(チャイム)
(安西俊明)3番5番8番16番20番。
以上が今回の中間試験の上位5名です。
(安西)残りの生徒はあとで各自自分の答案をピックアップするように。
今日の授業は昨年度の東大入試問題をやります。
まずはこの問題を解いてください。
私の目標は日本を背負って立つようなエリートを作る事です。
ただ本当に優秀な人材なんていうのはほんのひと握りです。
大抵の子は脱落していきます。
「だからこそ競争を勝ち抜いた子にはそれだけの価値があると考えます」「私はそういう子を誇りに思います」
(パトカーのサイレン)
(糸村聡)ご苦労さまです。
お疲れさまです。
お疲れさまです。
(水沢響子)糸村君遅い!すいません。
(仙堂卓巳)ホトケの名は安西俊明。
(仙堂)この学校の数学の教師です。
(遠山修介)被害者は首筋を鋭利な刃物で切られてます。
遺体のそばに凶器と思われるカッターナイフが落ちてました。
(横山恵一)警備員に話を聞いてきました。
昨夜9時以降校内に残っていたのは被害者だけだったようです。
うん…。
防犯カメラは?正門と裏門に1つずつ。
昨日から今朝にかけての映像記録を借りてきました。
それは…模擬テストですか。
(森田宗介)作ってる最中に殺されたようだ。
はあ…進学校だけあって難易度高めですね。
生徒も大変だな。
問2は…mnイコールマイナス2マイナス10…マイナス3。
ん…?遠山君ちょっとごめんね。
これ…何燃やしたんでしょうね?そういえば被害者の手にも微量ですが灰が付着してました。
どういう事だ?ん…?あっダメダメ…!ちょっ…飛ぶ!飛ぶ!糸村さん…!なんだ?それ。
いえ…中国茶を飲むための茶碗なんですがただ…。
被害者コーヒー党みたいなんですよね。
(東孝彦)おいおい!青葉女子校で殺人だって?はい。
被害者は50歳代の数学教師です。
いやうちの次女が来年高校受験で目指してるんだよ。
あっでもこれでちょっと競争率下がるか…。
署長…!何不謹慎な事言ってんですか!いやでもさあ青葉女子って政財界の大物たちの子女が通う名門校だろ?いやあうちにとっちゃちょっとハードルが高いんだよね。
そんな事よりも今回捜査一課って来るんですか?
(森田)一課の人間なら俺がいるだろ。
俺が一課の代表だ。
遠山。
(遠山)はい。
死因は頸部静脈からの失血死。
(遠山)凶器のカッターナイフからは被害者の指紋しか出ませんでした。
恐らく犯人は手袋をして被害者を襲ったものと考えられます。
死亡推定時刻は昨夜11時から午前1時の間。
あと被害者の財布から現金が抜き取られてました。
防犯カメラは?はい!夜の11時頃不審者が1人裏門から侵入しています。
これじゃ顔わかんないわね…。
科捜研に映像の解析頼みます。
うんお願い。
はい。
糸村君じゃあ遺留品の選別。
はい。
まずは携帯電話。
灰皿に残っていた灰の解析。
それから…この茶碗ですね。
なんでそんなもん調べる?あの部屋には中国茶の茶っ葉はありませんでした。
なのに被害者はなぜこの茶碗を持っていたのか…。
気になりませんか?近いだろ。
勝手にしろ!とにかくじゃあみんな…。
被害者の交友関係手分けして探して。
(横山・遠山)はい。
頼んだぞ!
(横山・遠山)はい。
(仙堂)課長。
被害者のご遺族をお連れしました。
息子の安西和也です。
親父…。
あのこれ…お父さんの学校の講師室にあった茶碗なんですが見覚えありませんか?糸村君…!さあ…。
父とはこの15年間絶縁状態でしたから。
失礼します。
あちらです。
ちょっと拝見させて頂いてもよろしいですか?やっぱりお茶っ葉はないなあ…。
ん…?お父さん几帳面な方だったんですね。
部屋の中がきれいに片づいてる。
失礼ですけどお父さんと疎遠になった理由は…?
