(オービスのフラッシュ音)
(神戸尊)おっ!なんだよ…。
(綿吹勇人)交通局の調べでは誤作動は2週間前からです。
(伊達香)2週間前?
(綿吹)そうです。
警備局さんのご依頼で例のテストプログラムを都内のオービスに組み込んだ日です。
まあ現在速度違反者への呼び出しと違反切符を待つよう警視庁の担当部署に命じていますが…。
オービスによる罰金は我が交通警察のドル箱です。
長くは待てません。
わかりました。
早急に調査して報告させます。
お願いします。
(落下音)
(警備員)救急車要請!飛び降りです!おそらくもう…。
あっはい。
住所は江東区西綱3の15です。
はいはい…。
あよろしくお願いします。
はい。
(エンジンをかける音)
(車が急発進する音)
(三浦信輔)おい。
(伊丹憲一)「帝都物産早乙女幸次電子通信部設計課係長」遺書は持ってねえな。
(米沢守)8階の窓が開いていて窓枠に早乙女さんの指紋がありました。
(米沢)争った形跡や遺書はありません。
(伊丹)じゃあ8階から落ちた事故か自殺…。
(米沢)窓に向けた防犯カメラがあったので調べてみます。
(伊丹)窓に向けたカメラ?珍しいな。
うちは全ての階でそうなっています。
(芹沢慶二)この会社の総務の方です。
(伊丹)しかしさすがに8階の窓から侵入する人はいないでしょう。
ラジコンヘリを使ったカメラで室内を撮影された事が何度かあります。
デスクに置かれた資料を見るだけでもいろいろとわかってしまう事があるらしくて…。
この商社以前産業スパイ事件があったみたいです。
はい。
それで防犯カメラがあらゆる場所に設置されています。
(米沢)確かにあちこちに防犯カメラがありましたな。
おいせっかくだ。
その防犯カメラ調べさせてもらおう。
どうぞ。
フラッシュが連続してたかれるのが誤作動の特徴です。
情報通信局の調べではなんらかの異常でオービスの電波反射率が変わり法定速度内で走る車にも反応しスピード違反者としてカウントしてしまうとの事です。
それが2週間前から?はい。
すぐに例のテストプログラムを外して調べてください。
でもそうすると今月中にデータを集めて完成させるのは不可能になりますが…。
それは困るよ。
なんとかしなさい。
君の能力の見せどころだよ。
首都警備の岩井課長に連絡してすぐに対策を立てます。
(芹沢)ああっああっあっ…。
これ見ててください。
(伊丹)あっ…。
ああ落ちた…!早乙女さんですね。
時刻は21時35分32秒。
ビルの前にあった防犯カメラの映像だな。
(伊丹)警備員か…。
あっこの男。
(芹沢)はい。
急いでますね。
(伊丹)車に乗り込むぞ。
ナンバーはギリギリか…。
おい巻き戻せ。
はい。
鑑識に言えばナンバーはっきり見えるだろ。
この車の所有者を割り出すぞ。
(2人)はい。
三浦さんナンバーから所有者わかりましたよ。
(三浦)えっ!?
(伊丹)大田区千束に住む岩井裕也45歳だ。
(三浦)あっこいつは…!おっ!
(三浦)こいつだろ?死亡時刻に近いから気になったんだ。
こいつの車がここからどこへ向かったか調べろ。
Nシステムですね。
はいすぐ調べます。
この岩井って男の素性調べよう。
よし…。
あっじゃあ残り頼む。
え?これ全部?ああ頼むぞ。
え…。
いいえちゃんとスピードメーターで確認しました。
(角田六郎)いや〜結構飛ばすんだろ?ほんとに法定速度内だった?ほんとですって。
なのにオービスで撮影されたんです2回も。
(杉下右京)2回?はいフラッシュがこう2回光りました。
オービスのフラッシュは1回のはずですよ。
まあどっちにしろ1か月前後で罰金徴収のハガキが届くから。
ゴネないでちゃんと払いなよ。
あれ?どちらへ?
(携帯電話の振動音)鳴ってますよ。
はい。
(携帯電話の振動音)はい。
はい…。
神戸君。
はい。
君は君の仕事をしてくれて構いませんよ。
(米沢)あっ!どうしました?ああ…これは杉下警部。
すいません。
転落死のあった商社の窓なんですけどもこれをスローで再生していたら…。
こっち向いてますよ…。
ここっち…。
確かに恐ろしい映像ですねぇ。
あ…何か用があっていらしたのでは?ああオービスの映像を取り寄せて頂こうと思ったのですが忙しいようなので結構ですよ。
早乙女さんの転落直後に現場から走り去った車など不審な点もあるので自殺事故事件全ての線で捜査しています。
(芹沢)これ見てください。
昨夜岩井の車を最後に映したNシステムです。
場所は靖国通り西新宿4丁目のF163カメラです。
岩井は首都警備保障に勤めています。
西新宿に本社があります。
行こう。
(芹沢)はい。
(中園照生)いや…ちょっと待て。
(中園)首都警備保障に再就職しているOBです。
(内村完爾)警察庁の元警備局長がいるな。
(中園)はい今は首都警備保障の常勤顧問です。
(内村)こいつらが行く前に仁義をとおしておけ。
はい。
あの…昨夜の転落死で任意聴取に行くだけですが。
その聴取は慎重に行い決して警察OBの機嫌を損なわないようにしろ。
いいな?別に警察OBに聴取に行くわけじゃないんですけど。
わかりました。
お手数おかけします。
我々の大事な天下り先だ。
波風は立てるな。
以上。
はっ!はい…。
連絡お待ちしてました。
(岩井裕也)すいません昨夜から何度も連絡頂いていて…。
昨夜約束の時間に首都警備保障を訪ねたのになぜいらっしゃらなかったんです?すいません…契約先で急に問題が起きてそちらに。
防犯カメラ顔認証システムのテストプログラムですが異常が起きた原因はわかりましたか?それはもう少しお待ちください。
今月中にテスト結果は受け取れますよね?それは難しいと思います。
困ります。
今月中というお約束のはずです。
いやしかし…。
国会で法案が通ってから実はシステムが出来ていなかったでは警察庁の責任問題になります。
(渡辺真澄)安心したまえ。
彼はうちの人間だ。
(渡辺)杉下右京が君の目的に気づいている。
最近の君のレポートはそのように読める。
まあそれを公にする意思は杉下さんにはなさそうですが。
だとしても君は仕事がしにくくなったんじゃないのか?あの…僕の仕事ってなんですか?僕のレポートには意味があるんですか?あんな中学生の作文みたいなレポートに。
なるほど。
それで我々の反応を見ていたのか。
今日まで反応がなくて正直戸惑っていました。
あんなレポートでも十分杉下の人となりはわかった。
だとしたらすでにわかっていたはずですよね?杉下さんの人となりは。
だから特命係に追いやったはずですよね?にもかかわらず僕に杉下さんの能力と特命係の可能性を見極めろという指令を出した。
それがどういう事なのかこの6か月間ずっと考えてました。
庁内エスが孤独なのはわかる。
だが飼い主を疑うのはお互いにとって損だ。
僕が特命係に配属された理由って別にあるんじゃないですか?次は隙のないレポートを待っている。
あれ?はい?ちょっ…警部この人…。
なるほど。
これ…。
なんでしょう?
