アリは驚くべき生き物です。
人間のように組織化された複雑な社会を営み見事に築かれた巣には作物を育てる特別な場所まであります。
アリにはどうしてこんな事ができるのでしょうか。
謎を解明するため巨大な人工の巣を作り100万匹の野生のアリを研究室に運び込みました。
謎に包まれたアリの世界が明らかになろうとしています。
最新技術を駆使してアリを追跡し…。
(アダム)これで兵隊アリが地下で何をしているかが分かるはずだ。
アリの「声」に耳を澄ませ…。
(ジョージ)音が聞こえる。
ええ。
間近で観察します。
うわっ!服の中に入ってきた。
また世界中に生息する驚くべきアリの数々をご紹介します。
(ネイサン)すごいですよね。
更にアリは人間が抱える難題を解決するヒントも与えてくれます。
秘密がいっぱいのアリの世界をのぞいてみましょう。
巨大な人工のアリの巣です。
「コロニー」と呼ばれるアリの家族の秘密を解明するために作られました。
自然界で最も複雑な社会の一つアリのコロニーは多くの謎に包まれています。
謎の解明に挑むのはジョージ・マクガバン博士とアダム・ハート博士。
観察するのはハキリアリです。
ハキリアリは草や木の葉を切り取って地下の巣に持ち帰ります。
実験では研究室にハキリアリの巣を再現しできるだけ野生に近い状態で観察できるようにしました。
巣箱もトンネルも中が見えるようになっています。
全て実際の巣をまねて作られました。
(ジョージ)ハキリアリは高温多湿の薄暗い場所に生息しています。
そのため屋外で観察するのは大変です。
条件をうまく管理して観察する事ができればハキリアリの理解がもっと深まるはずです。
野生のアリは巣の中に数多くの「部屋」を作ります。
設置した巣箱は野生のアリが地下に作る部屋にあたります。
アリの部屋の中をのぞいてみましょう。
部屋にはハキリアリのコロニーに欠かせないものがありました。
この灰色の物体です。
(アダム)この灰色のものはキノコの菌です。
ハキリアリは取ってきた葉を使って巣の中でキノコの菌を育てているんです。
ハキリアリは切り取った葉を食べるわけではありません。
巣に持ち帰った葉を肥料にしてキノコの菌を栽培し食料にしています。
ハキリアリは農園でキノコの菌を育てているのです。
奥には他にもコロニーにとって大切なものがありました。
白い半透明のものはハキリアリの子供です。
キノコ農園では卵や幼虫サナギも育てられています。
アリは部屋でコロニーにとって欠かせない食料と子供を守っているのです。
ジョージとアダムは巣箱を開けてアリをもっと近くで観察する事にしました。
(アダム)じゃあ出しますよ。
(ジョージ)兵隊アリはやめてくれ。
できれば触りたくない。
兵隊アリはその名のとおり巣を守るアリです。
体が大きくかみつきます。
兵隊アリも交ざってます。
いいよ。
おお痛い!大きいのがいるな。
ええ。
手をかまれた。
ああすごい!大きな兵隊アリが僕の手にガブリとかみついたよ。
巣にはいろいろな大きさのアリがいます。
兵隊アリはその中の一つです。
つまりハキリアリという同じ種の中に姿形が異なるさまざまなタイプのアリがいるのです。
兵隊アリはかむ力が強いアリです。
脳はあまり大きくありませんが強い筋肉で巨大な顎を動かし人の皮膚を切り裂く事もできます。
兵隊アリよりも小さいこのアリは中型働きアリ。
葉を収穫して巣に持ち帰るのが仕事です。
肥料のもととなる葉の調達係です。
最も数が多いのは一番小さな小型働きアリです。
小さくても立派な成虫でこれ以上体が大きくなる事はありません。
(アダム)小型働きアリは食料となるキノコの菌や幼虫の世話などさまざまな仕事を担当しています。
そしてコロニーにとって最も大切な存在は女王アリです。
女王アリはコロニーの中で唯一生殖活動を行うアリです。
女王アリが死ねばコロニー全体も死んでしまいます。
人口の巣を作り実験を進めるためには健康な女王アリがいる野生のコロニーを見つけ出し運んでくる必要がありました。
アダムにその仕事が任されました。
アダムが向かったのはカリブ海にあるトリニダード島でした。
今回の実験にぴったりのハキリアリのコロニーがあるという情報が寄せられたからです。
島ではハキリアリは果物の木を荒らす害虫と見なされています。
アダムが向かっているコロニーももう少しで農家の人に壊されるところでした。
100万匹ものアリが住む巣からたった一匹の女王アリを見つけ出すのは簡単ではありません。