(和也)見放されたんです。
見放された…?僕小さい頃からサッカーをやってたんです。
高校時代には全国大会にも出場して…。
プロのスカウトから声をかけられた事もあります。
すごいじゃないですか。
でも父は僕の実力じゃプロでは通用しないと言って勝手にチームに断りの電話を入れました。
進学先も一方的に決めて…。
受験に失敗した僕を切り捨てました。
サッカーなんかにうつつを抜かすからこんな事になるんです。
少しは身の程をわきまえなさい。
受験に失敗した人間はなんの価値もないって言うのかよ。
なんで学歴だけで人を判断すんだよ!負け犬の決まり文句ですね。
君はやはり失敗作でした。
父の喜びはエリートを育成する事だけだったんです。
それ以外の人間は一切認めようとはしませんでした。
結局…親父は最後まで変わる事はなかった。
愚かな人ですよ。
(牛島)安西先生がこの学校に赴任したのは5年前です。
生徒たちの偏差値を上げるために他校から引き抜いたんです。
(仙堂)安西さんはカリスマ教師と呼ばれてましたもんね。
ええ。
実際安西先生が教鞭をとられてから生徒たちの成績はぐんぐん上がりました。
(太田)ただ…。
大変気難しい方で他の先生方や生徒たちとの交流はほとんどありませんでした。
では何かトラブルのようなものは?特にそういったものは。
なあ?ええ…なかったと思います。
あの2人なんか様子が変でしたね。
名門校ってとこはとかくスキャンダルを隠したがるからなあ。
あれ?
(仙堂)森田さん!どうされました?ちょっと気になる男たちがいる。
(森田)警備員が記録している来校者の名簿だ。
この1か月の間に何度も被害者のもとを訪れている男が2人いた。
保護者の大橋良一と帝国出版の久保栄司という人物です。
帝国出版ってあの…。
教科書の販売業者です。
あの…今保護者の名字大橋って言いましたよね?ああ。
どうかしたの?被害者が携帯で何度も連絡を取っていた生徒がいたんです。
名前は大橋香菜。
もしかしたらその保護者の娘かもしれません。
妙だな…。
安西さん生徒と交流する事はほとんどなかったと聞いてるぞ。
じゃあ仙堂と遠山はもう一回学校をつついてみて。
(遠山・仙堂)はい。
森田さんと私は帝国出版の聞き込み。
あと糸村君と横山は大橋香菜の…。
(ため息)糸村君どこ?鶯歌?台湾にある有名な陶芸の街だよ。
都内でも扱ってる店はあまりないんじゃないかな。
へえ〜希少なものなんですね。
(携帯電話)ちょっと失礼。
はいもしもし。
糸村さん今どこですか?糸村さん少しは成長しましょうよ。
捜査というのは組織でやるものなんです!糸村さん一人で事件を解決出来るわけじゃないんですから。
組織か…。
そうか組織だよね!そうだったんだ!もう!本当にわかってんですか!?
(仙堂)大橋良一さんという保護者の方が最近頻繁に安西先生のもとを訪れてましたよね?理由はなんだったんでしょう?お答え頂けないって事は大橋さんに直接聞けって事ですね。
わかりました。
そのようにします。
(遠山)ありがとうございました。
ちょっと待ってください!実は安西先生は自分の授業を3回休んだ者はどんな事情であれ落第させるというルールを生徒に課していたんです。
(牛島)前年度1人の女生徒が落第させられました。
大橋さんの娘の大橋香菜です。
大橋香菜は新学期から一度も登校しておらず大橋さんは落第の撤回を求めて何度も安西先生のもとへ足を運んでいました。
(女性)お待たせ致しました。
デスクこちらになります。
もうしばらくお待ちくださいませ。
(森田)ありがとう。
(久保栄司)お待たせしました。
営業の久保です。
月島中央署の水沢といいます。
(森田)青葉女子の安西さんが亡くなられた事は?ニュースで知りました。
まさか安西先生が殺されるなんて…。
あの久保さん最近よく安西さんのとこ通われてたそうですけど。
ええ。
来年度の教科書についてガイダンスしてほしいと頼まれまして。
(森田)ガイダンス?
(久保)はい。
うちで発行する教科書の内容についての説明です。
教科書の営業ってそんな事もするんですか?
(久保)安西先生は特別です。
影響力が大きくあの方が選んだ教科書を使いたいという学校がたくさんありますから。
(久保)昨日も安西先生に頼まれて学校に出向いたんですが私が伺った時ちょうど来客中で…。
(大橋良一)まあお座りください先生。
なんとか考え直して頂けませんかね?落第なんて厳しすぎるじゃないですか!