(伊丹)いましたよね?ゆうべ帝都物産に。
何をされてたんでしょう?システムの打ち合わせです。
帝都の防犯システムは全てうちが保守管理してるんで。
そういう打ち合わせをこんな夜遅くに?
(岩井)その手の打ち合わせは大抵終業後です。
いつでも防犯設備のテストが出来るように。
あの…打ち合わせの相手はどなたでしょう?申し訳ありません。
防犯システムに関する事なので…。
岩井課長他言はしませんから。
(宇田川次郎)名前を言えば聴取に行くんだろう?それだけでも十分困るんだよ。
(伊丹)は?我々は顧客の信用を扱ってるんだから。
これ以上の聴取は令状がいるな。
常勤顧問…ああ警察庁の元警備局長でいらっしゃった。
もっとも事故か自殺か事件か不明な段階でそれが出来るとは思わんがね。
ただ私に連絡してきた事は感心する。
さあもういいだろ?じゃあ最後に1つだけ。
(伊丹)この人と面識は?
(岩井)いえ。
どなたでしょう?ゆうべこのビルから転落死した方です。
この時間の少し前に。
そうでしたか…。
知りません。
もういいだろ。
岩井がゆうべ早乙女さんと会ってたらそこから崩せるな。
あれだけ防犯カメラがあるんですから社内で会ってたらどっか映ってますよ。
(三浦)よしじゃ鑑識戻るぞ。
(伊丹)米沢の野郎ちゃんとチェックしてんだろうな。
(大河内春樹)それで警察庁にはいつ戻るんだ?はい?戻るタイミングが決まったら教えてくれ。
また邪魔する気ですか?
(大河内)何度も言うがお前の出世を邪魔した事はない。
冗談ですよ。
お前が推薦組に選ばれた時確かに私は反対した。
あの時反対意見の上申書出されてほんとビビりましたよ。
でも結局僕推薦組に選ばれちゃいましたけどね。
そしたら案の定お前は庁内エスなんてくだらない仕事をさせられてる。
しかしどうにもわからない…。
杉下さんを監視する役目になぜお前が選ばれたんだ?お前警察庁では警備局の警備企画課にいたはずだよな。
具体的にはどんな仕事をしてたんだ?あっそうだオービス。
ゆうべオービスに撮られちゃったんですよ。
全然スピードとか出してないのにおかしいですよねぇ。
似た苦情がうちにも多く届いている。
オービスの苦情が監察官室に?最近民間人も監察官という仕事を知ってるらしい。
現場の警察官と揉めると直接うちに連絡してくる。
困ったもんですね。
それにしても急にオービスの苦情が増えたな。
急になんだ。
ああ。
ここ2週間ほど前からだ。
ほんとに誤作動でなきゃいいんだがな。
何か気になる事でも?オービスが2回光った。
それが最近の苦情に共通している。
(米沢)ここです。
このビルの8階から落ちて転落死体はこの辺りにありました。
だとすればこの周辺のはずですねぇ。
半日以上経ってますからねぇ。
風で飛ばされてるんじゃ…。
捜索には人手が必要ですねぇ。
出来るだけ集めてみますか。
ああ米沢さん。
まだ事件にもなっていない事件の捜査ですから…。
わかってます。
私服で来させます。
どうもありがとう。
ああもしもし米沢です。
神戸さんには何があっても接触するなと。
ふ〜んそう言われてるんだ。
そういう仕事をされてるんですよね?今。
結構ですよ。
私も警備局の人間です。
その手の秘密には慣れています。
それでお話ってなんでしょうか?防犯カメラ顔認証システム…。
僕がいなくなったあとの責任者はきっと君だ。
だとしても部外者にはお話し出来ません。
今月中に完成させよう。
…なんて思ってないよね?防犯カメラ顔認証システムに反対ですか?いやぁまさか。
僕が進めてたプロジェクトだよ?安心しました。
ではこれで失礼します。
でも…天下り先を作るプロジェクトじゃない。
防犯カメラが増えれば民間の仕事も増えますよ。
その手の企業や団体に再就職出来る警察官も増える。
今は毎年1万人ずつ退職者が出てるから急ぎたいよね。
でもそのためのプロジェクトじゃない。
犯罪捜査を根本から変えて悪化の一途をたどる治安をよくするためのものだ。
お話の趣旨がわかりかねます。
だとしたら急ぐ必要はないって話さ。
神戸さん…残念ですけどこれ以上は…。
ねえ何か困った事になってるんじゃない?失礼します。
伊達さん。
話せる時が来たら話して。
でも出来るだけ早く。
(伊丹)米沢!…あ?チッなんだよ米沢の野郎…。
先輩これ…。
(伊丹)「捜査一課の皆様へ」おい。
はい。
あっこれあの帝都物産の社内ですね。
おい見ろ。
転落死の2分前だ。
(芹沢)あっ!これ岩井と早乙女さんですよ。
やっぱりゆうべ岩井は早乙女さんに会っていたんだ。
おい岩井を任意同行するぞ。
(芹沢)はい。
杉下さん。
君の仕事の方は大丈夫ですか?ええええまあ。
では手伝ってください。
少しでも多い方が助かります。
はい手伝うって何を?
(米沢)杉下警部!あっ…。
(芹沢)で拡大したのがこれです。
(伊丹)ゆうべ早乙女さんに会ってますね?はい業務で。
じゃあなんで知らないなんて言ったんです?この夜話した防犯システムは秘密事項ですから。
防犯システムの事なんか聞いてませんよ。
この人を知らないか?と聞いたらあなたは知らないと言った。
つまり明らかに隠した!なぜですか?
(ドアの開く音)出た…。
今度は私に連絡がなかったな。
失礼しました一度でいいかと。
まもなく終わります。
岩井課長早乙女さんはこのあとすぐ亡くなってるんですよ。
ええ自殺だとか…。
待ってください。
警察はまだ自殺だと発表してませんが。
自殺の可能性が高いと警察から報告を受けた。
はい私もそのように聞いて…。
(携帯電話)岩井課長本部までご同行願えますか?
