一人の現代アート作家に会うため京都へやって来た。
うん?こっち?あっ…。
やなぎみわ。
CGや特殊メークを駆使しさまざまな女性像を表現した写真作品で知られる。
やなぎの代表作「エレベーター・ガール」シリーズの一つ。
エレベーターに横たわる制服姿の女性たち。
ところが…。
血だまりのようなイメージはやがてデパートの包装紙を思わせるポップなデザインへ変化していく。
「マイ・グランドマザーズ」というシリーズ。
シワシワの芸者とおばあさんたちが楽しげに戯れている。
演じているのは実は若い女性たち。
50年後の理想の自分をイメージしてもらいそれをCGや特殊メークを使って実現させた。
こちらは髪を真っ赤に染め若い彼氏とアメリカを爆走するおばあちゃん。
若さと老い女性である事の意味。
やなぎの作品は見る者の固定観念に揺さぶりをかける。
一青はやなぎの作品集を見ているうち触発されて頭に浮かんだ言葉を走り書きしたという。
おばあちゃんシリーズを見た時に何かものすごいギャル性みたいなものをやなぎさんの中に感じて。
大人になっても自分の中に存在してるギャルみたいなもの潔く出しちゃうところがかっこいいなと思って。
…でどんどん更に話を聞いてみたいなと興味を持ちました。
すごく…おんなじって言うと何かすごくあれですけど…2009年には美のオリンピックともいわれるベネチア・ビエンナーレに日本代表として参加。
作品は世界的に注目されている。
一青窈さんってどんなイメージですか?情念的…確かに。
一青のデビュー曲のタイトルはその名も「もらい泣き」。
国民的ヒットソング「ハナミズキ」。
・「百年続きますように」近年は昭和の歌謡曲のカバーにも取り組んでいる。
・「又も燃えるの」だからきっと何かこういろんな…待ち合わせ場所は京都・祇園の花見小路。
初めまして。
初めまして。
寒いですね。
寒いですね!一青窈です。
やなぎです。
初めまして。
テレビで拝見した時すごいショートカットだったんですけど…。
伸びまして。
伸びましたね。
伸ばしてます。
一青がやなぎを案内したのは歌舞音曲の練習や発表に使われる歌舞練場。
お〜そうだ。
こんなんだった。
あっ広い広い。
あ〜きれい!あっきれいきれい。
ねえ。
あ〜きれい!毎年4月に行われる都をどり。
芸子や舞妓が総出で華やかな出し物を繰り広げる都をどりは京都の春の風物詩だ。
一青はここでライブを行い自ら演出を手がけた事がある。
手動式のせりや花道などがある昔ながらの空間を生かして独特の世界観を作り上げた。
その時の自分の…じゃあここにそういうセットを…。
そう。
現代アートの旗手と独特な歌詞で魅了する歌い手。
2人の作品はどこから生まれるのか。
じゃあやっぱり呼吸するように書いてるんですね。
そうですね。
なかったら手にも書きますし。
何か最後が「けん」で終わるものを並べるとか…。
それこそ文集みたいにホチキスで留めて…その詞を見た…確かにちょっと何かねどうしようかって思っちゃたり…。
わあっ。
むさ苦しいとこですいません。
何かを作らずには生きていけない2人の本音がぶつかり合う!自分で言うのも…自分でこんな事アピールしてどうするっていう。
ものすごく…何かその情念を自分の子どもであったりとか家族であったりとか…ありすぎて。
あの世があるなら。
あの世があるなら。
ライブのテーマや構成に人一倍こだわりを持つ一青窈。
ここ祇園の歌舞練場で行ったライブとは?あっ上がってきた上がってきた。
そうそうそう。
うわすごいですね!すごいなこれ。
すごい照明仕込んだね。
うんうん。
キャバレーの照明ですよねこれ。
この日のライブのテーマは「赤い糸伝説」。
一青は舞台装置や衣装演出など全てのプロデュースを自ら手がけた。
しあわせひとつはいらんせ。
わたしのあのひとかえらんせ。
運命の赤い糸にからめ捕られ翻弄される女。
この日のためにアレンジした曲の数々をストーリー仕立てで展開していく。
結構何かちょっと…そうですね。
むしろ私この状態の方が…。
新鮮?見た事がなくて。
何かライブの時に…じゃあ足袋はいて?でもそのライブの時だけははだし許してくれたのかな?お願いして。
