2サイエンスZERO「太陽の未来!?宇宙の宝石 惑星状星雲」 2015.05.10


打ち上げから25年を迎えた…地上からの観測では不可能な高精細な天体の画像を数多く撮影してきました。
25周年を記念した科学雑誌「ネイチャー」の特集記事。
インターネットにはハッブルに携わる研究者お気に入りの画像トップテンが発表されました。
そのトップを飾っているのがバタフライ星雲。
まるで蝶が羽を広げたかのような姿をしています。
これは惑星状星雲というタイプの星雲です。
ハッブルによって惑星状星雲の美しい姿が次々と明らかになってきました。
そしてトップテンにはもう一つらせん星雲も選ばれています。
こうした惑星状星雲はただ美しいだけじゃありません。
実は私たちの太陽系の運命を語る上で欠かせないのです。
ハッブルが捉えた宇宙の宝石惑星状星雲に迫ります。
今日のテーマは「惑星状星雲」。
すごいきれいな天体ですよね。
きれいですよね。
これまでに3,000個くらい見つかってるんですよ。
何か色も形もいろんなのがありますね。
ですよね。
ちょっと見てみましょうか。
はい。
これは冒頭に出てきたバタフライ星雲。
地球から3,800光年の距離にあって…2光年!ものすごくでっかいんですよ。
すごいスケールですね。
これねキャッツアイ星雲といいますね。
きれい。
これは北斗七星の隣にあります。
地上の望遠鏡で見ると暗くてこれ遠くにあるんですね。
なのでぼんやりしてるんですが…何かいろんな個性がありますね。
ありますね。
でも惑星状星雲っていう名前ですけど何か別に惑星っぽくはないんですけど。
確かにいいところに気付きましたね。
どうしてそんな名前なんですか?その不思議なネーミングの秘密はこの発見のいきさつと関わってるんですよ。
惑星状星雲と名付けたのは18世紀に活躍した天文学者…ハーシェルは土星の外側を回る天王星を発見したほか数々の天文学上の重要な発見をしました。
自宅には長さ6mもの巨大な望遠鏡がありました。
これを使ってハーシェルは毎晩天体観測をしていたのです。
ある日ハーシェルが望遠鏡をみずがめ座の方向に向けたところそこにぼんやりとした星雲がある事に気付きました。
ハーシェルはその星雲についてこう記しています。
ハーシェルが「惑星のよう」と思ったのには理由があります。
普通の星雲を望遠鏡で見ると低倍率ではぼんやりとしか見えなくても倍率を上げると柄が見えてきます。
光の強さや色が均一ではないのです。
しかしそのみずがめ座の星雲は倍率を上げてもぼんやりとしたままで柄が見えませんでした。
ハーシェルが発見した惑星天王星も当時の望遠鏡で見たらこんな感じに見えた事でしょう。
光り方が均一で青緑色にぼんやりと光る様子がよく似ています。
そのためこうした星雲を惑星状星雲と名付けたのです。
その後もハーシェルは観測を続け…しかしハーシェルの時代にはその正体は分からずじまいだったのです。
その謎が解明されたのは19世紀。
ウィリアム・ハギンズの功績です。
ハギンズが使ったのは分光器という観測装置です。
分光器とはプリズムを使って光を波長ごとに分ける装置です。
太陽などの恒星の光は虹のように連続しています。
光にさまざまな波長が含まれているからです。
しかし惑星状星雲を観測した結果は全く違いました。
論文には「この星雲はモノクロだ」と書かれています。
観測結果を見ると細い線がまばらにあるだけです。
確かに太陽の連続的な光とは全く違っています。
モノクロとはどういう事なのか。
現代の装置でハギンズの観測を再現してもらいました。
普通の恒星と惑星状星雲を分光器で解析すると違いがあるはずです。
まずは恒星に望遠鏡を向けます。
捉えた光を分光器に通しました。
これはしし座の一等星レグルスを観測した結果。
光が虹色に分光されています。
一方こちらはキャッツアイ星雲を観測した結果。
ところどころに線があるだけです。
つまりモノクロとは単独の色の線の集まりという意味だったのです。
そしてこの線に惑星状星雲の正体が隠されていました。
ここに3本出てますね。
真ん中のが水素のHα輝線というやつですね。
それからこちらの方に結構はっきり見えているのが酸素。
そしてくっきり見えているのがこれは水素のHβ線という。
水素と酸素の線。
これはどういう意味なんでしょうか。
う〜ん最初はぼんやりとしか見えなくてそれが天王星に似てたから惑星状星雲っていう名前が付いたんですね。
ですね。
それにしても惑星状星雲の光から酸素や水素の線が出てるっていうのはどういう事ですかね。
ガスが光る?はい。
らせん星雲を見て下さい。
はい。