(宇田川)任意だったら許さんぞ。
(伊丹)常勤顧問の宇田川さん!岩井課長は早乙女さんが転落死する直前まで一緒にいた。
つまり聴取の対象になる!ええ!?遺書が見つかった!?「すべて身から出たさびです」「あの世で自らの犯した罪を償います」遺書ですよね?筆跡鑑定を待たなければ判断は出来ませんがね。
ではまあ遺書だとして自らの犯した罪ってなんでしょう?なんでしょうねぇ。
仕事上の事か私生活の事か…。
早乙女さんの仕事って商社マンですよね?電子部品の設計係長をされていたそうです。
見当もつかないな…。
この方に会ってみる必要がありそうですね。
ご存じの方ですか?…いえ誰です?早乙女さんが転落死する直前に会っていた人だそうです。
そうですか…。
そうですか。
ええ…あっいえ結構です。
岩井さんはまだ出社されていないそうです。
そうですか。
じゃあ早乙女さんの会社に行きますか。
どこにかけてるんです?岩井さんのご自宅です。
親切なんですね米沢さんって。
「はい岩井です。
ただいま留守にしております」留守電です。
では早乙女さんの会社に行きましょう。
はい。
(益田秀雄)どうぞ。
電子通信部設計課課長。
電子部品の設計をされてらっしゃる?ええ早乙女の直属の上司です。
あっすいません。
どこの会議室もこうなんですよ。
以前こちらで産業スパイ事件があったとか。
ええ。
それから何か神経質になってしまって…。
あっ…で?実は早乙女さんの遺書が見つかりまして。
遺書?まもなく発表されます。
残念ながら現物をお見せするわけにはいかないんですが…。
「すべて身から出たさびです。
あの世で自ら犯した罪を償います」と書かれていました。
何かお心当たりがあればと思いまして…。
お心当たりがあるんですね?ありません!え?相当心当たりありましたよねあの上司。
どうやら「自らの犯した罪」とは仕事関係のようですね。
(携帯電話の振動音)
(携帯電話の振動音)はい杉下です。
はい神戸です。
伊達です。
岩井さんの家にすぐ来てもらえますか?え?岩井さんの?首都警備保障の岩井課長です。
住所を言います。
うんわかった。
遺書は早乙女さんの筆跡に間違いないそうです。
ではやはり自殺?僕はこれから岩井さんの会社を訪ねてみます。
え…自殺なのに?君は君の用事をしてくれて構いませんよ。
筆跡が一致か…自殺に決まりだな。
にしては岩井課長挙動不審すぎましたよね。
(伊丹)自殺だとしても早乙女さんに最後に会ったのは岩井だ。
防犯カメラを見る限りかなり直前に。
だとしたら早乙女さんの異変に気づくはずだろ。
かもしれませんね…。
どこ行くんすか?おい自殺なら俺たちの仕事じゃないぞ。
仕事じゃなくても気になるんだ。
気になるんじゃしょうがない。
(ドアの開く音)岩井さん…ではありませんね。
岩井はいない。
今日から有休を消化する事になった。
これはご丁寧にありがとうございます。
あっそういう事でしたらわざわざ常勤顧問の宇田川さんにお伝え頂かなくても…。
わざわざ私が応対した意味わかるかね?さあ…察しが悪いもので。
ではまた伺います。
(伊丹)ああ…!困りますね警部殿また勝手に…。
なんで自殺の案件を調べてるんです?自殺だとわかっているのに皆さんはどうして?
(咳払い)ああ岩井さんならいませんよ。
警察のOBだと思われる宇田川さんにそう言われました。
(舌打ち)あの常勤顧問…!やはりお会いになってたんですね?じゃあ自宅かもしれねえな。
ええ昨日皆さんが早乙女さんの件で岩井さんを捜査対象にしたため謹慎扱いになったのでしょう。
(三浦)じゃ…。
警部殿ついてこないでください。
おや偶然行き先が一緒かもしれませんね。
僕たちは岩井さんの家に行くつもりなんですが。
やはりそうでしたか。
僕もです。
ではご一緒に。
一緒には行きませんよ。
おい。
岩井の住所調べたのか?あ。
ご心配なく。
調べてありますよ。
(チャイム)ん?留守ですかね?いえ気配がします。
お邪魔しまーす。
(芹沢)あっ。
(三浦)あ…。
ここで何してるんですか?どうも。
失礼。
もう心臓は止まっています。
血液を含んだ吐瀉物。
皮膚の黄疸口の周りからニンニクやニラに似た臭い目の充血…服毒死でしょうか。
それもリン系の毒物。
種類までは不明ですがおそらく毒物でしょう。
神戸警部補殿。
はい?状況をご説明頂けますか?私が神戸さんをお呼びしました。
警察庁警備局の伊達警視です。
け…警視?
(米沢)どうも。
監察医の先生の見立ては杉下警部と同じでした。
やはり服毒死か。
指紋も下足痕も拭き取られた形跡はありませんでした。
殺しなら犯人が指紋ぐらい拭いていくはずだな。
犯人が手袋をしていたという可能性もありますが…。
(伊丹)ここへは?今日は仕事の打ち合わせで…。
で訪ねたら死亡していたそうです。
どんな仕事の打ち合わせでしょう?すみません。
それは私の一存では答えかねますので後程正式に警備局に文書でご質問ください。
じゃあ伊達警視はなぜ神戸警部補を呼んだんですか?私は以前神戸さんの部下でした。
まあ今は階級的には僕の方が下ですけど…。
以前同じ職場だった…それだけでしょうか?警視が神戸君をここに呼ばれた理由は。
昨日偶然会いまして。
それでとっさに思い出しました。
なるほど。
あの…私はこれで失礼します。
は?この事を上に報告しなくてはならないので。
三浦さん…。
(三浦)ああ。
(泣き声)被害者の奥さんです。
大丈夫ですか?お気持ちお察しします。
おつらいでしょうがちょっとお話聞かせてもらえますか?さあさあさあこちらへ…。
あの…今日はどちらへ?
(岩井はるか)「2〜3時間出かけててくれ」と…。
ご主人がそうおっしゃった?「これから仕事の打ち合わせをするから」って…。
つまり…仕事関係者がここに来ると?