はだしで歌う方がやっぱり混ぜ込みやすいじゃないですか。
割とこうやんちゃにはだしでやってるとだんだん皆さんがきれいに…「そこ布貼っときました」とか…。
足ケガしないようにとか?そう。
「ささくれをやすっときました」とか。
そういうのはいらないなと毎回思いますよね。
歌う事に何かこうマゾヒスティックですけど…。
毎回お客様が楽しめる何かってないかなと思って例えばここを全部何かボールみたいなの敷き詰めてボヨンボヨンの状態で見るとかあと何かこう「ゴロゴロ寝ながら見れる」とか言ったら大体足のにおい問題にみんな突っ込むんですよね。
あ〜靴を脱がせるとね。
「足のにおいがちょっとにおわれる方はどうしましょう?」みたいな。
いやそれはもう…。
それはしかたないですよね。
ただいま。
一青の詞はそこから一本の映画が作られるほどの世界観を持っている。
全ての楽曲の作詞を手がけてきた一青は自らをそう呼ぶ。
「ハナミズキ」は9.11アメリカ同時多発テロのあと平和への思いを込めて書き上げたという。
やなぎが強烈な印象を受けたという「もらい泣き」。
サビのフレーズや歌詞に打たれた句読点が独特だ。
うん。
「ええいああ」。
あれはあの…母音ですよね。
あれはどこの言葉という事でもないんですよね?う〜ん。
何かこう…気合い!?そう。
何かあの…あっそういうものだったんですか?そうだったんだ。
だから母音なんだ。
そうですね。
何か言葉じゃなく先に涙みたいにあふれ出てきちゃうものみたいなイメージでなんとかあいうえおを組み替えていい言葉にならないかなと思って言葉遊びしてたんですね。
いやあれすごいなと思って。
「やった」というのもなんですけどただ…もともとそこにいろんな言葉はめてたんで。
あ〜そうなんだ。
あれが最初からはまった訳じゃなくて…。
違いますね。
考え抜かれた母音な訳ですね。
そうですね。
何かあれ…あっでもほらあの〜割とこう…最後が「あ」だからですよね。
あれ最後「う」とかだとやっぱ口すぼんじゃう…。
「う」とか「い」とかだとうん。
あの解放感はないですね。
何かねネガティブとかポジティブとかってよく感情の事を分けるけども何かそういうものを飛び越えてすごく解放感があるんですよね。
でも…知って下さってたんですね「ええいああ」。
うんうん。
いやでも今祭りの合いの手だって掛け声だって聞いてすごく納得がいきました。
そうですね。
やなぎは朝からテレビに齧り付く夜光虫というイメージにも驚いた。
もし曲を先に頂いてたら…その音を入れます先に。
・「虫」の部分ですね。
ここは…「ちゅう」がいいなみたいな事ですね。
「ちゅう」から先に出たんですか?「ちゅう」が出るから…「夜光虫」じゃなかったんだ。
最初は。
「ちゅう」なんですよね。
「ちゅう」だったら何か…何でも?「ちゅう」じゃなくて小さい「ゅ」「ぅ」っていう事ですよね。
うんうんうん…。
その自分の中で…「ang」「ong」「an」とか「on」とか「ing」とかえ〜っと…それこそ小さい「ょ」で終わるとか小さい「っ」の文字が入ってるっていうのを…「じゃんけん」「高倉健」みたいな最後が「けん」で終わるものを並べるとか…。
一青が言葉をコレクションしているファイル。
言葉が不思議なイメージを喚起する。
それは何か自分の引き出しとして作ってるんですか?どんどん書き出していくんですよ。
で全部パソコンに入れてってで小さい「っ」…。
「一緒」とか「残暑」でも何でもいいんですけど。
「ょ」で終わるもの。
そうそう。
小さい「ょ」で終わるものとかを作ってってでこう…ここはどうしても小さい「ちゅう」的な何かだと思ったら「yu」辞書を出してこうバ〜ッと見て…「夜光虫」だって。
はまったって。
前の「光」がいい。
面白いですね。
何かもう「夜光虫」って漢字で3文字になっちゃうとどうも意味から何かね…。
ここはどうしてもこの「夜光虫」でなかったらいけなかったんだろうと思っちゃうんですけど実はそのちっちゃな「ゅ」が大事なんですね。
そうなんです。
で多分そこら辺は…何かパズルというか。