真ん中にズームしていくと何がありますか?あっ何かすごい小さな星がありますね。
そうなんですよ。
紫外線がガスを光らせる?はい。
こちらでご説明しましょう。
先ほどの惑星状星雲ですが水素や酸素のガスが存在しています。
で水素や酸素の原子核の周りには電子が回っています。
ここに紫外線が当たるとエネルギーを吸収して…この電子が…なのでこの分光によって出てきた光の線を見るとそれが水素とか酸素だという事が分かるんですね。
はあ〜なるほど。
でもそもそもそのガスっていうのはどこから来たんでしょうね?その疑問には私がお答えしましょう。
先ほど小さな星見えましたよね。
あの星から出てきたんです。
えっ!?あの星が惑星状星雲になる前星として一生を終わる直前にたくさんのガスを出してそれが光っているんです。
え〜っ!?星が一生を終える時に出すんですね?そうなんです。
超新星爆発ではないんですね。
へえ〜そうなんだ。
そう。
そういうふうに考えられています。
ではまず太陽がどんな一生を送るのか見てみましょうか。
これが現在の太陽なんですが…お〜!え〜っ!?そんなに大きくなるんですか。
これ赤色巨星といいます。
赤色巨星。
この状態が10億年ぐらい続きます。
その後今度はですね…この青白いちっちゃな星これが白色わい星といいます。
白色わい星。
こうやって大きく膨らんだり縮んだりしながらガスを出して…あ〜なるほど。
でも大きくなったり小さくなったりするその流れでどうしてガスが出るんですか?それは太陽の中心部で何が起きているかを見れば分かります。
これが太陽ですね。
この中心部を見ていきましょう。
太陽の中心というのは大変温度が高くて圧力が高くてこの中で核融合反応が起きています。
水素が4つ集まってヘリウムという元素に変わると。
この時に大量のエネルギーを出すんですね。
どんどんどんどんヘリウムがたまっていくとヘリウムの方が中心に固まっていきますね。
ヘリウムはこの段階ではまだ核融合反応しません。
どんどんどんどんたまっていきます。
中心の圧力と温度がどんどんどんどん上がっていきます。
そうするとですね水素がどんどん核融合反応してそのエネルギーで星は大きく膨らんでいきます。
ここがさっきの赤色巨星のなり始めです。
だんだん大きくなっていくとこですね。
更に反応が進んでいくと…今度はヘリウムが3つくっついて炭素ができます。
これもどんどんどんどん進んでいきます。
そうすると最終的には一番中心には炭素その周りをヘリウム更にその周りを水素が取り囲むというこういう3重の構造になるんですね。
本当だ3層になってますね。
へえ〜。
あっ何か出てきましたね。
はい。
この時に星の表面からはですね水素それから酸素だとかそういうものを含んだガスが宇宙空間に放出されていってるんですね。
どうしてガスが出るんだろう?これはですね星が大きく膨らんでいくと表面重力が小さくなるんですよ。
で重力が小さくなると引っ張れなくなるので出ていっちゃう。
で更には星から出る光の圧力で吹き飛んでしまうんですね。
え〜こうやって太陽からガスが出るんですね。
はい。
一方で星の中心では水素がどんどん核融合反応して減っていきます。
そうするとついにはですね…これが赤色巨星の時代の最後の段階です。
なるほど。
水素がなくなってしまうとどうなるんですか?そうするともう核融合反応を進められないので星としてはおしまい。
そして星はですねこのあと一気に縮みます。
そして温度が高くなって青くなりましたよね。
はい。
紫外線を出して周りの今まで出していたガスを光らせて惑星状星雲になるという事ですね。
そっかこれでガスが光るんだ。
すごいダイナミックな感じで惑星状星雲になっていくんですね。
実は赤色巨星がガスやちりを噴き出す姿を日本の観測衛星が捉えてるんですよ。
え〜すごい。
これがですね赤外線天文衛星「あかり」が捉えた赤色巨星の姿です。
肉眼で見ると真ん中の星しか見えないんですね。
ところが赤外線の衛星で見るとその周りに赤く取り囲むものが見えます。
これは先ほど出てきた星から放出されたガスその中でダストこれは例えば砂粒ですとかすすみたいなものですね。
それが広がっていって赤外線を出しているそういう姿を捉えています。
これ大体今0.3光年ぐらいまで星から遠い所にいて温度で言ったらマイナス二百何十度という非常に低温なんですね。
そういう姿です。
へえ〜。
じゃあこれがこのあと惑星状星雲になる訳ですか?そうなんですね。
真ん中の星が白色わい星になって紫外線を出すようになると今赤外線でしか見えてなかった部分が光り輝いて惑星状星雲のように見えていくという事になります。
