(荻野)あ〜あ。
おい吉田!これ!ホチキスの位置逆!
(ミサキ)あっ。
(荻野)毎度ながらやり直していただけませんかね?はいやっときます。
(荻野)出たよゆとり言葉が。
「承りました」だろ?あっ知らねえかこの日本語。
10回口に出して覚えてみ。
承りました承りました承りました承りました…。
(ミサキ)《こんなやつ末代まで呪われちゃえばいいんだ》あっ徹?今夜はどこに連れてってくれる…。
(徹)悪いミサキ。
急に仕事が入って会えないんだ。
また連絡する。
ホントごめん!
(不通音)
(ミサキ)んっ?
(ミサキ)「嫌な上司でお悩みのあなたへ…あなたの代わりに呪います」
(ミサキ)「呪web」?
(ワラニン)ウェルカムトゥー呪ウェブ!初めまして!僕わら人形のワラニン。
恨みつらみは僕にお任せ。
君の代わりにどんどん呪っちゃうよ。
何これ。
(ワラニン)呪いレベルは値段に応じてこのとおり5段階あるよ。
呪いたい人の名前を書いて料金を前払い。
発注ボタンをクリックしたら24時間以内に証拠としてその人が呪われた瞬間を動画で届けちゃうよ!ホントかな?でもまあ100円ぐらいならいっか。
部長の下の名前は…。
よし。
え〜い食らえ!
(ワラニン)承ったよ。
24時間以内に荻野仁志にプチ呪いをかけちゃうよ。
証拠動画楽しみにしててね!
(恭子)そういえばさ営業の徹さんとはうまくいってるの?それがさ最近全然会えてなくて。
(恭子)忙しいときほどミサキが支えなくちゃ。
ありがと恭子。
(メールの着信音)
(ミサキ)あっ。
ちょっとごめん。
うわあ!
(ミサキ)フフ。
(ミサキ)《すごい。
ホントだったんだ》
(荻野)あ〜もうこれから取引先に行かなきゃいけないっていうのにもう。
何だ吉田。
あっいえ。
私は別に。
(荻野)何へらへらしてんだよこのゆとりモンスターが!よし奮発だ。
(ワラニン)24時間以内に萩野仁志にスーパー呪いをかけちゃうよ。
(ミサキ)あれ?部長は?さあ。
部長が遅れるなんて珍しいね。
(メールの着信音)
(荻野のうめき声)・
(男性)大丈夫ですか?大丈夫ですか?
(荻野のうめき声)・
(恭子)はいロングウェルシステムでございます。
えっ部長がですか?
(恭子)分かりました。
お大事になさってください。
部長どうしたの?
(恭子)奥さまからの連絡で心筋梗塞で倒れて救急車で運ばれたって。
命に別条はないみたいだけどしばらく入院するみたい。
これで逮捕されたら帳消しになるよね。
あ〜でも今月ちょっと苦しいし。
(ワラニン)24時間以内に岡本淳にノーマル呪いを…。
神様これで許してください。
(アナウンサー)宅配業者を装い女性宅に侵入し女性を殺害した容疑で現在指名手配中の岡本淳容疑者が昨夜未明世田谷区の別のアパートに侵入しました。
警察が現場に駆け付けたところ岡本容疑者は窓から飛び降り逃走。
警察は現在行方を追っています。
(メールの着信音)・
(警察官)岡本!・
(警察官)動くな!
(警察官)待て岡本!・
(岡本の落ちた音)
(男性)だっ大丈夫ですか?
(徹)大丈夫ですか?
(男性)うっうわわっ。
(徹)あっ恭子ちゃん。
(ミサキ)5,000円だとこんなもんか。
んっ?
(男性)大丈夫ですか?
(徹)大丈夫ですか?
(ミサキ)徹?
(徹)あっ恭子ちゃん。
(ミサキ)恭子。
ねえニュース見た?連続殺人犯を警察が取り逃がしたって。
あっ!実は私帰りに偶然その現場に居合わせちゃったの。
あれ?恭子が使ってる駅ってもっと先だよね?あっ…あっ昨日はたまたまあの辺で友達と飲んでて。
(社員)河村ちょっといいかな?
(恭子)あっはい。
(ミサキのため息)
(徹)おうミサキ。
あしたさ飯でも…。
(ミサキ)昨日恭子と会ってたでしょ?
(徹)えっ?あっいやあの偶然…。
偶然?メールで誘ってたよね?あっいや…。
もういい。
(ため息)最低。
(ワラニン)24時間以内に河村恭子に超絶呪いをかけちゃうよ。
・
(徹)ミサキ!ミサキ。
(ミサキ)どうしたの?お前勝手に誤解して怒っちゃうからさ。
(徹)んっ。
えっ?
(徹)俺たち付き合ってあしたで2年だろ?結婚してください!あっ。
フフはい!フフフ。
(徹)やった!よっし!着けて。
カワイイ。
(徹)それ実は昨日恭子ちゃんに選ぶの手伝ってもらったんだ。
えっ?
(徹)黙っててごめん。
でもお前のこと驚かせたくてさ。
あっごめんちょっと。
(徹)えっ?
(ミサキ)えっ?どうしたんだよ。
どうしよう恭子。
(呼び出し音)あっおい!何で出ないの。
恭子!あっミサキ。
あっ。
(ミサキ)危ない!徹さんみたいなあんないい人なかなかいないよ。
ミサキがいなかったら私が狙ってたのにな〜。
えっ。
何て嘘。
よかったね。
おめでと。
・
(ケトルの鳴る音)
(ミサキ)ありがと。
・
(ケトルの鳴る音)・
(物音)
(恭子)熱っ!
(ミサキ)どうしたの?
(恭子)熱っ。
お湯掛かっちゃった。
驚かさないでよ。
(恭子)ごめんごめん。
あっでもまだ少し赤い。
角に薬局あったよね?私薬とガーゼ買ってくる。
(恭子)えっ大丈夫だよ?
(ミサキ)ただいま〜。
あれ?恭子?
(ミサキ)恭子。
(悲鳴)
(ミサキ)恭子。
恭子!
