2NHK短歌 題「足(脚)」 2015.05.10


「NHK短歌」司会の剣幸です。
今日もご一緒に短歌の魅力を楽しんで下さい。
では早速ご紹介致します。
第二週の選者は染野太朗さんです。
よろしくお願い致します。
染野さんさっきの一首何かこう情景が浮かびます。
今日の題が「足」なのでそれで私の歌を持ってきたんですけれども私学校の教員をやってるんですけれども採点で疲れたなといって深くため息をついたらまあいい匂いはするわけもなく誰かに励まされるわけでもなく自分の臭い足の臭いがしてきたと。
ああつらいなとそれだけの歌なんですけどね。
そして今日私たちいつもと全然違う所からご挨拶しておりますが実は今日のゲストです。
為末大さんです。
よろしくお願い致します。
為末さんといえばこれですよ。
ハードルですね。
ハードルってこんなに…。
高いですね。
91cmあるんですけどもまたいでもなかなかまたげないぐらいの高さですね。
走ってきてここにぶつかる人とかよくいますよね。
ぶつかると結構痛いんですね。
秒数も遅れるしって事ですか?これを越えていくというのが大事だったんですね。
飛び越える時の足のイメージとかあるんですか?ここの上にサーカスの火の輪っかってありますよね。
あれをイメージしてその間を抜けるようにすると上手に体が畳まれるって僕らは言うんですけど…。
猛獣になれっていう感じですか?そうですねライオンになれみたいな。
そして染野さんずっと為末さんに注目なさってたそうで。
トップアスリートという一面を持ってらっしゃいながらツイッターブログそれからたくさん著作もおありなんですけれども体をほんとにトップで使ってらっしゃる方が言葉にどのように向き合っているのかお話伺いたいなと思って今日は非常に楽しみに来ました。
為末さんは短歌にもご縁がある?僕のおばあちゃんが短歌をやってまして何かで入賞か何かした事はあったんですけどもおばあちゃんできるんだったら僕もできるんじゃないかと思ってやったら全然駄目だったという。
きっとできますよね。
1回目は駄目でしたね。
後ほどまたいろんな話をお伺いしたいと思います。
よろしくお願い致します。
(2人)よろしくお願いします。
それでは今週の入選歌です。
一首目です。
「地球を踏んで」がポイントだと思うんですよね。
「足裏が唯一の自慢」というと実質何も自慢がないような感じがするんですが「地球を踏んで」という事で足裏がぐっとクローズアップされて非常に足裏がいいものに見えてくるしまたこれは多分奥さんの自慢をしてるのかななんてそういうような歌としても読みましたね。
では次の歌です。
これ剣さん例えばどんな場面をご想像されました?いろんな場面は浮かぶんですけれども多分ちょっとお父様が徘徊して警察に保護されてそれを多分お迎えに行ったんだと思うんですよね。
ところがこちらの方が恐縮して本当に申し訳ありませんって言わなきゃいけないところを警察の方に謝辞を言われたという。
その裏腹…どこか穴があったら入りたいみたいな気持ちがすごくよく表れているんじゃないかなと思って。
場面だけを冷静に描写してるんですけれどまさに剣さんがおっしゃったような心の機微が非常にこまやかに表れた歌だと思うんですけれどもね。
為末さんいかがですか?2人がやり取りしているすぐ傍らにお父様がポツンと座っているような情景が浮かんでそれがまた何ともおっしゃるようにね切なさが…。
はいでは次です。
結句の「保母はとまれず」というのを読むまで何の事言ってるか分からないと思うんですよ。
ところが最後読むと小さくてたくさんの足が見えてきますし花も見えてくる犬も見えてくる。
「花」「足」「犬」って単純な言葉遣いなんですけれども花の色合いとか犬の毛並みまで場合によっては想像できるようなこまやかな歌に私は思いました。
では次です。
足は私たち分かってるとおり左右対称なんですけれども確かにふだんはちょっと違うだけって思ってるかもしれないんですがこんなふうに言われると確かに真逆のものに見える。
その辺りをユーモアに交えて深く真理をついて足という事を超えても何か真理を見せてくれるようなそういう歌だなと思いましたね。
「足」といってここに注目するという視点はすごく面白いですよね。
私この歌選ぶ時に為末さんを想像したんですね。
非常に鋭く別の見方をするような…。
では次です。
ちょっと難しい歌だと思うんですけれども要はブーツで薄氷を踏んでいるという歌だと思うんです。
ポイントはまず「春にして」というすごく強く構えたような言葉遣い。
それから薄氷の下に鏡があると。