(アダム)女王アリを殺したらおしまいですから慎重に掘り出さないと。
無事に捕まえないと実験ができませんからね。
現場ではアンディ・スティーブンソンが待っていました。
やあアンディ。
(アンディ)どうも。
あれだね?アンディはアリの巣を掘る専門家です。
世界中の動物園や博物館にハキリアリのコロニーを提供しています。
地元の人の協力を得て作業が始まりました。
(アンディ)30cmずつ掘って少しずつ丘の方へ進んでいこう。
少しずつ巣の奥へと掘り進めて女王アリを探します。
ハキリアリの巣はいくつもの部屋がトンネルでつながり迷路のようになっています。
この野生の巣をもとに巨大な人工の巣が作られました。
アリを野生と同じように行動させるため部屋とトンネルを透明の箱とチューブで代用し実際の巣をまねて作りました。
アダムはアリが育てたキノコの菌も運び出しました。
食料がなければハキリアリはすぐに死んでしまうからです。
一日で数千匹のアリと大量のキノコの菌を掘り出しました。
しかし肝心の女王アリがまだ見つかりません。
(アンディ)いない…。
女王アリを発見できなければ実験はできません。
2日目。
女王アリの探索が続きました。
女王アリを見分けるポイントは2つ。
体がひときわ大きい事周りに女王アリの世話をする小さなアリが群がっている事です。
(アンディ)ここは期待できるかも。
(アダム)確かに。
女王アリがいるかもしれません。
(アダム)いい感じだな。
真ん中に女王アリがいるかも。
(アンディ)見てみよう。
いた!
(アダム)女王アリだ。
やった!ついに見つけたぞ。
大量の土をかき分けてたった一匹しかいない一番大切な女王アリを見つけ出す事ができました。
こうして巨大な人工の巣でハキリアリのコロニーが元気に活動する事になりました。
アリは植物を与えられるとすぐに切り取り始めます。
キノコの菌の栽培に使うためです。
アリにはそれぞれ重要な役割がありまるで工場の流れ作業のようにキノコの菌が作られていきます。
最初の仕事は葉を切り落とす事です。
実はハキリアリは大きな顎をナイフのように使って葉を切り取っています。
この方法なら硬くて分厚いバナナの葉でも切り取る事ができます。
後ろ足で体を固定してコンパスで円を描くように葉を切り取ります。
大きなアリほど大きな円を描けます。
(ジョージ)なるほど。
体の大きさに合った葉を運ぶための巧妙な方法です。
ハキリアリの作業はまだ始まったばかり。
これから切り取った葉を巣に持ち帰らなければなりません。
葉を抱えたアリの行列はまずロープを渡り砂場を越えて橋を渡ります。
巣の上に到着するとチューブのトンネルを通ってキノコの菌のある部屋へ向かいます。
巣の中では小型のアリが葉を細かくかみ切ってすり潰し肥料を作ります。
そして更に小さなアリが肥料をキノコ農園に運びます。
どの作業にも無駄はありません。
農園はハキリアリが丹精込めて作り上げたもの。
小さなくぼみがびっしり並んでいて限られた空間でキノコの菌をどんどん殖やせるようになっています。
くぼみはまた安全な子供部屋にもなります。
全ての工程が工場の流れ作業のようにスムーズに進められています。
ハキリアリは一致団結する事で驚くべき事を成し遂げます。
一匹では不可能な事を組織力を使って実現するのです。
しかし仲間と協力する能力を持つのはハキリアリだけではありません。
世界にはコロニー全体で信じられないようなものを作り出すアリもいます。
南米アマゾン川に浮かぶ茶色い物体。
一見落ち葉のように見えますが近づいてみるとなんとおびただしい数のアリの集団である事が分かります。
洪水で巣を流されるとヒアリは生き延びるために体を寄せ合いいかだを作るのです。
陸地にたどりつくまで何か月もこの状態で生き延びる事ができます。
なぜこのような事ができるのでしょうか。
アメリカジョージア工科大学のネイサン・ムロットはヒアリの特殊な能力を研究しています。
いかだの底にいるアリは溺れないのかって疑問に思いますよね。
でも大丈夫。
いかだを水に沈めてもヒアリの体はぬれません。
体の周りに薄い空気の層があるからです。
空気のカプセルに入っているような状態なので水中でも呼吸ができるんです。
ヒアリの体は水をはじく性質を持っています。
そのためいかだに水がかかってもワックスをかけたように水はそのまま滑り落ちます。
