にっぽん紀行「おばあちゃんのひな祭り〜三重 松阪市宇気郷〜」 2015.05.07


わ〜緑が鮮やかですね。
こんにちは。
案内人の篠原ともえです。
ここは三重県の山あいにある小さな集落です。
今は4月ですがここでは季節外れのひな祭りが開かれているんです。
おじゃまします。
すてき〜!かわいらしいおひな様ですね。
このように誰でも楽しめるように玄関などにおひな様が飾られているんです。
ひな祭りといえば女の子の健やかな成長を願うものと思っていましたがこの地区は違うんです。
主役はおばあちゃん。

(テーマ音楽)ねえ立派な。
三重県松阪市宇気郷地区です。
かつては林業で栄えた山あいの集落です。
およそ180人が暮らしていますがその半分が65歳以上の女性です。
皆さんとっても働き者です。
こちらの方は80歳。
地区に一つだけあるスーパーです。
農協が撤退したあと自治会が経営を引き受けました。
こちらも店を切り盛りするのは女性です。
ありがとう。
くくらんでもいいな。
どうぞ。
ありがとうございました。
袋詰め。
6つ入っとる。
アハハ!そんな女性たちが楽しみにしている催しが近づいてきました。
今年で8回目を迎える宇気郷のひな祭りです。
30軒ほどの家や施設にひな人形を飾りお客さんをもてなします。
3月末から4月の初めにかけて行われ麓の町などから毎年1,500人以上が訪れます。
ひとつき遅れの開催にしたのは暖かい季節に一人でも多くのお客さんに来てもらうためです。
他の地域ではひな祭り本番の3月。
ようやく準備が始まります。
おっおっおっ…。
実行委員は70代から80代の女性4人です。
地区の倉庫には200体以上のひな人形が保管されています。
ねえ立派な。
すごいこれ。
講堂これ。
「講堂」って書いてある。
高齢の女性たちを元気づけるために企画されたひな祭り。
しかし地元にひな人形がある家はほとんどなかったため全国に寄付を呼びかけ集めました。
それぞれの家に人形を運び飾りつけて回ります。
おはようございます。
こっち向き…。
こっち向きですね。
1人暮らしの家も多いため学生ボランティアの手も借りて飾りつけます。
ご苦労さまでした。
でも中にはこんな家も。
祭りの2か月も前に家で保管していた人形を飾り終えていました。
これ取るわちょっと待って。
あんた慌てんで。
この人な一生懸命。
それでなこれが楽しみなんな。
84歳です。
25年前に夫を亡くし今は1人暮らしですが毎年人形は自分の力で飾りつけています。
上手に。
ありがとう。
宇気郷の農家で生まれ育ったサカエさん。
子供の頃家に人形はありませんでした。
林業を営む家に嫁ぎましたが暮らしに余裕はなく2人の娘にもひな人形を買ってあげる事はできませんでした。
よいしょ。
しかし77歳の時宇気郷のひな祭りが始まり家に初めてひな人形がやって来ました。
今では毎年2つのひな壇を飾るようになりました。
ようやく人形と一緒に過ごせるようになったひな祭り。
小さな女の子にたくさん来てもらい元気な笑い声を聞くのが何よりも楽しみです。
サカエさんの家を毎日のように訪れる人がいます。
84歳。
2人は同級生です。
よしさんも14年前に夫を亡くしました。
お互い一人になってから気にかけ合っています。
来んでもええやん。
これの事?それ持ってきた。
よしさんも毎年ひな人形を飾る事を楽しみにしてきました。
しかし去年からお客さんをもてなす気力がなくなり今は人の家を見に行くだけです。
サカエさんはよしさんができない分もひな人形を飾り続けたいと思っています。
梅がほころぶのを邪魔するような激しい雪になりました。
そんな中でもひな祭りの準備は進みます。
実行委員の女性たちがひな壇を彩る花もちを作りました。
色づけした餅を木の枝に一つ一つつけていきます。
雪に負けず山里に春の色を増やしていこうとする女性たちです。
こちらの家にも春の色が。
ひな祭りで振る舞うあられです。
あられを手作りしているのは辻田久代さん71歳です。
餅にごまやしそなどを混ぜて細かく切り1か月半朝晩欠かさず乾かします。
ほんと…。
久代さんも子供の頃家にひな人形はありませんでした。
しかしこのあられだけはおばあちゃんが作ってくれました。
ひな祭りの10日前。
朝早くからよしさんがサカエさんの家にやって来ました。
おはよう。
お〜い。
そう思ってな。
入院していた81歳の弟が危篤状態になったというのです。
(サカエ)もの言わんの?酸素でこう…それはえらい事や。
(よし)えらい事や。
女一人で強く生きていこうと励まし合ってきた2人。
しかしいつまでこの暮らしを続けられるのか。
不安がよぎります。
よしさんが帰ったあとサカエさんはいつものように畑に出かけました。
あ〜。
坂道を上って5分。
小さな畑で季節の野菜を育てています。
いつでもこうやって。
この日はじゃがいもを植え付けました。
収穫の予定は6月です。
こんな事やな。
生まれ育った山里で迎える84歳の春が近づいてきました。
いいの持ってきたで。
こんなええの。
・ほんといいなそれ。
いいわ。
いいのやわ。
おおきに。
ありがとう。

