「きょうの健康」今週は「メディカルジャーナル特集医療の未来」と題しまして日本医学会総会の会場からお伝えしております。
今日明日ご一緒して下さいますのは宮川大助・花子さんでいらっしゃいます。
ありがとうございます。
よろしくお願い致します。
今日のテーマは「副作用の少ない放射線治療」という事でお話をします。
まず大助さんどうですか?どんなイメージおありですか?うちの女房も胃がんをやってるんで当時放射線治療ってあったかな?私はね抗がん剤と手術です。
だからすごく興味があるしどういうものかなというのはまだ知識的にあまりないですね。
それではお話し頂く方ご紹介致します。
今日お話し下さいますのは…放射線治療がご専門で最先端の放射線治療装置を開発されました。
どうぞよろしくお願い致します。
(拍手)今がんに対する放射線治療どの辺りにあるどの辺りに来ていると考えたらいいんですか?がん治療の3本柱というのは手術放射線治療抗がん剤です。
昔はとにかく手術が大事だったんですけれども放射線治療も非常に進歩しましてそういう中で手術に比べるとまだ効果が少ない面もあるんですけれどもむしろQOLというんですか体に楽なという意味で最近放射線治療を選択される方も非常に増えております。
放射線治療の対象なんですけれどほとんどのがんが今は放射線治療の対象になりつつあります。
そもそもこの放射線治療どんなふうに進歩してきたのかお話し下さい。
放射線治療の多くはですねこのような装置を使って外から放射線を体の中に当てるという方法です。
外からがんに放射線を当てるといいますとやっぱりその周囲に正常組織もたくさんある訳ですよね。
そうなると必然的に正常組織にも放射線が当たると。
皮膚の炎症ですよね。
そして骨髄への障害という事で白血球が少なくなるとかあと放射線による肺炎が起こるとか消化管の出血潰瘍が起こる。
そういうふうな事があります。
やはり副作用をいかに避けるかという事が大きな課題になりましてそれを避けるために新しい方法が開拓されております。
まずその前に従来の放射線治療を説明させて頂きます。
これ肺の所です。
肺の所にですね赤いものがありますよね。
あれががん?小さな肺がんです。
昔は矢印の示してますように前と後ろからがんを挟み撃つように放射線を当ててた訳です。
治療しました。
そうしますとこのような分布になります。
でもほかに肺全部に行ってしまってますよね。
そうなんです。
これではがんが治ってもその周辺の肺に副作用が起こってしまうという事がある訳です。
やはり副作用をいかに避けるかという事が大きな課題になりまして新しい治療法というのができた訳です。
新しい治療法は2つあります。
その一つが定位放射線治療です。
がんの大きさに合わせて細く絞った放射線を複数の方向から当てます。
こうするとがんだけに多くの放射線が当たり正常組織に当たる放射線を少なくする事ができるのです。
この方法は5センチ以内の肺がんと肝がんで行われています。
もう一つは前立腺がんのようにほかの臓器に囲まれている場合に特に有効な方法です。
それは強度変調放射線治療です。
当てる放射線の強さをきめ細かく変えるのです。
5ミリ角ごとに放射線の強さを10段階で変えます。
白い部分の放射線は弱く黒が濃くなるほど放射線が強くなっています。
膀胱に当たってしまうこの部分は放射線を弱くしています。
更に前立腺の向こう側にある大腸に当たるこの部分も放射線を弱くしています。
そして膀胱にも大腸にも当たらず前立腺だけに当たる赤の部分の放射線だけを強くするのです。
同じ要領で別の角度からも放射線を当てます。
膀胱と大腸に当たる部分の放射線は弱くし前立腺だけに強い放射線を当てていきます。
こうする事で膀胱と大腸に当たる放射線を最小限に抑えがんのある前立腺に強い放射線を当てる事が可能となったのです
「すごいね」って今おっしゃってましたけど。
挟まれてる訳でしょ?できるだけ当てたくない訳でしょうね。
それを避けてっていうのは…。
あれすごい。
普通やったらこことりあえず治すためには全部いこうと。
後からこっち治療したらええやんっていうのが普通ですけどああいうふうに繊細な治療方法があるんですね。