(メールの着信音)・
(チャイム)・
(男性)宅配便です。
お荷物お届けに参りました。
・
(物音)・
(恭子の悲鳴)・
(恭子の悲鳴)・
(恭子を刺した音)・
(恭子の悲鳴)
(ワラニン)24時間以内に吉田ミサキに超絶呪いをかけちゃうよ。
何で?
(アナウンサー)世界的な石油の産出量激減による影響が深刻化しています。
物価は高騰し失業率は戦後最悪に。
こちらのハローワークにも職を求める人があふれ返っています。
(湯元)お願いします!
(湯元)どんな仕事でもいいんです。
お願いします。
何回来ても一緒ですよ。
まあこのご時世ですし。
(ざわめき)
(職員)また停電かよ。
次の人どうぞ。
(男性)お願いします。
(湯元)《俺にも分かってる》《資格も特技もない人間が働ける世の中じゃないってことは》
(湯元のため息)
(湯元)「役立たず」か。
(湯元)あ〜。
もう…もう無理。
(湯元)危ねえな。
おわ〜!えっ?
(医師)これは石油ですね。
(湯元)えっ?石油?どっどういうことですか?
(医師)あっ…あっいや。
ちょっちょっと前で待っててもらえますか?
(湯元)俺の体どうなっちゃったんだよ。
・
(医師)あの人です!えっ?えっちょっと…。
えっ?あっちょっあの…ちょっとあっあの。
(湯元)あっちょっちょっと放してください。
何なんすか?急に。
あれ?ちょっとあっ…。
(湯元)ちょっ放してください!やめてください!誰か〜誰か…。
あ〜!
(湯元)研究所では何をされるんですか?すぐに帰れますよね?あっあの…。
(職員)おい!
(職員)熱っ!おっ熱っ!ああ!あっ。
うわ〜!
(職員)どうした?
(職員)あっ!あっ!
(湯元)違うんです!これはあの…。
(職員)おい!待てこら!
(湯元)あっ。
うわ〜!
(村長)ハハハあ〜気付いたか。
(湯元)あのあなたは?
(村長)わしはこの村の村長だ。
(澄子)これよかったらどうぞ。
(湯元の生つばを飲む音)
(せき)飯は逃げたりしねえぞ。
(澄子)飲んでください。
(湯元)すっかりお世話になってしまって。
(村長)困ったときはお互いさまだ。
(村長)皆井村は米どころとして有名だったんだが若い者は東京行っちまって村は老人ばかり。
燃料が高過ぎて頼みのトラクターも動かん。
みんな田んぼやるのを諦めちまった。
村はもうおしまいだ。
ちょっと待っててください。
(村長)なっ何してるんじゃ!
(湯元)では俺はこれで。
(村長)待ってくれ!
(湯元)えっ俺が課長ですか?
(村長)ここは君の部屋だ。
自由に使ってくれ。
(澄子)課長補佐の澄子です。
よろしくお願いします。
(湯元)でも仕事って何をすれば?えっ?
(村長)よくやった!
(笑い声)
(女性)まさか皆井村の地下から石油が湧き出てくるとはな。
(女性)うちの村だけは停電はねえし全部村長さんのおかげじゃ。
(澄子)本日のノルマ達成しました。
お疲れさまです。
(湯元)ありがとう。
・
(ドアの開く音)
(村長)毎日ご苦労さん。
この前相談していた件なんだけど。
(湯元)いや今だって1日100リットルですよ?正直これ以上は…。
村人たちは石油を待ってるんだ。
君を必要としてるんだ。
何とか頑張ります。
(澄子)あっ。
(湯元)うん?また停電か。
最近多いよね。
(湯元)んっ?
(湯元)村長俺のことだましてたんですか?何の話だ?
(湯元)石油が足りてないって言ってたのに。
しかも売約済みってどういうことですか!それはな…。
村人たちは石油が足りなくて困ってます!
(村長)お前はわしの言うことを黙って聞いてればいいんだ!
(村長)どこへ行くんだ?倉庫の石油を村人に配ります。
失礼します。
(副村長)捕まえろ。
(湯元)えっちょっ何ですか。
やめてください。
放してください。
澄ちゃん君も知ってたのか?
(村長)連れてけ。
(男性)おら行くぞ!
(湯元)放せ。
(湯元)くそ。
もうこれ以上お前らに石油は渡さない。
(副村長)痩せ我慢するとぼうこう炎になるぞ。
・
(鍵の掛かる音)・
(鍵の開く音)逃げましょう。
えっ?もう歩けない。
(湯元)つかまって。
(澄子)あったかい。
(湯元)村長はどうしてあんなこと?村長も最初は村の人たちを少しでも豊かにしようと石油を使っていました。
でもだんだん独り占めするようになってもう今ではすっかり。
俺のせいだ。
石油なんか出なければよかったんだ。
そんなことない!その力をみんなのために使ってください。
おしっこで世界を救ってください。
おしっこで世界を?あなたは選ばれた人なんです。
でも俺一人でできるかな。
私もいるわ。
・
(ドアの開く音)
(村長)逃げ切れると思ったか。
おとなしく村へ帰って石油を出すんだ。
村長もうやめましょう。
(村長)捕まえろ!
(3人)お〜!
(澄子)嫌だ!嫌だ!
(澄子の悲鳴)・
(塩崎)いや〜驚きましたな。
半年前消息不明になったという石油人間がまさか実際に存在するとは。
どうしてここに?フッ今よりその男を国の管理下に置く。
おとなしくわれわれに従えば悪いようにはしませんよ。
勝手なことを抜かすな!国の言うことなんか信用できん。
わしは石油を使ってわしの国をつくる。
皆井村を独立国家にするんだ!石油があれば何でもできる。
石油さえありゃ何だってできるんだよ。
狂ってる。
こんな村に何ができる?われわれはこの男の体を研究し人間油田による量産体制をつくり上げる。
そうすればわが国は最大の産油国となり世界をコントロールできるようになるんだ!
(村長)うるさい!わしの石油は渡さんぞ。
(塩崎)多少の犠牲は仕方ない。
やれ。
いいかげんにしてくれ!
