にらみ合う2頭のヒョウ。
オス同士の生き残りを懸けた戦いです。
一方はこの地に君臨する王者マダラ。
対するは若き挑戦者のジャック。
今回の主人公です。
ここに至るまでジャックにとっては長く険しい道のりでした。
獲物を狙っても…。
あっ逃げられた!よし今度こそ!狩りは失敗の連続です。
なんとバッファローが反撃。
草食動物にも脅されるほど追い詰められていました。
(うなり声)しかしジャックはサバンナをがむしゃらに生き抜き成長していきます。
そしてついに王者へ挑戦する時を迎えたんです。
果たして打ち負かすことはできるのか?王者をめざせ!若きオスヒョウの成長物語です。
(テーマ音楽)南アフリカにあるマラマラ動物保護区。
豊かな水量を持つ川が流れたくさんの命を育んでいます。
(鳴き声)豊富な獲物と身を隠せる茂みや木。
ここはヒョウが暮らすのにうってつけの場所です。
1頭のヒョウと出会いました。
もうすぐ2歳。
親から離れたばかりの若いオスです。
私たちは「ジャック」と名付け密着することにしました。
ジャックが茂みから何かを見つめています。
インパラです。
低く身構え忍び寄ります。
さあ狩りのお手並み拝見です。
あれれ?逃げられてしまいました。
インパラに近寄ることすらできなかったジャック。
狩りは失敗です。
でも獲物はインパラだけではありません。
ヒヒの群れを発見!この辺りに多いチャクマヒヒです。
(鳴き声)忍び寄るジャック。
(鳴き声)またもや相手に先に気付かれてしまいました。
簡単にはいきませんねぇ。
しかしその後向かった先に思わぬ幸運が待っていました。
群れからはぐれヒヒが1匹だけでいます。
これは絶好のチャンス!行きました!あ〜あまた失敗です。
あともう少しというところで気付かれてしまいました。
ヒョウといえば名ハンターのイメージがありますが最初から上手に狩りができるわけではないんですね。
ある日のこと。
ジャックは獲物とは違うにおいを感じ取りました。
メスのにおいです。
誘われるようにジャックはそのあとをたどります。
すると…。
メスには既に相手がいました。
気付いたオスは猛突進!ジャックはいちもくさんに逃げていきます。
ジャックを追い払ったこのオス。
体格も立派で見るからに強そうですね。
食べ物にもメスにも不自由しない暮らしぶり。
この一帯を支配しているオスで「マダラ」といいます。
マダラはかつて縄張りの乗っ取りを狙い挑戦してきた他のオスを殺したこともあるつわものです。
ジャックはそのマダラの縄張りでこっそり暮らしている身なんです。
(鳴き声)甲高い独特の声。
ハイエナです。
獲物を横取りするためジャックに付きまとっているようです。
(うなり声)激しく威嚇するジャック!これはケンカ勃発か?と思いきや木の上に逃げました。
(ハイエナの鳴き声)ハイエナはヒョウが最も苦手とする相手。
1頭でもヒョウと渡り合う強さがあるうえにいざとなれば群れの仲間を呼びます。
奪う物もなかったので去っていきました。
ふう〜やれやれ。
安全を確認すると降りてきました。
ジャックは縄張りの王者マダラ以外にもやっかいな敵を抱えているんです。
狩りの失敗が続くジャック。
そろそろかっこいいところを見せてほしいですね。
(鳴き声)すると願ってもないチャンスが到来。
ホロホロチョウの群れが近づいてきます。
おや?その様子をヒヒが見ています。
いい感じ。
あと少しです。
(鳴き声)うん?