そこはもう音楽的に韻を踏みたい。
そういうふうに作るのね。
想像だにしなかったですね。
アハハッそうですか。
やっぱりここ「小宇宙」ですもんね。
多分同じその「yu」辞典からひいた…。
「夜光虫」と「小宇宙」で。
確かに「夜光虫」と「小宇宙」…。
焼酎?・「意味がない小宇宙」って…。
つながっちゃって?そうすると大体ファンの人が「あれ焼酎って何ですか?」みたいなこう…。
謎も与えつつも。
う〜ん。
あ〜でも面白いですね。
やっぱり音からなんですね。
私は…それは何でしょう…。
それ以外のこう…「Iloveyou」的な歌詞はほかの人たちが担ってくれればいいかなと思って。
そうですね。
あんまりその英語自身…漢字とか平仮名の方がしっくりくる部分はありますね。
台湾の財閥一族出身の父と日本人の母との間に生まれた一青。
6歳の時日本の教育を受けるため母と姉の3人で東京に移り住んだ。
しかし小学校2年で父を高校2年で母を亡くす。
姉と2人残された一青にとって支えになったのが言葉だった。
とにかく手紙が大好きでで詩を読むのも書くのも好きで何かと…私でもやっぱりいくつか曲をお聴きして…あれは実際に…何かこう月夜に…何だったんだろうあれ。
それは曲を作るためにじゃなくてそういう衝動に駆られて?そうですね。
やなぎが強く心を引かれたという「月天心」。
「月天心」は中国語の歌詞から始まる。
「後悔は闇の中へ。
別れの傷痕も隠してくれよう」と歌う。
あっそう。
・「泣きながら歩いた」・「道の数かぞえた一人きりなりたくて」そうですね。
泣きながらはだしで。
そのままじゃないですか。
そうなんです。
そのままなんですよ。
それはもうそれ実際にはだしで歩いてみたあとにこれが出てきた?そうですそうです。
何だ…そうですよね。
走ってる走ってる。
走ってますね。
そのまんま。
振り仰いでますよ。
家帰って詞書こうと思った時に手前に公園があるんですけどもまずジャングルジム登って…何かその時にすごい姉…シスコンじゃないんですけど姉の事をすごい考えて…。
お姉さんはどこにいらっしゃるんですか?今。
姉は結構旅好きで今は隣に住んでるんですけどもその時は結構離れてる時間が多かったので唯一の肉親だったので何かこう…で何かいや〜でも同じ月見てるから…。
同じ時期だったかは忘れましたけど…「あっテレパシー」とか思って出て何かこう…何か「元気?」みたいな感じだったんですね。
で何か無性にはだしで家までダッシュしたい気持ちになってその公園からはだしで。
これもしゃべるとすごい危ない人ですね。
完全に。
まあそこのそのシーンを見たらかなり危ない人でしょうね。
ちょっと聞いていいですか?毎日書かれてます?毎日?いやあっ…その詞を書くっていう作業とか言葉を書き留めるのは…あっじゃあやっぱり…そうですね。
常にこう何か持ってて書くものを持ってて常に書く?それをやると大変なのでチラシの裏とかあのそうですね何かチケットの裏とか。
そこにあるものですね。
そこに…。
なかったら手にも書きますし。
結局…あのこうカシャッていうと消えるやつあるじゃないですか。
あの子どもが遊ぶ…。
はいはい…。
うん何て言うんだろう…こうボードに書いててスッと消えるやつ。
あれさえなければ海の中でも気にしないで泳いでられるんですけど。
あれがある事によって書き留めますよね。
海の中で?はい。
すごいね。
それはすごいね。
一青のアルバムの歌詞カード。
指さし記号やハートマークも登場する。
歌詞のレイアウトも独特だ。
こういうのもご自分でレイアウトされるんですか?そうなんです。
それこそ文集みたいにホチキスで留めて…へえ〜詩集をまく?そうです。
で私は住所ここ電話番号これ一青窈って書いて是非コラボしたいと。
プライベートの事も全部書いて。
すごいですね。
で…アハハハハッ。
連絡下さいと。
そう。
確かにちょっと何かねどうしようかって思っちゃったりとかするかもしれない。
ただあの時すごくそういう自分の詩とかすごくまいてる子たち多かったんですよね。
そうなんですか。
ひょっとしたら…あっそうなんだ。
詞作よりも。