(湯元)もううんざりだ!石油は人と人が醜い争いをするためのもんじゃない。
政治や金もうけの道具なんかでもない。
石油はみんなが幸せになるためにあるんだ!無駄な抵抗を。
何をする気だ。
これでも食らえ〜!
(塩崎)うわっ!
(村長)うわっ!
(湯元)あれ?おかしいな。
これでも…。
石油が枯渇した?枯渇?
(湯元)《結局俺の体は元に戻った》《皆井村もかつての静かな村に戻った》《石油は出なくなったがなぜか俺は村役場で相変わらず働いている》
(湯元)《大きく変わったのは》・
(澄子)あなた〜。
(湯元)んっ?
(澄子)あっどうも。
お弁当忘れたわよ。
(湯元)あ〜ごめんごめん。
(澄子)も〜気を付けてね。
(湯元)うん。
(村長)カワエエの〜。
お母さん似でよかったね。
(せき)も〜慌てないでよ。
(湯元)ごめんごめん。
(泣き声)
(澄子)あ〜どうしたどうした。
あ〜どうした。
おしめかな?替えようね〜。
よいしょ。
あいっ。
は〜い。
んっ。
も〜駄目でしょこんなとこでしちゃ。
まあまあ。
男の子は元気が一番。
あなた。
これは。
(乗務員)毛布はいかがですか?
(乗務員)毛布はいかがですか?毛布はいかがですか?
(子供)おじさんこの人?あっ?
(子供)エアギター世界一の人?いや違うよ。
(乗務員)毛布はいかがですか?
(水沢のうめき声)
(乗務員)毛布はいかがですか?
(玉緒)ちょっと大丈夫?どうなさいました?奥さま。
(乗務員)すみません。
お客さまの中にお医者さまはいらっしゃいませんか?お客さまの中にお医者さまはいらっしゃいませんか?お医者さまはいらっしゃいませんか?
(桐原)あの〜…。
私医者ですが…。
(乗客たち)お〜。
(乗務員)こちらにお願いいたします。
大丈夫ですか?軽い不整脈ですね。
力を抜いてゆっくり深呼吸してみましょう。
ひとまずこれで大丈夫です。
現地に着いたらすぐに病院に連れていってあげてください。
(玉緒)先生ありがとうございました。
あっいえ医師として当然のことをしたまでです。
(乗客たちの拍手)
(桐原)《実は私は医者ではない》《ただの医大生だ》《医者になったら言われたい言葉第3位》《「この中にお医者さまはいらっしゃいませんか」につい反応して立ち上がってしまったのだ》《高校卒業後社会人1年目の夏…》《あなたは命の恩人です》《ありがとうございます。
あなたは命の恩人です》《医師として当然のことをしたまでです》
(桐原)《医療ドラマの外科医に憧れ私は会社を辞めた》《そして3年間の猛勉強の末私立医大に合格》《医大というのはとにかく金が掛かる》《バイトで稼いだ金では足らず両親にも恋人にも多大な借金をした》《そして何とか6年間の課程を終え医師免許取得試験に臨んだ》《借金まみれの私にとってその試験は最初で最後のチャンスだった》《しかし…》《それから私は恋人の前から姿を消し自らの死に場所を探す旅に出た》《両親そして彼女に借りた金を返すには命を代償にした保険金に頼るしかなかった》《生への未練は断ち切ったはずなのに医者への未練がまだ残っていたのか》《自分を医者と偽るなんて…》
(乗務員)すみませんお客さま先ほどのお客さまの容体が…。
(桐原)《えっ?》《私は医者ではないが処置は間違っていなかったはず》
(玉緒)あの先生これ…。
この人のかばんに…。
(桐原)「虚血性心疾患」?
(乗務員)えっ?
(桐原)あっああ。
冠動脈の閉塞などが原因で血流が悪くなり心臓に障害が起こる症状です。
(桐原)さらに胸に水がたまってる可能性が高い。
(玉緒)どうすれば?
(桐原)すぐにでもドレナージする必要があります。
(玉緒)お願いします!
(桐原)えっ?
(桐原)《無理だ。
確かにドレナージに関しては嫌というほど勉強した。
しかしオペをするのも実際にその症状を見るのも初めて》《偽者の私が執刀できるわけがない》《かといって医者じゃないと言える状況でもない》先生。
私一人では無理です。
麻酔医と看護師がいないことには…。
(乗務員)すみません。
お客さまの中に麻酔医さんいらっしゃいませんか?
(増井)はい。
(乗客たち)えっ?
(乗務員)お客さまに看護師さんいらっしゃいませんか?
(原田)は〜い。
(乗客たち)えっ?
(乗務員)麻酔医さんと看護師さんいらっしゃいました。
(桐原)《いたのか…》こちらの方は虚血性心疾患と診断が出ています。
この状態だと今すぐ胸腔ドレナージをして胸水を抜く必要があります。
胸腔ドレナージ?ご経験は?
(増井)いえ。
でもバイパスなら少し…。
(桐原)バイパス…。
私は一度も。
(桐原)あっ…。
ふっ普段はどのような?一応1日に30人以上の方を…。
(桐原)30人…。
あっ経験は申し分ありませんね。
(原田)《実は私は看護師ではない》《錦糸町のコスプレパブフィーバーtheナイトで働くただのホステスだ》・
(店員)《看護師さんご指名で〜す!》
(原田)《は〜い》
(原田)《店で看護師を担当してるばっかりについ体が反応してしまった》《1日30人以上を接客してることに間違いはないがこんな大変な手術に関わるなんて…》《しかしいまさら本物じゃないと言いだせる空気でもない》
(増井)《実は私は麻酔医ではない》《普段は出版社で働いているただの漫画編集者…》
(編集者)《おっ増井》《今回の企画も没な》
(増井)《はい》
(増井)《ただの増井だ》《「麻酔医さんはいませんか」と聞かれ名前を呼ばれたと思ったのが運の尽き》《いまさら引き返せない状況に追い込まれてしまった》《唯一の救いは唯一ヒットした漫画が医療物ということだけ》《まあお医者さんがいるなら何とかなるか》
(桐原)《麻酔医そして看護師》《ここまで人材が揃ったということは私に執刀しろということなのか?》《いや無理だ》難しい手術です。
器具と設備がないこの状況では不可能だ。
今すぐ成田に引き返してください。
(乗務員)成田に…分かりました。
機長に伝えます。
(桐原)《これでいい私の判断は間違っていない》
(高野)ちょっと待て。
日本に戻るのか?
