NEXT 未来のために「小さき命のバトン」 2015.05.07


(産声)産まれたばかりの掛けがえのない命。
でも出産した女性は赤ちゃんを手放す決断をしました。
抱いているのは産みの親の代わりにこの子を育てていく女性です。
この病院では産まれたばかりの命を新しい家族へとつなぐ赤ちゃん縁組を行っています。
いいえ。
うん。
病院には予期せぬ妊娠に一人で悩み苦しむ女性たちからのSOSが全国から届きます。
10代の妊娠。
性暴力被害による妊娠。
「お金がなく産んでも育てる事ができない」という声。
産みの親が育てる事ができない赤ちゃんを育ての親へ。
掛けがえのない命を守る。
赤ちゃん縁組の現場を見つめます。
熊本市内にある…ベッド数98床。
産婦人科を中核とする民間の総合病院です。
この日赤ちゃん縁組を行う事になった1組の夫婦が病院を訪れました。
どうもありがとうございました。
出迎えたのは助産師の…よろしくお願いします。
高橋夫妻は6年間不妊治療を続けてきましたが子どもを授かりませんでした。
病院と養子縁組のあっせん団体が行う説明会に参加し親になる準備をしてきました。
病院に到着してから1時間後。
「赤ちゃんが産まれる」との連絡が入りました。
母親としての第一歩を踏み出すため高橋さんも妊婦と同じ服に着替えて分べん室に向かいます。
お産が難産となり急きょ帝王切開をする事が決まりました。
出産をするのは20代の未婚女性。
赤ちゃんを一人で育てていく収入がありません。
出産の僅か1か月前この病院にたどりつきました。
この病院の場合縁組を希望する夫婦に対し「養子となる子どもの資質病気障害を含めて全てを受け入れて育てる事」。
親の好みで子どもを選ぶ事はできないという厳しい覚悟を求めています。
また出産した女性の気持ちが変わった場合縁組はストップします。
手術台の上の女性と高橋夫妻の距離は僅か7メートル。
お互いが直接顔を合わせる事はありません。
高橋さんはおなかに一度宿った命を失うというつらい体験を何度もしています。