(芹沢)それが伊達警視ですね。
(伊丹)あの奥さん。
ご主人はよく家で仕事の打ち合わせを?いいえ多分初めてです…。
ご主人はご自宅でも仕事をされていたのでしょうか?わかりません…。
でも前に「会社からデータを持ち込むのは違反行為だ」って言ってました…。
そうですか米沢さん。
警部殿事情聴取仕切らないでもらえますか。
申し訳ない。
ちょっと。
あっはい。
すいません。
被害者の岩井さん以外の指紋こちらには?ありました。
ありましたがその指紋には前科はありませんでしたが。
パソコンは奥様もお使いになっていましたか?いえ…触った事もありません…。
(泣き声)だ…大丈夫ですか?さあじゃちょっと向こう行きましょうね。
大丈夫ですか?ちょっと立てますか?はい。
(泣き声)つまり犯人が触った可能性がある。
だとすると犯人の狙いはこの中のデータ。
でも被害者は仕事のデータは持ち込んでないはずですよ。
今回初めてデータを持ち込んだ。
その可能性もあると思いますよ。
おい米沢このパソコンも押収だ。
あっはい。
犯人の目的がそのデータだったらもうないんじゃないですか?だから一応ですよ。
もうそれより黙っててください。
(芹沢)でも犯人が岩井さんを殺してまで手に入れるデータってのはなんですかね?伊達警視ならご存じかもしれませんね。
そうっすね。
なんたって打ち合わせの相手っすからね。
警察庁警備局警備企画課警備システム開発係係長伊達香警視。
彼女との関係は?警察庁の頃僕の部下でした。
あなたが警備企画課の課長代理だった時ですね。
はい。
仕事以外の関係は?仕事以外の関係などありません。
そんな彼女が不審死の現場にあなたを呼んだ。
昨日偶然彼女に会ったんですよ。
だから僕の事を思い出したそんなところだと思いますけど。
偶然会ったですか…。
彼女も大河内監察官の聴取受けるんですか?以上です。
必要があればまた呼び出します。
あっ聞かないんですね庁内エスの事は。
お前が庁内エスである事と今回の件に何か関係が?いや関係なんてないと思います。
(大河内)きっと気を揉んでるだろうなあ。
はい?お前の飼い主だよ。
関係がないなら釈明しといた方がいいんじゃないのか?失礼しまーす。
(ドアの閉まる音)以上が大河内監察官の聴取で話した内容です。
ああ待ってください。
1つだけ教えてください。
この6か月の間僕が杉下さんを調べていたんですか?それとも…僕が調べられていたんですか?
(ノック)余計な事は考えず杉下右京の調査を続けてください。
(大河内)失礼します。
神戸からですか?はあ…。
(大河内)伊達警視の聴取がこちらの担当になったとか。
それが?警視庁所轄事案に関する聴取です。
私が行います。
戻りました。
解剖の結果自殺か他殺かは不明だそうです。
そうですか…。
君は知っていますね。
はい?岩井さんが伊達警視と今日ご自宅でどのような打ち合わせをする予定だったか。
少なくとも見当はついている。
無理には聞きませんが事は殺人事件かもしれません。
おいコーヒーちょうだい。
あの場所を変えてもいいですか?もちろん。
何?FRSご存じですよね?FacialRecognitionSystem。
つまり顔認証システム。
両目鼻口の位置関係で同一人物かそうでないかを識別するコンピューター用のアプリケーションですね。
それを防犯カメラで活用するシステムの開発が首都警備保障の岩井さんと警備局にいた頃の僕の仕事でした。
全国に330万台余りある警察自治体民間の防犯カメラの映像をリアルタイムで警察庁の施設へ送信し警察が保有する運転免許証や前科者などのデータと自動照合した結果ヒットしたら当該警察署や近くにいる警察官に瞬時に通報するというシステムです。
街頭で指名手配犯の顔を捜すような見当たり捜査も全国で24時間機械的に可能になります。
国や警察に不都合な活動をする市民を24時間機械的に監視する事も可能になりますね。
完成すれば世界に誇る日本警察独自のシステムですよ。
憲法の条文にいくつか抵触しそうなシステムではありますが。
その恐れがあるため秘密裏に進めていました。
しかし最終的には国会で法案を通す必要があります。
法案の提出に目標はあったんですか?2010年4月。
おや来月ですね。
当初は今月中にシステムを完成させる予定でした。
つまり予定は変わった。
はい僕が変えたんです。
急激なシステム開発とそれに伴うテスト。
システム異状による事故を引き起こす恐れがある。
だから完成期限を延長すべきだと主張しました。
それで期限は延びましたか?そう思ってました。
そのあとすぐですよ。
特命係への異動が決まったのは。
つまり私に特命係へ行けと?君には16日付で異動してもらう。
今思えば完成期限の延長は了承されていなかったんですよ。
急ピッチの開発を反対する君が邪魔になった…。
そうだと思います。
現に後任の伊達さんが無理な開発を任されてとうとう事故を起こしてしまいましたからね。
それがオービスの誤作動。
防犯カメラFRSのテストプログラムは最初はオービスとNシステムで最後に警察所管の防犯カメラに組み込まれる予定でしたから。
はあ…特命係が今後警察にとって有益な存在として発展出来るかどうか杉下右京にその能力があるかどうか。
それを僕に調べろだなんて…。
そう命令されていましたか。
どうして僕が選ばれたのかずっとわかりませんでした。
邪魔になったから飛ばされたんですよ。
6か月間システムが完成するまで。
すっかり騙された…。
君が邪魔になったのならばそんなまわりくどい事はせずに人事異動すれば済む話じゃありませんか。
お言葉ですが僕は公務員ですよ。
自分の人事に不服申し立てが出来ます。
そういう事をさせたくなかったんでしょ。
そうでしょうかねぇ…。
つまりあなたは防犯カメラFRSの開発責任者。
はい。
神戸さんのあとを引き継ぎました。
開発の技術者が首都警備保障の岩井課長。
はい…技術面での責任者でした。
では今日岩井課長の家を訪ねたのは…。
最初から無理だったんです。
2010年3月までに完成させるなんて。
前任者の神戸尊には相談しなかったんですか?くだらないプライドが邪魔しました。
我々のようなキャリアが神戸君のような這い上がりに助けを求めるのは恥だと思いなさい。
そう言われて…。
神戸さんの能力の高さはわかっていたのに…。
でも…やっぱり神戸さんの言葉は正しかった。
急激なシステムの開発とそれに伴うテストはシステム異状による事故を引き起こす。
その言葉どおりの事故が起きてしまったんです。
その事故の対策を練るために伊達警視は岩井さんを訪ねたのでしょうねぇ。
はい人に聞かれないように。
あとパソコンが使える場所って事で自宅に呼んだんでしょう。
だとすればあのパソコンにはやはり…。
いえ顔認証プログラムなどは入ってませんでしたが…。
パソコンに付着していた第三者の指紋は?奥さんの指紋ではありませんでした。
それからこれは監察官調査事項なので本当は申し上げる事は出来ないのですが…。
伊達警視の指紋でもなかった。
察しが良くて助かります。
しかし岩井さんを殺してデータを盗み出したあと指紋を拭き取る事もしなかったとは大胆な犯人ですね。
奥様がいつ戻るかわからない中犯人は出来るだけ早く現場から逃げたいはずです。
なるほど…。
もしこれが他殺だとしたら犯人は誰か。
答えは早乙女さんの自殺にあるような気がします。
(落下音)早乙女さんは伊達さんと岩井さんが開発していた防犯カメラFRSには無関係ですよ。
しかし早乙女さんと最後に話をしていたのは岩井さんです。
2人の死は無関係ではないと思いますよ。
ところでデータは見当たらなかったとおっしゃいましたが携帯電話携帯音楽プレーヤーデジタルカメラなどは調べましたか?いえ…。
それらも歴とした記憶媒体です。
岩井さんがFRSのデータをそのようなもので持ち運んだ可能性も十分あります。
あっ押収しましたか?いえ音楽プレーヤーやカメラまでは…。
では押収して調べましょう。
データなら岩井さんの会社に行って仕事場のハードを押収した方が…。
それもします。
防犯カメラ顔認証システム?うん。
その開発中のデータが岩井さんの会社にあるはずなんだよ。
それが岩井さんの死亡案件と関係があるんですか?伊達さんと岩井さんは今日その打ち合わせをする予定だったんです。
しかもそのデータが岩井さんのご自宅のパソコンから抜かれた可能性があります。
おい捜索差押の令状とれ!はい!では防犯カメラFRSは今月中にはもう…。
間に合わないよ。
技術者が1人死んだんだから。
法案の提出を延期してもらうしかないかな。
間瀬課長あなたのミスですよ。
まあそんな事よりあのテストの件が知れたらシステムの開発自体が頓挫するんじゃないのか?確かに。
絶対に公にしてもらっては困ります。
帝都物産にはすでに因果を含ませました。
あちらから漏れる事はありません。
ただ首都警備保障には開発中の防犯カメラFRSのデータがありますよね?ああ押収される可能性がありますね。
すぐに対応しよう。
あっありました。
おお…。
デジタルカメラもありました。
どうかしました?死亡推定時刻は?昨日の朝9時から11時の間ですが…。
僕がここに電話をしたのが9時半。
留守電です。
もし僕がここに電話をした時誰かが留守電に切り替えたのだとしたら…。
米沢さん電話の指紋は?全て採取してあります。
(米沢)ありましたあの留守電ボタンに。
パソコンについていた正体不明の指紋と同じです。
殺人だとしたら犯人の正体がまるで掴めませんよね。
やはり早乙女さんの自殺が無関係だとは思えません。
「あの世で自らの犯した罪を償います」。
自らの犯した罪ってなんでしょうね。
その罪から全てが始まった気がします。
それを知ってそうなのはあの上司。
でもまた聞きに行っても答えてくれないでしょうね。
あっあの岩井さんの葬儀に行ってもいいですか?もちろんですよ。
かつて君が一緒に仕事をしていた人ですからね。
なるべく早く戻ります。
気遣いは無用です。
僕も行きますから。
あっそうなんだ…。
ちょっと失礼。
岩井さんのお仕事関係の方ですね?