こうして数千匹のアリがまとまるとほぼ沈まないいかだが出来るのです。
(ネイサン)いかだを沈めようとするとヒアリは更に強く体を引き寄せ合います。
水中に沈められても水の侵入を防ぐ事ができます。
ヒアリのいかだを数百倍に拡大してみるとその秘密が分かります。
ヒアリは大顎を使って仲間の足をしっかりくわえています。
更に足の先には球状の構造物とかぎ爪があります。
ヒアリは自分の体の一部を連結するために使いコロニー全体で一つのいかだに変身しているのです。
アマゾン川の激しい洪水を切り抜けるためヒアリはそれぞれ協力して驚くべき事を成し遂げているのです。
コロニーのために協力する。
これは全てのアリに共通する特性です。
人工の巣に暮らすハキリアリも例外ではありません。
協力するからこそ100万匹ものアリが一つの巣で共同生活を送る事ができるのです。
しかしそれだけ多くのアリが一緒に暮らしていれば人間の都市が抱えているような問題も生じるはずです。
大量の葉を加工すれば大量のゴミが出ます。
ジョージはハキリアリがゴミをどう処理しているのか調べる事にしました。
ハキリアリは人工の巣を取り囲んでいる溝の中にゴミ捨て場を作っています。
この溝はアリを外に出さないために作ったもので中に水が入っています。
ハキリアリはそこにゴミ捨て場を作ったわけです。
ひどい臭いです。
ぬれて腐っているんです。
強烈な臭いです。
早く分解されるように働きアリがゴミをひっくり返しています。
働きアリはゴミだけでなく仲間の死骸も捨てていました。
ここには墓地が作られています。
興味深いですねぇ。
数百匹分のアリの死骸です。
小さな働きアリから大きな兵隊アリまであらゆる階級のアリがいます。
死んでしまうとアリはコロニーの外に出されて捨てられるんです。
多くのアリが暮らすコロニーでは病気が発生するとすぐに全体に広がるおそれがあります。
これを防ぐには清潔な環境を保つ必要があります。
そのため死骸やゴミなど腐る可能性のあるものは巣の外に出されるのです。
ゴミ捨て場や墓地があるというのはハキリアリのコロニーが非常に洗練されている事を示しています。
高度に発達した組織は人間社会に近いかもしれません。
私たちは「女王」や「兵隊」など人間社会の用語を使ってアリの社会を表現しています。
しかしアリの社会は本当に人間社会のようなのでしょうか。
女王アリがコロニーを統率しているのでしょうか。
人工の巣の女王アリは巣箱の奥に隠れているため見る事はできませんが別のコロニーの女王アリを観察する事ができました。
トリニダード島で見つけた違うコロニーの女王アリです。
(ジョージ)女王アリを見るのは初めてだよ。
(アダム)堂々として立派ですよね。
周りのアリと比べるとどれだけ大きいかが分かります。
大きな体を突き出しているのが女王アリです。
周りでは小さなアリが女王アリの世話をしています。
女王アリのおなかの中には卵巣があり多い時には一日に3万個の卵を産みます。
(ジョージ)ちょっと触ってみよう。
なんて美しいんだ…。
ハキリアリのコロニーには女王アリは1匹しかいません。
しかし年に一度だけ新しい女王アリとオスのアリが生まれます。
新たに生まれた女王アリは巣を離れてオスと交尾し新たなコロニーを作ります。
野生のハキリアリの交尾はまだ観察された事がありません。
しかしヨーロッパに生息するアカヤマアリの交尾が参考になりそうです。
アカヤマアリのコロニーでは夏の終わりに数百匹もの新しい女王アリとオスアリが誕生します。
どちらにも羽があり一斉に巣から飛び立って交尾の相手を探します。
「結婚飛行」と呼ばれる行動です。
交尾を終えるとオスは死に女王アリは二度と交尾を行いません。
この人工の巣には現在オスは一匹もいません。
ここにいるアリはみんなメス。
しかも同じ女王アリから生まれた姉妹です。
アリの世界は人間の世界とは全く違います。
生殖活動を行うのは女王アリだけでそれが女王アリの唯一の仕事です。
卵の世話などは全て働きアリの担当です。
つまり異なる世代の多くのアリがコロニーのために力を合わせて働いているのです。
このような特性を持つ昆虫を「真社会性昆虫」といいます。
真社会性昆虫は種の数としては昆虫全体の2%程度にすぎません。
しかし生物量ではその大部分を占めています。
真社会性昆虫にはアリの他にシロアリやスズメバチミツバチなどがいます。
今地球上には他の全ての昆虫を合わせたよりも多くの真社会性昆虫が生息しています。
