろしたんだろ?5,000万。
ちょっとやめてください!キャア!おい!おい!うちの女将さんに何するんだよお前!あっ!もしその女が持っていてアンタたちがかばってるんだとしたら俺は許さないぞ。
なんとしても金は取り返す。
覚えとけよ。
何なんだあれ!えぇ!?いったい何なんですか?わかってること全部話してください。
(由香里)そんなことが…。
ええ。
でもまだ勲さんが盗んだって決まったわけじゃないわ。
盗んだのは瞳さんで勲さんはおそらく止めたのよ。
あっ!そうだ沢野ですよ沢野。
ちょっと名刺いいですか?根岸瞳って人はくわのに殺されたって言ったっていうんでしょ。
そうじゃなくてこの沢野に殺されたっていうのと聞き間違えたんですよ。
あの男キャッシュカードを取り返そうとして2人を殺した。
でも勲やっぱり盗んだんですね。
ちゃんと生きてくれるって言ったのに。
由香里さん。
待って!これ!それ勲の…!どうして勲の指輪がここに!?あっあの男ほらさっき上着落としたときそこに!じゃああの男が犯人!?それあのありますよあります!あの十分ありますよ!このことは私から番場さんに報告しとくわ!きっと勲さん犯人じゃないわよ!よしよしよし…。
「さわの」「くわの」よしバッチリだ!よしよしよし…!
(勝江)何ブツブツ言ってんの!お疲れさまです!ちょっといいですか皆さん。
聞いてください!「くわのに殺された」の謎がわかったんですよ!さすが隆さん!謎って何?沢野って男なんですが!さわのって誰?いやですからあの日にくわののまわりをうろついていた怪しい男が沢野っていうんです!いいですか聞いてくださいよ!「くわのに殺された」。
「さわのに殺された」。
「くわの」「さわの」…。
聞き間違えたんですよ!しかもねその沢野って男は病室に乗り込んできたりしてほんと怪しい男なんですよねっ!
(勝江たち)ふ〜ん。
バンバさんバンバさん…バンバさん!「番場」さん。
すみません。
高橋キヨさんのキャッシュカードなんですが篠原勲と根岸瞳の遺体が発見された日の昼過ぎ全額別の口座に振り込まれてました。
全額って5,000万まるまるか!?はい!そのキャッシュカードなんですが高橋キヨさんの会社名義の法人キャッシュカードだったんですよ!高橋さん夫妻は昔手広く商売をやっていてキヨさん名義の会社がひとつ残っていたようです。
巧妙なやつですよ〜!振り込まれたのは全額架空名義の口座だったんです。
そしてこの何日間かの間にその金はすべておろされて…。
う〜ん…。
あそうだそれとですねこれがそのときの防犯カメラの写真です。
ん!?これは…!この男に殺されたんだよ!
(根岸)どうしたんです?事件のことで何かわかったんですか?いやまだなかなかちょっとね。
しかしいいお店ですなぁ!レストラン経営もなかなか大変でしょ?しかしあなたには失礼ながら3,000万の負債があったとか?それならメドはつきましたよ!貸してくれる友人がいたんです。
ほうどなたが?なぜそんなこと答えなきゃいけないんです。
プライベートなことでしょう。
それと妻の事件とは何か?じゃあひとつ仮説を言ってみましょうか。
あなたは篠原勲さんとあなたの奥さん根岸瞳さんが手にした高橋キヨさん名義のキャッシュカードを盗んだ。
何の話ですか?私にはさっぱり。
六波羅。
はい。
これあなたの手ですよね?このホクロ。
あなたのこの右手。
こんなホクロのある人間は何万といる。
第一なんでこんな写真見せられるのか。
まったくわけがわかりませんね。
そうですか。
それじゃあ篠原勲さんとあなたの奥さんが亡くなった日の夜8時以降のあなたのアリバイを聞かせてもらえますか?あの日ですか。
あの日は瞳が帰ってこないので心配しながらただ待っててもしようがないので郁美君を呼んで帳簿の整理をしてましたよ。
朝の5時頃までかかったかな。
(番場)あなたと根岸さんとはレストランのオーナーと経理ですよね?でもなんか特別に親しい関係にあったようですね。
何しろ朝5時まで2人でずっと一緒にいたんだから。
私と瞳は親友です!私は親友を裏切るようなことはしません!男と女の関係だと思うのは刑事さんたちの邪推です!そうですか?でも我々の掴んだ情報によると本当はあなたが根岸さんと結婚するつもりでつきあってたんですよね?ところが瞳さんに紹介した途端に瞳さんの持ち前の積極的なアタックであなたは根岸さんを瞳さんに取られてしまった。
ごめん!こういう仲になっちゃった!郁美はモテるんだからもっといい人見つけて!