こういうのをちょっと1文字ずらすとか。
何かそういう事…。
何かこう…その作品が駄目とかじゃなくてただ自分が読みたいテンポ感と違う軸で何かこの世界を見てるんだなっていうふうに捉えてて。
せかされても嫌だしのんびりし過ぎて展開がないのも飽きちゃうし。
あっでもそれすごく納得がいきましたね。
そうですよね。
今…あっすてき。
小唄って…先生が歌ったら自分。
先生が歌って自分。
一緒に歌う。
そうなんです。
あっ本当。
で間合いとかも西洋でいう譜面でいうと1234の4分で切られていく事じゃなくてあの最初に拍子木と一緒ですね。
「カッカッカッカカカカカ」ってなってここの間隔って何となく…気持ちいいと思うとこで三味をはじくみたいな。
気持ちいいと思うところでベンディングして小節入れるみたいな。
それがすごく何か…フィジカルですよね。
こう…身体から。
何かこう読みながらとかじゃなくて。
だからすごく今…・「エエ……」っていう部分。
あの…あれがどうしても「歌窈曲」っていうアルバムでカバーしたんですけども…ウソくさいフェークだなと自分で思って。
女王美空ひばりの「りんご追分」。
なるほどここはだからひばりさんここ口何か…こうなるじゃないですか。
あれは…ああそうなんだ。
そこであだを作るって先生おっしゃったんですけど。
何?「あだ」。
それが色っぽさになるんだよねって。
ちょっと…「あんたこっちおいでよ」みたいなあだっぽい女になるからって聞いてひばりさんはよくものまねされますけど…ちゃんと唱法としてあるんですよね。
その音を出すためにそういうふうにあだっぽい感じになっていたっていう事ね。
で一つ一つ勉強してって…。
でもそれやっぱり実践しないと分からない事ですよね。
まだ使えてないですけどね自分の歌に。
でもやっぱり歌手歌を歌う人っていうのはね…う〜んすごいなと思いますね。
私背が高いじゃないですか。
ちっちゃい時から高かったから…普通宝塚って好きで見るでしょ?でも私の場合は強制的に見せられてたの。
テレビでやってるんですね番組。
神戸ではやってたんですよ。
で見なさいと。
ひたすら見てこの男役を特に見ろって言われるんですよ。
勉強せえと。
娘役よりも男役を見なさいと。
これがスターなんだからって言って。
歌とか踊りとかあんまり何かこううまくできないんですよ。
好きになれなかったって事?楽器もねいまひとつうまくできなくて…その歌を歌えるとか音楽を奏でられるっていうのは。
あそうですね。
あんまり自分の思い出だとかを書くよりかは…後半は舞台をスイッチ。
ベネチア・ビエンナーレに日本代表として参加したやなぎみわ。
会場内に置かれた黒いテントの中をのぞくと…。
荒野をさすらう黒いテント。
中に入っているのは5人の女たちだ。
女たちは時々テントからはい出してくる。
風が吹きつける。
やがて女たちはテントの周りで踊りだす。
テントは仮の家。
そこに家族のような劇団が一緒にいる状態を表している。
「家族とは旅の一座のようなものでありうまくいかなければ解散すべきもの」というやなぎの家族観が表現されている。
一青は京都市内にあるやなぎのアトリエに向かった。
お邪魔します。
どうも。
わあっ。
むさ苦しいとこですいません。
雑居ビルに中に…。
お〜!これでもねちょっとは片づけた。
こっちもそうです。
お〜。
「風に吹かれる女たち」。
高さ4メートルもある巨大な作品だ。
撮影は壁一面に空が広がるこのアトリエで行われた。
やなぎはモデルの足首に特殊メークを施し一回り太くした。
胸には張りのある巨大な乳房を装着。
こうかな?女性が立つのは干ばつにひび割れた大地。
吹き荒れる風をものともせず大地を踏み締め踊る力強さを表現する。
しなびた乳房を持つ若い女性の像もある。
巨大な女性たちの姿は圧迫感と解放感の両方を同時にもたらす。
「マイ・グランドマザーズ」というシリーズは老いを力強く肯定する。
真っ赤なスーツにハイヒールで闊歩するおばあちゃん。
ランウエーはなんと自分の墓石だ。
若いモデルが50年後の老いた自分にふんする作品にはどこか吹っ切れた解放感が漂う。