(井上治)ええまあ。
この方なんですが…ご存じありませんか?いいえ。
そうですか。
お手数をおかけしました。
あの…。
今日首都警備保障に連絡したらデータを警察に押収されてしまったので対応出来ないと言われまして…。
岩井さんからお仕事を依頼されていたんですね?ええ。
それでとても困っているんです。
(林正高)あの…私も岩井さんに仕事を依頼していたんですが。
あなたも岩井さんの取引先の方?はい。
(斎藤和利)あの…警察に押収されたデータっていつ戻ってくるんですか?私もそれが聞きたくて。
いつお返し出来るか今はちょっと言えないんですけど…。
岩井さんはそんなにお仕事を抱えていたんですか。
というか何か急ぎの大きな仕事を抱えてたみたいで。
あっ私もそう聞いています。
急ぎの大きな仕事…。
出来るだけ早くデータを返してもらわないと…。
わかりました。
必ず担当者の方にそうお伝えします。
お願いします。
岩井さんの急ぎの大きな仕事ってきっと防犯カメラFRSの開発ですね。
ええ。
(読経)私も岩井さんも追い込まれていました。
システムの開発が間に合いそうになくて…。
で未完成のプログラムを使ってテストを始めた。
都内にあるオービスNシステム防犯カメラを無作為に抽出してプログラムを入れました。
えっ?もう防犯カメラでもテストをしてたの?とにかく時間がなくて。
それでオービスが誤作動を起こしたわけですね。
具体的にどのようなテストだったのでしょう?オービスNシステム防犯カメラに組み込んだ顔認証システムで特定の人物の顔を検索してその成功率と所要時間のデータを蓄積する作業です。
そのオペレーションを岩井さんが担当していました。
作業をしていた時岩井さんが言っていました。
まるで神になったような気がすると…。
神?防犯カメラの監視作業では個人や企業の秘密をいや応なく知ってしまいます。
顔認証システムを組み込んだカメラならその全能感はさらに凄まじいものになるでしょうね。
その重圧でおかしくなりそうだと…。
神は知り得た秘密を一人で抱えるしかない。
その秘密に介入する事も許されないのかと…。
人間には荷の重すぎる役目なのかもしれませんねぇ。
ええ。
でもその時は岩井さんが何を言っているのかまだわかりませんでした。
(芹沢)あっ!先輩これそうでしょ。
あっ!間違いない。
おい彼女来てるな。
(伊丹)行こう。
よし。
(伊丹)あっ…失礼。
ごめんなさい。
ああっ…。
警部殿と警部補殿!伊達警視…これは早乙女さんが自殺した現場の映像です。
これが自殺した時刻です。
(伊丹)でこの車は首都警備保障の岩井さんの車。
そしてそのあとすぐその車を追うように薄いブルーの車。
ナンバーを調べたら伊達警視あなたの車でした。
あの車ですよね?つまりあなたもこの夜早乙女さんの商社に行った。
そうですね?本部で事情を聞かせてください。
何をしてるんだ!?彼女の聴取は監察官の担当になったはずだ。
伊達警視の上司です。
さあ帰るぞ。
伊達君…。
事情聴取を受けます。
何を言っているんだ?ではご同行を願います。
神戸さん…あなたの聴取を受けます。
えっ?捜査を続けていたらしいな!?所轄が自殺で処理した案件を。
いやあの自殺の報告が本部に届く前だったので…。
自殺とは思えません。
先輩?早乙女さんは自殺で結論がついているはずだ。
しかし岩井さんは結論がついていません!だから自殺で処理すると言っているんだ!なぜ結論を急ぐんですか!?捜査されると何かまずい事でもあるんですか?刑事部長の前だ。
言葉に気をつけろ!大事な天下り先とその取引先だからですか?やめろ伊丹。
2件の死亡案件に事件性はなし。
…以上だ。
あなた方がそうした!待て!
(ドアの開閉音)なんだあいつは。
たまにああなる。
すみません!あとで謝罪させます。
あっ…あっ…はい!あっ…!失礼します。
ご連絡を頂いたようで…。
特命係が伊達警視を任意同行した。
は?本庁から厳重な抗議があった。
しっかりしろ!彼女の聴取は誰の担当だ?
(小野田公顕)それ僕初めて聞いたけど?
(渡辺)テストが成功したらご報告する予定でした。
警察がそういうシステムを作っていたなんて知れたら大変だね。
絶対に伏せなければなりません。
泣きついてくるならもっと早く来てほしかったけど。
申し訳ありません。
とりあえず2件の死亡案件は大丈夫?自殺で処理出来ました。
捜査は止まるはずです。
じゃあ問題は伊達香警視…。
はい。
さらに問題なのは彼女を調べる担当者です。
監察官でしょ?警視庁の監察担当理事官です。
あら大河内君…。
警察内部の問題を公表しようとする男です。
小野田官房長…。
ああ。
特命係がまた勝手したらしいね。
間もなく取り調べをしている部屋に着きます。
でも特命係を止める気はない…。
は?君の興味は伊達警視が事件に関与してるかどうか。
それが監察官としての職務ですから。
じゃあそれは特命係に任せてちょっと来てくれる?はい?いい事教えてあげるから。
警視庁からうちまでなら3分で来られるでしょ?「あ…僕待つの嫌いだから」官房長…!
