(テーマ音楽)美しいというか美意識がね町々に何かこうありましたよね。
それはふるさと長崎の思い出。
「私は九州長崎市に生まれ15の年までそこで育ちました。
竹久夢二の長崎十二景の絵さながらに港あり丘あり山あり川ありでその中にイスパニヤポルトガルオランダオロシア支那朝鮮英米国人と…」。
この文章に誘われて長崎へやって来ました。
長崎は今日も雨だった…ですか。
しかし長崎って日本なのに何だかよその国に迷い込んでしまったような何だか不思議な感じだ。
江戸時代鎖国中も唯一海外へ開かれた港だったのがここ長崎です。
極彩色の中華街にステントグラスが映える厳かな教会。
東洋と西洋の文化が入り乱れる長崎では「無国籍」で「聖俗混交」の独特の美意識が育まれてきました。
長崎の街は異国情緒にあふれているのです。
美輪明宏さん。
シャンソン歌手になるきっかけは国際色豊かな長崎にありました。
レコード屋さんもね全部蓄音機って言ってプレーヤーがずらっと奥まで並んでてでこっちで浪花節こっちで民謡こっちでシャンソンこっちでクラシックベートーベンでしょ。
ジャズも向こうでかけてもうメチャクチャなんですよね。
美輪さんが通ったカトリック系の中学校。
そこではフランス語を教えていました。
多感な時期を過ごした長崎でシャンソンへの道が開けていったのです。
ですからやっぱり私は長崎に生まれたからこういうね複雑怪奇ないろんな芸能生活してるんだと思いますね。
美輪さんの美学の礎を築いた長崎。
今日は世界の文化が複雑に混在する長崎独特の美の世界へご案内します。
坂の街長崎。
家々が連なる景色は長崎の名物。
まるで家で出来た山のようです。
つい散歩と思って上ってきたら迷っちゃって。
はぁ…随分上ってきたよこれ。
ふぅ。
わあ…きれいだ!そう坂は長崎の美観を生み出す鍵です。
雨の日より美しくなる坂があります。
長崎を代表する…ぬれた石畳は人影を映し艶やかに坂を彩ります。
そう長崎は雨が似合う街です。
急な勾配をゆっくり上る姿には情緒が漂います。
思わず見上げてしまう長〜い坂。
港を見下ろす坂。
上り下り視点を変化させる坂は風景を演出する舞台装置です。
今日一つ目の壺は…長崎生まれの写真家山頭範之さん。
(シャッター音)世界の紛争地に足を運びそこで暮らす人たちの姿を切り取ってきました。
長崎にいる時はふるさとの坂の街を歩きシャッターチャンスを探しています。
山頭さんの足が止まったその時。
目に飛び込んだのは桜の路地にたたずむ猫。
パッとここから上ってきて桜が散って階段が続いてというのは視界がどんどん僕の視界が上がっていきますよね。
そこでパッとこれが開けた瞬間に世界が変わったというと大げさですが……っていう感覚があって。
それはこういう入り組んだ路地でしかも坂階段であるという事からそういう光景があるのかなと。
視点の変化に導かれ猫と同じ目線で捉えた1枚です。
更に坂の街ならではのシャッターチャンスが訪れました。
すみませんこんにちは。
さっきすごい良かったよね。
猫がここにいて親子が下りてきて。
下ってきた親子を猫が見つめる一瞬を切り取りました。
物語のワンシーンのような味わいの坂の光景。
次は見下ろす絶景。
とっておきの場所へ案内して頂きます。
坂を上り詰めた先に広がるのは…大パノラマ。
僕は好きです。
ああいうのと同じ視点ということですもんね。
海を正面にすり鉢状に広がる町並み。
円形劇場のような長崎の地形を捉えることができる穴場です。
(シャッター音)更に山頭さんが注目したのが空。
長崎港の丸い形と雲が作った光の輪を対比させました。
山頭さんの見下ろす長崎。
そして絶景は更にもう一つのクライマックスを迎えます。
わ〜かっこいい!これ秋のお祭り「長崎くんち」に奉納される「龍踊り」です。
ビジュアルも音楽もエキゾチック。
さすが長崎!文化のるつぼです。
面白い。
諏訪神社の秋の例大祭…地元長崎や外国との交流の歴史から生まれた出し物が奉納されます。
その長崎くんちを彩るのが衣装に施される「長崎刺繍」です。
長崎の旧家には長崎刺繍の名品が残されています。
300年続く老舗のべっ甲店が保存している衣装を拝見します。
明治の初め先々代が子供の時着たくんちの衣装です。
長崎刺繍の特徴は立体的な装飾。
そして素材の豪華さ。