(ノック)
(久保)失礼します。
(久保の声)確か娘の落第がどうとか話してました。
今立て込んでましてね。
娘の落第?相手はどんな方でした?身なりのいい50歳くらいの男性でした。
どこかそれを扱ってるようなお店に心当たりってありませんか?
(中嶋)ちょっとこういう柄は見た事ないなあ。
糸村さんもう何をのんきにお茶なんか飲んでんすか!嗅いでごらん。
え?いい匂い!ねえ。
…って糸村さん!確かに私は何度も抗議に出向きました。
落第なんてしたら娘の履歴に傷がつきますからね。
それに私は多額の寄付金を納めてる。
少々大目に見てくれてもいいでしょう。
安西先生はなんておっしゃいました?規則は規則。
特別扱いはしないの一点張りですよ。
あの男は生徒の将来なんかまるで考えてないんだ。
という事はあなた安西さんと物別れになって部屋を出たんですね?言っときますが私は殺したりしてませんよ。
ちなみに昨夜の11時から1時の間どこにいましたか?自宅にいました。
(携帯電話の振動音)ちょっと失礼します。
はいもしもし。
遠山です。
今大橋さんの自宅にいるんですが大橋香菜は不在のようです。
携帯も全く通じませんね。
わかった。
大橋さんお嬢さんって今どちらにいらっしゃいます?なぜ娘の事なんか?実は安西先生お嬢さんと頻繁に連絡を取り合ってたみたいなんです。
えっ!?お嬢さんとお話しさせて頂けませんか?大橋さん。
わかりません。
知らないんですか?昨日から黙って家を出たまま連絡が取れなくなってるんです。
う〜ん…。
これで都内の販売店は全滅かぁ…。
糸村さん!昼間僕が言った事覚えてます?「捜査は組織でするもの」でしょ?わかってるならどうしてこんな単独行動続けるんですか。
今頃みんな事件の関係者を調べてるんですよ。
(メールの着信音)ちょっと!何やってるんですか?ん?僕ね中国茶の愛好家の方々とネットを通じて交流してるんだけどさっきの横山君の言葉をヒントにあの茶碗の入手先を尋ねてみたんだ。
まさかそれで販売店見つかったんですか?みんな物知りだよね〜。
これも組織捜査でしょ?糸村さ〜ん!すいませんでした。
(ため息)お前さ…。
安西さん?
(和也)刑事さん…。
ちょっと待ってて。
はい。
街でケンカしてるとこ補導されちゃって…。
じゃああの少年を保護しにいらしたんですか?実は僕フリースクールの教師やってるんです。
あっそうだったんですか。
あいつ中学受験に失敗して以来学校行けなくなって今うちのスクール通ってるんです。
親はそういう子供の弱さを受け入れられなくてあいつ見放されてるんです。
それはひどいですね。
僕の親父と一緒です。
あいつ見てると昔の自分見てるみたいで放っとけないんですよね。
娘の失踪の理由について父親はなんの心当たりもないそうよ。
まさかその子が犯人だって言うのか?17歳といえば多感な時期ですからね。
名門校で1人だけ落第だなんてこれ以上の屈辱ありませんよ。
やっぱりうちの娘には身の丈に合った学校行かせた方がいいのかなぁ…。
防犯カメラの解析結果が届きました。
(仙堂)おう。
大橋香菜だ!決まりだな。
この子を捜し出すぞ。
(2人のメールの着信音)糸村さん重要参考人が判明しました!あったよあそこだ。
ちゃんと聞いてよ!糸村さん!はあ〜。
こんにちは。
これは素敵なコレクションだ。
(雨宮怜子)いらっしゃいませ。
(横山)あっすいません。
こういう者でして…。
警察?
(大橋香菜)店長。
香菜警察の方よ。
あっ…。
あっ!糸村さん糸村さん!
(怜子)香菜!さっきの携帯の…!
(横山)ちょっと待って!参考人の人〜!
(ため息)安西先生とは親しかったの?携帯で随分やり取りしてたみたいじゃない。
昨日も安西先生に会いに行ってたみたいだし。
防犯カメラにねあなた映ってた。
(仙堂)君安西先生に落第させられたんだって?学年でただ1人だけなんて屈辱だったよな。
(香菜)なんにも知らないくせに勝手に決めつけないでよ。
本当に昨日なんで学校に行ったの?
