(鳥のさえずり)3月山里に春がいっぱいです。
ここは徳島県神山町。
およそ6千人が住んでいますがその半分が65歳以上の過疎の町。
(男性)乾杯!
(一同)乾杯!この町に今移住してくる人が増えています。
その多くは若者たち。
店を開く人もいます。
オーダーメイドの靴屋さんに本格ピザの専門店まで。
神山いいですね。
フフフ…。
うらやましい。
さらには最先端技術を持つ企業も進出。
ここにはいろんな業種の人が集まるんです。
地元の人たちとも家族のようなお付き合い。
実のお父さんよりもいろいろしゃべってるんじゃないかなっていうくらい…。
こんな山の中になぜ?『日本のチカラ』今週は人が人を呼び支え合う神山の町づくりです。
神山町は徳島の中心部から車でおよそ40分。
県内一の梅の産地でさまざまな草木が町を彩ります。
(女性)はい写った。
(女性)はいありがとう。
また神山町にはお遍路さんも訪れます。
お菓子や果物などで来る人をもてなすお接待の文化が息づいています。
(男性)お邪魔します。
お疲れさまです。
夜やって来たのは若い人たち。
神山町で暮らしながら自分に合った仕事を探していました。
地元のNPO法人が開く職業訓練の学校神山塾の生徒たちです。
孟宗竹を切って頂きたいと思います。
塾生たちは田舎暮らしに憧れがありました。
しかしまったく知らない土地でいきなり暮らす勇気はありません。
そこでこの神山塾。
試しに住んでもらって神山のよさをわかってもらおうと6年前に始まりました。
神山塾は国の認可も受けていて授業の立ち上げなど経営ノウハウを学ぶ他森林整備など地域づくりにも力を入れています。
自然と触れあう事が出来たのでまあ自分的にはやはり都会で暮らしてるのでそっちのほうが楽しみで来てまして。
すごくいい経験になりましたね。
(男性)めいっぱい飲んで語って楽しんでください。
では乾杯!
(一同)乾杯!その日の研修を終えるとまたいつものメンバーが集まってきます。
(女性)お玉ちょっと…。
(岩丸さん)お玉な。
ショウコ…ショウコちゃんに言うた?おういらっしゃいいらっしゃい。
(男性)どうもお疲れさまです。
あとからやって来たのは去年神山に移住してきた男性。
いろんな人の意見を聞けるのがここ神山塾のいいところ。
仲間の輪はどんどん広がっていきます。
塾生たちから「おとうさん」と慕われているのが明治時代から続く衣料品店のご主人です。
若者の移住を後押しして丸5年。
町の情報を提供したり空き家を紹介したり。
岩丸さんのもとで暮らした若者は500人を超えます。
ただいま〜。
(岩丸さん)おうおかえり〜。
ええやん血色ええやん。
(女性)うん元気になった。
(岩丸さん)出て行く前よりも。
元気になりました。
岩丸さんは母親と2人暮らし。
子どもは独立しました。
使わなくなった2階の部屋を若者たちに提供しています。
精神的にもやっぱり経済的にもいろんな面で不安はたくさん持ってると思うんやけど自分が認められて存在感をこちらで発揮して人から認めてもらうっていうんかな。
そういう生き方っていうのはこちらだったら出来るから。
来た人を受け入れもてなすのがお接待の心。
無理したらあかんわ。
(一同の笑い声)神山塾を巣立ったあとも町にとどまった一人の男性がいました。
よく出来ました。
3年前に神山塾を卒業し今は製材所の仕事を手伝っています。
この…こっちしかいかんから。
吉沢さんは本格的に山の仕事を始めてまだ3カ月ほど。
ベテランに教わりながらの作業です。
はいはいはい!