ちなみに太陽より10倍以上重い星は惑星状星雲にはならず超新星爆発への道をたどります。
炭素がたまった中心核では炭素が更にヘリウムと核融合し酸素が作られ始めます。
更に中心核の温度が6億度を超えると炭素同士が核融合を始めネオンやマグネシウムが作られます。
30億度を超えると今度は酸素同士が核融合を始めケイ素や硫黄などが作られます。
そして40億度以上になると今度はケイ素がヘリウムと核融合し始めます。
これに続いてさまざまな元素がヘリウムと核融合し最終的に質量の大きい鉄が生み出されるのです。
全ての元素の中で…そのため核融合はもう進みません。
しかしこの鉄がたまって更に高温高圧になるとエネルギーの高い光子が発生。
この光子が鉄を一気にヘリウムにまで分解してしまうのです。
重い鉄が軽いヘリウムに変化した事で天体の中心の支えがなくなり周りの物質が中心に向かって一気に落ち込みます。
そしてその反動で大爆発が起きるのです。
これが…超新星爆発を起こした天体の残骸の一つ…この星をX線で観測して波長の違いで色をつけると…。
緑がケイ素。
赤が鉄。
白がカルシウムの多い部分。
惑星状星雲ではあまり見つからない重い元素が大量に存在している事が分かります。
ところで太陽が惑星状星雲になったら地球というのはどうなってしまうんですか?惑星状星雲になる前の赤色巨星の時代…そこを生き延びられるかどうかそこがポイントなんですね。
なるほど。
太陽が赤色巨星になる時地球の軌道が今よりも外側に移動し地球は生き延びると考える研究者たちがいます。
太陽はガスを大量に放出します。
すると太陽自身が軽くなり地球を引っ張る重力が弱まるのです。
そのため地球はギリギリのところで太陽に飲み込まれずに済むというのです。
え〜!確かに飲み込まれてはないけどすっごい近いですよね。
そうですね。
一方であれだけ星からガスが出てますからその中をくぐり抜けるという事は摩擦がある訳ですね。
その中をくぐり抜けていくうちに…全く逆の説ですね。
そうですね。
え〜!すごい太陽って身近な感じしてましたけどまだ分からない事って多いんですね。
そうですね。
太陽だけではなくて赤色巨星もどういう振る舞いをしていくかというのは非常に多種多様ではっきり分からないんですね。
だから地球の運命太陽の運命もまだまだ謎が多く残されています。
これって赤色巨星がワ〜ッと大きくなった時に人類は例えば火星とかに行けば平気なんですかね?そうですね。
ギリギリのタイミングで行ったら火星が居心地いい時もあるかもしれないですけどもやがて火星もだんだん熱くなってくるんですね。
地球の軌道まで星が大きくなりますので火星ぐらいだとちょっとまだ熱いかもしれませんね。
そうなんだ。
ところで太陽は最後を迎えた時どんな姿の惑星状星雲になるのでしょうか。
それを知るためにはさまざまな形がどうやってできるのかを知らなければなりません。
そのヒントになる研究をしている人がカナリア諸島の天文台にいます。
これまで数百個の惑星状星雲を発見してきた…コラーディさんは惑星状星雲の形が一覧できるカタログを作りました。
すると意外な事実が判明しました。
コラーディさんが撮影した円形の惑星状星雲です。
実はこの形は少数派。
大多数は丸くなかったのです。
丸くない星雲はくびれている部分を中心に両側に広がった形をしていました。
こうした形は双極性と呼ばれています。
こうした双極性の惑星状星雲がどのようにできるのか。
そのヒントになる天体の姿をハッブル宇宙望遠鏡が捉えました。
惑星状星雲になる直前の天体です。
星からガスが上下に噴き出しています。
分析した結果秒速200キロもの猛スピードでガスが伸びている事が分かりました。
このガスのスピードこそが双極性の形の手がかりだと考えたアダム・フランクさんです。
フランクさんはこのスピードを生み出す特別な状況を考えました。
フランクさんが考えたのは2つの恒星が連なって回る連星です。
連星のうち…するとガスは軽い星の重力に引っ張られ円盤状になります。
この円盤は回転しています。
そのために強い磁場が生まれ赤色巨星が放出するガスを激しく加速しているのではないかというのです。
フランクさんのシミュレーションです。
下の奥の角に星があると想定しています。
星に強い磁場がかかった場合には計算上でも秒速200キロでガスが噴出するという結果になりました。
これが双極性の惑星状星雲が作られる仕組みだと考えると…。
太陽は連星ではないため双極性にはならず丸い惑星状星雲になると考えられます。
太陽は丸い惑星状星雲になると考えられているんですね。
みたいですね。
でもこの双極性の惑星状星雲が多いという事は宇宙にはもともと連星が多いんですかね?そうですね。
