NHK俳句 題「五月」 2015.05.06


「NHK俳句」の時間です。
第1週の選者は池田澄子さんです。
どうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今月は「五月」という題を出してしまって作ろうと思ったら難しくて大変でした。
いや〜多分視聴者の皆さんもそう思っていらっしゃるのではと思います。
そして今日のゲストは俳優の中島歩さんです。
(中島)はい。
お邪魔します。
中島さんは昨年…今聞こえてきました「花子とアン」にご出演でした。
白蓮の駆け落ちの相手の宮本龍一さんの役でした。
はいそうでした。
でご自身は国木田独歩の玄孫でいらっしゃると伺っています。
俳句という文芸についてはどんなものって印象ありますか?どんな…。
あの〜すごい素人ではあるんですけどもこれを機にねいろんな勉強ができればと思っております。
俳句は何か即興でねパパッと出てきて思いを伝えるみたいなとこがありますね。
そうですね。
何かこう心の…見たものだったり感じた事をメモするというような印象があってあと思いを伝えるものになったりもしますよね。
え…?あの実はその思いを伝えるものを池田さんがご準備なさっていると先ほど私も伺って…。
え?何ですか?自分から出すのは恥ずかしいんですけどご挨拶句を持ってきました。
そんな挨拶句…挨拶句ってものがあるんですね。
え?これ僕にですか?はい。
じゃあ是非読んで頂きましょう。
「独り歩みきて君よ新樹のように立つ」。
では私が視聴者の方にお見せしましょうね。
「独り歩き」…。
「歩みきて」。
「歩みきて」…。
「新樹」って何ですか?あのね緑の始まった木。
ああちょうど今ぐらいの木。
青々とした木。
実はこのお名前を詠み込むこれであれば「独歩」あるいは「歩」さんというお名前。
これを詠み込むのが挨拶句の一つのお約束という事で今日はようこそおいで下さいました。
この五月のよき日にという事でご披露頂きました。
突然すみません。
いえいえありがとうございます。
是非お土産に…。
でも番組はこれからですからね。
はい。
今日の兼題はその「五月」です。
池田さん。
冒頭の句のご説明…。
作者が言ってもしょうがないんですけどねまあできる事なら全ての命へのことほぎというような感じに読んで頂けたら嬉しいなと思っていますけど責任持てません。
中島さんそんなふうに読めましたかしら?そうですね。
この字面といいその音の感じといいすごいにぎやかさを感じるっていうか木も花も草も人も…。
何かそういったにぎやかさを感じました。
じゃあまた後ほどいろいろお話を伺いましょう。
それでは池田さんが選んだ入選句を早速ご紹介しましょう。
「そうなのか」ってハッとしました。
自分ではもう春も過ぎてっていうような気分でいますけれども日本は広いんだなと思いましたね。
ここは北海道。
思いつかせて頂きました。
北海道の方なんですね。
2番です。
「草千里」を私見た事はないんですね。
ないんですけれども何か馬も作者もそれから読んだ私たちもとっても気持ちのよい広々とした…。
でまた句の言葉も格調高く滑らかに作られていてとても感心しました。
草原ですね。
具体的な地名あるいは本当に一般的な広い草原も印象づけられます。
3番です。
人も動物もそれから鳥も魚も虫でもね母親っていうのは本当に命を懸けて子どもを守るっていう本能がありますよね。
でこの「ひたすら」がとてもそれを表してるんじゃないんですか。
ひたすら一生懸命食べて子どもにおっぱいをあげるのかなと…。
「ひたすら」に愛がありますよね。
はい。
4番です。
「子宮とる」なんていう事は一大事ですよね。
でもこの方は一大事じゃないようにあっさりと書かれていて…。
で俳句っていうのはこういう時に何か救ってくれる文芸だなっていう気もしますね。
でもさすがにこの「とることに」の「とる」が平仮名で書いてありますよね。
これはやっぱり漢字の「取る」という字は使えなかったんじゃないかと思います作者が。
5番です。
五月という明るさの中での戸惑いですかしらね。
でその置き場のない物のように自分の自由になってくれない自分の心っていう事ですね。
ただこういう俳句は嫌われる場合がありますね。
これは俳句じゃないとおっしゃる方もいるかもしれない。
それを覚悟の上で時にはこういうところにも挑戦して頂きたいなと思いますね。
中島さん。
五月病なんていう言葉もありますけども…。