(鳴き声)なんということでしょう!ヒヒがほえて鳥が逃げてしまいました。
失敗続きの狩りに邪魔者まで入るとは…。
まさに踏んだり蹴ったりです。
でも生きていくためには何か捕まえなくてはなりません。
今度は水場で獲物を見つけました。
どこか分かりますか?ここにいます。
トカゲです。
困った時はこんなに小さいものも狙うんです。
一緒に飛び込みました!さあ結果は?空振りでした。
小さなトカゲすら捕まえることができませんでした。
がんばれ!ジャック。
別の日大きな倒木の近くにやってきたジャック。
また何か見つけたようです。
おっと!転んでしまいました。
何が起きたんでしょう?トカゲを捕まえています!体が投げ出されても前足だけは離さないその執念!こうして少しずつ狩りのワザを身につけていくんですね。
とはいえ小さなトカゲだけではおなかの足しにはなりません。
より大きな獲物を求めてジャックはさまよい続けます。
夜。
ジャックがしきりに上のほうを見ています。
どうしたんでしょう?動物の死骸です。
木の上に蓄えるのはヒョウの習性。
誰の獲物でしょうか?あっと!ジャックが登り始めました。
これはまさか…。
盗み食いです。
空腹のあまり他のヒョウの獲物に手を出してしまうとは…。
その時忍び寄る者が。
固まるジャック。
まばたきもできません。
現れたのはマダラ。
彼の獲物だったんです。
どんどん近づいてきます。
ジャックは細い枝先まで避難。
どうなってしまうんでしょうか。
(うなり声)追い詰められたジャック。
危ない!ジャックは腰の引けたネコパンチで応戦。
しかしマダラの一撃で吹っ飛びます。
ところがマダラが引き返します。
獲物を奪い返すとそのまま行ってしまいました。
自分を脅かす相手ではないと思ったんでしょうか。
ジャックにとっては命拾いです。
マダラに力の差を見せつけられたジャック。
この日獲物を探していると出産直後のバッファローと出会いました。
でも子どもは死産だったようです。
(鳴き声)ジャックにとってはまたとない獲物です。
母親が離れた隙を狙おうとします。
しかし母親が気付きました。
次の瞬間。
(鳴き声)すさまじい怒りです。
ジャックはたじたじ。
独り立ちしたばかりの若いオスのヒョウ。
生きるのがここまで大変だったなんて知りませんでした。
いや〜なんとも情けないですなぁジャックは。
狩りも全然駄目だし怖〜い縄張りのボスはいるし。
この先ホントに大丈夫なんですかねぇ。
う〜ん正直このままでは厳しいですね。
でもこれはオスのヒョウが乗り越えないとならない試練なんですよ。
ほう。
どどういうこと?オスのヒョウは平均40平方キロメートルほどの広い縄張りを持ちしかも縄張りは密集しています。
ジャックのように独り立ちしたばかりのオスはその隙間を縫うように暮らさないといけないんです。
そうなんだ。
はい。
この生活から抜け出すには縄張りの王者と戦って勝つか王者が死ぬなどしていなくなるのを待つしかないんですよ。
なるほど。
今のジャックのような弱いヒョウたち「ジャックヒョウ勢力」は肩身が狭いんですな。
なんちゃって。
エッヘッヘッヘ。
え〜それは「弱小勢力」ですよね。
あ…はいそうなんですけど。
ヒゲじいそれにねこのマラマラ動物保護区の場合は特に厳しいんです。
どういうこと?ここの面積は135平方キロメートル。
オスの縄張りの面積で割るとわずか3頭分ほどしかありません。
ところがここでは20頭以上のオスが確認されているんです。
えっそんなにたくさんいるんですか!はい。
獲物が多くヒョウにとって恵まれた環境であるため競争が激しいんですよ。
そうかジャックが苦労するのも無理もないことなんですな。
そうなんです。
ヒョウは群れを作らず単独で暮らす動物。
どんなに厳しくても自分の力しか頼るものはないんです。
マラマラで生き残るためまらまら先は長いけどがんばれジャック!第2章ではジャックが王者マダラとついに対決。
果たして勝つのはどっち?突然ですがここで「ダーウィンNEWS」です。
沖縄から驚きの情報が寄せられました。