高度な社会性を持つ事は動物界においてとても重要な進化のステップなのです。
真社会性昆虫はいつなぜ進化したのでしょうか。
アメリカ自然史博物館の学芸員デービッド・グリマルディはアリをはじめとする太古に生息していた昆虫を研究しています。
この標本は白亜紀のものです。
初期のアリは恐竜がいた頃には既に地上を歩き回っていました。
恐竜は絶滅しましたがアリは生き残って驚くほど増えたんです。
今から1億年前の白亜紀。
木の樹液がエサを探していたアリを包み込みそのまま固まって琥珀となりました。
中には働きアリと思われるアリが10匹閉じ込められています。
これはアリがそのころから既に集団で行動し社会性を持っていた証拠だと考えられています。
アリ社会は人間社会よりもはるかに長い歴史があり大きな進化を遂げ人間社会に匹敵するほど複雑になりました。
(ジョージ)組織化された共同体がどのように統率されているのか疑問に思いませんか?何をするかどこへ行くのかを一体誰が決めているんだろうってね。
実はハキリアリの社会にリーダーはいません。
女王アリが統率しているわけではないのです。
ではどうやって高度な組織力を維持しているのでしょうか。
アダムはある実験をする事にしました。
二股に分かれた道を作り一方には食べ物を置きもう一方には何も置きません。
これをアリの通り道につなげます。
アリは必ずどちらかの道を選ぶ事になります。
右と左どちらに行くでしょうか。
右か左か五分五分の選択です。
結果は…。
20分後にはほぼ全てのアリが食べ物のある道に進みました。
なぜどちらへ行けばいいのか分かるのでしょうか。
ハキリアリは視力が悪く分かれ道から食べ物は見えていないはずです。
実はハキリアリは視覚ではなく嗅覚を使って情報を交換しています。
(アダム)アリはフェロモンという化学物質を出して他のアリのために道しるべを残しているんです。
ハキリアリは僅かな量のフェロモンも感じ取る事ができます。
アリは食料を探しに出かける時仲間が後を追えるように地面にフェロモンを残しながら進みます。
食べ物が見つかったら巣へ帰る時に更にフェロモンを出して道しるべを強めます。
食べ物が見つからなかったら帰り道にはフェロモンを出さないので最初の道しるべは蒸発して消えていきます。
後を追うアリはフェロモンがより強い方に進みます。
こうして多くのアリが通る事で道しるべは更に強まります。
フェロモンが多い方の道へ進む事で食料が得られる可能性が高まります。
ハキリアリの集団が統率されている要因の一つです。
女王アリが「右だ」「左だ」と指示を出しているわけではありません。
フェロモンをたどっているだけなんです。
個々のアリは単純な信号と単純なルールに従っているだけですがコロニー全体としては非常に複雑な事を成し遂げています。
新たな食料源を見つけて効率的に利用しこれを使い果たした時にも即座に対処できます。
ハキリアリのコミュニケーション方法はフェロモンだけでなく絶えず情報交換をしています。
最新の技術を使ってアリの「会話」を聞く事ができました。
アリは非常に小さい高周波の音一種の振動を発しているんです。
人間の耳にはアリの音は聞こえません。
しかしマイクを使って増幅すると葉の周りのにぎやかな音が聞こえてきました。
(アリのたてる音)ジョージとアダムはある独特な音に注目しました。
葉を切り取る音とアリの足音に混ざって甲高い声のような音が聞こえます。
これはハキリアリが腹部の辺りをこすって出している摩擦音です。
今聞いているのはハキリアリが出している摩擦音の一例です。
(摩擦音)この小鳥がさえずるような音は仲間を呼び寄せるための摩擦音です。
栄養分の多い葉を見つけた時ほど多くのアリがこの音を出し葉を振動させて仲間を集めます。
(摩擦音)こうしてハキリアリはいつも一番良い葉から先に切り取っていくのです。
摩擦音は葉の収穫だけに使われているわけではありません。
この信号が生死を分ける場合もあります。
地下の巣を作る時アリは絶えず危険にさらされています。
天井が崩れ落ちれば生き埋めになる事もあります。
アダムとジョージは崩落事故のシミュレーションを行ってアリの反応を調べる事にしました。
(アダム)これはマイクです。
上にのせたものの音を録音できます。
(ジョージ)この上にアリをのせて…。
僕がのせるのでその上から土をかけて下さい。
(ジョージ)いいかい?