(不通音)オービスの誤作動に気づいたのはいつ?つい先日。
交通局の担当者から…。
交通局の調べでは誤作動は2週間前からです。
2週間前?そうです。
(香の声)すぐに岩井さんに電話してこれから行くと伝えました。
(香の声)着いたら岩井さんが出かけるのを見て…。
(香の声)追いかけたらあの商社に…。
(香の声)岩井さんが出てくるのを待っていたら…。
(警備員)救急車要請!飛び降りです!
(警備員)…わかりません。
(警備員)いいえ。
おそらくもう…。
(警備員)あっはい。
住所は…。
やはり早乙女さんの自殺の原因には岩井さんが関与していますね?そしてあなたはその原因を知っている。
それを知っている人がもう一人いました。
早乙女さんの上司です。
ねえ伊達さん君が話してくれないと僕たちはまたその上司を聴取する事になるんだ。
もう遅いと思います。
警察庁と首都警備保障は裏で通じています。
帝都物産も因果を含んだ状態になっているはずです!伊達何を言ってるんだ!?きっともう首都警備保障にあるはずの防犯カメラ認証システムのデータも警察庁に移されたあとです。
伊達よすんだ!あなたと岩井さんは防犯カメラオービスNシステムに組み込んだFRSで対象者を検索しデータを蓄積していた。
その対象者はどなたがお決めになったのでしょう?私です。
警察の関係者から選びました。
でも1人だけ課長が決めた人物が…。
よせ!!立て。
さあ…。
課長!本庁へ戻るんだ!やめてください聴取中です。
伊達の聴取はお前の担当じゃないだろ!彼女は告訴をしています。
我々は警察官としてその訴えを聞く義務があります。
わけのわからない事を言うな!今わけのわからない事を言っているのは課長あなたですよ。
神戸…自分が戻る場所をなくす気か?フンッ!僕に戻る場所なんかあるんですか?
(間瀬)何!?伊丹さん…。
部外者は出ろ!取り調べ中だ!
(間瀬)なんだお前…放せ!
(伊丹)いいから出ろよ!邪魔してんじゃねえよオラッ!自分が何をしているかわかってんのか!?
(伊丹)いいから出ろっつってんだろうが!どうぞ。
防犯カメラFRS…そのテストで探す特定人物を今の課長さんがお決めになった。
それが早乙女さんだった。
はい。
早乙女さんが産業スパイだと疑われたからですね?あの商社では以前産業スパイ事件がありそのために首都警備保障に防犯システムを強化させた。
そんな中再び産業スパイが疑われれば必ず首都警備保障に調査が依頼されるはずです。
ちょうどその時…首都警備保障の岩井さんが防犯カメラFRSのテストをしていた。
まさかテストプログラムを捜査に使ったの?…正しい事をしていると思っていました。
信じられない。
これで産業スパイが見つかったら素晴らしい…そう思っていました。
そんな事よりあのテストの件が知れたらシステムの開発自体が頓挫するんじゃないのか?確かに…。
絶対に公にしてもらっては困ります。
我に返りました。
私たちがしていた事は…違法捜査。
いいえ犯罪だった。
私にもあったんです。
まるで神になったかのような全能感が…。
我々の仕事は常にそういう感覚に陥いる危険をはらんでいるのかもしれませんねぇ。
ところでなぜ早乙女さんが産業スパイだと疑われたのでしょう?帝都物産は先日航空機メーカーの部品入札でテクノハーベストという海外の商社に負けました。
これは社内で大きな問題になったそうです。
入札直前まで帝都が優位に立っていたからです。
(香)「帝都はその原因を探りました」「その結果…」ある電子部品の値段が帝都よりテクノの方が安かった事が原因だったと判明しました。
なるほど。
その電子部品の担当者が早乙女さん。
それで彼が産業スパイに疑われた。
早乙女さんの遺書の謎が解けましたね。
それが自らの犯した罪だったんですね。
どうやら全てが繋がったようですねぇ。
はい?岩井さんが調べていた早乙女さんの映像は今どちらに?警察庁に…。
(伊丹)ちょっと!ちょっと待て!おい!
(間瀬)見せるわけにはいかない!あのシステムは警察に…いや日本にとって今後必ず必要になるんだ。
それを今君は潰すつもりか!?君はキャリアだ。
日本の未来を考える義務がある!組織ではなく自分に従えばいい…。
僕は特命係に来てそういう警察官に何人も会ったよ。
伊達警視は関係資料を任意で提出してくださるそうです。
伊達!これは処分事由になるぞ。
フッ。
今度はどこに飛ばす気ですか?君は誤解をしている。
誤解?自分には戻る場所がないとか飛ばされたとか…。
まさか僕が杉下警部を監視するための庁内エスだったなんてまだ言うつもりですか?君は飼い主に質問したそうだね。
この6か月の間僕が杉下さんを調べていたんですか?それとも僕が調べられていたんですか?答えはその両方だ。
防犯カメラFRSが稼動すれば日本警察の捜査手法は180度変わるはずだろう。
ええ。
これまでの地取り捜査や見当たり捜査に必要だった大量の捜査員を大幅に削減して他の捜査に回せますからね。
当然システムを運用する警察庁の付属機関が出来る。
仮にFRSセンターとしよう。
そこにはシステムを使いこなす運用官とシステムが導き出す結果を分析し捜査に還元する捜査官が必要だ。
運用官と捜査官…。
主任運用官はもちろん神戸君…君だよ。
そして主任捜査官として白羽の矢が立ったのが杉下右京…君だ。
ここ10年ほどで次々に難事件を解決してきた君の経歴から見てその捜査能力を疑う幹部はいない。
だが君には組織人としてかなり大きな問題がある事もわかっていた。
後に同じチームとなる運用官と捜査官の連携が取れるかどうか…それが大きな課題だった。
法案の提出までにそれを見極めなければならなかった。
だから半年をかけて2人をテストしたんですか?杉下が神戸君と組んだあともこれまでどおり事件を解決出来たら2人を警察庁に戻し新設されるFRSセンターに異動させようってもくろみだったんだって。
同時に急ぎの開発に反対する神戸君を追い出しその間にシステムを完成させようとしたみたい。
まぁそういうわけだからこのシステムの現担当者伊達警視の捜査はご法度ね。
しかし私は監察官として彼女の監察官聴取を…。
君が提案してたのって日本版FBIだっけ?は?それにも大いに貢献出来る機関じゃないかしら。
FRSセンターって。
官房長が提唱されていた日本版CIAにも…。
だとしたら潰すのは惜しくない?
