9日本の話芸 落語「昭和芸能史」 2015.05.10


(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(林家木久扇)たくさんの拍手をありがとうございます。
スーパースターの林家木久扇でございます。
どうぞよろしくお願い致します。
(拍手)昨年の平成26年は私にとって大変な年でございまして喉頭がんという病気にかかりまして2か月声が全然出ませんでびっくり致しましたですね。
出ないもんですからこのまま廃業しなくちゃいけないんじゃないかなと思っておりましたら今の医学はすごいですね放射線のものすごい最新鋭の医療機器が出来ておりましてそれで治して頂いて7週間で元どおり声が出るようになりましてね元気にやっております。
本年も頑張りたいと思いますんでどうぞよろしくお願い致します。
(拍手)私は生まれは日本橋の久松町でございます。
家が雑貨問屋でございましてね私は雑貨問屋の伜でそのまんま引き継いでやっていくはずだったんですけれども東京大空襲というのがありまして家も爆弾が落ちまして焼けてしまいましてねで戦後は西荻窪という所におばさんが住んでいるんでそちらを頼りまして家は一家で引っ越しまして今度は雑貨の問屋から雑貨の小売商というのをやっておりまして今のコンビニみたいな商品を扱っておりました。
西荻窪という所でございまして西荻窪北口銀座商店街。
銀座とついているんですけど当時でございますから手前が6軒で向かいに8軒ぐらい商店がありましてあとは畑と川でございましてねそれでも銀座でございます細々とやっておりまして。
私の娯楽の殿堂が斜め向かいにございます西荻館という映画館でございまして戦後の映画館混んでおりましたですね。
で昔の映画館でございますからもうきったない映画館でもうガッタガタでございまして二階は鼠が駆けずり回っておりましてねで冷房暖房が無いんですね昔はね。
ええ冬はもう寒いっきり夏は暑い暑い。
黒い幕で閉めっきりになりますからもう暑くて暑くてしょうがありません。
それからよく停電というものがありましてバッ町全体が消えますからねそうすると暑いですからみんな夜のお客さんやなんかは表へ出て参りましてこう団扇と扇子を広げましてこうやって煽いでいるんですね。
で私の家は斜め向かいでございますから雑貨を扱っておりますから団扇がございます。
差してある団扇を1本取ってそれで出てきた映画館のお客さんと交じってこうやって団扇を使っておりますと「坊や。
もうじき停電が終わるから中に入って入って」っていうんでこの団扇が入場券の代わりでございまして…。
(笑い)よく私はただで映画を見たもんでございます。
それから夏は暑いっていうだけじゃなくて大変でございまして昔は水洗じゃなかったトイレがねくみ取りでございますから青梅のほうからやって来る専門の業者が1週間に1遍しか来ないんですよね。
で満員のお客でございますから毎日毎日屎尿が溜まりますからこう横にコンクリートで細長く出来ておりますプール仕切ってありまして大と小が分かれてないんですね。
もう大の所で小もやるようになっておりますから熟成してその臭いがものすごい臭いで小のつもりで入った人も大をやりたくなっちゃって…。
(笑い)いつまでも帰ってこないんですよね雰囲気に酔わされちゃってね。
で映画館のほうも悪いと思うらしくて大きい消臭のピンポン玉みたいのがあるんですよ。
それをミカンの赤い網の中に入れてね6個か7個こうあっちこっちにぶら下げてありましてこれが目にしみて目にしみて。
(笑い)悲しい映画じゃなくてもみんな泣きながら見てたんです「面白いわね」なんて。
え〜チャンバラつまり時代劇が戻って参りまして昭和26年でございますお正月映画「鞍馬天狗青銅鬼」。
鞍馬天狗はもちろん嵐寛寿郎。
で近藤勇がお正月映画で特別出演でございます大河内傳次郎。