(吉沢さん)ちょっと木が当たったから焦りましたけど…。
フフ。
吉沢さんは元エンジニア。
横浜の計測器メーカーで13年間働いていました。
取引先からの注文に追われる毎日に疑問を感じ4年前に会社を辞めました。
そんな時ウェブサイトで見つけた神山塾に応募しました。
移住までは考えていなかった吉沢さんの心を動かしたものそれは神山の風景でした。
(吉沢さん)4月になったらすごい桜が咲いたり棚田の菜の花が咲いたりとかっていうなんか自然がすごい色が鮮やかになったんですね。
パッとすごいカラフルな町並みというか…。
自然が出て来た時にこの町にもうちょっと…四季を楽しみたいなっていうのがまあ多分一番の理由だと思います。
町に残った吉沢さんは仲間のウェブデザイナーと一緒に杉の間伐材を使った食器作りに取り組みました。
間伐材を使う事で荒れた山を再生したいと思ったからです。
神山の森はおよそ7割が人工林。
最近は林業の衰退で間伐などの整備が進まず山は保水力を失いました。
この事で川の水量も減り40年前の3分の1です。
人工林の問題がこの町にもあるっていうのをまあ知りまして…。
自分でアクションを起こす時…チャンスを頂けたのかなと思って。
しかし木の加工までは経験がありません。
そこでベテランの職人に頼みにいきましたが首を縦に振ってくれません。
(宮竹さん)やっぱり間伐材っていわれるのは油がないから。
木がパサパサだから。
一番難しい木違う?工芸品にするのには。
職人さんの言うとおり表面がザラザラ。
これでは食器として使えません。
それでもなんとか頼み込むと職人たちも根負けしいろいろ知恵を絞ってくれました。
取り組みから1年。
ようやく形になりました。
食器はタンブラーやボウルなどさまざま。
杉の特徴である茶色と白のコントラストを生かしたデザインは温かみがあって保温力にも優れています。
特に苦労したのはこちら。
木目が横方向に走る食器は工作に高い技術がいるんだそうです。
間伐材に新たな価値を生みだそうとしている吉沢さん。
今では町の林業になくてはならない人です。
木に対する情熱とかそういうのが…ひしひしと感じまして。
後継者の問題も…今不足してますんでね神山町は。
これから彼がまあ導火線にでもなってくれたらと思ってますはい。
(吉沢さんの声)神山来た時にまさか林業っつうかねえ木に関する事やるっていうのは全然想像はしてなかったですね。
せっかく神山来たから神山でやる…でしかやれない事というか神山特有のものを体験したかったっていうのがあるので。
やりたい仕事がようやく見つかった吉沢さん。
僕とまあ3人で今住んでるんですけども。
(スタッフ)家賃っておいくらぐらいなんですか?まあ1人こんぐらいですね。
1万ぐらい。
収入は会社員時代の3分の1。
杉の食器は去年から販売を始めたばかりです。
吉沢さんは製材所の他にカフェでもアルバイトをしています。
昔サラリーマン時代に比べるとだいぶ…もちろん収入は減ってるんですけどもまあ生活コストも…ねえ結構抑えられたりするので。
まあ不安がないわけではないですけどもまあどうにかやっていけるんじゃないかなっていう楽観的にさせてくれる場所かなあみたいなところはありますね。
どこでもいいか。
うんどこでもいいよ。
吉沢さんの周りには同じような思いで神山に来た仲間がいます。
(店員)あっやばい…。
(吉沢さん)やばい?
(一同の笑い声)お互い深くは話さなくてもどこかでつながっている気がする。
吉沢さんはそう言います。
熱そう。
フフフ。
神山に住んでみたい。
移住者は7年間で138人を数えます。
神山に人が増える訳がもう一つ。
町内には光ファイバー回線が整備されインターネットが快適に利用出来る事から東京などのIT系企業がオフィスを構えています。
その数は現在12社。
中には最先端のデジタル映像技術も使われています。
また町にはネット回線を自由に利用出来る施設もあり一日単位で誰でも利用出来ます。
この施設を毎日利用しているという男性。
(スタッフ)お仕事は何をされてる方ですか?以前は徳島市内で仕事をしていましたがこの施設の事を知り神山へ移り住みました。
通信環境もよく静かな場所で仕事を出来る事が何よりと言います。
すごいあの…。
人が増える事でお店も増えました。
こちらは古民家をおしゃれに改装したフレンチのレストラン。
東京出身のオーナーが2年前に開きました。
オーガニックの食材にこだわったメニューで町外からもお客さんが足を運びます。
こちらは古い電器店?いえ中はおしゃれな革靴が並ぶオーダーメイドの靴屋さんです。
オーナーは神山塾の卒業生です。
金澤さんは足が不自由な人のための靴や中敷などを作ってきた経歴の持ち主。
機能的で動きやすいだけでなく履いた時に思わず楽しくなるような靴作り。
歩ける喜びを誰より知っている金澤さんの思いです。
(男性)ジャストフィット…。
(金澤さん)ジャストフィットな感じですか?