言葉の力で本来ないものを薄氷に重ねて出現させているんですよね。
それを「ことごとく割る」という。
非常に迫力のある詩的な歌だなというふうに思います。
では次です。
これ為末さんどうですか?この歌の中に見ている人が見える感じがすごくするんですよね。
誰かが海女さんが宙返りして海の中に潜っていって渦ができてるなというところまでぼんやり眺めてるという。
この見ている人が誰なんだろうって何となく想像力をかき立てるようでそれがすごく印象に残りました。
非常に鋭い事をおっしゃっていてまさに見ている人が見える。
もう一つ言うならば「ざんぶり」という言葉が非常によく生きていて「ざんぶり」によって海女さんの動きであるとか音それから海水の動きまで表現しているような気がしますね。
では次です。
これは非常に単純化した言葉でですねほとんど露悪的なほどに場面を描いてるかと思うんですけれど歌の言葉として見ると「スマホいじる」とか「チンで食べる」結構荒い表現なんだなって事が逆に日常の言葉の質感というんですかねそれを我々に教えてくれるそういう歌だと思いましたね。
為末さんどうでしょう?僕はこれを見て一体何歳の方で男性なのか女性なのかっていうのを思いましてそれによって随分…シュールになったりいろんな形に変わるかなというのを思って見てましたね。
読み解き方も変わってきますもんね。
はいでは次です。
これは?体操です。
僕も相撲部屋で四股を踏ませてもらった事があって結構大変なんですけど2秒間耐えるのものすごく大変なんですがこの歌に関して面白いなと思ったのは「右脚を右脚として」というふうにあえて右脚を突き放すというか対象として見てるようなところがすごく面白いなと思ってます。
それをぼんやり眺めてるってどんな気分なんだろうというのは何となくこちらが想像した事ですね。
まさに為末さんがおっしゃるとおりで「右脚を右脚として」なんて言われるとふだんは我々が無意識に使っている脚とはまた別の脚が浮かび上がってきますよね。
それこそ体そのものとしての脚ですよね。
その表現が非常に興味深いなと思ってこちら採りました。
では次です。
最後の九首目です。
「さびしき脚」ってよく考えると何を言ってるか分からない表現だと思うですけれども「私はさびしいさびしい」というふうに言っているとか思っているというよりも「さびしき脚」と言ってこのさびしさを脚に託して表現されると何かそのさびしさが際立ちますし「白い猫」というのが非常に慰めを与えてくれるというかそういった存在としても浮かび上がってくるというふうに思いますね。
以上入選九首でした。
実は私もこの番組でですね短歌をちょっとずつ一生懸命勉強してはいるのですが鑑賞するという事も勉強の一つという事でですね為末さんにもお手伝い頂いてこの九首の中から一席はどれかというのを予想して頂きたいと思いました。
もう選んでありますよね?はい選んであります。
ではお願い致します。
僕は6番目のですね…言っている内容は海女さんが潜っていって渦が出来たという事なんですけど余白がたくさんある気がするんですね。
その余白の中に見ているこっち側がいろいろ足せる要素がいっぱい残っているなというのが何となくいいなというふうに思いました。
では私の予測は2番です。
これは例えばもし私が作るとしたらその状況…申し訳なかったとか警察の方にこんなにご迷惑を掛けたと言って父を大事に連れて帰るというところが先に出てきちゃうと思うんですけどそうは書かずに御足労掛ましたって警察の方に言われたっていう事をすごくしっかり受け止めていらっしゃる句なんだと思ってすごくその情景が見えるというか…。
いいですか?ではではいきます。
それではまず三席です。
峰由美子さんの歌です。
では第二席です。
小笠原啓太さんの歌です。
ではいよいよ一席をお願いします。
鈴木久吉さんの歌です。
外れちゃいました。
全部外れちゃいました。
お二人がおっしゃる事も非常に分かります。
こうやってしゃべってると歌の良さっていろいろなところに出てくるので全てではないんですけれどもこの歌の単純化して整えられた言葉の中に単純化というのは「花」とか「足」とか「犬」。
その中に結句に来た時にパ〜ッと広がる情景というのが非常に豊かだった。
それで私採らせて頂きました。
入選作品のご紹介でした。
続いては「入選への道」。
投稿作品から惜しかった一首を染野さんが添削します。
こちらです。
これすごく面白い歌だと思うんですよ。
足跡を見て自分の体重を褒めてあげたいなんていう事を言うんですよね。