(郁美)それは昔の話です!今はそういう関係じゃありません!でも根岸さんからアリバイをつくってくれと頼まれたらあなた断れませんよね?そんなこと頼まれては…!そうですか。
六波羅教えてやれ。
(六波羅)午後9時頃この部屋のベランダで洗濯物を取り込んでいるあなたが目撃されてるんですよ。
それはそのときだけ部屋に戻ったんです!雨が降るかもしれないと思って!でもそのあとすぐ根岸さんのところに戻りました!本当です!アリバイの偽装工作…。
じゃないかって警察は考えてるみたい。
高橋キヨさんのキャッシュカードを奪うために根岸正彦と瞳が協力して勲さんを殺した可能性があるって。
だから勲さんの目にはスタンガンの痕があったし。
でキャッシュカードを奪ったあと根岸正彦は勲さんの犯行に見せかけるために瞳を殺害した。
でも「くわのに殺された」って言ってたんでしょ?その瞳さんって人は。
それはどう解釈するんです?聞き間違いじゃないのかな。
それにほら!あの指輪持ってた沢野信一って男も怪しいし!この事件いずれにしても金に目がくらんだ人間たちの起こした事件なんじゃないのかしら?あなたの勲さんは何にも悪くなくてキャッシュカードを奪おうとしたのは根岸瞳で勲さんはそれを止めようとしてたんじゃないのかしら。
ありがとうございます!私を励ますためにそこまで。
でも…。
はいもしもし。
くわのでございます!ああ和江さん?えっ!?由香里さんがいなくなった!?そうなの。
私が余計なことを言ったもんだから思いつめて何か行動を起こしたのかもしれないって心配になって…。
ええわかりました!私もすぐ捜します!お願いします!隆さんここお願いね!いや僕も行きますよ!ううんあなたには仕事があるでしょ!お願いね!いや…でも。
女将さんだって仕事あると思うんですけどね。
〜ひょっとしたら…。
〜花なんか手向けて懺悔のつもり?それで。
何言ってるのよ?私は別に懺悔なんか…。
わかってるのよ私には!あの根岸って男がうちの勲を殺し奥さんも殺した。
ねぇどうしてあんな男のアリバイを作ってるのよ!関係ないでしょ!本当のこと言いなさいよ!離してよ!言いなさい!私は何も知らないってば!何してるの!?由香里さん!ダメじゃない絶対安静にしてなきゃ。
先生にも言われたでしょ!ムチャしたらお腹の赤ちゃんが危ないって!お腹の赤ちゃん?あなたどなた?根岸って男のアリバイを作ってる人。
えっ!?誰なのよ?私この上でくわのという旅館をやっている者です。
痛い…。
大丈夫?由香里さん!私知らなかったんだってば!この人のお腹に赤ん坊がいたなんて知らなかったんだから!由香里さん立てる?大丈夫?すみません。
小島郁美さんですね?あなた誰よ?アンタ騙されてますよあの根岸っていう男に。
何を言ってるの?私はキャッシュカードに入っていた5,000万の正当な持ち主と言っていい。
伯母名義の会社はいずれ私に譲られ5,000万は私の手に入るはずだった。
知ってますか?あの根岸はあなた以外にも若い女をつくってますよ。
金のありか知ってるんだろ?5,000万が戻ったら当然アンタにも分け前やるよ。
それとも警察にバラそうか?どうしたんですか?何か?ちょっと気になったから。
大丈夫でしたか?あの人の赤ちゃん。
えぇなんとか…。
よかった…。
それじゃ。
ちょっと待ってください!何か話があったんじゃ…。
さようなら。
お休みなさい。
ちょ…あの!女将さん桔梗の間のお客様がお呼びなんですけど。
そう。
〜〜後頭部を鈍器で殴られそのあと首を絞められて殺された…。
死因は窒息死。
死亡推定時刻は午前10時から12時までの間か。
第一発見者?えぇ。
(山形)どうもご苦労さまです。
そのときの状況ちょっとお話しいただけますか。
私がですね犬の散歩でここを通ったときですねちょうどスーツ姿の男性がですねあのへんにいたんですよね。
それは何時頃ですか?11時頃だと思います。
確かにあの海岸に行きましたよ。
殺された小島郁美という女と会う約束をしてたんです。
でも彼女は来なかった。
なんで小島郁美さんと会おうと思ったんですか?その目的は?うちの伯母が奪われた5,000万を取り戻そうと思ってたんです。
私は私なりにいろいろ調べました。
間違いありませんあの根岸という男がキャッシュカードを盗ったんです。
だがアンタは自分に協力しようとしない小島郁美に頭にきた。
それで殺した。
違う!私じゃない根岸です。
あの根岸が裏切ろうとした小島郁美を殺したに決まってます。
私に罪をきせる形で…。
何なんですか?これは。
取り調べなんですか?これがなんだかわかるな?アンタの上着のポケットに入っていたものだ。
アンタは5日前根岸瞳と篠原勲が死んだ夜北鎌倉に行ったな?知りません。
なんの話です?とぼけるな!指輪なんて知りませんよ!