並木鏡太郎監督。
いい映画でしたねええ夢中になりました。
最後に古寺がございましてそこで一騎打ち近藤勇と鞍馬天狗の一騎打ちがございます。
嵐寛寿郎顔の長いスターでございまして。
晩年になってお会いする事ができまして随分かわいがって頂きましたけれども風格の立派な方でございましてね顔が長い。
何ですかね?私のお知り合いになる方はみんな顔が長いですね。
ええ。
前の「大喜利」の司会者が圓楽さんで顔がものすごい長い崖みたいな顔してまして。
それから永六輔さんていう私の娘の名付け親がやっぱり顔の長い先生でございましてね。
ええ。
で嵐寛寿郎先生が一番顔が長かったですね。
ええ。
一緒にテレビに出ました時に目の前に嵐寛寿郎顔の長い馬がとろろ汁食べてるみたいにこう…。
(笑い)覆面をするとちょうど良くなるんですね。
で鞍馬天狗っていう主人公は私大変恩がありまして「大喜利」に出てメンバーになりました時に私だけ特徴が無かったんですね。
小圓遊さんは小指をこう立てまして「巷では」なんてやってましてね歌丸さんははげを売り物にしてそれから圓楽さんは「星の王子様」なんて言っておりまして私は新人でございますから何も特徴が無いんですよね。
何か無いかなと思って一生懸命考えましたら自分がチャンバラが好きだもんですからチャンバラの主人公誰がいいかなと。
ちょうど高橋英樹っていう人の「鞍馬天狗」がNHKのテレビで始まった時なんですよ。
「向こうで鞍馬天狗やってるからこっちも鞍馬天狗を連呼したら林家木久蔵っていうのを覚えてもらえるんじゃないか」って「杉作。
日本の夜明けは近い」っていつももの真似やってましてねそれからだんだん私は「鞍馬天狗の木久ちゃん」なんて言われるようになったんですけどこのごろは駄目です子供が鞍馬天狗全然知らないんですよ。
一時ね鞍馬天狗の服装を全部揃えてね紫のこう三角頭巾被って刀差してピストル差してね鞍馬天狗の格好で一日店長なんてやってサイン会なんかやってたんですよ。
大概デバートの屋上なんです。
最近は駄目鞍馬天狗の格好してサイン会やってると子供が行列…目の前に並んでるんですお客さんがね子供がパッと出てきて私のサインしてる前に顎載せて「おじさんはイカですか?」なんて言うんです。
(笑い)鞍馬天狗知らない。
鞍馬天狗やらなくなっちゃったから。
嵐寛寿郎鞍馬天狗格好良かったですね。
先に到着しているのが一騎打ちをやるんで…大河内傳次郎。
大河内傳次郎という方は昔大スターでございまして国定忠治とかね丹下左膳で一世を風靡した大スターでございます。
風格がありますね。
昔の俳優っていうのは舞台から来た方が多くて顔が大きいですね。
大河内傳次郎三頭身でした。
(笑い)ほとんど顔胴体と手がちょっとついてる。
新しい貯金箱みたいな。
(笑い)で先に到着して古寺の石の上にこうやって腰掛けております。
顔が立派なんですねええ眉毛が太いええ白目をむいておりまして。
唇が厚いこんななって。
タラコ2枚くわえてるみたい。
鞍馬天狗を待っております。
石段を上って参ります鞍馬天狗は嵐寛寿郎。
「近藤さん。
今宵こそ雌雄の決…をつけ…か?」。
「今宵こそ雌雄の決着をつけますか?」って言ってんですけど顔が長いし声がくぐもっておりますから「雌雄の決…をつけ…か?」。
ズ〜ッと待たされていた大河内傳次郎近藤勇台詞を忘れてしまいました。
(笑い)「何て言えばいいんだろう?」一生懸命考えております。
「倉田さん。
今宵こそオリョオリョオリョオリョ…」。
(笑い)「オレ〜アティ〜オヨオヨオヨオヨ」。
こういうのばっかり見てたんですよ「すげえな〜」と思ってね。
これが昭和26年でございます。
昭和26年はもう一つ東横映画っていう会社ができましてねこれ東映の前身でございます。
こちらには市川右太衛門片岡千恵蔵という御大がいらっしゃいます。