なかなか独特の思いが表現されてると思うんですけど細かい事なんですがこの「上」というのが気になるんですよね。
「土の上」って足跡がついてるのは分かるんですけれども「上」と言った時ちょっと空中に上がってるようなイメージが取れない事はないんですよね。
これ「上」がなくても表現できるんじゃないかなとそういう思いもあったのでこうしました。
こうする事で土の質感がまず出てくると思うんですよ。
その質感に導かれる形で踏んだ時の足の感触なんかも想像できるかもしれないんですよね。
こんなふうにするとより一首が立体的になるんじゃないか。
そう思って今回はこのようにしてみました。
ありがとうございました。
では投稿のご案内です。
では続いては選者のお話です。
今日のテーマは「鶴の首」。
今日こちらご覧頂いています米川さんのお歌なんですけれど…「春の鶴」というのは繁殖の時の鶴だと思うので恐らく恋の場面というのを想定していいんだと思うんですけれどもその春の鶴が首を打ちかわしてるというんですよね。
「鈍き音」この場合は重たい音という事だと思うんですけれどこの空欄にはどういう気持ちで聞いているかその気持ちが入るんですね。
今日はお二人にですね是非この空欄に入る気持ちの部分を考えて頂きたいなと思って用意したんですけれどもいかがでしょうか?「打ちかはす」という表現がものすごく激しい感じがしますね。
テレビとかで拝見した事あるんですけど結構愛の表現とかっていうよりはけんかしてるんですかっていうぐらい首をこういうふうに…そのつど音は出てましたね。
バシンバシンって。
かなり激しい求愛っていう事なんですかね。
そのとおりだと思いますね。
かなり激しいですし痛みも伝わるようなね。
いかがでしょうか?為末さんお願いします。
直前まで悩みに悩んだんですが結局変えませんでした。
首を打ちかわしてる様子がどうも僕には痛いイメージがあって恋の歌だったとしたらその痛さも相まってですね何となく立ち去りたいような去りたくないような状況でだけどそれでも聞いてしまうっていうこの「立ち去りもせず」っていうのが合うんじゃないかなと思って考えました。
何か同じような感じになってしまいましたが私は「身じろぎもせず」。
身じろぎもできずっていう事なのかなと思って。
聞いちゃうって事と心はものすごく裏腹で本当は見ないで逃げて帰りたいんだけれども見てしまうっていうその心の葛藤みたいなものが何かちょっとあるのかなっていう。
事前にお話したわけではないのにお二人とも「…もせず」という表現なんですよね。
それだけひたすらな感じそこから動けない感じというのをお二人とも感じ取ってらっしゃるんだと思うんですけれどもじゃあ実際はどういう表現なのかお見せします。
これちょっとお二人のおっしゃってるのとは変わってくるとは思うんですけどつまりどういう事かというと恐らく嫉妬なのか恋の苦しみなのか分からないんですけどどうにも自分では処理できないような心の状態があるんでしょうね。
それを「鶴の首打ちかはす鈍き音」激しい音を聞く事でむしろ体の感覚に近づける事で何とかその心を収めてしまいたい鎮めてしまいたいという事がここで表現されてるんだと思うんですね。
僕の勝手なイメージで昔の恋の事を思い浮かべてるって感じだったんですけどこれはもう今まさに何か近々の自分の事とつながってるって感じですね。
まさにそうだと思いますね。
更にちょっとテキストで更に詳しくこの内容を見ているので是非読んで頂きたいなと思うんですけれど。
皆さん是非読んでみて下さい。
ありがとうございました。
では次のコーナーです。
染野さんが為末さんに聞いてみたい事たくさんあると先ほどおっしゃっていました。
どうぞ。
為末さんはですねそれこそブログツイッターはもちろん著作もおありでいろんな事をおっしゃっていて何から聞けばいいか分からないぐらいなんですけれども今日は2015年2月24日の為末さんのブログ「意識を置く」というその文章を私がこちらに持ってこさせて頂いたので是非ちょっと剣さんに読んで頂きたいと思います。
こちらにあります。
読ませて頂きます。
「足を振り上げたいと思って一生懸命足を振り上げる人がいる。
振り上げようとすればするほど力んで足が振り上がらない。
反対足で地面を踏みつけるようにしてみる。
そうすると急に足が楽に上がるようになる。
起こしたい現象の鍵がそれそのものとは限らない。
いったいいつ足を地面に踏みつければ足が上がることに気づくのか意識の置きどころを探すセンスが問われる」。
私がすごく為末さんに直接伺ってみたいのが「起こしたい現象の鍵がそれそのものとは限らない」とおっしゃってます。