僕はすごいこれただただ共感したんですけども何かこう4月っていうのが始まりの季節でっていうか月で五月となると何かこう…ここにいていいんだろうかとかそういう後悔とかが何か自分の経験上ある月なのですごいこの句には共感させて頂きました。
ものが見えないという点では作るの勇気いるけれども共感を呼ぶ句ですね。
あっものが見えないから…。
俳句ではあまりね。
あっそうなんですね。
はい。
6番です。
あの〜はともすずめもそれから人も地べたにいる嬉しさっていうのかしらね。
あの…「みんな」かな?っていうのがちょっとあるんですけれどねでも何かとても楽しい景じゃないでしょうか。
はい。
7番です。
「えふりこき」っていうのは「見えっ張り」っていう意味の方言のようですね。
修司をけなしながらええかっこしいの修司なんだからみたいにけなしながら懐かしんでいる。
で「五月遥かなり」っていう事はやっぱり五月のたかぎが下敷きにあっての言葉だと思いますね。
第1作品集もね「われに五月を」ですか。
やはり五月というのは特別な月なんですね。
「修司」ってこれ寺山修司さんの事ですか?はい。
この「えふりこき」も多分寺山修司さんの出身地の青森の…。
今の発音でよろしいのかどうか。
ご指摘をね…。
苦情の電話が入るかもしれないですね。
中島さん。
寺山修司さんが好きという事を伺って…。
はい。
寺山さん大好きなので…。
えっはい。
じゃあまたその話も後ほどたっぷり伺いましょう。
8番です。
不自由を我慢していらしたんでしょうね。
そのコルセットが取れた。
傷が癒えたのかいろいろあるでしょうけれどもさぞや「五月の風」はおいしかっただろうなと想像できますね。
はい。
9番です。
この句は自分の気持ちを全く何にも言ってないんですね。
で「生成り木綿のワンピース」。
これがもしも「夏が来て生成り木綿のワンピース」だったらばあまりにも当たり前で何ともないですね。
もうこの「五月来る」が微妙にとても楽しい。
あの〜ワンピースが待っていたみたい。
着る人も季節を待ちきれないみたいな…。
こんな女性思い浮かぶでしょうか?そうですね。
何か生成り木綿っていう…。
肌触りね。
手触り。
僕も生成り木綿が好きっていうのもありますけど一番気持ちよく着れるものだと僕は思うので何かすごい…。
「生成り木綿」っていう言葉も何か柔らかくてすごい好きなので僕はこの句はすごい…一番好きでしたね。
という事で入選九句が出そろいました。
ここから中島さんと私で本日の特選句を予想していきます。
入選九句ちょっとおさらいしてみましょう。
出ますでしょうか。
視聴者の皆さんも見ながら一緒に予想してみて下さい。
この中で中島さん気になった句というのはいかがでしょうか?そうですね。
僕はやっぱ9番のが気になったんですけども池田先生がこれ特選されるって事ですよね。
予想ですねそれを…。
…ってなると池田先生好みのあんま指摘が入らなかったやつがどれなんだろう?推測をなさってますね。
でも9番はちょっと共感した感じがしますね先生と。
私ね全部共感してますよ。
ああそうなんですね。
だってもう本当に5,000句ぐらいの中から9句しか採ってないんですからね。
どれがあれでも特選でも大丈夫。
中島さんがすごく…池田さんはどうあれ僕はこれが好きっていうのはありますか?僕は共感したのは5番で一番好きなのは9番ですね。
5番の「置き場所に困る五月の心かな」。
そして9番の「五月来る生成り木綿のワンピース」。
私は3番の「母山羊のひたすら食みて五月来ぬ」子育てに備えてお母さんがまず強くなるっていう何か命の賛歌みたいなものを感じました。
さてじゃあ池田さんのいよいよ特選にいって頂きましょう。
さあどの句が特選に選ばれるんでしょうか。
それでは本日の特選句です。
まず三席から。
5番のキヨハラマキコさんの句です。
はい。
清弘真紀子さんでしたね。
ごめんなさい。
直しを入れてしまって…。
では二席の句をお願いします。
ここに二席が来ましたか。
では一席をお願いします。
以上です。
おめでとうございます。
中島さんはちょっと惜しかったですね。
でもねこの2句を採って頂くと…思わなかった訳ではないけれども嬉しいです。
うん。
池田さんは今の特選句第一席特にどこがよかったでしょうか。
言葉も景もここまで晴れやかにね美しくどっしりと気持ちよく一句作るっていうのは大変な事だと思うんですね。
私はこういう句作れないんですよ。
こういう立派な句は作れないんですね。
自分が作れない句っていうのはやっぱりときめきますね。
採らざるをえません。
この「も」っていうのはどんなふうに読んだらよろしいんでしょうかね。
