暴力団:福岡県警のHP「検挙速報」閲覧件数が急増中
毎日新聞 2015年05月11日 14時30分(最終更新 05月11日 18時40分)
福岡県警がホームページで公表している「暴力団員検挙速報」の閲覧数が急増している。スタートした2010年は約3万件だったが、昨年は11倍以上の約34万件だった。暴力団員の氏名も記載されており、県警は特定危険指定暴力団工藤会の一斉捜査で関心が高まったことに加え、企業が暴力団との取引を回避するために活用していると分析している。
県警によると、検挙速報のページは暴力団の情報を県民に提供するよう県に義務づけた県暴力団排除条例の施行に伴い、2010年4月に開設された。共犯の捜査が必要な場合などを除き、県警が逮捕した暴力団員の氏名や年齢、逮捕容疑の内容などが1週間限定で公表されている。
年間閲覧数は10年は2万9114件だったが、毎年2倍前後のペースで増加。工藤会の最高幹部らが逮捕された昨年は34万1218件となった。
県警は、企業の暴力団排除の意識の高まりが影響しているとみている。暴力団員への利益供与を禁じる暴排条例が全都道府県で施行され、関係が発覚した企業や個人が金融機関などから取引を断られるケースが相次いでいる。13年にはみずほ銀行による暴力団員らへの融資問題が注目された。県警によると、暴力団員との取引を避けるため、新聞記事や検挙速報から暴力団のデータベースを作成する企業も出てきている。
県警の担当者は「暴排を進める上で一番の問題は『誰が暴力団員か』という情報が少ないこと」と速報の意義を強調する。検挙情報を活用する金融機関の担当者も「今まで報道でしか分からなかった情報を当局が直接公表してくれるのは非常に有益だ」と話す。
ただ警察庁によると、他に暴力団検挙情報を公開しているのは山口県警や北海道警など一部にとどまる。元日弁連民事介入暴力対策委員長の三井義広弁護士(静岡県弁護士会)は「暴力団情報は個人情報保護の観点からか、以前ほど公開されなくなっている。だが、暴排のためならば公益性が高く、個人情報とは言い切れない。常時公表すると暴排以外に使用される恐れもあるので、逮捕時に限定するのはいい方法で、もっと広がるべきだ」と話している。