那覇市の繁華街を流れる川にとんでもない生きものが現れるというんです。
その生きものを釣ったことがあるという方と捜索開始。
何かが掛かりました。
釣れたのはなんとサメ!確かにこれはびっくり!このサメはオオメジロザメ。
最大で全長3メートルにもなります。
でもサメって海の魚でしたよね。
実は世界各地の川でオオメジロザメの姿が目撃されています。
しかしなぜ川に来るのかは謎。
佐藤さんはその理由を解明するため西表島で研究を進めています。
この川では琉球大学が魚類の調査のために網を仕掛けています。
そこに掛かるオオメジロザメの大きさや食べているものなどを調べるんです。
これまでの調査で捕まったのは全て1メートル前後の子どものサメ。
佐藤さんは川に上ることがオオメジロザメの成長に欠かせないのではないかと考えています。
謎だらけのサメオオメジロザメ。
調査の模様を追跡取材中です。
南アフリカマラマラ動物保護区。
若きオスのヒョウジャックが試練の日々を送っています。
ジャックは相変わらず王者マダラの縄張りで暮らしていました。
何か見つけました。
以前は全く歯が立たなかったインパラ。
狙うようです。
(鳴き声)逃げだすインパラ。
ジャックは逃げる方向をしっかりと読んでいました。
逃げ道を塞ぐように目にも留まらぬ速さで飛びかかります。
大物を見事しとめたジャック。
たくましくなってきました。
夜。
ヒョウが狩りの実力を最も発揮できる時間です。
闇に紛れてインパラに忍び寄るジャック。
またもや成功!ジャックは着実に名ハンターへの階段を上り始めているようです。
獲物にとどめを刺そうとしたその時。
(鳴き声)あの甲高い鳴き声。
ハイエナです。
獲物を横取りされてしまいました。
悔しいけど相手は強敵。
諦めるしかなさそうです。
ところが!ジャックは逃げません。
立ち向かうようです。
引かないジャック。
諦めたのはハイエナのほうでした。
見事獲物を取り返しました。
狩りの実力に加えジャックは度胸も据わってきたようです。
そんなある夜のことです。
ジャックは水場を訪れていました。
狩りではなく水を飲みに来ているようです。
立ち去ろうとした時…。
メスを見かけました。
ジャックはメスに近づいていきます。
メスも近寄ってきました。
何やらいい雰囲気です。
強くなったジャックにメスは引かれたんでしょうか。
2頭は結ばれました。
しかしここはマダラの縄張りです。
メスを奪ったことが分かればただでは済みません。
その心配が現実となる時が来ました。
マダラです。
においをたどって木の上で休んでいたジャックに近づいてきます。
マダラは力を付けていくジャックをこれ以上見過ごせなくなったんでしょうか。
(うなり声)盗み食いの時とは違いジャックは正面からぶつかります。
そのあと両者の長いにらみ合いが続きます。
その時でした。
(鳴き声)なんとライオンの群れがやってきたんです。
ライオンは同じ肉食動物のヒョウの存在を嫌がり殺すことがあります。
ヒョウ同士争っている場合ではありません。
部外者の登場でこの戦いは思いがけず中断されました。
しかしジャックとマダラの争いはこのままで済むことはなさそうです。
今回のことでマダラがジャックを狙っていることがはっきりしました。
目を付けられたジャックが選べる道は2つです。
この地にとどまるために戦うかここを去るか。
そしてジャックはこの地にとどまることを選びました。
縄張りの支配者であるマダラにとってそれは挑戦状。
許すことはできません。
決定的瞬間をカメラは捉えました。
鋭い爪と牙で激しく組み合う2頭。
生き残りを懸けた壮絶な戦いです。
左がジャック右がマダラです。
マダラの強烈なキック!しかしジャックはこの猛攻をこらえマダラが起き上がるのを許しません。
鋭い爪の攻撃にも耐えジャックはマダラを組み伏せます。
血みどろの戦いを制したのはジャックでした。
ついに自分の縄張りを手に入れたのです。
マラマラに新しい朝がやってきました。
ジャックの新しい王国の始まりです。
マダラと争った傷はまだ癒えていません。