ただいずれも基本的には転移をしていないがんが対象になります。
なるほどね。
そうか。
転移してたら大変ですもんね。
従来の放射線治療に代わる副作用の少ない放射線として定位放射線治療そして強度変調放射線治療があってより副作用が少なくなってきたという事なんですけれどもこれである程度全てというか解決できたと考えていいんですか?そんな事はないんですよね。
ちょっと安心してましたのに何ですかまた怖い事言われる。
まだまだ大きな課題がありましてそれが何だと思います?ここにちょっと示してますけども…。
この○○って何だと思います?肺って2つありますやん?2つあるからかな?レントゲン写真撮る時によく息止めて下さいってよく言うじゃないですか。
ええ。
当たりです。
えっどういう事?呼吸です。
いやちょっと。
呼吸です。
呼吸の事なんだ。
ええ。
やった。
肺というものは呼吸によって動いてる訳なんですよ。
そうしますと狙い撃ちが非常に難しくなります。
これ実際の肺にがんを持ってる患者さんの写真です。
黒い部分ですね。
黒いのががんなんです。
呼吸をしますとこういうふうに動く訳ですね。
こんなに動きますか。
すごい動いてるでしょ?でこれ目盛りがですね1つが1cmなんですけれども…。
うわ〜結構動く。
軽く2センチ動くんですよね。
で人によって4cmぐらい動くと。
そうなりますとですねこれを全部カバーするためには広い範囲を当てなあかんと。
そういうふうな問題が起こる訳です。
ほんなら患者さん「息止めて下さい」言うてて30秒ぐらい息止めてるんですか?いやしんどいよでも。
考えてみ。
今から息ちょっと30秒止めとき。
いくでさんはい。
その間どうぞお話し下さい。
いやいやもう大丈夫大丈夫。
息を止めるとなったらやっぱりしんどいんでね例えば動いたりするんですよね。
だからそういう意味では息も止めずに普通の呼吸した状態でがんを狙い撃ちにするというのを考えたんですよ。
これが呼吸で動くがんに放射線を正確に当てる動体追尾放射線治療の装置です。
呼吸で動くがんの位置を捉えるため放射線照射口の両側にX線画像装置が搭載されています
2つの角度からがんの位置を立体的に捉えるのです。
がんの近くに前もって金属のマーカーを埋め込んでおきます。
緑の印が4つのマーカー。
ピンクで囲んだ部分ががんです。
このマーカーの動きに合わせて放射線を当てるのです。
この部分が装置の心臓部です。
呼吸で動くがんに合わせて放射線の照射口を動かすのです
呼吸に合わせて動かない従来の装置で肺がんを治療する場合呼吸でがんが動いても放射線が当たるように範囲を広くする必要がありました
そのため正常な肝臓にまで放射線が当たってしまう事がありました
一方呼吸に合わせて動く装置では正常な肝臓に放射線を当てる事なく肺のがんだけに強い放射線を当てる事ができるようになりました。
その結果放射線の当たる部分が3割以上減少。
肺の正常な部分に当たる放射線の量も大幅に減りました
すごい!何かロケットの追尾装置みたいなね。
追尾装置みたいですよね。
そうですよね。
これはもう今使われてるんですか?実際使われてて国内外大体今20施設ぐらいの病院で動いてます。
どんながんに使われてるのか教えて頂けますか?これは呼吸で動く臓器にできたがんです。
いずれも治療の難しいがんだという事で大変期待されてるというふうに思ってます。
副作用についてはどうなんでしょうかしら?照射する容積ですか範囲がですね明らかに減ってるんですよね。
実際のまだそれほど期間は短いんですけれどもその中では明らかに副作用減ってます。
例えば肺がんだったら治療してひとつきぐらいで放射線肺炎というのが起こるんですけれどもその頻度も何て言うんですか副作用の強さも明らかに少なくなってます。
肝がんもしかりです。
すい臓がんも肝臓とか消化管の障害が少なくなっておりますのでそういう意味では今の段階では非常に有望だというふうに考えております。
このあとどんなふうにして展開していくんでしょうか?一つの大きな方向性というのは今までは要するに正常組織を避けていかにがんに放射線を集中するかという話でしたよね。