(鳴き声)宇気郷のひな祭りが始まりました。
お客さんが散策しながらおひな様を見て回ります。
すごいなあ。
こんにちは。
それぞれの家でおばあちゃんがお客さんを迎えます。
留守の家は自由に開け閉めして見てもらいます。
わ〜立派すごい。
あられを準備していた辻田久代さんの家です。
よかったわ。
いいの見せてもらって。
見てもろうてこそ作るもんの張り合いもあるしな。
どうぞ。
豊かではなかった時代におばあちゃんが作ってくれたあられです。
お客さんたちの反応は?おいしいよう作らないけど。
それでもやっぱりこういうのはよろしいな。
これで煎ったの?うん。
ありがとうございます。
これってどうやって煎るっていうか。
(久代)あられ煎りで。
こんなのがあって火をおこして。
それをしちりんか何か?しちりんで炭で煎るの。
そうなんですか。
子供たちも次々と口にします。
これでチューしたろか。
嫌や!
(笑い声)どうぞ。
ありがとう。
熱い。
熱い?ふうふうしやなあかん。
熱くてもなふうふうしやんで飲めた。
ほんと。
思い出の味がまた新しい思い出を作ってくれそうです。
(笑い声)1人暮らしのサカエさんの家です。
ごめんなさいおじゃまします。
大きなひな壇が2つ。
更に周りを飾るたくさんの手作りの人形が好評で客足が絶えません。
おひなさんだよ〜。
あ〜かわいいかわいい。
こっちにもいっぱいあるよ。
(笑い声)サカエさんが待ち望んでいた小さな女の子がやって来ました。
ばあちゃんとかあちゃんと歌いたい。
歌おうか。
・「あかりをつけましょぼんぼりに」・「おはなをあげましょもものはな」・「ごにんばやしのふえたいこ」・「きょうはたのしいひなまつり」上手上手!よかったね。
「ありがとう」は?ありがとう。
ここのおひなさんまた違うね。
ありがとう。
子供の頃にはできなかったにぎやかなひな祭りです。
おおきにな。
アハハハハ!にぎわいが一段落した夕暮れ近く。
サカエさんは弟の事で落ち込んでいたよしさんを誘い出しました。
これは毎年飾ってある。
サカエさんと2人でひな人形を見たよしさん。
おしゃべりにいつもの調子が戻ってきました。
アハハうそやうそや。
アハハハそうか?おばあちゃんの年になって家にやって来たおひな様。
この春も一緒に過ごす事ができました。
アハハハハハ!小さな女の子の健やかな成長を願うひな祭り。
でもこの山里ではおばあちゃんたちの一日一日に輝きを与えるお祭りです。
2015/05/07(木) 19:30〜19:55
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「おばあちゃんのひな祭り〜三重 松阪市宇気郷〜」[字]

三重県松阪市の山間部にある宇気郷地区。一足遅い春の訪れとともに、地区をあげてのひな祭りが行われる。主役は“おばあちゃん”。どんな思いでひな祭りを迎えるのか。

詳細情報
番組内容
本来ひな祭りは、女の子の健やかな成長を願うもの。しかし、高齢と過疎が進む宇気郷では違う。ひな人形を飾るのは、子どもの住んでいないお年寄りだけの家。その人形は、寄付されたものばかり。中心となる女性たちは、貧しかった幼少期にひな人形を買ってもらえず、おばあちゃんになってはじめて、自分のために人形を飾る。山里に多くの客が訪れる、年に一度のひな祭り。花々が咲き誇るように、おばあちゃんたちの笑顔が花開く。
出演者
【出演】篠原ともえ

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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