遺留捜査3 2015.05.08


(長峰妙子)お嬢様朝食はどうなさいますか?
(ノック)お嬢様!お嬢様…。
はっ!
(悲鳴)
(水沢響子)お疲れさまです。
ご苦労さまです。
(森田宗介)ご苦労さま。
ご苦労さまです。
状況は?
(横山恵一)どうやら鋭利なもので背中を刺されたようです。
(鑑識)硬直強。
(森田)第一発見者は?この家の家政婦です。
今仙さんが事情を聞いてます。
(九条美紀)この人が娘が殺されてるって部屋に飛び込んで来て…。
(妙子)美千代お嬢様の白衣を着ていたのでつい見間違えてしまって…。
(仙堂卓巳)じゃああの被害者は…?
(美紀)娘のアシスタントです。
名前は峰岸百合子。
(仙堂)ちなみに娘さんは今どちらに?それが…。
倒れたまんまの状況だな。
争った形跡なし。
ここが入りだな。
当て痕は?
(鑑識)なし。
(遠山修介)お疲れさまです。
ああ。
うわあすごいアトリエね。
(森田)九条ってのは有名なのか?
(遠山)ええ。
今はもう亡くなってますが九条実篤といえば日本を代表する画家です。
娘の九条美千代も父親の名に恥じない素晴らしい画家ですよ。
(仙堂)課長。
ん?被害者は九条美千代さんのアシスタントでした。
来月開かれる個展の準備のためにアトリエに泊まり込んでいたそうです。
でこの九条美千代さんとは話は出来たの?それが昨夜から出かけたまま戻ってきてないんです。
え?ゲソ痕は?まだ出ません。
(鑑識)おいこっち当てろ。

(横山)被害者は背中を一突きされてますが凶器はまだ発見されてません。
(遠山)死亡推定時刻は今日の0時から3時の間。
犯人はガラスを割って侵入したと思われますが被害者の財布及び室内から持ち去られた物はありませんでした。
物盗りの犯行じゃなさそうだな。
気になるのは九条美千代が行方をくらましてる事だ。
事件と何か関係があるかもしれんぞ。
(大友仁子)失礼します!
(仙堂)お仁子ちゃん!
(仁子)水沢課長。
はい。
今晴海病院から電話があって署長が救急搬送されたそうです。
え!?何…。
事故?いやそれが…。
(東孝彦)イテテ…。
(救急隊員)はいはいはい…。
(仁子の声)ダンスのステップを踏みながら歩いててぎっくり腰になったそうです。
(仙堂)またか…。
仁子ちゃんありがとう。
もういいもういい…とにかく署長の事はいいからとにかく捜査開始!じゃあまず仙堂と遠山は…。
(携帯電話の振動音)はいもしもし水沢…。
はい。
わかりました。
九条美千代さんがうちに戻ったそうよ。
俺が行く。
お前たちは携帯の履歴調べて関係者洗え!横山来い。
え?あっ…。
(遠山)行ってこい!はい!何よ偉そうにもう…。
糸村君!捜査会議ぐらい出なさいよもうチームワークってものがあるんだから…。
(糸村聡)気になるんですよねえ…。
何!これは被害者の筆箱に入っていたものです。
これは意図的に折られてます。
画家のアシスタントが商売道具をなぜ折ったんでしょう?少なくとも事件と関係あるようには思えないんだけど…。
出かけてきます。
糸村君!どこ行くのよ!
(九条美千代)昨日は11時頃百合子を残して飲みに出かけました。
バーをハシゴしてるうちに帰るのが面倒くさくなって近場のホテルに泊まったんです。
(森田)そういう事ってよくあるんですか?
(美千代)いけませんか?誰だって調子がでなかったりムシャクシャした時はお酒で紛らわすでしょ?
(森田)現場にあった絵画が引き裂かれていたんですが…。
あれは…私がやりました。
絵が気に入らなかったんです。
娘は完全主義者ですからよくある事です。
お母さんは余計な口挟まないで!ごめんなさい…。
(横山)被害者の峰岸さんはいつからこちらに?3年前です。
ときどき散歩に行く隅田川沿いの遊歩道で偶然知り合って…。
「私を雇ってくれないか」って頼んできたんです。
(横山)峰岸さんはどういう方でしたか?とにかく無口でどんな要求も黙って受け止めてくれる人でした。
(美千代)パーマネントイエローディープとライト買ってきて。
(峰岸百合子)あはい。
(美千代)あと豚毛の平筆8号と12号。
すいません最初からお願いします。
パーマネントイエローディープライトも。
彼女と何かトラブルのようなものは?