(米沢)岩井さんの家から押収したこの手のものにお探しのデータはありませんでした。
そうですか。
彼は家に持ち帰ったはずなんですがねぇ…。
だとするとやはり犯人に奪われたんですよ。
捜査一課が首都警備保障から押収したものの中にもありませんでしたか?ええ。
それはちょっと気になっているんですが…。
首都警備保障に先回りして抜いたんでしょう。
警察庁と首都警備保障は裏で通じています。
伊達さんの言っていたように…。
(携帯電話)噂をすればです。
なるほど。
これが防犯カメラ顔認証システムの映像ですか。
(香)ええ。
2週間ずっと岩井さんが監視していた映像です。
(伊丹)2週間のテストから早乙女の映像だけ抜きました。
結果2週間で4回ほどあの男と接触を…。
早乙女さん何か封筒のようなものを男に渡していますね。
やはりこの人でしたか。
知ってるんですか?君も会った事がある人ですよ。
えっ?あっ!防犯カメラFRSは君が望んだ以上に延期される事になるでしょう。
あ…すいません。
まあ警察がそういうシステムを秘密裏に作っていた事が公になれば…。
FRSセンターの構想もなくなるかもしれませんよ。
ってなんで僕に言うんです?君がその構想に魅力を感じていたようなので。
正直警察官としてFRSセンターのような機関で働ければとは思います。
そうですか。
それでも杉下さんは捜査を続けますよね?ええ。
たとえ警察にとって不都合な真実が出てくるとわかっていても…。
ええ。
日本の犯罪捜査の根幹になるかもしれないシステムを潰す事になっても…?そのシステムにすでに2人の命が奪われました。
だから事件を解決する…。
ええ。
しかし君には強制しません。
おはようございます。
強制はしないと言ったはずですが。
はい誰かから強制されて動くのはもうやめました。
ああこれは失礼ノックもせずに…。
なんですか?一体。
どちらへ?関係ないでしょう。
どいてください。
ちょっとだけお話を…。
こちらの会社を調べさせて頂きました。
はぁ?こちらの住所ですよねぇ?どう見てもダミー会社ですが。
ダミー会社をつくる事自体犯罪ではないはずですが?しかしこちら岩井さんの取引先なんですよね?岩井さんの葬儀の時あなたはこうおっしゃったはずです。
あなたも岩井さんの取引先の方?はい。
…にもかかわらずあなたはあの時会社関係の受付で手続きをしていました。
ふとその事が気になり芳名帳をお借りして調べた結果あなたが書いた人物の名前は会社には存在しませんでした。
そこであなたの車のナンバーを調べました。
こちらの会社名で登録されてましたよ。
この車を今朝Nシステムで調べたところ最後にこの近くのカメラに映ってました。
そこで今あなたがここにいる事がわかったんです。
岩井さんの葬儀の時あなたにはもう一つ気になるところがありました。
あの受付にはペンが用意されていました。
当然弔問客の皆さんはそのペンで記帳されていました。
しかしあなただけは…。
不自然だと思いました。
そうそうこのペンです。
失礼。
あっちょっと!こちらが電源ですね?光った…。
わかりづらいですがここがレンズですね。
でこちらがシャッター。
間違いありませんカメラです。
はいUSBメモリー。
つまりあなたはこのカメラで岩井さんの会社関係の名前を撮影していたんです。
なぜ私がそんな事を?様々な国の産業スパイが日本にダミー会社をつくり活動している事はよく知られています。
フフフッ私がその産業スパイだと?だからあなたは早乙女さんに近付いたんですね?彼の会社は産業スパイに狙われるような仕事をしていました。
その早乙女さんが会社からスパイ行為を疑われ首都警備保障の岩井さんが調べ始めました。
岩井さんは早乙女さんとあなたの接触に気づきあなたの事も調べ始めた。
その事を知ったあなたはそれを早乙女さんに伝えた。
スパイ行為がばれた早乙女さんは…。
追い詰められて自殺。
彼はそれを岩井さんに伝えたんでしょうね。
そのため岩井さんは伊達警視との約束をすっぽかし早乙女さんに会いに行った。
一方…。
な…何した?うぅ…。
(電話)
(留守番電話)「はい岩井です」それであなたは目的を果たしたはずでした。
しかしあなたは岩井さんがその日伊達警視と打ち合わせる予定だったデータを見てしまった。
防犯カメラFRSのデータはよほどあなたの興味をそそったのでしょう。
あなたはそれを盗み出しさらに完全なデータを手に入れるためあんな行動を取ってしまった。
あなたは次に接触する人間を探すつもりだったのでしょう。
全部憶測じゃねえかよ。
全てが憶測ではありません。
神戸君。
はい。
岩井さんが見つけたあなたと早乙女さんの映像です。
何か封筒のようなものを渡していますね。
電子部品の設計図か何かでしょうか?こんな不確かな映像なんの証拠にもなりませんよ。
確かにこれだけであなたを逮捕する事は無理です。
しかし産業スパイ容疑つまり改正不正競争防止法違反容疑であなたの指紋を採る事は出来ます。
そしてそれを岩井さんのご自宅の電話やパソコンに残されていた指紋と照合する事も出来ます。
いかがでしょう?
(伊丹)全国から技術者が集まるセミナーそこに来ていた早乙女に目をつけ友人になったそうです。
1年近くかけて付き合いを深くし小さな情報から聞き出し身動きが取れなくなったところで大きな情報を提供させる。
情報料は女。
金と違って証拠が残りません。
それが先ほど指紋を採取した男の供述です。
そしてその指紋が殺害現場の指紋と一致したため殺人容疑でも逮捕します。
報告は以上です。
すいません。
捜査が止まってなかったようです。
あらせっかく大河内君を止めたのに。
刑事事件として立件されれば防犯カメラFRSの事が公になってしまいます。
ああそれはもう手を打ちました。
1つだけわかりません。
はい?帝都物産の依頼で首都警備保障は岩井さんに早乙女さんを調べさせました。
ええ。
そして岩井さんは早乙女さんのスパイ行為をにおわせる映像をテスト中の防犯カメラ顔認証システムで見つけた。
なのにどうしてそれを伊達さんにも帝都物産にも伝えず自ら早乙女さんに接触したんでしょう?う〜ん…わかりませんよね。
2人とも亡くなってしまった今となっては…。
わかっているのは岩井さんが神になったような全能感とその重圧に追い詰められていたという事です。
伊達さんが言ってましたよね。
そして自らの抱えた秘密が露呈しそうになった時…。
1人は自ら死を選びもう1人は…。
秘密を知った人間として殺された…。
そんなきっかけになるのかもしれませんね監視カメラというものは。
まあ監視カメラにかかわる人間全てが聖人君子ってわけじゃないですからね。
そしてもちろん防犯カメラ顔認証システムにかかわるであろう人たちも…。
(電話)はい特命係。
あっ伊丹さん。
えっ?捜査一課から伺いました。
産業スパイの容疑については送検されないそうで…。
それをなんで僕に聞くの?秘密裏に開発していたシステムを捜査に利用した件はなかった事にする…。
そういう事でしょうか?大変官房長らしいやり方ですねぇ。
被害企業である帝都物産からの強い要望です。
産業スパイ事件が裁判になると警察が開発していたシステムもそうだけどスパイに盗まれた企業の機密情報も公になるから困るんだって。
欧米には機密情報を非公開にして裁判を進めるシステムもありますが日本にはまだそれはないですからね…。
その裁判の盲点を突いて帝都物産に因果を含ませた。
そういう事でしょうか?もっと早くこの件にかかわっていればもっとスマートなやり方があったんだけどね。
これが小野田官房長のやり方ですか…。
日本の国益を真っ先に考える警察庁のやり方です。
なるほど。
警察庁に戻ってきたくなっちゃった?