(遠山)お疲れさまです。
うん。
おい糸村お前の私物またはみ出てるぞ!糸村さんまだカフェから戻ってません。
何やってんだあいつは!おいこの雑誌どうした?安西さんの自宅にあったものだそうです。
この茶碗はこちらで販売されたものに間違いありませんか?ええそうです。
安西先生がこちらに来られたのは偶然なんですか?それとも…。
香菜に会いに来たんです。
あの子ここでバイトしてて。
どういった用件で会いに来られたんでしょう?刑事さんあの子は事件とは関係ありませんよ。
早く帰してあげてください。
ねえ…。
もうさいい加減に話してくれない?仕方ない。
じゃあいったんお父さんに引き取りに来てもらおう。
嫌だ家には電話しないで!お願い。
お父さんだけには連絡しないで。
どうして?香菜ちゃん?安西先生が作ったルール知ってますか?あの3回授業を休んだら落第っていうやつ?あれ実は案外ゆるいんです。
期末テストで及第点取れば安西先生落第だけは見逃してくれたんです。
あ…そうだったの。
だから私安西先生にお願いしたんです。
安西先生…。
(香菜の声)期末テスト白紙で出すから必ず落第にしてくれって。
お願いします!はあ?な…なんでそんな事したの?私…やりたい事があったんです。
やりたい事?パティシエになるための修業。
パティシエってあの…お菓子職人だっけ?でも両親は私の話に耳も貸してくれません。
一流大学に入る事が私の幸せだって決めつけて…。
だから私わざと授業さぼったんです。
それで先生はなんて?すごく驚いてました。
自分には理解出来ないって顔で。
(香菜の声)それから春休みに入ってすぐ安西先生が突然私のバイト先に訪ねてきたんです。
先生この子本気ですよ。
本気だからフランスの国立洋菓子学校への入学も一人で決めたんです。
フランス!?ゴールデンウイークが明けたら日本を発つつもりです。
ご両親にその話は?もちろんしてません。
力ずくで止められるのは目に見えてますから。
いやしかし…。
(香菜)このチケットを眺めながらずっと自分に言い聞かせてきたんです。
この日付のこの時間に絶対にフランスに行くんだって。
そのために私頑張ってお金ためてきたんです。
(ため息)じゃあ事件当夜学校に出向いたわけは?安西先生から電話があったんです。
話したい事があるから学校で待ってるって。
安西さんは一体何を話そうとしたのかしら?わかりません。
(香菜の声)それでいったんは学校に行きました。
(香菜の声)でももしかしたら先生から話を聞いた親が待ち伏せしてるかもしれないって不安になっちゃって。
先生の部屋の前で引き返したんです。
私が安西先生を殺すなんてあり得ません。
嘘じゃないです!
(仙堂)あの子の供述どう思います?殺すなんてあり得ません。
ちょっと嘘ついてるようには見えないわよねぇ。
(横山)彼女が犯人じゃないとするとやっぱり父親の方なんですかね?もう一度アリバイ洗い直した方がいいかもな。
しかし彼女が犯人ではないとすると真犯人は一体どこから学校に入ったんですかね?どっかに抜け道があるはずなのよ。
とにかく仙堂と遠山もう一回学校周辺洗い直して。
(仙堂・遠山)はい。
横山はあの…大橋さんのアリバイ。
はい。
(携帯電話)ん?
(携帯電話)あっ横山君ちょっと待って。
はいもしもし糸村です。
(村木繁)あ〜…。
灰の鑑定終わりましたよ。
さすが村木さん!あ…!これもしかしてお札?