世界と自分がまだ存在している50年後。
それを想像する事は希望であり幸福であるとやなぎは言う。
元気もらえます?元気もらえます。
でもこれ明るいもんね。
このシリーズ。
私あの娼婦の…。
若い娼婦にまだまだだわって言ってるのとかすごい好きだったんです。
あ〜HIROKOさんね。
それぞれの作品にはモデルとの会話に基づいたテキストが添えられている。
孫のSM嬢と旅する伝説の女王は高級ホテルの一室で孫娘に説教する。
あそうなんですね。
こっちが今のHIROKOさんでこっちがおばあちゃんになった時の。
何か自分の孫娘と旅をしてる…。
うん。
…んだけども一人二役でやってるんですよ。
これは…これでも展覧会なさった時にたくさんの女性から反響って…。
うんすごかったね。
勝手に言ってたしね。
「グランドマザーズ」はねやっぱりねこのモデルとなった女性たちが…この欲望に対してですか?あんまりこういう妄想って抱かない気がするんです。
そう。
もっと現実を見つめてるんですよね。
現実的。
保守的というかね意外と家族にみとられて…。
「いやみとられて…。
まだ死んでないから」とかって。
何かこの破壊力とかがすごいやっぱり元気もらうんですよね。
どう死にたいみたいな?そうですね。
そこに何か美学があるのか分かんないんですけど。
ああ〜。
やなぎが20代で制作を始めたシリーズ「エレベーター・ガール」。
制服に身を包み物思いにふけるような表情の女性たちが人工的な空間にたたずんでいる。
この作品でやなぎは一躍国内外で注目を集める存在となった。
ギャル体質なんですか?何だろう…。
もう自分の年齢はとっくにギャルの時代なんて過ぎてるんだけれども何かこうそれこそ…これね作った時は何の予定もなかった。
つまり展覧会の予定とか。
ただ作りたくて?そうそう。
すっごいかわいい。
だから実際は本当にこんなちっちゃな作品だし。
そうなんですか。
このころまだデジカメもなかったから。
あっフィルムで撮ってたんですか?うんフィルムで撮って。
そのエレベーターの中に倒れてますけどこのエレベーターもこれぐらいのブリキの缶を上から撮って。
えっ?あっ!で合わせたのか。
家にあったブリキの缶を撮ってモデルは別に撮って。
これ京都駅みたいですけど違うんですよね?これは大阪ですね。
大阪のショッピングモールですね。
ショッピングモールとかってガラスを多用してるからどこが外でどこが中かよく分かんなくなる時あるじゃないですか。
そういうのがすごく好きだったんですよね。
だからあっちこっちのショッピングモールを合成で継ぎはぎしてよく作ってましたね。
私何か一定のエロティシズムを感じるんですけどそれは…。
もちろんもちろん。
この硬質な感じ。
何か硬くて冷たい感じがねまた…。
黒髪で全員。
…なんだけども何かお仕事してないっていう。
何かくつろいでるし。
何かけだるい感じ。
そうこれとか何かドバイとかの空港みたいなイメージで何かやたらみんなもの広げて転がって寝てるっていう…。
あ〜そうね。
あそこもね不思議な感じになってますよね。
すごいハイブランドのショップの前で。
物質社会に対しての何かこう…アンチテーゼっていうか何かそういうものみたいなのも投げかけてる…?ほらデパートとかショッピングモールとかそういう場所って常に大きな力で動いてるでしょう。
流動してるでしょう。
それが何かこう…フリーズした感じ止まった感じに。
何かそういう異化効果を見せたいなと思ってこの時は。
結構大変だったんですよね。
この商品一つ一つ全部別撮りなんですよ。
そうなんですか。
この風景とはまた別のスタジオで全部これをこの商品をみんなから集めてね知り合いから集めて新品のブランド物とかドサッと全部トラックで運んできて広げてで別撮りしてるんですよね。
だから後から合わせるのが大変だった。
合成するのがね。
実はやなぎは学生時代工芸を専攻していた。
しかし制作の手順があらかじめ決まっている事にもどかしさを感じるようになり表現手段を模索する時期が長く続いた。
私すごく変遷を経てて…伝統工芸やっててそれから立体作品とか作り始めて…芸術大学卒業してから。