(乗務員)ええ。
(乗客たち)えっ?
(高野)ふざけるなよ。
とっととハワイに向かえ!ナイフ…。
(男性)あっ…ハイジャックだ!
(乗客たちの悲鳴)
(桐原)《何でこんなときに》
(水沢のうめき声)
(乗務員)落ち着いてくださいお客さま。
うるせえ。
(乗務員)そのナイフをこちらに。
やめろって…。
(高野)《実はこれはナイフではない》《ただの飛行機のおもちゃの羽だ》《私はただの会社員》《仕事に追われ20年間休みなく働いてきた》《そして申請を出し続けてようやく手に入れた4日間の休暇》《人生初の海外》《貯金をはたいた豪華旅行を台無しにされるわけにはいかないのだ》
(高野)ハワイに向かえ!さもないとこの乗務員の命はないからな!
(乗務員)《実は私は乗務員ではない》《革命集団銀の月のリーダーだ》《出発直前に乗務員とすり替わり綿密なハイジャック計画を進めていたのに》
(乗務員)《実は私も乗務員ではない》《ただの革命集団銀の月の一員だ》《団員になってまだ3カ月》《正直自らの手でハイジャックをするということには抵抗があった》《だから今別の人間がハイジャックを行ってちょっとだけほっとしている》機長…。
(機長)ハイジャックだと?《実は私は機長ではない》《ただの乗務員だ》《女性乗務員ばかりをひいきする機長に気に入られようと自家製ハーブティーを差し入れたのが失敗だった》《本物の機長そして一緒に飲んでしまった副機長が食中毒で動けなくなってしまっている》《こんなこと誰にも話せるわけがない》《かといって無事に着陸させる自信もない》
(一同の悲鳴)
(水沢のうめき声)
(玉緒)あなた!先生何とかなりませんか?
(桐原)器具がない以上私にはどうすることも…。
(増井)《そうだ》
(原田)《そうよ》あの…。
器具ならありますよ。
(桐原)えっ?飛行機のギャレーには必ずドクターズキットが装備されてるはずです。
(女)ちょっと見てみます。
(子供)ねえエアギターやんないの?エアギターの人。
(男性)《私はエアギターの人ではない》《ただの医者だ》《ドレナージの経験もある》《が前回のオペで私のミスが患者の命を奪い「最低の医者」とののしられた》《それ以来メスが握れない》
(女)これですかね?
(桐原)《あるのか…》《手術に必要な人材と器具が揃ってしまった》《何という神のいたずら》《私にオペをしろというのか》先生この人を…この人を救ってあげてください。
(桐原)《あっ!この言葉は医者になって言われたかった言葉第2位》先生…。
(増井)《断れ》
(原田)《断って》
(桐原)《人生でここまで人に期待されたことがあっただろうか…》あっ…。
奥さんやれるだけのことはやってみましょう。
じゃあ上着脱がしますね。
(玉緒)ありがとうございます。
(女)よかったですね奥さん。
(玉緒)はい。
(玉緒)《実は私は奥さんではない》《ただの孤独な旅行者だ》《そのせいで隣に座ったこの方と必要以上に打ち解けてしまい周囲に奥さんと勘違いされた》《ただ「奥さん」と呼ばれるのは30年来の夢》《正直悪い気分じゃない》現在の時刻は1時30分。
ただ今より手術を始めます。
メス。
(時計)《実は私は時計ではない》《ただの温湿度計だ》《今の気温は24度》《そして湿度は40%》《機内はとても快適な環境にあることは間違いない》
(乗務員)まずいよこれまずい雲だよな…。
《んっ?待てよ》ちょっと失礼します。
1つだけ確認させてください。
(医師)はい?
(桐原)どうしてドクターズキットのことを知っていたんですか?
(医師)えっ…。
あなたはもしかして…。
(医師)いえ私は…。
この人はエアギター世界一の人だよ。
エアギター世界一の人?そう…そうです。
私はエアギター世界一の人です。
(桐原)そうですか…。
(桐原)《医者だったら代わりにやってもらおうと思ったのに》やっぱりそうじゃん!見せてよエアギター!
(高野)そこのがき静かにしろ!だってエアギター世界一の人なのにエアギターやってくれないんだもん!だから違うんだよ。
(高野)違うのか?
(医師)いや…違いません。
じゃあやってみろ。
(医師)え〜。
やった!
(高野)機内にロックをかけろ。
オペの邪魔にはならないですか?
(桐原)大丈夫です。
(桐原)《少しでも私への注目度が減るに越したことはない》・
(『HighwayStar』)
(女性)偽者じゃん。
(男性)偽者だろ。
(男性)偽者に決まってんだろ。
(男性)よくやるよな。
(女性)偽者じゃない。
(男性)やっぱ偽者でしょ。
(男性)偽者のくせに。
(男性)偽者じゃねえ?私にはできない。
(玉緒)えっ?私は…。
実は医者じゃ…。
偽者なんかじゃないよ。
おじさんやっぱり世界一じゃん。
すごいカッコ良かったよ。
(拍手)
(一同の拍手)オペを…続行します。
(一同の拍手)
(桐原)《思い出すんだ》《医者になるために猛勉強した日々を》
(桐原)オピオイドを上げてください。
はい。
(増井)《思い出せ》《医療漫画に打ち込んだあの日々を》汗。
(原田)はい。
(原田)《客のセクハラをかわすのと比べたらこれくらい》
(高野)こんなんでホントにハワイに行けんのか!?
(男)お客さま席に着いてシートベルトを…。
(高野)うるせえ!そう言って捕まえるつもりなんだろ。
(女)お客さまあなたがハイジャック犯であろうがお客さまを安全に送り届けるそれがわれわれ乗務員の使命なんです!うわっ!