(村木)どうやらそのようですね。
安西先生の指には炭が付着してました。
もしかしたら自分で焼いたのかも…。
えっ?でもなんでそんな事?村木さんちょっと一緒に来てもらえませんか?いや今パン…。
(遠山)仙さん!どうだ?抜け道見つかったか?ダメですね。
(女子生徒)やばいやばいやばい!おおありゃ遅刻だな。
(遠山・仙堂)ハハッ!う〜ん…。
仙さん!ん?あ〜君君君!ちょっ…ちょっといいかい?キャー!パンツ見ないでよキモッ!月島中央署の者です。
ごめんね〜。
(遠山)ゆっくりでいいからね。
お〜よいしょ!この変態つかまえてください!わかりました。
遠山!いや冗談ですよ。
さっさと鑑識呼べ!鑑識を!ごめんねちょっとね聞きたい事があるんだけど。
怖がらなくていいからね。
全然…。
うんわかったわかった。
あのさ〜ここの抜け道っていうのはよく使うとこなのかな?そこからでいいから答えて。
(横山)糸村さん…一体何探してるんですか?うん…。
(横山)糸村さん!糸村さんそれ…!?うん。
ああ…恐らくこれが犯行に使われたカッターナイフだろうね。
というわけで…よいしょ。
おめでとうございます!村木さん鑑定お願いします。
今から?はい。
(大根聡)収賄で捕まった吉岡は確かに僕の高校時代の友人です。
安西先生は当時学年主任だったんですよね?ええ。
成績のいい奴ばっかりひいきしてみんなから嫌われてました。
2年生の時だったっけなあ…。
吉岡たちが集団で万引き事件を起こしたんですけど安西先生は成績のよかったあいつらを守るために口裏を合わせて1人の生徒に罪をおっ被せたんです。
本当最悪でしたよ。
その同級生の名前…覚えてますか?凶器が違ってた?はいこのカッターに付着してた血痕をDNA鑑定にかけた結果安西先生のものと一致しました。
カッターを隠したのも安西先生本人です。
犯人だったら間違いなく持ち去るはずですから。
でもなんでそんな事…。
犯人の素性を警察に知られたくなかったんだろうね。
財布の中の現金を燃やしたのも物盗りの犯行と見せかけるための偽装です。
それと血痕以外にもう1つ検出されたものがあります。
何?ほんのわずかですが油のようなものが付着していました。
油?
(横山)レモンオイルです。
(横山)アロマなんかにも使用されるそうで。
大橋香菜さんが働いてた店でも別の種類ですがアロマをたいていました。
課長もう一度あの子追及してみますか?
(森田)容疑者の目星ならもうついたぞ。
(森田)久保栄司。
安西俊明さん殺害の件で聞きたい事がある。
殺された安西さんの部屋にお前の机にあったのと同じ雑誌があってな。
エリート官僚の収賄事件を特集した記事だ。
お前この官僚と同級生だったそうじゃないか。
しかも万引きで一緒に補導されたそうだな。
しかし学校側は他の生徒と口裏を合わせてお前一人に罪を被せた。
あ万引き男だ。
(男子生徒)バーカ!
(森田の声)理由はお前以外の生徒はみんな成績が優秀だったからだ。
そしてそれを企てたのが当時学年主任だった安西先生だった。
俺が安西さんを殺したとでも言うんですか?だったら証拠見せてくださいよ。
お前ギターよく弾いてるそうだな。
(森田)指にギターだこつくるぐらいだもんな。
それがなんだっていうんです。
(仙堂)久保!現場に残された凶器から…レモンオイルが検出された。
(仙堂)これってギターの手入れにも使うんだよな?それからな…あの学校の抜け道からお前の指紋が検出されたよ。
(森田)動機はなんだ?高校時代の復讐か?正直に答えろ!あの人…。
また俺を蹴落とそうとしたんです。
蹴落とす?俺高校退学になってから何やってもうまくいかなくて…。
今の会社もやっとの思いで契約社員として雇われたんです。
(久保の声)まさかあんな形で安西先生と再会するとは思ってもみませんでした。
向こうは俺の事なんかすっかり忘れてましたけど。
1か月前仕事の頑張りが認められて俺正社員の推薦もらえたんです。
でもその矢先安西先生に突然呼び出されて…。
突然で申し訳ないが来年度の契約を一度白紙に戻してください。
気に入らないところがあるならすぐに修正します!いやそういう問題じゃないんですが。
じゃあ何がいけないんです?ちょっと違う景色が見たくなりましてね。
もう少し広い視野で数学の勉強を楽しみたいと思ってるんですが。
(久保の声)それから何度も安西先生のもとに足を運び説得を試みました。
(久保の声)でもどうしても首を縦に振ってはもらえませんでした。
あの日は印刷所への発注を翌日に控え切羽詰まって会いにいきました。
(大橋)なんとか考え直して頂けませんかね?落第なんて厳しすぎるじゃないですか!失礼します。
今は立て込んでましてね。
出直してもらえますか?