(ノック)はい。
(山形)番場さん。
女将さんどうしました?小島郁美さんが殺されたって聞いて驚いて飛んできたんです。
彼女のご遺体に会わせてもらえますか?いや…いくら私でも家族や捜査関係者でもない女将さんに会わせるわけには…。
郁美さんゆうべ私のところに訪ねてきたんです。
なんですって!?私があのとき引き止めて話を聞いてあげればよかったんです。
そうしなかったから…。
いやいや女将さんのせいじゃありませんよ。
そうかするとそのあとだな…。
小島郁美さんは根岸とその仲間たちとカラオケスナックでご機嫌に飲んでたらしいんですよ。
郁美さん何か思いつめてたのかもしれません。
だからそのつらい思いを忘れたくてわざとはしゃいでいたのかも。
郁美さん根岸に利用されてたんじゃないんですか。
ねぇ番場さん彼を調べてください。
もちろん調べましたよ。
でもね根岸には郁美さんが殺された時間に麻雀をしてたっていうアリバイがあるんですよ。
アリバイが…。
えぇ。
〜根岸の車ですかね?えぇ。
女将さん。
ん?砂?えぇ。
小島郁美はですね1か月前根岸正彦の子供をおろしてますね。
うん?それにですよ根岸はユカという若いホステスともつきあってるんですよ。
(番場)そうかぁ。
それで確かめようと思ったんだな。
自分がアリバイ作りやいろんなことに利用されてるだけなんじゃないかって。
こりゃ心配だな。
僕ですか?僕じゃないよ!女将さんだよバカだな。
そうですか瞳が最後にお世話になった旅館の…。
お店休んでるんですね。
しばらく休業って表に…。
ああリニューアルしようと思ったんですけどねいろいろ問題が起きましてね。
でももう大丈夫。
来月にはリニューアルオープンします。
目途ついたんですか資金の。
えっ?ほらあれですよあの高橋キヨさん名義の5,000万。
なに言ってるんだお前。
そんなことを言うためにここに来たのか!昨日殺される前に小島郁美さん私のところに訪ねてきてくれたんです。
あん?そして何もかも話してくれました。
何が真実で誰に利用されているかって。
バカな…ああなたたちカマかけてるんでしょ。
その手には引っかかりませんよ。
私にはアリバイがあるんだ。
郁美が殺された時間には富士見町で麻雀を打ってました。
郁美さんはすべてを話してくれたんです。
そしてこうも言ってました。
あなたに殺されるかもしれないって。
いい加減にしろよ!誰に頼まれたんだよ警察か!?あのさっきからすごい瞬きしてますよね。
人間てウソをつくと瞬きの回数が多くなるんですよ。
根岸さんあなた今ウソをついてるでしょねぇ?ウソなんか言ってない。
俺がドリンクを取りに行った時間はたった5分程度だよ。
郁美が殺された場所まで行って帰ってこれる訳ないだろ!なんだったら一緒に麻雀を打っていた連中に聞いてもらってもいいよ!そんなにアリバイに固執するってことはそのアリバイを我々が崩せばいいんですよね。
なんだと!?ああの外の車って根岸さんのですよね?そうだよだから何だよ?だからあのそのタイヤの溝に砂がいっぱいついてたんですけど…。