この部分詳しくお聞かせ願えますか?直接言うとハードル跳ぶという事は「右足で地面を蹴って下さい。
左足を前に出して下さい。
右手は90度にして下さい。
左手は後ろに下げて下さい」って言うとですね子供は大体ロボットみたいになるんですね。
じゃあどういうふうにすればいいかっていうと「ハードルの上に襖があるんでそれを蹴破って下さい」と言うんです。
そうすると自然に動くんですけどでも「襖」を強調すると体の動きがより良くなるんですけど体を本当は変えたいんだけどそっちを直接言ってしまうとやっぱりぎくしゃくするんですよね。
そういうふうに本当は表現したい事をそのまま言い過ぎると人間というのはやっぱりそこで固まってしまったりうまくいかない事があったりして意識をずらしていくというのが大事だなみたいな事をちょうど書いたんですけど。
非常に面白いですよね。
それそのものを語るのではなくて別の言葉先ほどオープニングでも言って下さったんですけれども火の輪ですかそういう比喩を使って表現された方が体が動くって事ですよね?そうですね。
だから今回短歌はあんまりここまで詳しく見てなかったのですごく面白いなと思ったのは随分と読む側に余白が与えられてるんだなというのでそれがコーチングでもすごく重要なんですよね。
選手に全部言い切ると大体選手の動きっていうのは考える余地がなくなるんですけどちょっとだけヒントが出て右手の事だけ言って左手は?足は?とかっていう事は選手が全部考えていくんですけどねそういうのがピタッと全体が調和するというある一点があってそこを見つけにいくというのが技術を調達していくって事なんですけどそれが短歌の中でもこの事を言いたいんだけどっていろいろ探っていきながら何かピタッとくる表現があるみたいなね。
短歌は私も心がけてるのはそれそのものを語るというより例えば「うれしい」とか今日為末さんが来て下さってうれしいとかそういう事ではなくて為末さんがここにいらっしゃるその場面を描く。
何をされてたかを描くって事で表現しようとする。
もしかしたらそれが為末さんのおっしゃる「余白」って事ともつながるのかもしれませんよね。
動きを引き出す時でもあれですよね外のものを言ったりしませんか?例えば「手を上げる」というより「何をつかみにいく」とか。
私なんかはダンスしかよく分かりませんけど歌の時もそうなんですけれども例えば右手をこう上げる時に普通に上げるんじゃなくて例えば羽のようにという表現で「白鳥の湖」を踊るとかっていう事以外にここを何かにつられてるように。
だって鳥のようにって言われても鳥がこういうふうには動いてないわけじゃないですか実際。
だけどもっと現実的に物理的にここを引っ張る。
例えばものすごくきれいな形であれば耳をクレーンにつられるってなると体幹からスーッと上に。
「体まっすぐして下さい」って言うとみんなものすごく力を入れて硬直してこう…。
それはまっすぐじゃないんですよ本当はね。
一番体幹をフーッてつられてる事が一番いいきれいな姿勢になる。
だから多分さっきの四股じゃないですけど右足を上げる時に右足だけ上げようと思っても絶対に上がらないんですよ。
もちろんお相撲さんは体が柔らかいんですけどお相撲さん体傾けますよね。
だから上がるんですよ。
こっちを下げればこっちが上がるという事を…。
(チャイム)もっとたくさん話をお聞きしたかったんですけれどまた来て頂きたいと思います。
今日はありがとうございました。
染野さんまた来週お願いします。
よろしくお願い致します。
では来週お目にかかります。
2015/05/10(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「足(脚)」[字]

選者は染野太朗さん。ゲストは元陸上選手の為末大さん。題は「足」。為末さんから足にまつわる様々なエピソードを伺う。また染野さんの一席を為末さんに予想してもらう。

詳細情報
番組内容
選者は染野太朗さん。ゲストは元陸上選手の為末大さん。題は「足」。為末さんから足にまつわるさまざまなエピソードを伺う。また染野さんの一席を為末さんに予想してもらう。【司会】剣幸
出演者
【ゲスト】陸上世界選手権四百障害 銅メダリスト…為末大,【出演】染野太朗,【司会】剣幸

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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