(高野のうめき声)
(男)皆さまもシートベルトをお締めください。
(乗客たちの拍手)
(玉緒)あなた頑張って!一緒にハワイの夕日見ようって約束したじゃない!あなた!現在の時刻は?
(原田)2時25分です。
(温湿度計)《30度30%だ》急ぎましょう。
(原田)はい。
(乗務員)おら来いよ乱気流。
偽者の力見せてやる!先生。
先生。
(一同)先生。
手術は…成功です。
(一同の拍手)
(玉緒)先生ありがとうございました。
(桐原)あっいえ…医師として当然のことをしたまでです。
(乗務員)皆さま当機は着陸態勢に入りました。
(男)座席を元に戻してシートベルトをしっかりとお締めください。
(女)いま一度ご確認ください。
(桐原)《とは言ったが手術が成功したかどうかよく分からない》《一命を取り留めたのでそれに越したことはないのだが》
(水沢)《実は私はただの虚血性心疾患患者ではない》《同時に肺気胸を起こしていた》《しかしなぜか胸腔ドレナージで肺の空気を抜いてくれた彼は奇跡の医師といえるだろう》
(女)当機は現地時間8時54分ホノルル空港に着陸いたしました。
現地の天候は晴れ気温は31度。
楽しいハワイの旅をお過ごしください。
・
(玉緒)先生!先生待ってください!先生!
(玉緒)この人が一言お礼を言いたいと。
(桐原)えっ?
(水沢)あなたは命の恩人です。
あなたは命の恩人です。
はっ…。
(玉緒)失礼します。
(桐原)《今のが医者になって言われたかった言葉第1位》《私は偽者ながらベスト3をコンプリートしたのだ》《これで思い残すことなくこの世を去ることができる》
(一同の悲鳴)
(強盗犯)Hey!
(桐原)《もちろん私は刑事ではない》
(副島のうめき声)
(副島)三恵…どうして?
(三恵)あなたに死んでもらいたいからに決まってるでしょ。
(三恵)
「理想の夫婦」人は私たちのことをそう呼ぶ
(副島)《結婚1年目だから1本》《いつかバラでいっぱいにしような》
(三恵)《あなた…》
だが夫は気付かなかった
その過剰なまでの愛情が次第に私に息苦しさを感じさせていたことを
(副島)《君に永遠の愛を誓って》《死ぬまで僕たちは一つだ》
いつしか私は夫のささいな挙動一つ一つに嫌悪を覚えるようになった
(副島)三恵。
そして殺意が生まれた
私の中に芽生えた殺意は日に日にその大きさを増し…
そして…
今日私は夫を殺した
ちょっとごめんなさい。
(アラーム音)あああなた?そうなの今盛り上がってるところ。
今夜は遅くなりそうだから先に休んでね。
(女性)旦那さん?
(三恵)そうなの。
今帰ったところだって。
相変わらず仲がいいのね。
うらやましいわ。
(5人の笑い声)
(5人の笑い声)
アリバイは完璧だ
私は被害者
夫の悲惨な姿を発見した哀れな人妻
(せきばらい)
(三恵)キャ〜。
(三恵)《ない!》
(三恵)《どうして?》・
(物音)・・
(樫尾)副島圭介さまのお宅でございますか。
夜分に申し訳ありません。
未来生命の樫尾と申します。
またご連絡させていただきます。
(副島)おかえり。
(三恵の悲鳴)フッ何だよそんなに驚くことないだろう?飲み会どうだった?僕に遠慮せずにもっとゆっくりしてくればよかったのに。
何で…。
(副島)あっこれ?帰ってきたらいきなりがつんと。
どうやら泥棒に入られちゃったみたい。
泥棒…。
(副島)心配ないって。
ホント大丈夫だよ。
(三恵)けっけっ警察は?うん?必要ないって。
見たところ取られた物もないし。
犯人の顔は?見てないの?
(副島)あっ覚えてないなあ。
何か殴られた拍子に記憶が飛んじゃったみたいでさ。
それより君大丈夫?えっ?何か顔色良くないから。
ちょっと疲れただけ…。
なら早く休んだ方がいいよ。
お風呂沸かしといたから。
あり得ない
あれだけ殴られたのに生きてるなんて
だけどこのぬくもりは本物だ…
ということは単に私がやり損ねたということか?
しぶとい男
しかし本当に私に襲われたことを覚えてないのだろうか
それとも…
(副島)三恵。
(三恵)はっはい。
コーヒーお代わり。
(三恵)あっ。
はい。
いずれにしろこれでやめるわけにはいかない
最後までやり抜くのだ
何があっても
自分が壊れる前に
(あくび)・
(樫尾のメッセージ)「たびたび申し訳ありません」「私未来生命の樫尾と申します」「いつもご利用ありがとうございます」「再生保険の手続きが完了いたしました」「お留守のようですのでまたあらためてご連絡いたします」再生保険?《「未来生命」?》
(樫尾)お待たせいたしました。
私未来生命の樫尾と申します。
何でも当社の保険に興味をお持ちとか…。
(三恵)あっ実はこれについて伺いたくて…。
(樫尾)こちらの商品ですか。
でしたらどうぞ奥へ。
(樫尾)再生保険というのは簡単に言えば富裕層の方々を対象としたこれまでにない画期的な商品です。
というと?
(樫尾)通常の生命保険ですと被保険者ご本人さまが死亡した場合金銭によりご遺族などに補償がなされるわけですが再生保険というのは死亡した被保険者ご本人さまを再生することにより補償するというものなんです。
本人を再生?どういうことですか?いわゆるクローンです。
あらかじめ契約者さまの記憶を当社のハードディスクにコピーしておき契約者さまが亡くなった場合契約者さまの体細胞から高速培養したクローンにそのデータをダウンロードする。
つまり遺伝子的にも内面的にもこれまでと変わらないご本人が再生されるわけです。
もしものときは元のお体と速やかに交換させていただきます。
つまり死んでも生き返る?はい。
愛する者の死は残されたご遺族に深い悲しみを与えます。
たとえどんなに多額のお金を残してもご遺族を悲しみから救ってあげることはできません。
特に愛し合う伴侶の場合その悲しみはいかほどのものか。
しかし再生保険に入っておけば愛する者をその悲しみから救ってあげることができるのです。
(副島)《ホントに僕でいいの?こんなおじさんでも?》《あなたじゃなければ駄目なの》
(三恵)いっ…。
(泣き声)・
(ドアの開く音)・
(副島)ただいま。
おいどうしたんだよ。
(三恵)あなたごめんなさい。
ホントにごめんなさい。
(副島)んっ?