殺された小島郁美さん砂浜の近くで…。
隆さん!早く帰ってくれよ出てけよ!ちょっと車の中調べていいですか?何もないならいいでしょ!隆さん!返せよ!やめて離してください!おい何やってるんだ!番場さん!警察だ捕まえろ!番場さん!女将さん。
あの人の車調べてください。
絶対怪しいですから怪しいですよ!車を?はい。
女将さんちょっとムチャはやめてくださいよ。
私があなたをマークしてたからよかったものの。
また自分売り込んで。
何言ってんだお前は。
わかりました。
おい車を調べさせてもらうぞ。
鑑識に連絡しろ。
はい。
〜決まりだな。
はい。
(サイレン)アイツがいけないんですよ。
俺のアリバイを偽装したことを警察で話すなんて言うから。
女房を殺したって疑われるかもしれないから一緒にいたことにしてくれってあなた私を利用しただけじゃない!警察に言う。
行ってくる。
おいちょっと待て郁美!違うんだってば誤解だよ!離してよ!ちょっと話そう!なっ郁美!離して!頼むよ郁美!行ってくる!ああっ!おい大丈夫か郁美おい!ご用件をピーッという音のあとにお話しください。
沢野です。
どうです私と組む気になりましたか?明日もう一度話し合いましょう。
場所は材木座海岸の…
(根岸)それはあの金を取り返そうとしていた沢野って男の声だとわかったんです。
だから俺は徹夜で麻雀をし…。
勝ち逃げは許さないよ!
(根岸)あの男を郁美殺しの犯人にしようと思ったんです。

(根岸)そして駐車場でトランクの中の郁美の首を絞めて殺し…。
(番場)いかにも沢野が同じ時間にあの雑木林で小島郁美を殺害したかのように見せて逃げた。
お前は雀荘にいた。
死亡推定時刻のアリバイは完璧だ。
ハハハ…あの女将と若いヤツさえいなけりゃ…クソッ!それじゃ篠原勲とアンタの女房根岸瞳を殺し高橋さんのキャッシュカードを奪ったときの話を聞かせてもらおうか。
違うよあれは俺じゃないよ!俺が行ったときには2人は橋の下で倒れてたんだ!え…?俺は瞳から連絡をもらい金になる話があるから手を貸してくれと言われたんです。
半信半疑で俺はタカをくくって遅れていったんです。
そしたらあの橋の上に瞳のバッグやらバイオリンケースがあってまさかと思って橋の下を見たら…。
瞳!おい瞳しっかりしろ!大丈夫か瞳おい!おお瞳気がついたか大丈夫か?このバッグ持ってきてくれたのね。
ここに5,000万のキャッシュカードと。
5,000万!?暗証番号のメモが入ってる。
これか?お願い持ってて。
それで救急車呼んで。
ああ今呼んでくる!死にたくない。
いいかじっとして動くなよ!すぐ呼んでくるから動くなよ!
(根岸)でも俺は呼ばなかったんです。
ほっときゃ死ぬと思ったんです。
だから俺じゃないよ。
あの2人を殺したのは俺じゃないんだよ!おいそんなつまらないウソを俺たちが信じると思ってるのか?言え本当のことを!違うよウソじゃないよ!!おい静かにしろ!座れ!俺じゃないよ!
