古くからパリには異なる文化を受け入れる土壌がある
料理についても例外ではなさそうだ
(吉武広樹)日本食レストランってこの辺めっちゃありますよサッポロラーメンかどや…こういうとこすっごい並んでるんでねパリっ子たち日本食大好きなんで
広く根づき始めているのは日本食ばかりではない
今や本場のフレンチを担う日本の料理人も激増している
おあとは何?何でいくの?
2010年この街に店を出し早くも2年目から「ミシュラン」の1つ星に輝き続けてきた男…
味はもちろんだがオリジナリティーあふれる盛りつけと美しさが高く評価されている
フランス料理の器は白が基本だが色や形でも主張するのが吉武流
時に料理と縁のないアイテムを取り入れてお客たちを驚かせる
キノコのフィンガーフードじゃないですけどそういうのを出してる時にこの木をペットショップから見つけ出してきて…そういう自然体を表現したいんで
営業はランチとディナー
地下に造った掘りごたつの客席がまるで隠れ家を思わせると評判を呼んで店は連日満席のにぎわいだ
魅力を聞けば…
日本の航空会社にはパリからの直行便で機内食の監修を依頼されている
他に邪魔にならないようにここがトマトになってるはずなんで
それもファーストクラスとビジネスクラス
30代半ばのシェフにとって異例の抜てきといっていい
若くして人も羨むような成功
秘密は料理人らしからぬ姿勢にあるのだろうか
正直僕の店よりおいしい店はたくさんあると思うんですでもその人たちと一生懸命張り合ったところで自分の土俵じゃないところに自分を入れたところで絶対そこの中で芽が出ることはできないし…だったら自分に何があるんだろうそこを伸ばせば彼らと違うジャンルかもしれないけど彼らより上にいけるかもしれないしそれに向かってその先の自分の将来に対してちゃんとマネージメントをやることが大事だと思ってるんで
取材を始めたのは去年秋
吉武は35歳未満の料理人たちが将来性を競い合うコンテストに応募し最終審査に残っていた
おはようございます
既にパリに店を構え1つ星に輝いている
結果しだいでは恥をさらすことになるかもしれなかった
やめろという声を押して挑んだのはこれが格好のPRになると考えたから
ある意味で一つの賭けであり戦略だった
出身地・佐賀県で取れたイノシシにイノシシが好む根菜や木の実を添えた勝負のひと皿
失礼します
(チナツさん)失礼します
審査するのは日本を代表する重鎮たちだ
そうそうたる顔ぶれを前に吉武は自己主張を忘れなかった
分かりました料理人ってこうじゃなきゃいけないんだなと思ったことや何か向こうでつかんだことってあります?自分をアピールする力というか交渉能力といいますか…ただそこだけで終わるつもりはないのでもっともっと…例えばニューヨークであったりもちろん日本であったりそういった場所で自分をもっと表現していきたいと思ってますグランプリレットエッグの発表です
(司会者)吉武
(歓声と拍手)
応募者総数355
吉武は見事にその頂点を極めた
店はパリ5区ノートルダム寺院の裏手にある
ボンジュール
自宅から歩いて15分
その名はSola
毎朝8時半に店に出る
おはようございます
(店のスタッフ)おはようございます
オーナーシェフの最初の仕事は床掃除
それを終えると仕込みにかかる
(スタッフ)音楽かけるんですか?はい音楽がうるさすぎてサービスの声が聞こえないとか…
狭いキッチンには8人のスタッフがひしめいていた
真面目だからと全て日本人
吉武にとってはスタッフというより即戦力の仲間に近い
独立してくれればネットワークも広がる…という発想だった
イタリアンですここ和食2人チームなんですぐ真ん中に高く盛っちゃうんですよそれがきれいってもう植え付けられてるんで今夜卵豆腐出してるんですけど卵豆腐の作り方とかどうやってやるのか聞いたり
送り出すのは無国籍の創作料理
アイルランド産のウニをのせた卵豆腐はしょうがを漬け込んだオリーブオイルでまとめた
日本食ブームも手伝ってフレンチをベースに和の素材をさまざまにアレンジするスタイルがパリっ子たちに受けている
メニューはお任せコースのみ
毎日手に入った食材に合わせて臨機応変という
この日は鴨肉をメインにする予定だった
ところが…
これ結構硬めじゃん
肉の状態があまり好ましくなかった
他の料理で使うつもりだった鳩の肉を急きょメインに差し替える
合わせるソースが問題だ
どうやろうどうやろう
吉武はレシピを紙に残さない
頭の引き出しから即興で料理を組み立てる
だから手元を見つめるスタッフのまなざしも真剣だ
おいしいまぁそれでいこう