(三恵)あなた私告白したいことがあるの。
(副島)んっ?私今までいい奥さんじゃなかった。
あなたがいなくなればいいあなたなんか死んでしまえばいいって思ったこともあったわ。
フッバカねこんなに愛されてるのに。
だからこれからはたくさん努力してあなたにふさわしい奥さんになる。
約束するわ。
三恵。
(メールの着信音)ごめんちょっとタイム。
もう。
(副島)仕事のメールかもしれない。
悪い知らせ?これどういうことだ?えっ?
(副島)とぼけるな。
君が浮気してるのを僕は知らないとでも思ったか?あっ…。
(副島)正直に答えろ!僕は君に全てを与えてきた。
君が欲しいというものなら何でも買ってやった。
服もバッグも宝石も。
なのになぜだ?違うの違うのこれは…。
僕にふさわしい妻になるだと?こんなことしてよく言えるな。
どうせ口先だけの出任せなんだろ?ええ!そうなんだろ!?今まで僕がどれだけ君を愛したと思ってるんだ!それなのに君という女は…。
聞いて!
(副島)黙れ!聞いてあなた…あ〜!
(副島)僕がこんなにも愛してるのに…こんなにも…。
(うめき声)
(副島)愛してるのに…。
愛して…。
三恵…。
三恵…三恵…。
そんな…そんな…どうして…。
すまない三恵…。
三恵…。
三恵〜!・
(パイプオルガンの演奏)このたびはどうも…。
(三恵)いえ…。
しかしまさか副島さまが自殺されるとは…。
副島さまには契約の際何度も申し上げたんですが。
自ら命を絶たれた場合再生保険は適用されないと。
独占欲の強いあの男が前々から私のことを探偵に尾行させていたことは知っていた
だから…
(シャッター音)
その後あの男がどんな行動に出るか
それは手に取るように分かった
なぜなら長年連れ添った夫婦だから
とにかく今後とも再生保険をよろしくお願いします。
こうして私は蘇り新たな人生を始めた
あの男のいない人生を…
(笑い声)
(相川)あっいえいえ1人で大丈夫です。
ええ夏休みの日直なんてそんな大してやることありませんから。
あっそれより高梨先生。
あの夏の風邪っていうのはたちが悪いっていいますからね。
(相川)はい。
はいじゃあお大事に。
はい。
よし。
誰もおらんしええよね。
・
(相川)んっ。
はいもしもし若葉南小学校です。
・
(千紗子)あのこの春そちらで実習をお世話になった小谷と申しますが…。
(相川)ああ小谷さん。
久しぶり。
・ひょっとして相川先生?
(相川)うんそうやで。
・よかった〜。
教頭先生が出たらどうしようかと思った。
フフ。
で今日はどうした?・あっ実は実習終わったときに忘れ物しちゃって。
今からそちらに伺ってもいいですか?ああ別にええけど。
あっ。
・相川先生?いやいやあの…ちょうどさ暇やったから。
じゃあ待ってるわ。
・あっ今駅前ですから差し入れ買ってきますね。
はい。
あ〜!
(相川)よいしょ。
(千紗子)お久しぶりです。
は〜い差し入れのチーズケーキ。
あれ?私何か変なこと言いました?えっ小谷さん駅前にいたんやろ?やけに早くない?大丈夫ですか?暑さのせいで相川先生時間の感覚おかしくなってません?いやでも…。
あれ?先生今日は1人で日直ですか?ああ。
あっ…。
(千紗子)あっ。
コーヒーと紅茶どっちにします?じゃあコーヒーで。
(千紗子)コーヒー。
はい。
あれ?どうやって入った?
(千紗子)えっ?
(相川)いや正門閉まってたやろ?
(千紗子)いいえ。
開いてましたけど。
(相川)ちょっと見てくるわ。
(千紗子)鍵なら大丈夫ですよ。
それよりケーキ。
(相川)うん。
でも最近何かと物騒やから。
確認しとかないと。
だから言ったじゃないですか。
私が閉めたって。
ほら早く戻ってケーキ食べましょ?一応中も調べとこう。
(千紗子)変わってないなあ。
たった2カ月前だけど懐かしい。
(相川)懐かしいも何も学校なんてどこも同じようなもんやろ。
そんなことありませんよ。
私の通ってた学校とこことじゃ全然感じが違いますもん。
あっ。
あめなめます?
(相川)おっサンキュー。
で忘れ物って?ええ。
ちょっと…。
(千紗子)人けのない校舎って何か雰囲気ありますよね。
(相川)おいおいお化け屋敷みたいに言うなよ。
(千紗子)だって噂話じゃこの学校で昔生徒の1人が亡くなったって。
君この学校に伝わる怪談知ってる?えっ?
(相川)階段の花子さん。
この学校の花子さんは階段にすんでる。
ええそれなら。
でも普通花子さんっていったらトイレが定番じゃないですか?それが階段って…。
何か意味でもあるんですか?
(相川)昔なこの学校の女子生徒が音楽室の窓から飛び降りて自殺したらしい。
原因はピアニストを目指してたのに手をケガしてピアノが弾けなくなったとかクラスでいじめに遭っていたとか。
ひょっとしてその子の霊が?でもだとしたらどうして音楽室じゃなく…。
その事件の後校舎が改築されたんやって。
そして昔音楽室のあった場所が…。
まさか…。
(相川)今の階段の場所や。
(千紗子)やだ相川先生。
そんな話をして私を怖がらせる気ですか?今は昼ですよ?
(相川)何やねん。
もうちょっと怖がってくれてもええやろ〜?
(千紗子のため息)
(千紗子)どうかしました?あっいや…別に。
(千紗子)階段の花子さん…。
(相川)んっ?