(和江)根岸正彦が犯行を否定してる?ええそうみたいです。
5,000万円のお金を引きおろしたことと小島郁美さん殺しは認めたけども勲さんたちを殺したのは自分ではないって。
それじゃあの男じゃないかしら。
勲さんの指輪を持っていた沢野っていう男。
勲さんともみ合って突き落としたときに指輪が入ったんじゃないかしら?ええ警察もその可能性はあるって。
だから引き続き取り調べを続けるそうです。
それから5,000万円のお金。
やっぱり瞳さんのほうが固執していてそのために夫の正彦を呼んだとか。
それってすごい朗報じゃない?私由香里さんの病院に行くからそれだけは伝えとくわ。
あちょ…和江さん!ああじゃあ。
まだくわのに殺されたっていうのが解決できてないのにな。
参った参ったこれで書こうなんて甘い甘い。
どうしたの?佐々木様の書きかけの原稿くず箱の中から見つけたんですよ。
これ文章は悪くないんですけどね素材がいまいち古くてね。
受験問題の漏洩事件で1人の講師が追い込まれて自殺をするんですよ。
それを姉の主人公がそこまで追い込んだのは真犯人の教授とその息のかかった若いホステスだって。
隆さんそれお客様のプライバシーでしょ?あなたいつからそんなの盗み見るようになったの?お部屋に掃除入ってくず箱見たところこれ…。
すみませんどうかしてました。
いいわ事件のこと相談しようと思ったけど私1人で行きます。
行くってどこ行くんですか?教えない。
ねえ瞳さんはここに倒れてたのよね?ええ。
悪いけど隆さんちょっとここに寝てくれる?はい。
それで瞳さんの最後の言葉言ってみてちょうだい。
くわのに殺された!う〜んやっぱり変よ。
何がですか?別におかしいことは…。
いい?自分はかすかだけどまだ生きてたのよ。
そんな人間が殺されたなんて言う?それはそうですよね。
でもあれじゃないですか?自分のことじゃなくて勲さんのことを指して殺されたんだと。
つまり犯人は勲さんを殺したあとに瞳さんをあそこから突き落としたってこと?そうなりますよね。
だから警察の言うとおり犯人は根岸正彦なんですよ。
根岸正彦は妻の瞳と協力しまず篠原勲さんをここから突き落としそのあとに妻の瞳も突き落とした。
だったらこう言うんじゃないの?うちの人にやられたって。
そうかそうですよね。
くわのに殺された結局くわのに殺されたって謎は解決しないのよ。
なんかイヤなのよね。
そのこと考えると胸のあたりモヤモヤしちゃって。
あだったら俺マッサージとかもんだりしま…。
すみません。
バカ何言ってんだ俺。
はあ頼りにならないわね。
いいわ今度はねひとりで考えてみるじゃあね。
あの女将さんあの!はあ…。
(彩乃)ねえどうしちゃったの?なに?さっきからため息ばっかりついちゃってさ。
あのねなんか胸のこのあたりがモヤモヤッとしてるのよ。
あ〜わかった。
恋とかなんとかしたくなっちゃってるのよ。
このあんみつのような甘い恋を。
あのねそういう気持ちはないの。
どうしてそういう発想になるの?私は事件のことを思ってるのよ。
つまんないわね〜。
彩乃さんまた新作食べにきちゃった。
いらっしゃいあれ今人気なのよゴーヤパフェね!オッケーオッケー!あっあなた!ごめん出直す。
ちょっと待ってちょっと待って!あの2人って知り合いなの?ねちょっと待ってね聞きたいことがあるの。
ねちょっと待ってください!なんなのよ話なんてないでしょ!あの日あなたが泊まった晩に…。
(留美)知ってるわよ事件があったっていうんでしょ?パイロットとその姉と名乗った2人を…。
おたくの旅館から追いかけてった人がいた。
その人が犯人なんじゃないの?おいかけていった人がいた?そうよ。
でも私顔は見てないわよ。
そのことを警察で話してもらえる?お願いします。
イヤよ!なんで私がそんなことしなくちゃいけないのよ?留美ちゃんあなたがこないだ言ってた文句つけた旅館ってくわのだったの?この女将さんと私親友なの。
厚子さん許してあげて。
彼女ね今家のことでトラブってて気が立ってるから。
違うわよ!ただ私は浮気してたアイツが許せなかっただけよ。
これでわかったでしょ?私はね世の中の不倫という不倫が全部許せないのよ。
ごめんなさいそんなときに警察に行ってなんて言って。
警察は私から連絡します。