(アダム)ええ。
よし。
(ジョージ)生き埋めだ。
土の中に閉じ込められたアリが仲間に助けを求める音が聞こえてくるはずです。
(摩擦音)聞こえるでしょう?おなかの辺りをこすって出している音です。
はっきり聞こえる。
ええ。
仲間に助けを求める信号です。
「ここへ来て助けて」と言っているんです。
軽く土をかけただけなのでこのアリに命の危険はありません。
やがて音はやみ自力で土をかき分けたアリが姿を現しました。
(アダム)ほら。
(ジョージ)出たか。
ハキリアリのコロニーではフェロモンや摩擦音などの信号を使ってコミュニケーションをとっています。
アリは信号に基づいた単純なルールに従って行動しているのです。
誰かが指示を出したり管理をしたりしているわけではありません。
(ジョージ)コロニーを観察しているとアリがとても複雑な事をしているように思われます。
でも実はフェロモンの匂いや音を使った単純なルールがいくつかあるにすぎません。
全てのアリが同じルールに従う事で非常に複雑に見える事を成し遂げているんです。
ハキリアリの行動はこうした集団的知性に支えられています。
自然界では他にも単純なルールによって驚くべき行動が生み出されています。
アフリカに生息するグンタイアリは幼虫を安全に移動させるため兵隊アリが立派な道を作ります。
アジアツムギアリは幼虫が吐く糸で葉をつなぎ合わせて複雑な巣を作り上げます。
道具を使っているわけです。
こうした自然界の驚くべき行動は全て単純なルールに基づいています。
コロニーのメンバー全員がルールを守って何度も同じ事を繰り返す事で成立しているのです。
人工の巣のおかげでハキリアリの驚くべき生態を間近で観察する事ができました。
しかしまだハキリアリの中に習性がよく分からないアリがいます。
兵隊アリです。
兵隊アリは葉の収穫にもほとんど出てきません。
一体何をしているのでしょうか。
アダムたちは兵隊アリの体に無線追跡装置をつけて24時間監視する事にしました。
巣箱やチューブを動き回る兵隊アリの行動を把握します。
実験によってコロニーにおける兵隊アリの役割が明らかになるはずです。
アダムが実験結果を分析します。
どの兵隊アリもかなり奇妙な行動をとっています。
巣の中を見回っているようです。
例えばある兵隊アリは3つの巣箱を20時間何度も行き来していました。
他のアリも同じように巣箱を行ったり来たりしています。
それぞれの担当区域をパトロールしているのかもしれないな。
実験の結果兵隊アリが高度に組織化された警備隊でキノコ農園をパトロールしている事が分かりました。
ずっと2つの巣箱を行ったり来たりしているものもいれば広い区域を見回っているものもいます。
中でも兵隊アリが集中的にパトロールしているのがこの区域です。
警備が特に厳重な事からアダムたちはここに女王アリがいるのではないかと考えています。
キノコの菌と子供と女王アリというコロニーの資産を守るための組織的な警備ネットワークは非常に複雑なものに見えます。
しかし兵隊アリも他のアリと同じように単純なルールに従う事で複雑な集団行動を成し遂げているのです。
アリは力を合わせて洗練された社会をつくり効率のよいシステムを運営しています。
(アダム)我々人間にもアリから学べる事があると思います。
アリのやり方を参考にする事で我々が抱えている問題の解決策を見いだせるかもしれません。
例えばビジネスにおける流通やネットワーク作り電気系統などにおいてね。
アメリカテキサス州にガスの製造販売会社があります。
チャールズ・ハーパーは圧縮ガスを顧客のもとに届けるための供給システムを管理しています。
チャールズはアリの助けを借りて難しいビジネス上の問題を解決しました。
(チャールズ)ここで当社のガスの供給と製造状況をチェックしています。
工場は100か所取引先は1万か所あります。
誰にどこから製品を届ければいいかを日々判断しなければなりません。
この会社では輸送のためのガソリン代が年間数億円に上ります。
燃料費を抑えるには効率的な最短の輸送ルートを見つける必要があります。
「巡回セールスマン問題」と呼ばれる課題です。
各都市を1回ずつ回って出発点に戻るための最短ルートを見つけます。
都市の数が5つなら考えられる輸送ルートは12とおりです。