で市川右太衛門のね見ました見ました…私が見たのは「旗本退屈男毒殺魔殿」。
これは伊達藩のお家騒動でございまして一番悪いのが月形龍之介の家老ね悪家老。
でこれを補佐しておりますのが加賀邦男原健策上代勇吉ねそれからえ〜香川良介。
悪の一味が悪家老の家に集まってお家の乗っ取りを謀ってね連判状にサインをしております。
「ご一同。
これなる連判状にご署名を賜りたい。
徳川泰平の世そう長くはないと見た。
フフフフフ」。
笑っておりますと外の廊下に…。
廊下は外に決まってますが…。
(笑い)こういう事を言うようになると老化現象。
(笑い)あるいはろうか
(どうか)と思う。
(笑い)もう退屈男のお殿様が立っております。
この人は不思議な人なんですね。
旗本っていうのに旗なんか持ってた事がないんです。
退屈男っていうからお金がいっぱいあって退屈を持て余しているのかと思うとしょっちゅう事件がありましてこれをただで引き受けているから忙しいったらありゃしない。
名前も不思議なんです。
早乙女と言います。
早乙女というのはご存じのとおり6月に水田にお米の苗を植える娘さんを早乙女と言います。
・「早苗植えわたす夏は来ぬ」こういう知識はこん平さんには無いんです。
(笑い)「主水之介」「主に水を介ける」。
これは上方の水道局の役人で井戸の水質検査をみる人を「主水」と言います。
上が田植えの娘で下が水道局の次官で1千万円の衣装を着て真夜中に他人の家に忍び込んで笑ってるんです。
とても正気の沙汰じゃない。
(笑い)「クッハハハクッフフフフッホホホホホ」。
誰だって連判状にサインしてる最中笑われてごらんなさいびっくり致します。
立ち上がる月形龍之介。
「何者だ?慮外者めが」。
パ〜ッと障子を開けますとたった一人でクリスマスツリーみたいになっちゃってる賑やかな侍が立っておりますからびっくり致しまして「プッ」。
つばが飛びます。
紋服にかかりますから退屈男が怒ります。
「折節月の雲隠れ当節江戸には不粋な輩が増えたものと見ゆる。
額の三日月傷何と見る?プウ〜ッ」。
(笑い)両方でつばのひっかけっこしてるんです。
「変な場面だな〜」と思ったらつば
(鍔)ぜり合いって言うんですって。
(笑い)え〜昭和22年という年は節目の年でございましてね戦争が終わりました。
戦争中嫌だったですね。
実際私は疎開しておりませんで家の親父が長男で跡継ぎだもんですから傍に置いておきたかった。
傍に置いておかれたばっかりにもう毎晩空襲でございます。
ウウウ〜ウ〜ウ〜ッ。
「東部軍管区情報東部軍管区情報。
敵らしき数十機本土に近接しつつあり。
関東地方は警戒警報を要します」。
こんな嫌な放送が毎晩あったんです。
戦争が終わりましてね「あ〜よかったな」とホッと致しましてで歌がやっぱりよみがえって参りましたね。
「東京ブギウギ」笠置シヅ子の歌。
すごかったですね。
ラジオなんですけれどもねとても戦争が終わったとは思えないような元気な歌。
・「東京ブギウギ心ずきずき」疲れるからすぐやめますけど。
(笑い)それから岡晴夫っていう方の歌が随分流行ったんですね。
「東京の花売り娘」。
・「あゝ東京の」難しい歌なんですよ。
岡晴夫の歌っていうのは高音でピ〜ンカ〜ンっていきますからねどうやったらうまく歌えるのかなと思って私なりに研究致しまして後に長谷川一夫がテレビで「忠臣蔵」をやりまして大石内蔵助「おのおの方」「おのおの方」。
かなり息を吸い込みます。
あれをやってから歌に入ると大変うまく歌えるんですね。
「おのおの方」。
・「あゝ東京の」「おのおの方」。
・「花売り娘」ってそんなに苦労する事はないんですけれども。
あと流行ったのがリンゴの歌とミカンの歌ね。
・「赤いリンゴに口びるよせて」「みかんの花咲く丘」これは童謡でございまして川田孝子さん。
・「みかんの花が」って何がおかしいんですか?