それでもジャックは王者として次の挑戦者に備えなければなりません。
それが王者の宿命だからです。
オスのヒョウが挑む頂点への道のり。
それは駆け上がるものではなくいくつもの失敗を踏みしめて進むものでした。
その頂は試練を乗り越えたオスだけが立てる場所だったのです。
ここはアフリカのサバンナ。
今メスライオンたちの狩りが始まっています。
狙うのは大きな草食動物。
一方こちらはオス。
はるか後ろでのんびりと眺めています。
メスに追われて獲物が走りだしました。
待ち構える1頭がキャッチ!そこへもう1頭が駆けつけます。
見事な連係でメスの狩りは成功!すると…オスがやってきました。
なんとメスを追い払って獲物を横取り!ライオンの群れではオスの力は絶対なんです。
ちょっと待った!働かないで食べられるなんてオスライオンの暮らしって随分楽ですなぁ。
羨ましい。
う〜んヒゲじいそう思いますよね。
でもねオスにはオスの苦労があるんです。
えっそうなの?こちら食事中の若いオスたち。
そこに父親がやってきて追い払われてしまいました。
逆らえば徹底的にやられてしまいます。
容赦ありませんなぁ。
更にもう少し大きくなるとなんと父親によって群れから追放されてしまうんです。
大変だ。
そのあとは誰かの群れを命がけで奪い取らなければなりません。
まさに戦いの連続なんですなぁ。
はい。
今日は小さな赤ちゃんがいかにして百獣の王へと上り詰めるのかオスライオンの壮絶な生きざまに迫ります!お〜そりゃ絶対見なきゃ!
(テーマ音楽)どこまでも続く大草原。
東アフリカタンザニアのセレンゲティ平原です。
ここではサバンナのライオンの生態が詳しく研究されています。
首に発信機が付いているのが分かりますか?電波をたどって追跡するんです。
まずはオスとメスの生き方がいつから違ってくるのか研究者と共に探ってみましょう。
くつろぐライオンの群れを見つけました。
メスの足元に小さな子どもがたくさんいます。
生まれて2か月ほど。
かわいいですね〜。
今は動くものに興味津々。
親の尻尾の先を追っています。
猫じゃらしみたいですね。
このころはまだ研究者でも見ただけではオスとメスの区別はつきません。
メスと子どもを見守るように寝そべっているのは父親です。
ここでライオンの群れについてご説明しましょう。
群れの中心は血のつながったメスたち。
群れの縄張りは代々メスの家系で受け継がれていきます。
子どもたちの父であるオスは普通2〜3頭。
外からメスの縄張りにやってきた者たちです。
群れに入ったオスは他のオスにその座を奪われないよう縄張りを見回るようになります。
あっ木におしっこをかけています。
「ここはオレたちの縄張りだぞ!」とにおいで宣言しているんです。
(ライオンの鳴き声)一方こちらはメス。
闇に紛れて獲物を探しています。
狩りはメスの役目です。
移動中のヌーを見つけました。
格好の獲物です。
草むらから飛び出し背後から組みつきます。
別のメスが加わり協力してしとめます。
巧みな連係プレーで獲物を捕らえました。
するとオスがやってきました。
なんと力にものを言わせ食事中のメスたちを追い払います。
メスが倒した獲物を独り占めするオス。
そこへ別のメスが子どもを連れてやってきました。
あっオスが牙を見せていますね。
何とも怖い顔。
でも実はこれ喜びの表情。
子どもたちを歓迎しているんです。
子どもたちは自分の血を引き継ぐ大切な存在。
メスから奪った獲物を惜しげもなく食べさせます。
お父さん意外と子ぼんのうなようです。
さて子どもライオンの観察に戻りましょう。
生後4か月になる2頭の子どもがいる群れを見つけました。
研究者によるとこちらがメスでこちらがオスなんですが…。
見た目だけでは全然分かりませんね。
子どもたちはいつも一緒。
お乳を飲む時間も同じです。
だから体の大きさにも差がありません。
それから4か月後。
子どもたちは生後8か月になりました。
右がオス。
左がメス。
オスの方がほんの少し大きくなっているのが分かりますか?オスの子どもが1歳年上のお兄ちゃんと肩を並べて獲物にかじりついています。