しかし都市の数が増えるにつれ輸送ルートの選択肢も飛躍的に増えます。
15都市を回るとすると考えられるルートは400億とおり以上にもなります。
多くの取引先を抱えるこの会社の場合考えられる輸送ルートは数兆とおりにも上ります。
そこで問題を解決するためアリの行動に基づいたコンピュータープログラムを取り入れています。
輸送用トラックをアリに取引先をアリの食べ物がある場所に例えます。
アリが食べ物を持って帰るルートを使って私たちは製品を届けます。
プログラムではコンピューター上にアリを放ち最適なルートを探ります。
コンピューター上のアリたちも本物のアリと同じようにフェロモンを残しながら移動します。
やがて短いルートを通るアリが増えフェロモンが強まっていきます。
そして長いルートのフェロモンは蒸発し無視されます。
アリが食料までの最短ルートを探すのと全く同じ方法です。
コンピューター上のアリたちも効率よく最善のルートを見つけ出しました。
このプログラムは複雑な輸送問題を解決するのに役立てられています。
アリのコロニーの知恵が利用されているのは輸送問題だけではありません。
たくさんの選択肢の中から最善のルートを見つけ出すアリの能力を使って科学者たちは今はるか遠くの目的地を目指しています。
イギリスストラスクライド大学のマックス・バシールはアリの能力を宇宙探査機の打ち上げに役立てようとしています。
アリの能力を借りて惑星から惑星へ移動する時の最善のルートを特定しようと考えています。
宇宙では途中で通過する惑星の重力を利用すれば速度を変える事ができます。
宇宙探査機を最適な角度で惑星に送り込むとその惑星の重力で探査機を加速させる事ができます。
「スイングバイ」と呼ばれる方法です。
複数の惑星の重力を利用すればあまり燃料を使う事なく探査機を宇宙のかなたへと送る事ができます。
しかし惑星は常に動いているためスイングバイの組み合わせを割り出すには複雑な計算が必要となります。
どの順番で惑星を通過しどのルートで行けば最適か。
それを決める上でアリはとても役に立っています。
「巡回セールスマン問題」に似ていますがこの場合配達先にあたる惑星は動いているわけです。
マックスは宇宙版のプログラムを使って1997年に打ち上げられた探査機カッシーニのルートを再検討してみました。
カッシーニは金星と地球と木星でスイングバイを行い土星へと向かいました。
コンピューター上のアリたちはこのルートを見事に再現。
更にもっと効果的な他の2つのルートも割り出しました。
アリたちは地上から何億キロも離れた宇宙の問題も解決できるのです。
全てはアリのコロニーの力です。
細胞を一個一個見ても私という人間は理解できないようにアリ一匹一匹を見てもアリのコロニーの事は分かりません。
アリのコロニーは「超個体」つまり一つの大きな生命体なんです。
生命の進化において目覚ましい成功を収めているアリ。
アリの事をもっと理解できればその類まれな能力を人間のために更に役立てる事ができるかもしれません。
私たちはまだアリに秘められたすばらしい知恵を学び始めたばかりなのです。
2015/05/11(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「驚き!ハキリアリの世界」[二][字][再]
“農園を営むアリ”と言われるハキリアリは、巣に持ち帰った葉を肥料にしてキノコの菌を育て、これを食料とする。実験室に巨大な人工の巣を作り、謎の生態に迫る!
詳細情報
番組内容
中南米に生息するハキリアリ。その生態を調べるため、アクリル製の箱とチューブで実験室に巨大な人工の巣を作り出した!100万匹のハキリアリを観察したところ、厳格な役割分担があることが判明。葉を切って巣に運ぶアリ、葉を砕いて肥料を作るアリ、肥料でキノコの菌を育てるアリ…。ハキリアリはどうコミュニケーションをとっているのか。GPSを使ったり、“声”を録音するなど様々な実験をする。(2012年英国)再放送
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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