(笑い)これは戦争が終わって子供がホッとして歌ってるからこういう歌い方なんですね。
焼け跡でございます。
だんだんだんだん日本も復興して参りました。
子供たちの遊び道具ってあんまりないんですよ。
べー独楽なんかやってましたね。
ええ。
べー独楽やりながら聞こえてくるNHKのラジオの歌が「星の流れに」っていう歌なんですよ。
子供がべー独楽やりながら…。
・「こんな女にあっ誰がした」「いらっしゃいませ」なんてやってました。
(笑い)それから流行ったのが「港が見える丘」っていう歌でございましてこれは退廃的な歌なんですね。
これも子供の歌う歌じゃないんですけどよくラジオから流れてきますから覚えちゃってね。
前奏が長いんですよ。
昔の歌謡曲ってぇのは前奏が長いですね。
「青い山脈」って藤山一郎の歌あれも大変前奏が長い。
その藤山一郎さんのもっと前の「丘を越えて」なんていう歌もものすごい前奏が長い歌なんですね。
この「港が見える丘」っていう歌も前奏が長いんです。
どこから歌っていいのか分からないような長さでございまして今も名曲でございますからカラオケバーでね70歳以上の人が絶唱しておりますけど長いとにかく前奏なんですよ。
・「パカパカパパ〜カパパ〜カパパ」・「バカパカパパ〜カパ〜」・「パパ〜パパッパパカパパ〜」・「あっパッパパカパパ〜パ」・「バババババババババンバフンバフンバフンバ」・「なっかなっか始まらない」
(笑い)どこから歌っていいのか分からないような歌なんです。
でこの間上野の鈴本で「昔こういういい歌があったんですよ」ってやってたら前から三番目に座っていた二人連れのおばさんがカンカンに怒って帰っちゃったんですよね。
「ばか婆ばか婆って失礼だ」って。
(笑い)私がお客さんにそんな失礼な事を言う訳ないでしょ?「昔はこういういい歌がありましたね」って歌ってる。
ばか婆って言ってる訳じゃないんです。
「昔はこういういい歌がありましたね」。
・「ばかばかばば〜かばば〜ばば」・「あっばかばかばば〜ば」言ってんのね。
(笑い)だから落語はよく考えて喋らないといけないという事でございます。
とにかく昭和22年というのは日本の節目でございまして学校制度が変わりましたね。
「3・3・6制度」と言いまして新制中学ねそれから小学校という呼び名になりまして高校が3年制。
学校給食というのが始まりましてPTAというのが発足致しましてあと家庭科っていう時間ができましてね男の子が運針するようになったんですよね。
これ私も覚えがあります雑巾なんか縫いましたよね。
あとマッカーサー元帥っていうのが一番偉くて天皇陛下が神様だったのが下りてきて「人間天皇」の宣言を致しましてあと買い出し部隊なんてありましてね古橋橋爪という水泳の選手が世界記録400メートル自由形。
もう日本中大喝采を致しましてそういう思い出がございます。
それから娯楽がだいぶ戦時色から明るくなりましてね落語のほうは三遊亭歌笑という方がもうものすごい人気がありまして上野の鈴本なんか出ていると御徒町まで行列がズ〜ッとあったんですね。
「歌笑純情詩集」。
七五調のね大変耳に分かりやすい落語なんですよ。
で「破壊された顔の所有者」って言ってましたけど本物見た事ないんですけど先輩としては大尊敬をしております。
「トンカツ」という傑作があります。
「豚の夫婦がのんびりと畑で昼寝をしてたとさ。
母さん豚が目を覚まし父さん豚に言ったとさ『今見た夢は怖い夢トンカツとやらに揚げられてムシャムシャ食われた夢を見た』。
旦那の豚が驚いて今まで寝ていたその場所をよ〜く見てよ〜くよ〜く見てみればキャベツ畑であったとさ。
『歌笑純情詩集』より」ってこういう詩集でございます。
それから映画のほうは山本嘉次郎という監督の「新馬鹿時代前篇後篇」ね「エノケン・ロッパの新馬鹿時代」。
このエノケンロッパが一緒に映画に出るっていう事はないんですけれども戦後なんですね両巨頭が出る事になりまして。