これからはがんもそれぞれ個性があるんですよ。
だからがんの中をどういうふうに個性に合った治療をするかというところに今大きな目標がいってます。
これは喉の奥いわゆるへんとうといってましたね。
へんとう腺のある所。
そこにできたがんなんです。
中咽頭がんといいます。
その中の赤くなってる所というのはPETで使いますと低酸素の所が分かる訳です。
この低酸素領域というのは非常に放射線が効きづらいんです。
そもそも低酸素どうしてこういう所はですね効きづらいんでしょうか。
がん細胞のDNAがある訳ですがそれが放射線によって損傷を受けてがん細胞が死ぬ訳です。
なぜ死ぬかなんですけれども放射線は体の中にいっぱいある水分子と反応してそこからラジカルという非常に活動性の高いものができます。
それによってDNAが損傷を受ける訳なんですがそこに酸素があるとその損傷が非常に多く起こります。
逆に酸素が少ないとなかなかそれが起こりにくいという事で酸素のあるなしというのが損傷に影響を与える訳なんです。
そういう事か。
だからそこを見つけてそこにほかの所よりもより多くの放射線を当てるとこういう低酸素領域を持ったがんもしっかり放射線で治療できるという事が期待できる訳です。
いかがですか?今までと違って相当この放射線治療も進んできてるなという実感を持ったんですが今日はどんな感想をお持ちになりました?ピンポイントでピンポイントでなってあれはすごいな〜と思う。
だからもう10年もしたらすごい技術になるんじゃないですかね。
あと10年たったら。
今日お聞きになっていかがですか?自分の時はほんまにがん言われた時死んでしまうんやって自分ですごく思ってしまったんですが今はいろんな方法があるので今回もあったように抗がん治療もありますし手術もありますしそして今回新しい放射線治療というのがあるから自分でいろんなものをチョイスしてほんで主治医の先生といろいろ話し合う。
その前に病気にならない事が一番大事なので検診に行かなあかんなとすごい思いました。
早期発見定期点検やもん。
ね!さっきお示しした定位放射線治療なんかほとんど外来でできるんです放射線治療って。
外来で?入院しなくていいんですか?そうなんですよ。
多くの放射線治療は外来でできるんですよ。
だから普通の仕事をしてですねその前に放射線治療をするという事も可能なんですよ。
だから多分皆さんが考えてるよりも放射線治療ははるかに楽な治療に今なってると思います。
更にその先には個々の患者さんに合った最適な治療を個別的にできるというそういう時代ももう近づいてるという事で是非放射線治療にも期待して頂きたいと思います。
明かりが見えたような。
希望の明かりが見えたようなねうれしいものが湧きました。
ありがとうございます。
ありがとうございました。
今日は大助・花子さんそして平岡先生にお話し頂きました。
どうもありがとうございました。
(拍手)2015/05/06(水) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル特集 医療の未来▽副作用の少ない放射線治療[解][字]
放射線治療は正常臓器に当たる放射線量を減らす方向で技術革新が行われてきた。定位、強度変調、動体追尾など革新的な方法が次々に登場。放射線治療の最前線を紹介する。
詳細情報
番組内容
がん治療の一つである放射線治療は、放射線を体の外部から当てるため、正常な臓器にも放射線が当たってしまい、肺炎などの副作用が起きることがある。そこで正常臓器に当たる放射線量を減らす方向で技術革新が行われてきた。定位、強度変調、動体追尾など革新的な方法が次々に登場している。将来はがんの内部に当てる放射線量を細かく変えることで治療効果をさらに高める技術開発が進むと考えられている。
出演者
【ゲスト】宮川大助・花子,【講師】京都大学教授…平岡真寛,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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