まあでも時間がないとかお金がないとかって制作をやめる言い訳にならないんだけども分かってるんだけどそれにしてもやっぱりちょっと…。
作品も全く売れなかったしね。
すごく女性にフォーカスを置かれてるんですけども…何かねやっぱり女性をモデルにするっていう事は…へえ〜。
私自身が。
だから何かその何か違和感が…やなぎは幼い頃祖母曾祖母曾祖母の妹という3人のおばあちゃんに囲まれて育った。
私何かね…あっもう全体的にいろんな事に違和感が…。
違和感はある。
だから…えっ?あ〜なるほどね。
それこそ劇場じゃないけど「はい」。
そうそうそう。
であの…駄目だなと。
それやってたんですか?やってないやってない。
それができたらいいんだけどやっぱり子どもだからまだそんな事できないですよ。
子どもってやっぱり本当に無力なもんですよ。
でももう生まれ落ちた瞬間から何か物心付いたらそういう違和感を疑問として持ってたんですね。
そうですね。
例えば…多分あったんだと思うんですけどもその時も違和感を感じられてました?何かねあんまり身体的な事って意識した事なかったんですけど。
何かその…だからあれはびっくりしましたね。
いろいろ。
いろいろ…今もびっくりしてますけど。
私…自分で言うのも…自分でこんな事アピールしてどうするっていう…。
へえ〜。
ありすぎるんだと思います。
あっありすぎるからこそこういう作品を作ってるとも言える。
うんうん。
何か…その情念を自分の子どもであったりとか家族であったりとか…う〜ん。
うんありすぎて。
そうそう…。
だからそれやらない方がいい。
あっでも私そのような感覚で「花蓮街」っていうアルバムを出した事があってそれまでは割とあの…家族の事とか友達っていうか周りにいる人たちの事を書いてたんですけどもそれを一回捨てようと思って…それ別にいいじゃないですか。
いいんです。
ただそれはすごく必要だったんですけども何かこう…それ何か売れなかった原因は何だと思います?もうちょっと重い?ヘビーすぎるぞ。
何かすごく好きって言って下さる方もいてそれは何かまだ…「モア一青窈」みたいな事だったのかもしれないですけども。
でもいいんじゃないですか。
例えばその…あっていいじゃないですか。
そうですね。
多分私それしかないと思う。
「フェアリー・テール」は童話をモチーフにしたシリーズ。
おばあさんと少女の不気味で怪しい世界が展開する。
切り開かれたオオカミのおなかの中で赤ずきんとおばあさんが抱き合う。
天井から垂れ下がる髪の毛を切ろうとしているのはおばあさんの仮面をつけた少女。
おとぎ話に潜む残酷さやおぞましさが増幅されている。
突き抜けた明るさとかではないのは好みですか?そうですね。
暗いよねちょっとね。
どれもね。
ちょっとずつ。
まあ何かそれって歌謡曲にも通じる何かなんですけど。
まあ自分がそっちの方向のタイプの人間っていう事なのかな。
うん。
涙を誘えるのはすごく光栄なんですけども何か…元気になってもらうのが。
でも泣けましたにしても何にしても…自分の中だけにそれがあるとどんどんこう落っこっていくんだけどそれが一つの…そうですね。
例えば…ああ!奇跡的にうまくいく。
歌舞練場は一種そんな感じありましたね。
そうなんだ。
あの…自分だけじゃなくてえ〜っとほかの一緒にやってるミュージシャンの人たちもあと観客も全員が奇跡的に何かものすごいハッピーな状態になってるとか。
そういう時に何かが起こってますよね。
きっと。
そうですね。
何かめったに起こる事はないんだけども…被写体がさまざまな女性像を演じるやなぎの作品。
やなぎはいつしか生身の人間によるパフォーマンスそのものに引き寄せられていく。
5年前演劇の世界に足を踏み入れた。
やなぎが演出した舞台…東京ローズとは太平洋戦争中のプロパガンダ放送を担った女性アナウンサーに付いた呼び名。
敵兵の戦意喪失をねらって軽妙なトークを展開し人気を博す。
ところが戦後東京ローズは裁判で罪に問われる事となる。
わざわざ東京からこのサンフランシスコまで…。