生後8か月を過ぎるころからオスはメスよりよく食べるようになります。
だから体も大きくなるんです。
食べたらお昼寝。
この時オスの子どもとメスの子どもの行動に違いが見られました。
お兄ちゃんの脇にいるのはオスの子ども。
オスの子どもはお兄ちゃんに寄り添って眠る事が多くなっています。
お兄ちゃんに頭を擦りつけて挨拶する場面もよく見られます。
一方メスの子どもは母親の近くがお気に入り。
メスはメス同士オスはオス同士になっていきます。
でも遊ぶ時はまだオスもメスもありません。
子ネコのようにじゃれ合います。
こんなふうにオスとメスが一緒に遊ぶのは1歳ごろまでです。
1歳を過ぎると子どもたちにどんな変化が現れるんでしょうか?こちらが1歳になる子どもたち。
オスの子どもにはたてがみが生え始めています。
このころからオスとメスが見た目で区別できるようになります。
行動にも大きな違いが現れていました。
大人のメスに繰り返し子どもが組みついています。
こうして活発に動き回る子どもはメスばかりです。
オスの子どもたちは興味がなさそう。
ただ眺めています。
大人のメスとそれを追いかけるメスの子ども。
遊んでいるように見えますがこれ狩りの訓練なんです。
大人は獲物の役をして繰り返し子どもに襲わせます。
子どものタックルに合わせて大人が転びました。
将来狩りの担い手となるメスの子どもにはこんな英才教育が始まっているんです。
平原に大人のメスと1歳半になるメスの子どもが集まっていました。
このころになると狩りの実践訓練が始まります。
夜メスたちが動きだしました。
行く手にガゼルです。
若いメスたちの狩りが始まりました。
お見事!捕まえました。
メスはこうして次第に狩りの技を磨いていきます。
一方こちらは1歳半のオスたち。
もちろん狩りには参加しません。
ただメスの狩りを見ているだけ。
狩りが成功すると獲物を分けてもらうためにやってきます。
ちゃっかりしていますね〜。
ところがオスの子どもに対する父親の態度がこのころから変わります。
2歳になったオスの子どもが肉を食べていると…。
父親が追い払いました!父親はさらに子どもを遠くへ追いやろうとしています。
子どもは反撃しますが結局おなかを見せて降参です。
体は大きくなってもまだ父親にはかないません。
とうとうオスの子どもは縄張りの外まで追いやられてしまいました。
父親は狩りもせず獲物を食べるだけのオスの子どもが群れにとどまる事を許しません。
こうして攻撃を繰り返しついにはオスの子どもを群れから完全に追放してしまうんです。
ちょっと待った。
何ですか?ヒゲじい。
いや〜いくら狩りをしないで食べるだけだからって血を分けた自分の息子でしょ。
追放する事はないんじゃない?いえいえ放っておくとオスの子どもはすぐに大きくなって力も強くなります。
メスがとる獲物を奪い合うライバルになってしまうんですよ。
あっそうか。
そりゃ大変ですな。
はい。
だから父親はまだ子どもが弱いうちに群れから追い出すんです。
でも大事な子孫を残すためには大切に育てた方がいいんじゃないですかね?いいえその反対なんです。
反対ってどういう事?群れを追い出された若いオスは他の群れに入ろうとします。
もともといるオスと戦ってその座を奪えば自分の子孫を残す事ができます。
あっなるほど。
つまり父親にとってオスの子どもを追い出す事は自分の孫をサバンナのあちこちに広げる事になるんです。
そういう事か。
それにしても生まれ育った群れを追われてさすらいの旅に出るのが定めとは男はつらいおん!ヒゲじい。
それはライオンじゃなくてトラさんですよ。
それを言っちゃおしめえよ。
第2章では群れを追放された若いオスのその後に密着。
生きる支えはオス同士の絆でした。
オスライオンの象徴たてがみ。
かっこいいですよね〜。
ところでオスのたてがみって何のためにあるかご存じですか?実はたてがみにはメスを引きつける働きがあるんです。
どんなたてがみがメスにもてるのか?かつて研究者がユニークな実験を行いました。