ん?「馬も」?あ〜何だろう…。
簡単に言えないけど鼻鳴らす馬も全て…。
馬も何もかも。
そこに「も」の皆みたいな背景も見えてくるんですね。
でこの「馬も五月の草千里」ってすごく調べがいいですよね。
それはそうですね。
立派な句ですから何か採らざるをえないなという…立派な句だと思います。
はい。
以上が今週の特選でした。
ご紹介した入選句とそのほかの佳作の作品は「NHK俳句」テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報もご参考になさって下さい。
それではここで投稿のご案内にいきましょう。
ご自身の作品で未発表のものに限ります。
続いては添削のコーナーです。
こうするともっとよくなるのにというポイントを教えて頂きます。
では早速句を出して頂きましょう。
「よく笑ふ息子」っていうのがね帰ってきたり親にとってはすごくかわいくって楽しいだろうと思うんですよね。
ところがですね…あっその前に「帰る」と言っている訳ですからこの息子さんは成人していますね。
ほぼね。
学生でもあるかな。
親元を離れているという…。
という事は親御さんである作者もそんなに若くはないって事が分かりますよね。
ところが「息子の帰る」っていうのはそのどこからどこへ帰るのか分かりますか?そうか…。
両方に読めてしまうよね。
で帰ってきたのか帰っていったのかで全く違う気分の句になるんですね。
例えば帰っていったとしますね。
そうすると…寂しくなっちゃったんですね。
五月楽しかったのに寂しくなった。
それから…ですと楽しいゴールデンウイークが始まってるという感じになりますね。
なるほど。
その作り手は自分の状況分かっているけれども読み手はそうではないからもっとはっきりさせましょうという…そういうポイントかなと思いました。
以上俳句作りの参考になさって下さい。
それでは池田さんの年間テーマ「びっくりして嬉しくなる俳句」についてここからは中島さんも一緒にお話を伺っていきたいと思います。
今日のテーマは「少しの言葉なのに」です。
ではその何か例句があるでしょうか。
そうですね。
五月っていうと私この句を思い出してしまうんですよね。
でこの句だけではなくて五月っていうと寺山修司を思い出すっていう感じがあります。
中島さんはこの句をどういうふうに読まれます?そうですね。
これは…。
まあさっきも言った事ですけど五月っていう月が僕はちょっと出遅れた季節…。
4月のスタートから何かするにはちょっと遅れた月だっていうふうな印象がありまして「鷹」っていうのがすごい自由に飛び回ってすごい意志的な象徴に思えるんですよね。
それを「統ぶ」…何でしょう。
自分を支配してる五月の鷹。
何かこうどこにも行けなかった自分と自由に飛び回っている意志的な鳥っていうのの対比。
何かこう自分が劣等感を感じてるような印象を僕は受けましたね。
鷹に支配されている訳ですよね。
で鷹に支配されているっていう意識っていうのはある意味鷹から自分は選ばれたんだ。
鷹が全部を支配してるんじゃなくて僕を選んで僕を支配しているんだっていうようなそんなふうな感じを私は持つんですよね。
そうするとその選ばれているっていう優越感が恍惚感があってうぬぼれもあってだけどもその支配から自分は逃れられないっていうようなこう自分は羽ばたけないというような屈辱感というか劣等感というかそういう青年像がここで思い浮かべられて…。
でこの少年から青年になる男…一人の男が見事に描かれているなと思うんですね。
たっただからこんな少ない言葉なのに一人の人物をこれだけ語り尽くす事ができるんだなっていう事で本当にあの〜少しの言葉だからできる事なのかもしれないし俳句ってすごいなとまたびっくりするんですよね。
そうですね。
この十七音の中に「若い」とか「青春」とか入ってないけれどもでも青春の張りみたいの感じますね。
またその「目つむりていても」っていうとこもいろんな読み方できそうですね。
中島さんどんなふうにお読みになりますか?まあ「目つぶっていても」「目をつぶっていても」…。
そうですね。
「目を開けてても」って事ですよね。
そうです。
「目を開けててもつむっても」…。
常にっていう事ですよね。
いつもいつでもどこでもこういう状態だっていう事でまあ何でしょう。
ある意味呪われてるっていうかとらわれてしまってる…。
とらわれている快感と…。
快感?快感もあると思う。
とらわれて…。
「みんなを」じゃないんだから。