(美紀)あなた方まさか娘の事を疑ってるんですか?
(美千代)別にそんな事はありません。
さっきから気になってるんですが…。
その手袋は?画家は手が命ですから傷つけないためです。
ちょっと外して手を見せてもらえますか?なんでそんな事…関係ないでしょ!お願いします。
失礼。
どうもありがとうございました。
(横山)峰岸さんが誰かに恨まれるような事はありませんでしたか?
(美千代)さあ…。
プライベートな事はほとんど話してくれなかったから…。
本当無口で…。
なんか気持ちの悪い人でしたわ。
(横山)どう思います?あの親子。
(森田)母親は何か隠してる節がある。
九条美千代の昨夜の足取りを洗ってくれ。
はい。
刑事さーん!はい?どうしました?実は…ちょっと気になる方がいるんですが…。
はい?
(羽田祥子)おぉ〜っ!また上がってる〜。
離婚訴訟の最中に若い娘とデートとは感心しませんね。
(九条宏明)誰です?警視庁捜査一課の森田といいます。
美術評論家というのは随分おモテになるんですね。
用件があるなら早く言ってくださいよ。
あなた九条美千代さんに対して多額の財産分与と慰謝料を要求してるそうですね。
別に正当な権利を主張してるだけですよ。
しかし離婚の原因はあなたの度重なる浮気にあるんでしょう。
(笑い声)ちょっとトイレ行ってくるね。
それはあの親子に嫌がらせを受けてたからですよ。
こっちは向こうの要求全部のんで九条家の人間になったのに…。
結婚した途端あなたは九条家にふさわしくないなんて毎日言われてごらんなさい。
それで峰岸百合子さんに手を出したんですか?
(百合子の悲鳴)確かに彼女を口説こうとしたのは事実です。
でもそれはあの2人の秘密を探るためで…。
2人の秘密?
(村木繁)はあ…今度はこの絵筆ですか。
無理は言いませんが大至急でお願いします。
無理言ってますよね。
あのね毎回言いますけど私ね深夜までの仕事が続いて大変!限界!もうちょっと寝させて!精魂尽き果てようとも心は折れない執念と信念があれば…。
って誰かが言ってました。
ありませんから。
私には執念も信念もありませんから!え?村木さんってそういう人だったんですか?そうですよあ知らなかったの?そういう人なんです!失礼します。
あぁすいません村木さん。
糸村が無理ばっかり言ってしまって…。
これあの差し入れなんですけど…。
水沢さん…。
課長…村木さんオーバーワークでクタクタなんだそうです。
帰りましょうさあ。
大丈夫です。
大至急鑑定します。
だって今執念も信念もないって…。
とっとっと…言うわけないでしょ。
あのね私科捜研の魂と言われた男です。
村木さんかっこいいですね。
早速いただきます。
うおっ!すっぽんゼリー。
大好物です!ヘヘヘ…。
ああ効くー!
(仙堂)九条さんってそんなに気性の激しい方なんですか?
(城田貴)芸術家ってのはわがままな生き物ですから。
(仙堂)城田さんは九条家との付き合いは長いんですか?ええ。
先代から専属のエージェントを任されています。
(遠山)すいません。
あの…こちらの絵…。
九条美千代さんが日本美術連盟で最優秀賞を取った作品ですよね?ええ。
よくご存じですね。
ああいえ…。
彼女この賞を取るまで正直伸び悩んでましたよね。
確かにこの作品を見た時私も驚きました。
才能が突然開花したのは何か理由があったんでしょうか?美千代先生は父親の亡霊をやっと振り払えたとおっしゃってました。
きっと偉大な父親を意識し過ぎたんでしょうね。
なんにもありませんね…。
うん…。
電気も水道もあんまり使ってないし。
彼女あんまりここに戻ってなかったんじゃないかしらね。
なんでしょうこれ?うん?鉛筆立てかなんかじゃないの?ムクドリの家…。
彼女ここの出身だったみたいね。
いい絵ですねこれ。
え?糸村君って何絵わかるの?全く…。
補聴器。
九条宏明にはアリバイがあった。
九条美千代のエージェントから画廊のパンフレットの原稿を頼まれ打ち合わせをしていたそうだ。
名前は…。
城田貴さん。
先代からの付き合いだそうです。
ああすいません!頂きます。
それからちょっと気になる話を聞いた。
なんですか?峰岸百合子は九条美千代のゴーストライターだったらしい。
え?しかも2人でアトリエに入る時は必ず鍵をかけてたらしい。
(遠山)そういえば彼女が賞を取ったのは被害者を雇ってから1年程経った頃ですね。
でも…。
でも百合子さんは単なるアシスタントだったわけでしょ?峰岸百合子が殺された時美千代の白衣を着ていた。
爪の間から絵の具も検出されている。
九条美千代さんって高名な画家なのよね?その彼女の指に絵の具の染みすらついてなくてもか?もし峰岸百合子が九条美千代のゴーストライターだったとしたらその現状に不満を爆発させトラブルになった可能性はある!