(千紗子)先生。
階段の花子さんについてどの程度知ってます?この学校の花子さんは階段にすんでいる。
他には?
(相川)他は…。
花子さんからもらった食べ物を決して口にしてはいけない。
花子さんにされた質問に嘘をついてはいけない。
禁止事項ですね。
他は?
(相川)う〜ん…。
花子さんに会いたければ階段を奇麗にすること。
花子さんにお願い事をするときは彼女の望むものを与える…みたいなやつもあったかな。
で生徒たちの話によるとその決め事を破ったときにはペナルティーがあるらしい。
ペナルティーって?それは…。
・
(物音)いっ今の音…。
相川先生?
(千紗子)先生?
(相川)シッ。
・
(水音)おい!誰かいんのか?
(水音)青井さゆりちゃん…。
相川先生。
さゆりちゃんどうしてあんなことになっちゃったんでしょうか。
分からん。
さゆりちゃんはホントに事故死だったんでしょうか。
(千紗子)さゆりちゃんの遺体が発見されたのは春に遠足で行った渓谷だったんですよね?
(相川)ああそうやった。
(千紗子)おかしいと思いませんか?あそこ足を滑らせて落ちるような場所だとは思えません。
君は彼女が自殺したと…そう言いたいんか?
(千紗子)クラスのみんなが何となくあの子を仲間外れにしようとしているのは分かっていました。
だけど…私気付かなかった。
さゆりちゃんの抱えてる家庭の事情にも…。
それを言うなら…俺の責任や。
ホンマやったら俺が一番最初に気付いてやらなあかんかった。
いまだに信じられへんよ。
あの子がもうどこにもおらんなんて。
(千紗子)ごめんなさい。
私相川先生を責めるつもりじゃ…。
いいよ。
分かってる。
それより忘れ物は?どこにあんの?
(千紗子)あっ音楽室です。
(相川)相変わらずやな。
相川先生。
でも私やっぱり納得できないんです。
何が?あの日どうしてさゆりちゃんは「学校に行ってきます」なんて書き置きを残したんでしょうか。
だからその話は…。
(千紗子)警察は初め遺体からお気に入りの髪留めが片方なくなっていることから変質者の犯行だと考えた。
でもそのうちその書き置きはさゆりちゃんの母親が虐待を隠すために事故死に偽装したものだと疑った。
(相川)母親があんまりにもひど過ぎるよあれは。
(千紗子)だけど筆跡鑑定の結果あの書き置きは本人が書いたものであることが確認された。
だったらどうしてさゆりちゃんは「学校に行く」なんて書き置きを残しながらあの渓谷で死んだんでしょう?
(相川)真相は分からへんよ今となっては。
ここでいくら考えたところで…。
(千紗子)あっあった。
それが忘れ物?
(相川)その髪留め…。
(千紗子)そう。
青井さゆりちゃんのです。
何で君が持ってんの?ひょっとして…。
くれたんです。
私がこの髪留めを見て「カワイイね」って言ったから。
信じられませんか?先生…私が殺したと思ってます?あっいやそれは…。
実は私仲が良かったんですさゆりちゃんと。
放課後あの子が居残り掃除しているのをたまたま見掛けて声を掛けたんです。
(千紗子)《青井さゆりちゃんだよね?》《どうして1人で掃除してるの?》
(さゆり)《私のこと知ってるの?》
(千紗子)《うん》
(千紗子)それがきっかけで少しずつ話をするようになったんです。
そんなある日さゆりちゃんが腕を押さえていたんです。
掃除をしながらかばうように。
(相川)それってもしかして…。
(千紗子)見せてくれって頼みました。
さゆりちゃんは嫌がってたけど。
服をめくると棒でたたかれたような傷が…。
(相川)それは俺も警察から聞いてる。
母親から日常的に虐待を受けていた疑いがあるって…。
(千紗子)それは考えられません。
だってさゆりちゃんお母さん大好きだったんですよ。
一度放課後にお母さんが迎えに来たことがあったんですけどさゆりちゃんホントにうれしそうに手をつないで帰っていきました。
だったら誰がやったっていうんや?さあ。
あの子何も言いませんでしたから。
何も教えてくれなかった。
(千紗子)ひょっとしたらさゆりちゃん書き置きどおりあの日学校に来てたんじゃないでしょうか。
誰かに会うために。
誰かって?あの子には仲のいい友達なんていなかった。
君が言うたことやぞ。
(千紗子)別に…友達とは限らないでしょう。
さっきさゆりちゃんの体には棒のような物で打たれた傷があったと言いましたけどでもホントはもっと細い物で付けられた傷なんじゃないかって思うんです。
例えば…。
今先生が持っているこれみたいな。
いつの間にこれが…。
(千紗子)相川先生さゆりちゃんの相談によく乗ってあげてたそうですね。
さゆりちゃんから聞きましたよ。
(千紗子)先生さゆりちゃんは友達が欲しかったんじゃないでしょうか。
先生みたいに何でも話し相手になってくれる友達が。
何の話や?
(千紗子)だからさゆりちゃんは居残りまでして一生懸命階段を掃除していた。
何を言うてんねや?今日の君少しおかしいぞ。
この学校の花子さんです。
花子さんに会いたければ階段を奇麗にすること。
さゆりちゃんは花子さんと友達になりたかったんじゃ…。
バカバカしい。
現実に起こったこととくだらん怪談話と一緒にせんといてくれ。
青井さゆりから何聞いたか知らんけどな言い掛かりや。
さゆりちゃんからは何も聞いてません。
だったら小谷君君は何が言いたい。
さゆりちゃん…。
本当は殺されたんです。
ここで。
(千紗子)そしてあの渓谷まで運ばれた。
(相川)まるで見てきたように言うんやな。
(千紗子)ええ見てましたよ全部。
(千紗子)私全部見てたんですここから。
携帯…鳴ってますよ。
ああ。
(千紗子)どうかしました?君携帯は?
(千紗子)携帯?ああ…。
バッグに入ってますけど。
出なくていいんですか?
(千紗子)あっ小谷です。
すいません相川先生。
ケーキ買うのに手間取っちゃって。
今からバスに乗りますから。
先生?相川先生?聞こえてますか?