あなたは私を東京ローズにしたいのね!やなぎは国家のプロパガンダと聞き手の欲望とが生み出した虚像に追い詰められる女性を描き出す。
「ゼロ・アワー」は今年ジャパン・ソサエティーの招へいを受け北米5都市を回るツアーを敢行。
大きな話題を呼んだ。
(拍手)あっそうですか。
それはすごいうれしい事ですよね。
あっびっくりします?ここで笑うのかみたいな。
ここものすごく大事なシリアスなシーンなんだけどなみたいな。
でもその何か距離感っていうかかい離っていうのがまあ日本とアメリカの違いとも言えるし。
うん面白いですよ。
で日本の玉音放送のシーンとかあるんですよね。
それはうちの女性の俳優たちが玉音を言うんですけどね。
だけども例えば…意味分からなくっても音階だけですぐに分かる。
そうですね。
セミの音…声とか聞こえてきたら何かこう…何か終わった感。
そうですねそうですね。
8月の15日っていうのは…小さい時から学習して。
でも…そこの…っていうはやっぱり…そこの怖いっていうのがポイントですね。
こっちも何か分かってるつもりでお客さんも分かるだろうっていうふうに作ってたら誰も分かっていない。
当然だけど。
その反応を受けて変えた部分ってあります?演出の部分で。
変えてないです。
そこはね変えなくていいと思っていて。
これは何かね…お客さんと…やっぱりそれを観客というか見ている方たちにも求めてるというかそこで…確かに…いくらでも。
何かいくらでもやろうと思ってできるんだけども何かそれね…そうですね。
何かその歯止めがきかないのであろうなと思ってしまう。
だからもうそれはやらない。
でもこれですよ。
だから多分私はこの世の中に芸術がなかったら詞を書き続けていられないなと思うぐらい大切だなと思ってるんです。
なのでありがとうございます。
いえいえ。
やなぎが一青に見せたいものがあるという。
ここだけ…。
へえ〜何?あれ。
暗闇で怪しい光を放つのはやなぎがデザインした移動舞台車。
演劇やパフォーマンスを行うためのステージだという。
トレーラーを開くと…中から派手な電飾を施した舞台装置が現れる。
実はこの移動舞台車台湾発祥のもの。
台湾ではカラオケ大会から選挙活動まで幅広く使われ親しまれているらしい。
やなぎは去年ヨコハマトリエンナーレにこの舞台車を出展。
ポールダンサーによるパフォーマンスが披露された。
いや〜でもこれ格好いい!スパンコール!ひぇ〜!いや〜盛り上がる。
ここで歌いたい。
これはねあの…バブルを感じますよ。
ハハハッ…。
何じゃそら。
これ来てよかった。
すごいすごい。
何か屋台。
屋台のようなものとして…それはすごいうれしいエンターテインメントだな。
一青さん是非見に来て下さいませ。
はい。
できれば歌って下さいな。
是非ユニットで!はい!ハハハッ…。
台湾生まれの一青窈。
やなぎの舞台車がすっかり気に入った様子。
2015/05/09(土) 22:00〜23:00
NHKEテレ1大阪
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「一青窈×やなぎみわ」[字]
「ハナミズキ」など独特の世界観を創り出す歌手・一青窈と、世界的に知られる美術作家やなぎみわ。海中でも作詞?女性であることと作品の関係は?「情念系」の二人が激突!
詳細情報
番組内容
「もらい泣き」は、数学的なパズルのように作った?カバーして分かった美空ひばりの「あだっぽさ」の秘密は?一青が、驚異の作詞術、歌唱法について明かせば、やなぎも特殊メイクやCGを駆使して作り上げる「一度見たら忘れられない」女性像の由来を語る。「クラスで膝を抱えて泣く子のイタコでありたい」、「生身の人間に私の情念をぶつけたら窒息死させてしまう」等々、創作せずには生きられない女どうしの本音がぶつかりあう。
出演者
【出演】歌手…一青窈,演出家・美術作家…やなぎみわ,【語り】吉田羊,六角精児
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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