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【政治】

国内平時 武力行使も 集団的自衛権、余地残す

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 政府は二十七日午後の安全保障法制に関する与党協議で、他国を武力で守る集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」に関する見解を示した。日本に対する武力攻撃が予測されておらず、国内が平穏なのに、存立危機事態を認定し、集団的自衛権に基づいて武力行使に踏み切る余地を残した。

 安倍晋三首相は、中東危機の際にホルムズ海峡が機雷で封鎖され、日本への原油供給が長期間滞れば、存立危機事態に該当する可能性があるとして、停戦前の機雷掃海を集団的自衛権行使の事例に挙げている。国際法上、停戦前の機雷掃海は武力行使と解釈される。

 政府見解は、こうした安保法制の解釈が可能であることを認めたといえる。日本に対する直接の武力攻撃が予測されていないのに、存立危機事態を認定して海外で武力行使する事例が、ほかにも拡大する可能性を否定しなかった。

 政府見解は「基本的な考え方」と題し、現行武力攻撃事態法が定める切迫事態と予測事態について「わが国に向けられた武力攻撃であることに着目した概念」と説明。一つの状況が二つの事態に同時に該当することは「ない」としている。

 集団的自衛権の行使を可能にするために同法を改正して新設する存立危機事態については「異なる観点から状況を評価する」として、集団的自衛権の行使は個別的自衛権とは別の基準で判断すると強調した。その上で、存立危機事態に該当する状況は、同時に切迫事態あるいは予測事態にも該当することが「多い」と指摘。少数ケースながらも存立危機事態を単独で認定する可能性を残した。

 自民、公明両党は与党協議で、政府見解も踏まえ、安保法制の主要条文を実質了承する見通し。与党協議は大型連休明けの五月十一日に条文全体に合意。政府は十四日にも関連法案を国会に提出する方針だ。

<武力攻撃事態法> 日本が武力攻撃された際の対応を定めた有事法制の中核を占める法律。日本への武力攻撃に関し、脅威の高い順に「発生事態」「切迫事態」「予測事態」を規定。それぞれの事態での政府の対応や手続きを定めた。現在は個別的自衛権の発動しか想定していない。政府は今回の安保法制で、集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」を同法に新設する改正を行う方針だ。

 

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