でもまたくわのに来てちょうだいね。
人間つらいこといっぱいあるもの。
そういう人たちの心を癒やせる旅館にしたいと思ってるの。
待ってますから。
前はあんな娘じゃなかったのにな。
この鎌倉で働いていてねいい人見つけて結婚したんだけどその相手っていうのがどうにも浮気性でね。
離婚してまたこの鎌倉で仕事したいって言ってたからよしひと肌脱ぐとするかあの娘のために。
あの娘?うん昔から知ってるからね。
ついあの娘って言っちゃうのよ。
あの娘。
悪いのはあの娘よ。
あの娘性悪なのよ受験問題の漏洩事件で1人の講師が追いこまれて自殺をするんですよたった1人の弟が10年前身に覚えのない罪を着せられて自殺したのまさかそんなはずは…。
え?何何?いやちょっと待って。
え?何何?もしもし番場さん?桑野です。
ちょっと調べてもらいたいことがあるんですけど。
(翔太)できたねえ上手でしょ。
うん。
またあのパイロットのおじちゃんが来たら見せるんだ。
翔太…そうね見せようね。
敏子さんどうしたの?あ…いえなんでもないです。
どうしたの敏子さん。
え?ピアスですよ男にもらったなんて自慢しちゃって。
言ったんですよ仲居がピアスなんかしちゃいけないんじゃないのって。
あんまり派手なものはね。
ねえ。
だからいい気味だと思ったんですけどかわいそうだから返してあげようか。
そうね。
あ…珠子さん!あっあった!ここにあったわよ敏子さん。
えっ!?これじゃないの?これ!どうしてここに?あ〜よかった。
待って。
これはいもしもし。
あっ女将さん番場です。
女将さんに頼まれたこと調べてみました。
これいったいどういうことですかね。
確かに10年前に孔成大学で入試漏洩問題が起きましてね1人の講師が自殺してるんですよ。
その自殺した講師の名前は佐々木由彦。
佐々木。
ええ。
おたくに泊まっているミステリー雑誌の編集長も佐々木さんですよね。
それでどうなんです?その事件の背後には若いホステスさんが関係してたんですか?当時この事件を担当した刑事に電話で聞いてみたんですがね自殺したこの佐々木由彦さんに証拠物件を捏造して持ち込んだホステスがいましてね。
そのホステスの名前が寺内瞳。
女将さんこの瞳ってまさか…。
そのまさかかもしれません。
あの詳しいことがわかったらまたあとで連絡します。
姉さん俺本当に試験問題の漏洩なんてやってないんだ。
信じてくれ。
じゃあなぜあなたの部屋から現金や漏洩リストが出てきたの?あのホステスだ。
瞳というホステスが言い寄ってきたときに。
信じてくれ姉さん!女将さん。
やっぱりここにいたんですね。
和江さんあなただったんですね。
根岸瞳さんを殺したの。
10年前あなたの弟さんは試験問題漏洩の疑惑をかけられ自殺をした。
そのとき真犯人の教授の手助けをしていたのが寺内瞳というホステスつまり根岸瞳だった。
あの勲さんの指輪はあなたがあの晩拾ってそして沢野っていう人に罪を着せるためにあんな小細工をしたんですね。
待って!
(和江)もう隠せないわね。
許せなかったの。
ベッドにいる由香里さんにお金お金って詰めよるアイツが。
だから疑われればいいと思ったわ。
それにそんなに大切な指輪なら由香里さんにとって大切なお守りなら早く返してあげたいそう思った。
瞳さんがくわのに殺されたって言ったのはあれはくわのに泊まっている人たちに殺されたっていうことだったんですね。
でも瞳さんあなたの名前を…。
忘れてたわ思い出せなかった。
だからくわのに泊まっていた人にって言いかけてくわのに殺されたになったのね。
ひどい女よ。
寺内瞳は私のことを忘れてたのよ。
私瞳のこと一度だって忘れたことなんかなかったわ。
本当のこと言ってあなたが騙したんでしょ。
私も騙されたのよ教授に。
まさか由彦さんが自殺するなんて思わなかったから。
ご愁傷さま
(和江)10年経ってもあの女の本性は変わらなかった。
うわぁ〜!!うわ!ああ!ああ〜!ああ〜!!ああ…。
これで5,000万は私のものね。
やめろやめろ!ああ〜!!何してるの?あなたって本当にひどい女ね。
誰?覚えてないの?あなたに騙されて10年前自殺したのは私の弟よそしたら今度はあの子私をスタンガンで襲ってきた。
和江:ああ〜!!ああ!ああ!ああ!!
(瞳)きゃあ〜!!