(ドアの開閉音)
(佐藤人事課長)FRSセンターですか。
官房長はご存じで?今日知りました。
すいません。
時期を見てと考えていましたが思わぬ事故が起きたもので…。
しかしテストの結果はおおむね良好だったと私は考えています。
(鈴木審議官)確かにこれを見る限り神戸尊を送って6か月特命係は相変わらず難事件を素早く解決している。
杉下右京と神戸尊2人が連携出来るかどうかのテストは成功と言っていいのではないでしょうか?
(横田参事官)まあ異論はないでしょう。
ではFRSセンターが出来た暁には2人を警察庁に戻しそれぞれ警視階級とし神戸警視は主任運用官杉下警視は主任捜査官という事で異議のある方は?ではそのように担当部局に伝えます。
いい人選でしたね…。
神戸尊君。
ええそう思います。
はい?6か月で警察庁へ戻す約束だったはずだ。
僕を処分するとかおっしゃってませんでした?防犯カメラ顔認証システムの件は公にならなかった。
で僕の処分も流れたと…。
小野田官房長に感謝しなさい。
うちへ戻ったら引き続きシステムの開発責任者として完成までの職務を全うし完成した暁には…。
ちょっと待ってください。
僕がその責任者に戻ったら伊達さんはまた僕の下で?彼女はミスを犯した。
いや伊達さんは優秀です。
今月中に完成なんて誰がやったって無理だったんです。
僕が引き継いだとしても…。
これは…決定事項です。
(ため息)僕はもうあのシステムには興味ありません。
彼女は今回の事故を起こした責任を取るそうだ。
えっ?依願退職扱いになりました。
そうですか。
退職金と共済年金は放棄させられちゃいましたけど。
そうですか。
もっと早く頼ればよかった。
下手なプライドに流されず…。
君の事だから再就職先も頼み込んでないんだろう?ピンチの時はもっと人に頼るべきだよ。
警察官になって初めて警察官らしい事を少しだけした気がします。
ありがとうございました。
もしかしたら…。
もしかしたら僕が彼女の立場だったのかもしれません。
おい寝てごまかすな。
はい…。
飲みましょう。
ねっ。
今日はもう飲んじゃいましょう。
あれ?あれっ?次何飲みます?なぜ本局復帰を断った?おっ!パルトネールありますよ。
結構安いし。
これにしましょう…。
降格されたまま特命係に残るつもりなのか?今の職場もそんなに悪くないですよ。
本局の仕事に未練があるんじゃないのか?ありませんよ。
なのにそんな飲み方するのか?美味しくいただいてますけど?FRSセンターが出来ればお前の能力が発揮出来る。
少なくとも警察庁で扱いづらい推薦組をしているより特命係に残ってくすぶっているよりずっと…。
僕もねしたくなったんですよ。
警察官らしい事をしたくなったんです僕もね。
それに特命係でくすぶってるようには見えなかった。
それがこの6か月間あの人を…杉下さんを観察した結果です。
お前と杉下さんの能力は違う。
官房長が僕をお呼びになった理由がわかりません。
理由ねえ…。
お前が警察庁に戻る前祝いって事でどう?僕が警察庁に戻るとは?映像を分析して捜査に生かすFRS捜査官。
お前に向いてると思うよ。
それはFRSセンターが出来た場合の話ですね。
今回の法案提出は見送られてもいずれ出来るでしょう。
今回の事件でまだ1つだけ解決していない事があります。
殺害された岩井さん彼は家に仕事のデータを持ち込んでいたそうです。
殺害された日は伊達警視と防犯カメラFRSについて打ち合わせをするはずでした。
…にもかかわらず彼の家からデータは無くなっていました。
つまり犯人が岩井さんを殺害後そのデータを盗んだのです。
きっともう海外のどこかの企業に流したあとでしょう。
犯人を産業スパイ容疑で送検しデータの内容を公にしていればその使用禁止も主張出来たかもしれません。
しかしどなたかがその容疑では送検しない事にしてしまいました。
近い将来海外で警察と連携した防犯カメラFRSが登場するかもしれません。
その国の国益として日本の警察がそのシステムを買う事は可能でしょう。
しかしそんな予算はありますかねぇ…。
ごちそうさまでした。
ありがとうございました。
(宮部たまき)なんかあったんですか?おや…なぜそう思うのでしょう?あなたと何年一緒にいたと思ってるんですか?いらっしゃいませ。
失礼こちらだと思いました。
どうぞ。
こちらで結構。
何か?神戸は本局へ戻らずイバラの道を選びました。
イバラの道?なんの話でしょう?本来警察の人事は拒否出来ません。
拒否すれば今後何が起きるかわかりません。
そういう話です。
これは何かの警告でしょうか?警告ではなくお願いです。
はい?神戸をよろしくお願いします。
すみませんでしたお騒がせして。
また一緒に来てくださいね。
誰とでしょう?決まってるじゃないですか。
神戸さんと。
明日美味しいお酒用意しておきますからね。
ああおはようございます。
おはようございます。
(ため息)二日酔いですか?ええまあ…。
大丈夫です。
ああ…。
ようこそ特命係へ。
なんですか?今さら。
僕は半年前から特命係の一員ですけど。
そうでしたね。
ところで神戸君。
はい。
今夜も飲めそうですか?はい?おい暇か?あっゆうべ飲んだね?いいねえ相変わらず暇そうで。
2015/05/05(火) 16:00〜17:53
ABCテレビ1
相棒 season8 #19[再][字]
「神の憂鬱」
詳細情報
◇番組内容
第19話「神の憂鬱」
ビルから男が転落死。速度違反取締カメラの誤作動が急増。なぜか捜査が上層部に止められるなか、尊(及川光博)は元部下の香(水野美紀)に接触し、右京(水谷豊)と巨大組織の暗部に挑む。尊が特命係にきたの真の理由が明らかに!
◇出演者
水谷豊・及川光博・益戸育江・岸部一徳
川原和久・大谷亮介・山中崇史・山西惇・六角精児
神保悟志・小野了・片桐竜次
【ゲスト】
水野美紀・寺泉憲・吉満涼太・清水章吾
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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