自分だけなんだからとらわれている快感というのがかなりあるんじゃないでしょうか。
何かね私鷹って群れないじゃないですか。
いつも一羽で高みを目指していく。
そうするとこの「統ぶ」も何か支配するっていう自分を高みに導いてくれている。
自分は群れない友達もいない協調性もない独りのやつだけど鷹に導かれてどこまでも高く行くぞみたいな事を感じました。
先ほど中島さん。
寺山修司がお好きだという事でこの句入ってる句集があるんですね。
「花粉航海」。
その中から中島さんにもう一句好きな句をお願いしますという事を私申し上げていかがでしょうか。
何か好きな句ありましたか?あの〜こちらの句です。
あっ出ましたね。
これはちょっと何か一目見てぞっとした句だったんですね。
それは寺山修司さんの情報を僕が持ってるからっていう…。
あの方はすごいお母さんへのコンプレックスが強かった方ですよね。
それでそういった情報をもってしてこれを読むと「ひとさし指」っていうのが僕はお母さん指って事でお母さんの事だと思って…。
よくお父さんお母さんを…お兄さんお姉さんとかするそのお母さん。
それを母の墓に見立ててっていう…。
「秋風」っていうのがすごい僕はいろいろ失われてくような情景だと思うんですよね。
葉っぱが落ちてくっていう事で。
それと透明感がありますよね。
透明感?うん…。
「春風」だと透明感ないんだけど何か「秋風」っていうと透明感があると感じますね。
何か僕はちょっと冷たいさみしい風だなっていうような印象がありますね。
私は実は寺山修司のその成育歴とか家族関係って知らないんですけれどもその私が読んでも何か風が吹いてくるような感じ。
そのたくさんどこ指しても人が死んでる…墓がある。
でそのひとさし指は誰なんだろう。
もしかしたらそれがたまたま指したけど自分にとって大切な人のお墓かもしれないっていう…。
ひとさし指が指しているっていうふうにお読みになったのかな?そうです。
たまたま指した所に…。
私はねひとさし指をこう…自分がこう秋風の中で指を立てたらばこれがお墓みたいな感じが…。
多分僕もそういう風景でこれが…例えば野原があってこうやるとお墓に見えてひとさし指…お母さん指の墓になるっていうそういう景色が僕はこの句から…。
これはお母さん指だから母を思っているっていうのはちょっと新しい読みかもしれない。
そうですか。
ありがとうございます。
そもそも寺山との出会いというかどうして好きになったんでしょうか。
文芸学科に大学の頃入っていたのでそれでよく本を読む友人から「寺山も読んでないのか」という事で…。
今でもそうなんだ。
映画とか写真とか演劇もそれから好きになって…。
何かこう物とか人があと事柄とかが全部ごちゃ混ぜになってその場にあるっていうのがそれは寺山さんの俳句からも感じた事なんですけど…。
演劇をなさるようになっていかがでしょうかね。
演劇をするようになってやっぱこう…あんまり物語が面白い演劇じゃなかったりいろんな装飾が面白い演劇なので本当サーカスを見ているような演劇ですよね。
だからそういうレトリックがきいた作品なのですごい僕は好きなんですけれども…。
何かそのいろんな表現を持った寺山修司。
最初と最後が俳句という事を伺って俳句の応援団としてはちょっと嬉しいようなもっと知りたいような気持ちになりました。
あっ何か寺山が人生が足りなかったように私たちにもあっという間に時間が足りなくなってしまいました。
おっうまい事を…。
なんとかまとめて今日はゲストに中島歩さんをお招きしてお送りしました。
中島さん池田さんありがとうございました。
それではまた来週この時間にお目にかかりましょう。
2015/05/06(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「五月」[字]

選者は池田澄子さん。ゲストは俳優の中島歩さん。題は「五月」。五月を詠んだ俳句で有名なのは寺山修司。作品集「われに五月を」におさめられた俳句を読み解いてゆく。

詳細情報
番組内容
選者は池田澄子さん。ゲストは俳優の中島歩さん。題は「五月」。五月を詠んだ俳句で有名なのは寺山修司。作品集「われに五月を」におさめられた俳句を読み解いてゆく。【司会】岸本葉子
出演者
【ゲスト】中島歩,【出演】俳人…池田澄子,【司会】岸本葉子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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