消防出動せず:アパート全焼 1遺体、通報者か 横浜

毎日新聞 2015年05月11日 21時57分(最終更新 05月11日 23時19分)

経緯を説明して謝罪する横浜市消防局の高坂哲也警防部長(前列右)ら=横浜市中区の横浜市役所で2015年5月11日午後6時、水戸健一撮影
経緯を説明して謝罪する横浜市消防局の高坂哲也警防部長(前列右)ら=横浜市中区の横浜市役所で2015年5月11日午後6時、水戸健一撮影

 ◇対応ミス、横浜市消防局が謝罪

 11日午前9時5分ごろ、横浜市港北区鳥山町の木造2階建てアパートから火が出ていると、近くの男性が119番した。アパート(延べ約200平方メートル)は全焼し、隣接する空き家の一部も焼いた。火元とみられるアパート2階の部屋の玄関で焼死体が見つかり、神奈川県警港北署は、この部屋に1人で住む法木(ほうき)弘子さん(60)の可能性があるとみて身元確認を急いでいる。

 この火事について、横浜市消防局は同日夜に記者会見し「通報を受けた指令管制員が、救急事案と判断して火災出動の指令を出さなかった」と説明、謝罪した。

 市消防局によると、最初の通報は午前8時46分。40代の男性指令管制員が女性から電話を受け、内容がはっきり聞き取れなかったため「救急か」と尋ねたところ、女性はいったん「救急車が必要」と答え、「はじになっちゃった」と話した。指令管制員が「ハチ(に刺されたの)ですか」と問い直し、再度「救急車はいらないんですか」と聞くと「はい」と答えたため、出動を見送ったという。「はじ」は「火事」だった可能性がある。

 通報から14分後の同9時ごろ、近隣住民などから計9件の火災通報が相次ぎ、消防車22台が出動。同9時8分に到着し、同日午後0時35分ごろ鎮火した。

 市消防局の説明では、法木さん方からはこれまでたびたび救急車を要請する通報があり、2010年以降に計143回出動、体調不良で38回病院へ搬送していた。

 会見した高坂哲也警防部長は「指令管制員が名前と住所を聞いて、経験則で救急と判断してしまった可能性も否定できない」と説明。専門の委員会をつくって原因の究明に乗り出す。

 県警港北署の宮村栄副署長は消防の出動が遅れたことについて「事実関係を確認し、捜査の必要性も含めて対応を検討したい」と話している。

 火災に気付いて119番した法木さん方の隣に住む男性会社員(55)は、「法木さんの部屋から数メートルの火柱が上がり、『ボーン』と何かが破裂するような音が5回ほど聞こえた。火は5〜10分ほどで隣の部屋に燃え移った」と振り返った。

【国本愛、水戸健一、村上尊一】

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