日々納得のいくベストの味をお客に…
そんな心がけが常連を飽きさせない理由だろうか
この日は店を宣伝するための戦略会議
吉武は貪欲だ
PR会社と契約している
徹底したいコンセプトを広く訴えるためだ
こうしたミーティングから吉武の仕事が世界に発信されてきた
周到なPRは「ミシュラン」の星にも大きく貢献しているに違いない
家族を日本に残しての1人暮らし
(スタッフ)それ何ですか?子供の写真です
(スタッフ)今いくつですか?1歳4か月です
家に帰ればフェイスブック
人脈づくりも大切だ
パリの1つ星っていうその名前があるだけでいろんなビジネスもできますし自分を表現する場もたくさんつくることができるし結構情報発信能力を持った人とつながってその人に結構発信するとその人がちょっとでも書けばまたそっからうわ〜って広がるじゃないですか
健康な野心と遠く離れた家族の存在が吉武の原動力だった
その午後
1人の青年が訪ねてくることになっていた
だが約束の時刻をもう10分過ぎている
来ないっす…もういいです
遅れて姿を見せたのは日本の調理師学校を卒業して1年足らずという二十歳の若者だった
インターネットで吉武を知ったらしい
こんにちは…初めまして今何時ですか?はいおはようございますおはようございますここで働きたい?やることあるからやりながら調理場の中で話せば…多分みんないるからいろいろ聞くんだったらみんなに聞いてもう今いくつ?二十歳?もうちょっと日本でやったほうがいいんじゃないの?ハハハはいある程度日本の厳しい所で基礎を学んでくれば多分勉強になることはたくさんあるだろうけど…でも俺も二十歳の頃フランスに行きたいって上の人に相談したら今のお前が行って何が吸収できるんだって言われて絶対にやめろって止められて…まぁでも今思えばそれでよかったと思ってる多分今は気付かないだろうけど将来やっぱりその時そう言われて日本で経験積んでよかったなって思うかもしれない頑張ってまたどっかではい
無鉄砲な青年の後ろ姿がかつての自分に重なった
10代の頃はかなりやんちゃで鳴らしたようだ
料理専門学校を経て東京の有名フレンチ店などで7年間修業
その後世界40か国を放浪して多彩な食文化に触れた
年に数回は家族のいる伊万里へ
さっきもね父ちゃんチュ〜って言ってたね
(康子さん)父ちゃんにチュ〜ほらっ父ちゃんにチュ〜
5年前パリに店を出すと決めた時妻も両親も自分を信じて応援してくれた
もっとビッグになってみんなの期待に応えたい
昔のこの人を知ってる人はみんな「あのヒロ君が…」「あの…」が付いてる何回校長室に呼ばれたことかねぇヒロ君裏の海まで一緒に手を引っ張られてもう一緒に死のうって言われたこんな子世間様に迷惑をかけるばかりだからもう引っ張られて…ホントに裏まで行きましたからねばあちゃんが助けに来てくれて
いつか家族に…そしてふるさとに恩返しができたら…と吉武は考えている
(スタッフ)何年ぶりですか?4年半ぐらいです
売り出し中の料理人にとって自分を世界にアピールする格好のチャンスが訪れた
イギリススイスなどで2つ星に輝くシェフたちに交じって国際的な料理イベントで吉武のフルコースが試される
6日間でお客は延べ900人
経済発展が著しい国のイベントには各国のセレブも招かれていた
力を発揮して顔と名前を覚えてもらえればビジネスチャンスも広がるはずだ
これやりづらいな傾いてるんだけど中華用だからさ怖ぇなこれ何か…怖ぇな大丈夫?これ何か違うことになってるよねこれ多分勝手が分かんねえんだもんだってこれこれすごいとこから火出てるけど大丈夫?お〜!危ねぇあれじゃない?バックドラフトじゃない?なぁ
慣れない厨房
届いた野菜も注文と違っていた
全然違うな
オーダーしたカブはふた回り以上大きいサイズだったのに
今から手配しても到底間に合いそうにない
でももうこれ取るしかないんじゃないの?ちょっとイメージを変えてやればいいんだよ頭の中でちょっとあれ増えるけどでもこれ全部タイエしてやろうよ…
アクシデントにすかさず対応するのも腕の見せどころ
現場にはパリのスタッフたちをそろえていた
いつもの調子で吉武は小さなカブを生かした魚料理の試作にかかる
これが盛りつけのサンプルだ
みんなの経験のためにやってるんでまぁ自分の経験でもあって…こういうことを乗り越えていかないともっともっと先にはいけないんで
日本円にして2万8000円のディナーはこの日100席分全てソールドアウトしていた
ただし吉武たちは一度にこれほどの大人数を相手にしたことがない
協力してくれる現地スタッフとのチームワークが齟齬を来たし始めていた