(男性)うん。
いいですよ〜。
評判を聞きつけて町外からやって来るお客さんも増えました。
(男性)若い子が入ってくるってやっぱり刺激っていうかね中年より上の方はやっぱり励みになるっていうか。
あの全然感じがね…町の感じが違ってくるっていうか。
神山の町づくりを学ぼう!今では行政や大学の関係者も全国から視察にやって来ます。
お話を聞いて皆さんが毎日楽しいっていう姿を見てると将来に希望が持てるなってすごくお話聞いて感じました。
神山塾を運営しているNPO法人は町内のIT企業などと協力して仕事を探しに来たり視察に訪れる人たちの宿泊施設を建設中です。
この宿で働くのが鈴木麻里子さん。
千葉県出身の元会社員。
去年神山塾を卒業しました。
求人サイトに出ていた神山の職業体験に応募したのがきっかけです。
初めての一人暮らし。
不安はありました。
でも…。
ここにいる人がすごく素敵な人が多かったりとかなんかこういるとホッとしたりとか自分がこう…なじむ感じがすごくあって。
もうちょっと長くいたいなあっていうのを…。
宿のオープンは7月の予定。
それまで準備に追われる毎日です。
料理の献立もその一つ。
料理経験はえっと実はこっちに来るまでまったく…。
実家にいたので全然した事がなくて。
この日は朝食の試作品を作ります。
一緒に働くスタッフも皆神山塾の卒業生です。
仕事が終わると皆岩丸さんのお宅に集まります。
鈴木さん夕食はほとんど毎日岩丸さんと一緒です。
鈴木さんが神山塾の頃からお世話になっている岩丸さん。
いつもにこやかに鈴木さんたちの話を聞いてくれます。
心がめちゃめちゃ広いのと柔軟なのと。
うん…なかなかこんな人はいないんじゃないでしょうか。
実のお父さんよりもいろいろしゃべってるんじゃないかなっていうくらいいろいろ話をしてます。
みんなの優しいおとうさん。
岩丸さんは7年前妻をがんで亡くしていました。
妻多津子さんは奈良県出身。
15年前神山へ嫁いできました。
慣れない田舎暮らしに戸惑う事も多かったと潔さんは思い返します。
いざ実際生活したら今まで思っていた事と全然違うとこがたくさん…うんあるし。
やっぱり感情的に揺れてたっちゅうんかな。
私も結婚して2年ぐらいはずっと女房につきっきりで…。
神山に来て暮らす若者の境遇が岩丸さんにはかつての妻と重なって見えるのかもしれません。
この日神山を見てみたいという若者がまた一人。
(鈴木さん)お久しぶりです!久しぶりです!やって来たのはかつて千葉で鈴木さんと町おこしの活動をしていた男性です。
(鈴木さん)これ…。
(鈴木さん)そう。
(男性)うわっ。
かなりきてますね。
(鈴木さん)かなりきたんだよ。
鈴木さんは建設中の宿や神山塾の同期生の店に案内します。
オーダーメイド靴の金澤さん。
神山塾に行こうっていうのはどういうきっかけで?ちょっと思うところがあって。
控えめに話す金澤さん。
でもそう言われるとなおさら知りたくなります。
生まれ育った町以外でも自分の生き方が見つかるのではないか…。
金澤さんはそう考えていました。
若者同士話は尽きません。
この環境というかこの山々田舎の中にこのすごい都会チックなところがポーンってくる感じ…。
あっこういう場所あったんだ。
こういう人こんなにいるんだとか。
それは今まで体感した事なかったんで。
すごい新しいのが入ってきた感覚ありますね。
町の魅力に惹かれ家族ぐるみでやって来た人も。
小高い丘の上にあるのはピザのお店。
大阪出身の塩田ルカさんが去年オープンさせました。
独学で研究した石窯でピザを焼き上げます。
(塩田さん)すごい毎日ドキドキしながら…。
ピザの生地は国産の小麦粉をブレンドして作りました。
旬の野菜やオーガニックチーズなど具材にもこだわっています。
あっさりして軽くて…もういっぱい食べれそうな…。
古民家をいい感じで改装してやっぱり塩田さんは去年妻と3人の子どもを連れ神山へ引っ越しました。
以前は大阪でオーガニック食材の会社に勤めていた塩田さん。
もともと自然が好きで神山に遊びに来るうち子どもが住みたいと言い出しました。
自分のお店を開くのは初めての塩田さん。
妻と2人で店の掃除や食材の仕込みなど毎日大忙しです。
ピザ生地の発酵は天然酵母を使っているため12時間以上かかります。
生地の状態を確認するために夜中も起きます。
(舞さん)たねちゃんおはよう。
なかなか起きない…。
フフ。
幼い子どもの世話と店の支度に追われる塩田さん夫婦。
田舎暮らしを楽しむ余裕はまだありませんが家族で過ごす時間は増えました。
いただきます。
(一同)いただきまーす。
(塩田さん)お父さんのなくなるやん。
(塩田さん)フフフ。
前は本当に家族で食卓囲めるなんてほとんどなくて。
豪華じゃなくても質素でもいいんで…。
今は日々成長する子どもの姿が何よりの仕事の励みです。
卵ばっかり食べてるよ。
(舞さん)うん卵好きやもん。
(舞さん)ああ〜こんにちは!イタドリ持ってきたけん。
(あかりちゃん)イタドリ?