生地はポルトガル伝来のラシャ。
使われる糸は絹糸に金糸。
迫力のある龍の牙は銀細工。
目玉は漆を塗ったビードロ。
国際都市長崎ならではの舶来物がふんだんに使われています。
祭りの船頭という晴れの舞台のために仕立てられたものです。
上の龍というのは他町でもこの柄は使われてると思うんですが私どもの家業がべっ甲の仕事をやってますのでこの前垂れの亀のデザインですね。
これが私どもの特徴だと思います。
銀細工の水しぶきを浴びる勇ましい亀の姿。
船頭役に選ばれた家の名誉にかけて贅の限りが尽くされています。
これは長崎の人のおくんちに対する思い入れというんでしょうかね子供にとってもその家にとっても大変名誉なことなんですよね。
背中まで緻密に施された長崎刺繍。
長崎の人々のくんちへの心意気です。
今日二つ目の壺は…もう一つ名品をご紹介します。
くんちで用いられる町の印傘鉾に泳ぐのは江戸文政年間に作られた…魚尽くしを所有する万屋町は長崎市中心部の歴史ある商人の町です。
町内会のご好意で見せて頂きました。
およそ200年前に作られ祭りの度に使われてきた魚たち。
代々の先輩たちが大事にしてこられた気持ちというものがこの魚の一つ一つにおさまってるわけなんですよね。
今にも暴れだしそうな伊勢エビ。
注目すべきは精緻を極めた糸の細工。
鎧のような甲羅。
そして頭のトゲまで表現されたディテール。
リアルでダイナミックです。
こちらはぷっくりと膨らんだ何とも愛らしいフグ。
ではこれは何だと思いますか?美しい花のような刺繍。
答えはタコ。
吸盤だったんです。
細部にまで江戸時代の職人魂が宿っています。
こういう見えない所のエラの刺繍とかそういうのが隠れた所にあるんですね。
タコならタコでその吸盤の刺繍というのも本当に子細に作ってありますので町民としては誇りですよね。
本当に見てると根気よくされてますもんね。
これは敬意を表しますね。
歴史的にこういうのは絶対残しておかんといかんという気持ちですね。
生き生きとした魚の姿。
長崎刺繍の迫力はどこから生まれるのでしょうか。
長崎刺繍の技を継承するただ一人の職人嘉勢照太さん。
刺繍の下絵を見るとある特徴が分かります。
それは写実を超えたデフォルメ。
顔にいろんなラインがありますけどこういう線っていうのは…この下絵に関しては水槽に生かして生きた魚をスケッチしてそれから型を取ってるんですね。
だから三次元なんですよね。
タコもこんな踊ったような形はグシャッと置いちゃできないわけです。
またヒレをちょっと動かした一瞬だったりそういうものを上手に組み合わせて一つの型みたいなのを作ってるわけです。
一つの集約した形ですよね。
表情ですよ。
では一体長崎刺繍はどのように作られているのでしょう。
現在嘉勢さんは魚尽くしの200年ぶりの新調を任されています。
鈍い光を放つ生々しい魚の色。
この風合いを作り出すのはまず糸から。
糸は800色以上あり絵の具のように交ぜて使います。
シルバーと褐色がかった色をより合わせ新たな色を作ります。
こうして魚の微妙な風合いを生み出していたのです。
糸はマトウダイの背びれの色。
ここで立体感の秘密を発見。
刺繍の下地にあるのはこより。
ヒレやウロコの立体感を出すのに使われています。
魚の生きの良さを表す目玉。
ビードロに漆金箔で彩ります。
最後により魚の躍動感を出すために使うのは…綿。
当時貴重だった綿をふんだんに使って魚の立体感を生み出しています。
魚は合計29匹。
江戸時代の魚尽くしから平成の魚尽くしへ。
この作業に取りかかってから10年。
嘉勢さんは今年いよいよ大仕事を完成させます。
うれしいですね。
まず体力がもったということが何よりですね。
こういうものをいまだに使う町があってそれを大事にして…そういう人たちの気持ちというのはやっぱり長崎の中でしか出てこなかった人たちですよね。
秋には新たに命を吹き込まれた魚たちが長崎くんちの晴れ舞台で泳ぎます。
あ〜おいしい!目の保養のあとはやっぱりこれ。
長崎と言えばちゃんぽん。
そしてデザートはカステラ。
中国とヨーロッパの文化をうまく取り込んで長崎はまさに「ちゃんぽん文化」だね。
フフッ。
さて次はどこに行こうかな。
・
(鐘の音)おや?・
(鐘の音)教会の鐘の音。