(通話の切れる音)君は…誰や?はい?
(笑い声)何がおかしい?だってそんなの知ってるじゃないですか。
だから会いに来てあげたんですよ。
フフ。
私があげたあめもう食べました?あめ?あっ…。
(笑い声)《差し入れのチーズケーキ》《あめなめます?》
(女の子)《花子さんからもらった食べ物は決して口にしてはいけない》
(相川)あっ…。
きっ君は…。
まさか君が?
(花子)さゆりちゃんこれをくれたの。
《カワイイねその髪留め》《だったら…》
(花子)《えっ?何?》《あげる》
(花子)《ありがとう》
(女の子)《花子さんにお願い事をするときは彼女の望むものを与える》私が欲しいものをくれた。
だから何かしてあげなきゃいけなかったのにそれを聞く前にいなくなったの。
私見てたの。
(相川)うるさい。
(花子)さゆりちゃんは逃げていた。
相川先生から必死になって。
(相川)やめろ!さゆりちゃんはあなたのことを心から慕っていた。
だけどあなたはそんな従順なさゆりちゃんに対して心の中に抱える自分の鬱積した思いを八つ当たりした。
さゆりちゃんには信じられる友達もいない。
頼れる人間もいない。
あなたはさゆりちゃんに向ける衝動をどんどんエスカレートさせていった。
そしてとうとうあの日…。
(相川)《ああもう泣いてたって始まらへんやろ》《いじめられんのには君の方にも何か原因があんのちゃうんか?》《何とか言いなさい!》《先生はな君のためを思って言うてんねや!》《泣いてるだけじゃ分からんやろ!》
(さゆりの泣き声)
(相川)《おい青井!》
(さゆりの泣き声)
(さゆり)《あっ!》
(相川)俺は悪くない!俺はただあの子のためを思ってやっただけなんや。
なあ分かるやろ?分かるやろ!?花子さんなんて存在しない?花子さんなんて呼び出したことない?だけどあなたさゆりちゃんの血が流れた床を元通り奇麗になるように磨いてくれた。
心の底から一生懸命に。
(女の子)《花子さんに会いたければ階段を奇麗にすること》違う。
そうじゃない。
やめろ。
ねえ私がさっき聞いたこと覚えてる?何て答えた?《さゆりちゃんどうしてあんなことになっちゃったんでしょうか》《分からん》本当にそうならいいの。
それが嘘でないのなら。
だけどもし…。
(相川)黙れ!全部でたらめや。
俺はなあの子のために一生懸命やったんや!本当にそう言い切れる?
(花子の笑い声)あっ…。
(花子の笑い声)
(女の子)《花子さんに聞かれた質問に嘘をついてはいけない》分かった。
答えを変える。
知ってる。
何であんなことになったのか知ってる。
(相川)《待ちなさい!おとなしくしなさい!》《待ちなさい!》青井さゆりは俺が殺した。
(花子)あ〜あ言っちゃった…。
あ〜!
(相川)《嘘や。
こんなことあるはずない》《俺は夢を見てるんや》これは…。
(相川)《花子さんの罰は…》
(女の子)《花子さんの罰は無限階段》
(叫び声)2015/05/09(土) 09:55〜11:45
関西テレビ1
世にも奇妙な物語 ’13春の特別編[再][字]【AIRドクター小栗旬/不死身の夫檀れい】
未だ見ぬ戦慄と恐怖の問題作をあなたに!▽AIRドクター×小栗旬▽不死身の夫×檀れい▽石油が出た×丸山隆平▽呪web×佐々木希▽階段の花子×徳井義実
詳細情報
番組内容
『AIRドクター』
桐原亨(小栗旬)は飛行機に乗っていると、客室乗務員が「お客さまの中にお医者さまはいらっしゃいませんか?」と客席に呼びかける。桐原は、すっと立ち上がり「私、医者ですが…」と告げる…。
『不死身の夫』
副島三恵(檀れい)は夫・圭介(尾美としのり)との結婚生活に嫌気がさしていた。ある晩、強盗の仕業に偽装工作し、夫を殺害。しかし、三恵が帰宅するとリビングにあるはずの夫の死体が消え
番組内容2
ていた…。
『石油が出た』
世界的な大不況。無職の湯元義弘(丸山隆平)はハローワークからの帰り道で尿意を催す。トイレに駆け込むが、運悪く“使用禁止”。慌てて近くにあった、たき火に放尿すると、火が激しく燃え上がった。尿に異変を感じた湯元が、病院で検査をすると…。
『呪web』
会社で上司に叱られてばかりのOL・吉田ミサキ(佐々木希)は、営業部の山下徹(田中幸太朗)と社内恋愛をしていたのだが、
番組内容3
最近、彼の態度が冷たくなっていた。仕事も恋愛もうまくいかないミサキ。ある夜、パソコンを開くと…。
『階段の花子』
小学校教師の相川英樹(徳井義実)は、夏休みの職員室で日直を担当していた。そこに2カ月前まで教育実習に来ていた大学生・小谷チサ子(大政絢)から電話がかかってくる。ほどなくして、職員室までやってきたチサ子。正門のカギを施錠して誰も入ってこれないはずと思っていた相川は校内を見回ることに。
出演者
【ストーリーテラー】
タモリ
【出演者】
『AIRドクター』
小栗旬
相島一之
原幹恵
他
『不死身の夫』
檀れい
尾美としのり
他
『石油が出た』
丸山隆平(関ジャニ∞)
有村架純
他
『呪web』
佐々木希
他
『階段の花子』
徳井義実(チュートリアル)
大政絢
他
スタッフ
【編成企画】成田一樹 水野綾子 加藤達也
【『AIRドクター』原作】小田扉「もどき」(講談社「モーニング」KC「前夜祭」所載)
【『階段の花子』原作】辻村深月「踊り場の花子」(「ふちなしのかがみ」角川文庫収録)
【プロデューサー】永井麗子 川西琢
【アソシエイトプロデューサー】岩田祐二
【演出】鈴木雅之 石川淳一 植田泰史 松木創 木下高男
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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