(舞さん)すみませんたくさん。
こんなに大きくなってるんですか?
(塩田さん)西さんはどうやって食べられますか?
(塩田さん)塩で。
へえ〜。
おやつ頂きました。
食べる人!自分で収穫したものをいつもこうして持ってきてくれます。
ええ家族じゃ。
子どもも皆…かわいいて。
塩田さんの夢は小麦粉から野菜まで全てを育ててピザを作る事。
それを神山の人たちに食べてもらう事です。
こう…なんていうんですかね。
だから街よりも僕にとっては刺激的というか…そうなんですようん。
宿泊施設の準備に追われる鈴木さん。
この日は宿で出す朝食メニューの試食会です。
神山の家庭料理をヒントに一汁三菜を作りました。
味わってもらうのはご近所の皆さん。
果たして気に入ってもらえるのでしょうか?神山の郷土料理をヒントに鈴木さんたちが知恵を凝らした試食メニュー。
地元の人たちの反応は?
(鈴木さん)ありがとうございます。
ほんのちょっとだけど神山に恩返しが出来たかな?神山に来て本当になんか…皆さんに受け入れてもらって今こうしてここで仕事も出来ているので…。
何年後になるかわかんないですけどこの宿が出来てよかったねって言ってもらえるようなものになったらいいなと思います。
はい。
阿波おどりにも参加している鈴木さん。
去年よりは少しだけ上達した気がします。
腕が痛い。
腕が…。
(男性)乾杯!
(一同)乾杯!人が人を呼び活気を取り戻していく神山町の町づくり。
過疎に悩む全国の集落再生の切り札としてさらに注目を集めます。
『日本のチカラ』次回は秋田県。
世界に挑む笑顔の花火!夢と秘密に迫ります。
2015/05/10(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本のチカラ[字]
過疎と高齢化に悩む小さな町、徳島県神山町。しかし近年、県外からの移住者が増え脚光をあびています。オシャレなレストランやオーダーメード靴店まで!秘密に迫ります!
詳細情報
◇番組内容
ここには「お接待」と呼ばれる、おもてなしの文化が根付いています。移住者にも優しいまなざしがあるのです。オシャレな店だけでなく、東京などに本社を置くIT系企業も進出しています。移住者が増える理由の1つが、職業体験の学校。県外から参加した卒業生の多くが町に残り働いています。杉の間伐材で食器を作り、荒れている人工林の問題や衰退する町の林業に希望の光を差し込む若者…。大阪から移住してピザ店を開いた家族…。
◇番組内容2
宿をオープンさせるべく奮闘する若き女性…。彼女だけでなく、移住した若者みんなが慕っている「おとうさん」がいます。衣料品店を営みながら相談にのったり空き家を探したり…。慣れない田舎暮らしの若者を温かく見守っています。神山では、多種多様な人が集まり化学変化を起こしています。3組の移住者の暮らしから見える、人と人とのつながりや町を彩る美しい自然など町の魅力を知るとともに、集落再生のヒントを探ります。
◇番組内容3
全国各地の「魅力あふれる産業」を通して、地域の歴史や文化・人々の英知や営みを学び、日本の技術力・地方創生への道・温かいコミュニティー、生きるヒントを描き出す、教育ドキュメンタリー番組。
◇ナレーション
山田隆子(四国放送アナウンサー)
◇音楽
高嶋ちさ子「ブライト・フューチャー」
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:四国放送
協力:文部科学省/中小企業基盤整備機構
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.minkyo.or.jp/
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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