(和江)これが事件の真相。
なぜそのことを警察に言わなかったんですか?それをちゃんと言えば…。
言えば過失致死にしろ私罪に問われるわ。
どうしてあんな女のために私が罪問われなきゃならないの?だから黙ってた。
いいえ神様のおぼし召しとさえ思ったわ。
弟の死から10年。
そのこと本にしようと思っていた私の目の前に瞳が現れ私の目の前で殺人を犯した。
これでやっとあの女に罪を与えることができる。
そう思ったわ。
でもあなたは…あなたは止めに入っていれば助かったかもしれない勲さんを見殺しにしたんです自分の復讐のために。
だから償うためにあなたはなんとか由香里さんを支えた。
でもそんなことじゃないでしょう。
由香里さんを励ますのはお金や引き取って面倒見ることじゃない。
あなただけしか話せない事実を由香里さんに話してあげることじゃないんですか?あなたはわかってるはずです。
事実を捏造された人の悔しさを。
愛する人を失った人たちの悲しさを。
由彦…なんで死んだの?死ぬことないじゃない!お願い和江さん。
あなたしか話せない真実を由香里さんにちゃんと話してあげて。
だって勲さんのことあんなに信じろって言い続けてたじゃない由香里さんに。
そんなあなただからお願い。
それで私は根岸瞳が滑り落ちたあと逃げようとしてその指輪を見つけたの。
ひどい。
そんなのひどい!結局あなたが殺したんじゃないの。
あなたがうちの勲を殺したのも同じよ。
なんで…なんで助けてくれなかったの?止めに入ってくれなかったの!由香里さん。
なんで…。
あなたの言うとおりよ。
何言われてもしかたないと思ってる。
でもこれだけは聞いて。
勲さん…。
スタンガンで目が見えなくなって…それでも一生懸命探してたわ。
あの殺されそうな状況のなかであなたにとって大切なお守り。
彼にとっても大事なものだったのね。
自分の復讐が遂げられるという思いにとらわれすぎていた私は自分と同じ悲しい人が生まれてくることに気がつかなかったの。
由香里さん。
あなた10年前の私と同じ。
だから私あなたの気持ちがよくわかる…そう思ってたわ。
だからせめてあなたとあなたの赤ちゃんを勲さんの代わりに守ってあげたい。
そう思ってた…そういうつもりだった。
でもバカよね。
勲さんの代わりなんかなれっこなかった。
本当に…本当にごめんなさい。
許せない。
許せるはずがない。
ねぇ返してよ。
うちの勲返してよ。
ねぇ返して。
返してよ!由香里さん!返してよ!落ち着いて。
わかりました。
行きましょう。
いや手錠はいいです。
かけてください。
これからはこの指輪はあなたと赤ちゃんと2人を守ってくれるはずです。
隆さんお願い。
待って!和江さん。
今由香里さんに言われたの。
「これから先どんなことがあっても生きていってほしい。
同じ悲しみをもつ者としてあなたの悲しみが癒える日が来ることを心から祈ってる」って。
ウソつきね。
でもありがとう。
女将さんウソついた。
ありがとう。
〜おい翔太!翔太!翔太!ねぇ。
今由香里さんから電話があってお腹の赤ちゃん順調ですって。
近々勲さんの両親と自分の両親のお墓参りに行って報告するって。
和江さんも過失傷害致死ってことだしいつか2人で会えるといいですね。
子供をはさんで。
そうねそうなってほしいわね。
ええ。
翔太!どこ行ってたんだよお前もう。
おじさん。
僕なんかに構わずおじさんも自分の理想を追いなよ。
小説家になるのが夢なんでしょう?翔太。
僕なんかに構わずってどういう意味?だってさっきから「肩車してやるしてやる」ってすっごくしつこいんだもん。
いやいやその…子供の頃ですね父親に肩車されたのがいい思い出だったんで父親が子供を肩車する気持ちってどういうものかなと思って。
あの他意はありませんよ他意は。
父親って…何考えてるのよ!隆さんはいいお父さんになると思います。
ええ!いやそうですよ。
お客様いらっしゃいました。
いらっしゃいませ。
女将の桑野厚子でございます。
2015/05/05(火) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
佐野洋サスペンス「密会の宿7 奇妙な客が死んだ夜」[字][解]

鎌倉の山間に佇む旅館「くわの」の美人女将が難事件を解決するシリーズ!断崖から落ちたパイロットの謎。W不倫殺人…鉄壁のアリバイ。

詳細情報
番組内容
「くわの」に偽名を使って宿泊した姉弟が遺体となって発見された。第一発見者の証言から、姉は絶命する前に「くわのに殺された」と言い残したことから、女将の厚子らは、鎌倉北署の番場刑事の事情聴取を受けることに…。その後、姉弟の身許が判明し、2人は赤の他人であることが明らかになる。厚子は、謎が多く残る事件の真相を追うことに…。
出演者
桑野厚子…岡江久美子
久保隆…東幹久
番場周平…西岡徳馬
佐々木和江…かとうかず子
内藤由香里…原千晶
小島郁美…中村綾
古谷勝江…田根楽子
小泉彩乃…清水めぐみ
根岸瞳…星ようこ   ほか
原作脚本
【原作】佐野洋【脚本】今井詔二
監督・演出
【監督】和泉聖治

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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