まぁタモリと巨泉さんが出たようなもんですよね。
ええ。
もっとビッグなスターさんなんですけど。
でエノケンさんの明るい声が映画館の中へ流れます。
・「電車が混むのは当たり前押されてもまれて目が回る」・「やっとこ気が付き降りたなら」・「あらっ違ったネクタイ締めていた」・「ちょいといけません頂けますな」ってこういう歌だったんですよね。
(笑い)エノケンさんていう方は大変音感のいい方であの方の真似をするっていうのはとても難しい訳でございましてまぁついでに申し上げている訳でございます。
(拍手)ありがとうございます。
あと昭和22年のお正月映画で一番当たったのはなんといっても片岡千恵蔵の「七つの顔」多羅尾伴内シリーズの第一作でございます。
「七つの顔」。
何で片岡千恵蔵が現代風に化けましてね探偵になったかっていうと「チャンバラ禁止令」っていうのがありましてまぁ時代劇というのは仇討ちが多い内容ですよね。
「忠臣蔵」がそうです。
それから「富士の夜襲」なんて言って曾我兄弟がね工藤祐経をやっつけるという筋がございます。
他に森の石松の仇を清水次郎長が討つとかそういうのがあります。
そういう映画をジャンジャン作っちゃうとまぁ報復するという事今で言えばテロですねそういう事が流行っちゃうといけないからっていうんでCIEという情報機関がまぁ制限したんですね「チャンバラ禁止令」っていうのがありまして。
で困っちゃったんですよ時代劇のスターがみんなチャンバラできなくなっちゃってね。
ええ。
阪東妻三郎なんていう人は「無法松の一生」なんていう映画のほうに逃げましてあれは現代物じゃないんですけど明治が舞台でございますよね。
それから嵐寛寿郎も「リンチ」なんて映画でヤクザになりましてそっちのほうへ行きました。
長谷川一夫は「或る夜の殿様」なんていう映画でこれも明治物のほうにザンギリ物で移りましてねみんなそっちのほうに行ったんですけれど片岡千恵蔵っていう方はスタッフがいいんですねええ。
「どういうふうにこれからは映画を作っていったらいいだろう」相談しましたら「どうも占領軍がうるさいから二丁拳銃の探偵を誕生させたらどうだろう?西部劇がどんどん入ってくるしジェームズ・ギャグニーとかジョージ・ラフトのギャング映画が日本にどんどん入ってくる。
ピストルの撃ち合いならいいんじゃないか?」っていうんでこれを企画書を提出致しましたら一発でOKになりまして多羅尾伴内シリーズ第一作が「七つの顔」という映画でございましてこれが作られた訳でございます。
阪東妻三郎っていう方も松竹という所の専属だったんですね。
とにかく時代劇の方がみんな時代劇撮れなくなっちゃって。
私小さい時見ましたけど国定忠治阪東妻三郎山形屋藤造をやっつけにね山形屋に乗り込んでいく。
「上州は佐位郡国定村は長岡忠次郎」。
これやると大変苦しいんですけどまぁサービスでございまして。
でとにかく時代劇が撮れなくなっちゃって探偵物片岡千恵蔵の「七つの顔」。
これは…。
私小学校4年生だったんですよ。
で「七つの顔」って映画が出来ましたから子供ですからちょっと分かりにくいんでねこう1つ顔があってここの上にあと6つついた人がワ〜ッて出てくるのかと思ったらそうじゃないんですね。
片岡千恵蔵の私立探偵が7回変装して悪の本拠をつきとめて一網打尽にして颯爽と去っていくというのが筋でございます。
ええ。
大体似たような筋で「七つの顔」「十三の眼」「二十一の指紋」「三十三の足跡」「61のうおのめ」これは無かった。
(笑い)とにかくそういうシリーズで大ヒットしたんですよ「七つの顔」。
でこの探偵が最後にキャバレーに…。
キャバレーがギャングの本拠なんですね。
大概ね進藤英太郎って人が一番悪いんです。
ええ。
この人がね縁なしの眼鏡かけてねすけべそうな髭生やしちゃって猪首でございましてねダブルの背広でキャバレーの経営者に一応表向きはなっておりまして。