(久保の声)このままじゃ正社員になるどころか会社をクビになってしまう。
そう思ったらいてもたってもいられなくなって…。
安西先生…。
俺の事覚えてませんか?
(久保)高校の時にあなたに万引きの罪をおっ被されて退学になった久保栄司です。
(久保)俺あれから必死で頑張ってきたんです。
先生に契約打ち切られたら正社員になる夢が潰れるんです!
(久保)先生…。
これ以上俺の人生めちゃめちゃにしないでください。
申し訳ないがこれはもう決めた事なんです。
なんでだよ…。
なんでわかってくれないんだよ!
(安西)久保君!
(久保)なんでだよ!
(久保)なんでだよ!
(安西)あっあ…。
あっ…。
あの人にはわからないんだ!日の当たらない道を歩いてきた俺たちの気持ちなんか!わかってないのはお前の方だよ。
え…?
(和也)きれいだね。
あと何色あるかな。
(教師)海の方にスケッチにいこう。
(生徒たち)はーい!犯人が捕まった?はい。
犯人はお父さんのかつての教え子でした。
え?お父さんは昔落ちこぼれだったその教え子を切り捨てました。
そのせいでその教え子の人生は大きく狂わされてしまったんです。
お父さんはその事を悔いていました。
だからせめてもの罪滅ぼしのつもりで物盗りの犯行に見せかけようとしたんだと思います。
あの親父がそんな事を…。
3か月程前にお父さんのこれはまた別の教え子が収賄事件で捕まりました。
その教え子は将来を嘱望されたエリート官僚でお父さんは少なからずショックを受けたんだと思います。
その直後です。
お父さんは自分の夢のために全てを捨てようとしている生徒と出会いその生徒の夢を応援しようとしていました。
そんな話信じられません。
あの親父がそんな事で変わるわけがない。
待ってください和也さん。
僕に…あと3分だけ時間をもらえませんか?お父さんはその生徒と向き合うさなかある人物と出会いその人の言葉に突き動かされていたんです。
ある人物?その生徒がバイトをしていたカフェのオーナーです。
(怜子)ねえ先生。
幸せって他人が決めるものじゃないんじゃないかな?だって幸せに優劣なんてないんだし人それぞれ目指すゴールは違ってていいと思うんだよね。
なんてこれ私の先生の受け売りなんですけどね。
(怜子)私もこの子と同じように悩んだ時期があったんです。
その時にその先生が私を後押ししてくれたんです。
そういえば先生と名前が一緒だ!その人も安西っていうんです。
その女性の名前は雨宮怜子さんといいます。
和也さん…ご存じですよね?私の教え子です。
お父さんは雨宮さんと話をしたあとその生徒の夢を応援する決意を固めたんだと思います。
つまり間接的ではありますがあなたの言葉に突き動かされていたんですよ。
お父さんがどうしてこの茶碗を買ったのか…。
その理由もようやくわかりました。
(安西)雨宮さんご両親とちゃんと話し合うようあなたからも大橋君を説得してもらえませんか?私も一緒に会いに行きますから。
先生…。
ちゃんと向き合って話せばきっとわかり合えるはずです。
人は変われます。
変わる事が出来るんです。
わかりました。
私からも香菜を説得してみます。
(男の子)すごく美味しい。
(父親)本当か?美味しいか?美味しい。
あっそうだ。
(怜子)はい?この茶碗2つだけ譲ってもらえますか?あそれ一応4個セットなんですけど…。
うちは家族2人なんです。
仕方ないなあ。
今回だけ特別ですよ。
あなたが中国茶が好きだと聞いて…。
購入したんですね。
和也さん…。
お父さんはもう一度あなたと向き合って話をしたかったんだと思うんです。
このお揃いの茶碗はそのために購入されたんじゃないでしょうか?他人にばっかりかっこいい事言いやがって…。
今さら遅いよ…。
2015/05/07(木) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
遺留捜査3[再][字]
「ふたつの茶杯」
詳細情報
◇番組内容
遺留品が語る、三分の真実—風変わりな刑事・糸村聡が帰ってきた!彼は事件現場に残された“遺留品”から声なき遺体が訴えたかったメッセージを読み取り、伝える…。
◇出演者
上川隆也、斉藤由貴、正名僕蔵、眞島秀和、波岡一喜、甲本雅裕、西村雅彦、三宅裕司 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:27254(0x6A76)