はい次魚ねチナツポワソン入れろよ全然もう遅いからなこのタイミング…ポワソン
大幅に遅れてしまった魚料理の準備
思わず吉武の声が大きくなった
もうあと一気に行くからな
(現地スタッフ)はい
調理が進まなければ盛りつけも始まらない
じりじりと時間だけが過ぎていく
いけますムラカミ来い
ようやくメインの鯛が焼き上がった
あっいける
繊細な盛りつけはパリのチームにしかできない
混乱はピークだった
これを誰かに代わってもらって俺じゃなくてさカブ温めてんのか?鍋早く来いよお前全然忘れてんだろうてめぇの仕事はてめぇでやれよちゃんとよ!お前何個のっけてんだよ!4つのってんじゃねえかどこに目ぇつけてんだ!?この野郎おめぇらしっかりやれよ!マジでよチェックしながらやれよ!こら
間に合わせることだけで精いっぱいだ
修羅場のような厨房の空気はしかし幸い客席には伝わらなかった
吉武にすれば辛うじて初日をしのいだ感じ
今日の反省はあれだなうちら…俺らの連係ができてないできたら最初こっちにスタッフいっぱいいるよりもあっちにバンとよこして…
スタッフにも言いたいことがあった
それぞれが口にする改良点に吉武は耳を傾ける
そうだな
落ち込んでいる場合ではない
イベントはあと5日ある
頑張ろういけるよ日曜にうまい酒飲もうぜ帰るぞ
問題点がはっきりすれば修正すればいい
リーダーであると同時に吉武は無類のムードメーカーでもあった
3月の終わりスタッフを率いて吉武は実家がある佐賀県伊万里にいた
2日限りの出張レストラン
髪をさっぱりした吉武はもう次のことを考えていた
地場産業が停滞する伊万里の町を少しでも元気づけることができれば…
どうもありがとうございましたこんにちはとんでもないですありがとうございました
残念ながらこの余韻に浸っている余裕もない
お客が引き揚げると同時に厨房では荷造りが始まっていた
いや〜もう終わる前に既に始まってるんだ今日
今はただ全力で走り続ける
自分にしかできないやり方で前へ前へ
画伯そろそろ時間ですよ!
男は天才なのかそれともただの怠け者なのか
2015/05/10(日) 23:10〜23:40
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【吉武広樹/ミシュラン一つ星獲得のパリ超人気店若手シェフの成功哲学】
料理人/吉武広樹▽レストランの激戦区・パリで、開店からわずか1年半でミシュランガイドの一つ星を獲得した人気店「Sola」のオーナー兼料理人を務める男の終わらない挑戦
詳細情報
番組内容1
吉武の料理は、日本とパリで修業したフレンチの腕前と、調理器具を携えて世界40か国を巡る放浪の旅で得た“自由な発想”から生みだされる芸術品だ。
フレンチの枠を越えた創作料理に、パリの美食家たちは魅了され舌鼓を打つ。言葉が通じなくても料理があれば世界中でコミュニケーションが取れる、と旅を通じて確信した吉武は、レストランの激戦区であるパリに拠点を置き、ここから世界を目指している。
番組内容2
番組は、そんな吉武の様々な活動に密着。
昨年11月に行われた若き才能を発掘する日本最大級のコンペティション「RED U‐35」や、シンガポールで行われた6日間
でおよそ900人分のコース料理を出すイベントに初めて挑む吉武を追った。
従来の料理人やシェフのイメージを破り、さらなる将来を見据え世界中を動き回る男の、終わらない挑戦を見つめる。
プロフィール
吉武広樹
料理人。1980年佐賀県生まれ。
製菓の専門学校を卒業し上京、「ラ・ロシェル」で坂井宏行に師事。
26歳の時に、1年間で世界40か国近くを巡る放浪の旅に出る。帰国後渡仏し「アストランス」に半年間勤務。
2009年シンガポールに「HIROKI88@Infusion」を共同経営で出店。
2011年パリにレストラン「Sola」を共同出資で開店。
2012年版ミシュランガイドで一つ星を獲得。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】アミューズ
関連公式URL
【ツイッター】@jounetsu
番組の感想に#jounetsuをつけてください!
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ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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