でお客さんがもう帰っちゃってねバンドさんも帰っちゃって従業員もみんな帰っちゃってキャバレー。
でサービスをしていたボーイやなんかが全部ギャングの一味でございましてこれが集まってきて原健策とかね加賀邦男とかそれから吉田義夫とかみんな悪の一味。
大体時代劇の人が背広になってネクタイしてますから芝居がオーバーなんです。
演技は元のまんまなんです。
真ん中に座っているのが進藤英太郎でございます。
大きい四角い鞄に百円札がいっぱい入ってんです。
でパチンとやると開くんですけどね時代劇の人芝居がオーバーでございます。
札束を…。
「稼いだ銭がここにある。
お前たちにこれを分けてやるからみんなもう少し前へ出ろ」。
子分も時代劇の人が多いですから芝居がオーバー。
「お頭」。
「お頭」って言うとね山賊になっちゃうんですけどね。
(笑い)「お頭。
ありがとうごぜえます」。
やっておりますとこのキャバレーの中にもう片岡千恵蔵の多羅尾伴内が潜入してきておりまして笑い声が聞こえます。
「エッエッエッエッエッエッエッエッエッエッエッエッエ〜ッ」。
びっくりしますギャングの一味。
「クク〜ッ」。
「何者だ?あの声は」。
「クッ七つの顔のクッ…」。
何て言ってんだかさっぱり分からない。
(笑い)心配いらないんです。
ちゃんと進藤英太郎が通訳致します。
「七つの顔の男だと?」。
(笑い)音楽が盛り上がって参りまして片岡千恵蔵の登場でございます。
部屋の中なのに帽子被って二丁拳銃で立っております。
「ある時は目の不自由な運転手クッまたある時はクッ謎の宝くじ売りクッまたある時はクッまたある時はクッまたある時はクッ何だか分からねえ」。
(笑い)「私立探偵多羅尾伴内こと正義と真実の人うえっブルッブルブルブルブル〜ッ」。
進藤英太郎つばだらけになって立っておりまして。
こういう映画一生懸命見たんですよ。
時代劇が解禁になりまして昭和26年になりましたらねこの千恵蔵御大が遠山の金さんになりましてねこれも大変当たった映画でございます。
ドル箱でございます。
でこれは敵役が大概月形龍之介がやっておりましてね遠山の金さん長崎に飛びました遠山の金さん。
すごいですねどこでも行っちゃうんです。
江戸の北町奉行なんですよ?
(笑い)だから江戸の治安を心配してればいいんですけど長崎で事件があると行っちゃうの。
その間江戸の治安は一体どうなるんでしょう?
(笑い)夜の長崎の海岸を遠山の金さんが歩いております。
どうも怪しい町人だというんで目をつけられて山形勲が先頭でね黒覆面の一行がバラバラバラッ取り巻きます。
「その方怪しい奴め前へ出ろ」。
「エッどなたかは存じませんがエッ一体何のご用でございますか?」。
「その方町人ではあるまい」。
「ええ?私が町人でなかったら一体全体何だっちゅうんだいっ」。
急に怒るもんですから…。
(笑い)黒覆面の一団がびっくり致しまして白刃を抜いてグルッと取り囲みます。
一歩下がった千恵蔵がパッと前をめくりまして短い足を見せまして。
(笑い)「あ〜う手前たちゃこの俺を誰だと思っていやがんでえ。
エッあ〜う」。
お時間でございます。
また続きをやります。
ありがとうございました。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2015/05/10(日) 14:00〜14:30
NHKEテレ1大阪
日本の話芸 落語「昭和芸能史」[解][字]

落語「昭和芸能史」▽林家木久扇▽第668回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「昭和芸能史」▽林家木久扇▽第668回東京落語会
出演者
【出演】林家木久扇

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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