用意したのは本物のライオンと同じ大きさの2体の縫いぐるみです。
1つには茶色のたてがみが取り付けられています。
もう1体には黒いたてがみを取り付けます。
2体の縫いぐるみを草原に並べメスライオンの反応を観察したんです。
こちらは研究者が撮影した実験の映像。
縫いぐるみを見つけたメスが近づいてきて座りました。
2つをじっくり見比べています。
しばらくするとメスは歩きだし茶色のたてがみの方へ行きました。
しかしここで方向転換。
最後は黒いたてがみの縫いぐるみに近づきました。
こうした実験を繰り返しメスは黒いたてがみのオスを好む事が分かったんです。
メスは黒いたてがみを見ると健康で強いオスだと感じます。
だからメスは黒いたてがみのオスを選ぶんです。
そうすれば強い子孫を多く残す事ができるのです。
確かに私たちの観察でも群れを支配するオスのたてがみはみんな黒っぽい色をしていました。
黒いたてがみをつくるのはテストステロンというホルモンです。
「自分は強いぞ!」という自覚がオスに生まれると脳からの指令によって盛んに分泌されると考えられています。
このテストステロンの量が増えるとたてがみの色は濃くなり反対に減ると色は薄くなってしまうんです。
黒いたてがみは厳しい試練を乗り越えてきた強いオスの証しなんですね。
ライオンのオスの子どもは生まれ育った群れから父親によって追い出されてしまう運命にあります。
ところが今回新たな発見がありました。
2歳になるオスの子どもを観察していた時の事です。
群れのメスたちの様子がいつもと違います。
歩いているのはオスの子ども。
左下で伏せているのは同じ群れの大人のメスです。
なんとメスがオスの子どもを威嚇したんです。
うなり声を上げ敵意をあらわにしています。
他のメスも繰り返し威嚇。
オスの子どもはたじたじです。
さらに食事中に決定的な出来事が起きました。
群れのメスたちに交ざって2歳になるオスの子どもが獲物を食べていると…。
メスがかみつきました!これは「食べるな出ていけ」という意思表示。
ついに実力行使に出たんです。
突然の出来事にオスの子どもは困惑しているようです。
その後2歳になるオスの子どもたちは群れを出ていきました。
オスのように激しい攻撃ではありませんがメスの執ような嫌がらせに耐えかねたんです。
これまでの研究では父親がオスの子どもを追い出す事はあっても母親であるメスたちが追い出す事はないと考えられてきました。
一体なぜメスたちはオスの子どもを追い出したんでしょうか?恐らくメスは新しく生まれた子どもに獲物を全て食べさせようとしたんでしょう。
幼い子どもに与える食べ物を大きくなったオスの子どもにとられるのを心配して追い出したのかもしれませんね。
母親たちによる執ような嫌がらせと父親による力ずくの攻撃で群れを追い出される。
オスってほんとにつらい運命を背負っているんですね。
木陰で休むライオンの集団。
ある群れから同時に追い出されたばかりの若いオスたちです。
もう何時間も座ったまま誰も動きだそうとしません。
「僕たちこれからどうなっちゃうんだろう?」と途方に暮れているのかもしれません。
やがてこの中から気の合う仲間を見つけ2〜3頭で放浪の旅に出ていきます。
ある夜放浪生活を始めた3頭の若いオスたちに出会いました。
どうやら獲物を探して草原を歩き回っているようです。
でも若いオスには狩りの経験がありません。
見つけたのは他の肉食動物の食べ残しでした。
百獣の王とは思えない惨めな姿ですね。
小さな肉のかけらでは到底おなかいっぱいにはなりません。
再び獲物を探して歩きます。
今度は食事中のハイエナの群れを見つけました。
1頭が猛突進してハイエナを蹴散らします。
まんまと横取り成功。
獲物は仲間と分け合います。
こうして互いに協力し合う信頼関係が出来上がっていきます。
あっ木におしっこをかけています。
縄張り宣言のつもりでしょうか?少し自信がついてきたのかもしれませんね。
共に苦難を乗り越え強い絆を築いていく仲間たち。