(鐘の音)日本に残る最も古い教会建築です。
この大浦天主堂をはじめとした長崎の教会を世界遺産にという気運が高まっています。
長崎の教会はキリシタンの受難の歴史を物語っています。
迫害も相当激しかった。
摘発というんですかキリシタンを見つけだすことに特にこの長崎の地は長崎奉行がいましたからキリシタン弾圧の総責任者ですので。
迫害を逃れるためキリシタンたちは五島列島などの島や人里離れた地に身を隠します。
禁教令はおよそ250年の間続きました。
明治に入り禁教が解けるとキリシタンが隠れていた場所に教会が次々に建てられていきます。
現在も集落の半分が信者の出津地区。
陸の孤島だったため多くのキリシタンが迫害を逃れました。
この町にある出津教会は海風に耐え忍ぶため地面に根を下ろすような姿をしています。
明治15年フランス人司祭マルコ・マリ・ド・ロ神父が私財を投じて建てました。
田園風景に地をはうような姿は信仰をかたくなに通したこの集落の歴史を物語るようです。
今日最後の壺は…忍ぶ美しさは建物にも表れます。
民家のような小さな…明治26年こちらもド・ロ神父によって建てられました。
水平に割った地元の石を積み上げた神父考案の壁。
人々は親しみを込めて「ド・ロ様壁」と呼んでいます。
神父と信者が力を合わせ建てた手作りの教会。
つつましい素朴な味わいは地元の風景に静かになじんでいます。
最後にもう一つ地元でもあまり知られていない小さな教会をご紹介しましょう。
険しい山の中腹に建てられた…この地にキリシタンが移り住んだのは江戸時代後期。
旅芸人を装ってこの地に逃れてきた6家族がようやくたどりついた信仰の地です。
彼らの子孫が今もここで暮らしています。
移り住んだ先祖たちはキリシタンであることを悟られないためある仕事を引き受けていました。
山を更に登った先にあったのは…神社。
こちらが八幡様です。
周りの人たちから疑われないようにあえて神社の世話役を引き受けていたのです。
彼らの苦難の歴史は善長谷に暮らす子孫たちに語り継がれています。
おばの話では毎月1回あったそうですよ踏み絵がですね。
それはそのおばは自分のおばあちゃんから聞いた話だそうですけど。
やっぱし…明治になって禁教が解けてからも善長谷の人たちは信者たちの家に集まりひそかに信仰を続けました。
善長谷に初めて教会が建てられたのは昭和27年になってからです。
今でも人目を忍ぶようにひっそりと建つ…
(鐘の音)
(歌声)およそ30人の信者が毎週欠かさず通っています。
(歌声)すごくうれしいことですね。
毎週毎週ミサがたてられるということはですね。
皆さんがおっしゃるにはですねここは…そういうふうに言って下さいます。
(歌声)迫害を耐え忍び信仰を貫き通した長崎のキリシタンたち。
人々の思いと静かに凛と立つ教会の姿が重なります。
ふ〜ん。
長崎の美しさは海から渡ってきたものを受け入れただけじゃなくて町の人々が大切に守ってきたからこそなんだろうねぇ。
あそろそろ僕は東京に帰らなきゃ。
秋のくんちには妻と一緒に来ます。
それじゃ。
・「長崎は今日も雨だった」打ち上げから25年を迎えた…2015/05/10(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「長崎」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「長崎」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
「長崎には、私を育んだ複雑怪奇な魅力がある」と言う俳優・美輪明宏さん出演!中国やオランダなど諸外国の文化が混在した“ちゃんぽん文化”を語る。長崎の景観美を味わう「坂」。究極のビュー・ポイントはどこか?豪華けんらんな祭“くんち”を彩る「長崎刺しゅう」の躍動感を表現する秘技とは?山や海にひっそりとたたずむ美しい教会群に秘められた知られざる歴史エピソードとは?長崎の異国情緒の美を堪能下さい。
出演者
【ゲスト】美輪明宏,【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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