(産声)
(すすり泣き)・
(産声)
(泣き声)あ〜大丈夫大丈夫。
きつかった。
赤ちゃんがきつかった。
うんうん。
(田尻)うん。
泣いてくれた。
この世に命が誕生する瞬間に育ての親もできる限り立ち会う。
これが病院が8年間取り組んできた赤ちゃん縁組の姿です。
(芽生)よかった〜。
(産声)あ〜よかったよかったんだ。
は〜いおめでとう。
(産声)
(田尻)よかった。
(産声)また会いに来て下さいね。
ちょっと保育器に入りますね。
は〜い。
お預かりします。
帝王切開で赤ちゃんを産んだ20代の女性。
命のバトンを渡すという大切な役目を終え安堵していました。
慈恵病院はこの8年間で200組を超える赤ちゃん縁組を成立させてきました。
病院の院長を務める蓮田太二医師です。
産婦人科医として3万5,000人余りの誕生に立ち会ってきました。
ずっと心を痛めてきたのが産まれてすぐに命を失う乳児たちの存在でした。
女性が予期せぬ妊娠をした結果ひっそりと捨てられ命を落としていく赤ちゃん。
毎年数十人が公園やゴミ捨て場に捨てられ中には遺体で発見される赤ちゃんもいました。
こうした命を救うため2007年日本で初めての赤ちゃんポスト…妊娠をした女性の中には周囲に絶対に知られたくない人もいます。
そのため赤ちゃんの命を守る最後のとりでとして匿名でも預けられるようにしました。
この8年間で100人余りの赤ちゃんが預けられました。
しかしゆりかごには開設当初から反対意見もありました。
特に「子どもが実の親を知る権利」についての批判です。
「匿名性に重きを置いたゆりかごの運用はこうした子どもの権利を損なう可能性がある」などの意見があります。
一番私たちが望んでいる事は赤ちゃんがもう預けられないという事。
それがね一番大事な事だと思っております。
預ける前に是非相談して頂きたいと。
いろんな内容の悩みがあると思いますけどそれを安心して相談して頂けたらと思っております。
蓮田院長は女性たちのSOSを早い段階で受け止める専用の相談室をゆりかごの開設と同時に作りました。
孤立している女性たちを救うために具体的な支援を行っています。
これまでに全国から8,000件の相談がありました。
関西地方に暮らす20代の女性から電話がありました。
臨月になった今もお金がないため産婦人科を一度も受診していないといいます。
陣痛に耐えやっとの思いで電話をかけてきた女性。
田尻さんたち相談員のアドバイスが赤ちゃんの命を左右します。
女性を特別に受け入れてくれる病院を探し出し伝えました。
女性は無事に病院に行き元気な赤ちゃんを産む事ができました。
(ノック)電話相談を通じてなんとか病院までたどりついた少女がいます。
10代の…母親と医師の診察を受けた時には妊娠7か月。
中絶できる時期を過ぎていました。
由美さんはまだ学生。
相手の男性とは連絡が取れず現実として一人で育てていく事は難しいと考えていました。
病院では女性がどうしても赤ちゃんを自分で育てる事ができない場合に赤ちゃん縁組という選択肢を提案しています。
由美さんは2か月余り悩み抜いた末命のバトンを託す事を選びました。
赤ちゃんの命を守りたいと昼夜を問わず奔走してきた病院のスタッフたち。
それでも救いきれない命があります。
去年10月ある事件が起きます。
こうのとりのゆりかごに赤ちゃんの遺体が預けられたのです。
事件の翌日一人の女性が逮捕されました。
31歳の母親は「死産した赤ちゃんの遺体を預けた」と供述。
12月上旬。
裁判所で事件の初公判が開かれました。
蓮田院長と田尻さんは事件の背景を確かめるために傍聴に出かけました。
裁判からは女性の孤独な境遇が浮かび上がりました。
女性はシングルマザーで難聴の障害がありました。
中学の頃にいじめに遭い友達がほとんどいませんでした。
おととし勤めていた会社が倒産し解雇された直後に妊娠に気付きます。
しかも相手の男性とは連絡が取れなくなります。
お金もなく健康保険証も持っていなかった女性は誰にも相談できないまま自宅の風呂場でたった一人で出産。
けれども産まれてきた赤ちゃんの体は冷たく息もしていませんでした。
女性は死体遺棄の罪で懲役1年執行猶予3年の判決を言い渡されました。
手錠をかけられて捕縄で縛られて出てきたその姿を見た時に私はたまらない気持ちがしました。
長い間いじめに遭いそして差別を受けている人たちはね声を出せないんですね。
そういう孤独で自宅で出産するという事を防ぐために何らかの方法で広報をして私たちのところに相談して下さいという呼びかけをですねやらなくちゃいけないとも思いますし…。
赤ちゃん縁組で結ばれた子どもとその家族が暮らしています。
パパ!
(拍手)高口茂雄さんとアメリカ人の妻ルースさんの家族です。
お名前は?お名前は?裕志でございま〜す。
(笑い声)赤ちゃん縁組で高口家に迎えられた裕志くん5歳です。
(茂雄)裕ちゃ〜ん。
グッドモーニング。
あ!赤ちゃん縁組をした夫婦がその後行わなければならない大事な約束があります。
(裕志)起きん。
(茂雄)起きてよ。
なぜ縁組で家族に迎える事になったのかを伝える…夫妻は告知をする事で家族としての出発点に立てると考えています。
(ルース)長〜いやつ。
でもママとパパが早く裕志をだっこしたくて…。
夫妻は裕志くんが2歳になった頃から告知を始めました。
(ルース)それを切った事でパパとママは裕志を…オギャーオギャーオギャーってだっこした。
だっこできた。
ねえ。
(笑い声)覚えてる?かわいいこれ。
ちっちゃい!高口夫妻は裕志くんを産んでくれた女性の事も家族みんなで語り合ってきました。
今も赤ちゃんやけんこれ…。
ううん。
(ルース)パパのおなかから出たっけ?ううん。
(ルース)お姉ちゃんのおなかから出たっけ?ううん。
(ルース)光くんのおなかから出たっけ?ううん。
(ルース)高校生の女の子から産まれたね。
(ルース)結局裕志の命をバトンを受けたんですね。
本当に裕志にも言うんですけど「あなたを産んでくれた方は裕志が嫌いだったらママとパパにくれなかったと思う。
どっかにね置いてしまったりまあ知らない人にでもあげたかもしれないけどパパとママがいいお父さんとお母さんになると信じてくれたので本当に彼女は裕志の事大好きだったと思うよ」って。
教えてあげる事は何度もあります。
お久しぶりです。
(ルース)裕志が産まれた時にねこの先生の息子さんが裕志を取ってくれた。
高口夫妻は裕志くんに家族の原点を伝えるため度々慈恵病院を訪れてきました。
一人の女子高生がこの病院にたどりつかなければこの世に存在しなかったかもしれない命です。
いいね〜。
バイバイ。
光くんもまたね〜。
またね〜。
またね〜。
は〜い!「産んでくれてありがとう」。
5歳になった裕志くんから産みの親へのメッセージです。
家族がね。
ゆりかご電話相談そして赤ちゃん縁組。
慈恵病院が続けてきた幼き命を救うための取り組みです。
(産声)赤ちゃん縁組で命のバトンを受け取った高橋夫妻はその子にしょうたと名付けました。
(産声)しょうちゃんお風呂。
気持ちいい〜気持ちいい〜。
夫妻はこれから6か月以上しょうたくんと共に暮らしたあと家庭裁判所の審判を受けます。
審判が確定すれば法律の上でも正式な家族になります。
(笑い声)本当?すごいね。
よかったねしょうちゃん。
おいしいですか?よかったよかった。
ね!本当にありがとうございます。
本当に。
(すすり泣き)ありがとうございます。
よかったよかった。
ねえしょうちゃん。
ねえ。

(マイケル)
これは極東の国日本を訪れた2015/05/07(木) 00:10〜00:40
NHK総合1・神戸
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“赤ちゃんポスト”を日本で始めて開設した熊本・慈恵病院。「赤ちゃん縁組」を通してつながった小さな命と新しい家族の物語。幼き命を救うため奮闘する病院スタッフに密着

詳細情報
番組内容
熊本・慈恵病院が8年前に開設した日本で初めての“赤ちゃんポスト”。同時に病院では幼き命を救うため、予期せぬ妊娠をした女性たちの相談に乗り、どうしても子どもを育てられない場合、「赤ちゃん縁組」という選択肢も提示してきた。そして、不妊に悩む夫婦たちにも救いの手を差し伸べてきた。赤ちゃん縁組を通して、つながった小さき命と新たな家族。かけがえのない命を救うため奮闘する病院スタッフに密着。
出演者
【語り】鹿島綾乃

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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サンプリングレート : 48kHz

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