やがて誰かの群れを奪う戦いに一丸となって挑むのです。
ところがその大事な仲間を見つけられずにいる若いオスがいました。
自分の群れには他に年頃のオスがいないんです。
2歳4か月になるこの若オス。
普通ならとっくに群れを追い出されている年齢です。
でも残っているのには訳がありました。
それはこの群れの大きさです。
メンバーはオスとメスがそれぞれ2頭ずつ。
幼い子どもが2頭。
そしてこの若オスです。
この辺りでは最も小さな群れです。
小さな群れは狩りの時など人手不足になってしまいます。
そんな時若オスは小さな兄弟の面倒を見てくれるのでメスは大助かり。
だからメスに追い出されなかったんです。
でも父親はそんな群れの事情にはお構いなし。
攻撃は日に日に激しさを増しています。
もしこのまま仲間を持たずに群れを追い出されてしまったらこの若オスはまず生きていく事ができません。
そしてついに運命の日がやってきました。
メスが倒したシマウマを食べていた時の事。
案の定オスが獲物のにおいを嗅ぎつけて現れました。
オスは群れのメスと若オスを追い払います。
さらに獲物をそっちのけで若オスを執ように攻撃。
逃げる若オス。
そのまま群れから遠く離れて行ってしまいました。
その後獲物を食べ終えた父親が見回りに出かけても若オスが群れに帰ってくる事はありませんでした。
それから3日が過ぎても若オスは戻ってきません。
私たちは姿を消した若オスを捜す事にしました。
ライオンは日中木陰で休んでいる事が多いため木を一本一本調べる事から始めました。
ここにはいません。
その後も何本も木を見回りましたが見つかりません。
この木はどうでしょうか?ここにもいません。
その先の木の下にも姿はありません。
捜し始めてから3時間。
あっ何かいます。
ライオンです。
若いオスが3頭。
この中にあの若オスがいるかもしれません。
捜している若オスの右足には傷痕があります。
調べてみるとこの3頭には同じ傷は見当たりませんでした。
一体あの若オスはどこに行ってしまったんでしょうか?木立がなくなりもう発見は無理かと思われた時の事です。
草原の真ん中にライオンの姿を見つけました。
2頭の若いオスです。
あっ右足のももに傷痕があります。
あの若オスに間違いありません。
良かった。
無事だったんです。
隣にいたのはちょうど同じ年頃のオス。
2頭はそれぞれの群れを出て放浪している時偶然出会ったようです。
たった一頭で群れを追われた若いオスは血のつながりはなくても行動を共にする事があります。
2頭の若オスは厳しいサバンナで生き抜くための掛けがえのない仲間を得たのです。
でも大変なのはこれからです。
普通群れを出た若オスが自らの群れを築くには2〜3年かかります。
それまで仲間と力を合わせて生き抜いていかなければなりません。
真の百獣の王となるための長い旅は今始まったばかりです。
2015/05/06(水) 02:25〜03:23
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!セレクション「強く!たくましく!旅立て子どもたち」[字]
これまでの「ダーウィンが来た!」から子どもたちの成長物語をセレクト!王者をめざす若きオスヒョウ、そして「百獣の王」へと成長していくオスのライオンたちに密着。
詳細情報
番組内容
これまでの「ダーウィンが来た!」から子どもたちの成長物語をセレクト!南アフリカの動物保護区ではひとり立ち直後のオスヒョウに密着。放浪生活を乗り越え、力をつけた若オスは縄張りの王者に勝負を挑む。ヒョウVSヒョウ、死闘の結末は?また、タンザニアのセレンゲティ平原ではライオンのオスの成長に迫る。赤ちゃん時代から群れを追放される青年期まで、様々な年齢のオスたちに密着し、「百獣の王」への成長と旅立ちを描く。
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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