最近の研究だと大体太陽ぐらいの重さの星だと半分ぐらいが連星を持っているというふうに考えられています。
そういう研究もあるんですね。
その間には関係があるのかなというふうに考えられています。
太陽系の場合は木星も結構大きいと思うんですけれどもそれではやっぱり連星の代わりにはならないんですか?もちろん木星も太陽に対して何らかの作用は施すと思うんですが例えば先ほどの双極性の星雲を見てみるとですねもっと重い星がもっとお互いに近いところを回っているとそういう状態にあるようなんですね。
ですから木星だとそんなに強い双極性な星雲はできないんじゃないかというふうに考えられます。
絶対に無理ではあるんですけど太陽がどんな惑星状星雲になるのかちょっと見てみたい気はしますね。
そうですね。
最近の研究でこうなるんじゃないかと言っている人がいるんですね。
これが…。
絵が出てきました。
これ…へえ〜これですか。
こんな。
え〜何か…想像より何かシンプルというか。
これはもちろんあくまでこうなるんじゃないかと言っている人がいるという事なんですけども…。
もやっとした形をしてますが要するにこれあんまりものがないんですよね。
なので惑星状星雲になった時はちょっと周りのものの量が少ないとこういう事になるんじゃないかというふうに言っています。
そうなんですね。
でもそういった星がガスを出す事にも意味はあるんですよ。
そうなんですか。
ちょっとこちらを見て下さい。
こうしたガスが集まってまた新しい星を作るんですね。
あ〜。
だから太陽の一生にもやっぱりそれなりの意味があるんですよ。
そっか。
また次につながっていく訳ですね。
そうですね。
へえ〜。
惑星状星雲というのはバ〜ッと広がっていってどれくらいで消えてしまうんですか?そうですね大体ひと声1万年ぐらいたつと中心星の紫外線が届かなくなって弱くなって消えてしまうというふうに考えられています。
今のところ見つかっている惑星状星雲が3,000個ぐらいという話だったんですけど…。
そうですね本当に大小。
どのぐらいの頻度で誕生しているんですかね?例えば太陽ぐらいだと100億年のあとの最後の1万年ぐらいですよね。
それよりもちょっと重い星になると一生100億年が例えば10億年ぐらいになりますけどもでもやっぱり何十億年の中の最後の一瞬。
本当一瞬なんだ。
それぐらいの結構まれな天体ですね。
数としては。
という事は惑星状星雲を今見てますけどそれはレアなんですね。
そうですねレア。
まさしく今しか見られない姿。
その姿がこんなにきれいだと感動しますね。
そうですよね。
僕これまではどっちかというとブラックホールとか超新星爆発とか割合派手な方にいってたんですが結構これ地味なんだけれども実はすごくきれいだし自分の太陽がいずれはこの惑星状星雲になるんだこれはね今日は何か収穫が大きかったですね。
山村さん今日はどうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに!2015/05/10(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「太陽の未来!?宇宙の宝石 惑星状星雲」[字]

太陽くらいの星が最期に見せる姿が惑星状星雲。どんなメカニズムで星はこの美しい姿に変貌を遂げるのか、超新星爆発との分かれ目はどこにあるのか、徹底的に解説する。

詳細情報
番組内容
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影してきた数々の天体の中で、最も美しいとされるのが「バタフライ星雲」「らせん星雲」などの「惑星状星雲」。実は、太陽くらいの恒星が最期に見せる姿だ。太陽は数十億年後、いまの200倍くらいの大きさに膨らんだあと、急激に縮小し今の100分の1程度大きさになるとされる。このダイナミックな変化を経て、この美しい星雲が現れるという。どのようなメカニズムで形成されるのか、徹底的に解説する。
出演者
【ゲスト】JAXA宇宙科学研究所准教授…山村一誠,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】筒井亮太郎

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
情報/ワイドショー – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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