(横山)お疲れさまです。
(遠山)おおお疲れ。
九条美千代の昨夜の足取りがわかりました。
確かに11時半から3時頃まで行きつけのバーをハシゴしてました。
(横山の声)どの店のウエイターもいつもと様子が違ってたと証言しています。
話かけても上の空で思いつめた顔で黙り込んでたそうです。
銀座から自宅までタクシーで10分だ。
犯行が不可能な距離じゃない。

(子供たち)ただいま!走っちゃダメ。
(男の子たち)はーい!
(北川雄一)百合子が死んだ!?はい。
峰岸さんは九条美千代さんという画家のアシスタントをしていました。
九条美千代?お知り合いですか?ああいえ…そういうわけじゃ…。
峰岸さんはこちらにはいつから?あの子が5歳の時です。
唯一の肉親だった母親を病気で亡くしここで預かる事になったんです。
お父さんは?あの子に戸籍上の父親はおりません。
あの子にとっては母親の死はよっぽどショックだったんでしょうね。
ここに来てすぐの時に耳が聞こえづらい病気を患いまして。
耳が?ええ右側の聴力がわずかに残りましたがあとは…。
その事が原因かどうかわかりませんが…。
(北川の声)当時の百合子は自分の殻に閉じこもり誰にも心を開かなかったんです。
先生!あっ…。
これは峰岸さんの部屋から見つかったものなんですが見覚えありますか?
(北川)このスケッチブック…。
まだ持っていたんですか!と言いますと…?あ実は百合子が中学の頃…施設に多額の寄付をしてくれてる方が写生会を主催してくださったんです。
その時に頂いたものがこれなんですよ。
それから百合子は何か感じるものがあったのか…。
夢中で絵を描き始めました。

(北川の声)それからだんだんあの子は変わっていきました。
少しずつですが私たちと会話を交わすようになり小さい子供たちの面倒も見るようになったんです。
きっと言葉でうまく表現出来ないだけで色んな思いがあったんでしょうねえ。
それを絵を描く事で解放していくうちに言葉で伝えられるようになったんだと思います。
(子供たち)うわあすごーい!
(北川の声)百合子はこのスケッチブックに…。
いや…絵に救われたんだと思います!
(美紀)一体いつになったらアトリエに入れるんですか?個展の開催までもうあまり時間がないんですけど…。
逆にそれが好都合だったんじゃありませんか?はあ?実は殺された峰岸さんがあなたのゴーストライターだったという噂を耳にしましてね。
(美紀)誰です!そんなデマ飛ばしているの!絵の勉強もろくにした事のないあの女にそんなマネが出来るはずないでしょ!
(横山)バーから自宅まで10分足らずで帰れるのになぜホテルに泊まったんです?何か都合の悪い事でもあったんですか?
(美紀)あなた方もう…いい加減にしてください!娘はそれでなくてもショックを受けて筆を握れなくなってるんですよ。
ごめんなさい気分が悪いので失礼します。
(美紀)美千代…ねえ大丈夫?美千代!
(ドアが閉まる音)
(仙堂)課長!ちょっとこれ見てください!事件起きたばっかりなのに随分早いわね。
問題はこの中身です。
記事には九条美千代がバーをハシゴする様子が書かれています。
日付はいつだ?事件当夜です。
出版社に話を聞いたところ九条さん夫婦が離婚協議をしているという噂を聞きつけて不倫でもしてるんじゃないかと張り込んでたそうなんです。
(仙堂の声)一昨日の夜は彼女が自宅を出て朝ホテルから出て来るまでピッタリくっついていたそうです。
その間彼女は自宅へ戻ってるの?
(仙堂)いえバーをハシゴしてそのままホテルに直行です。
アリバイ成立か…。
(横山)あのー…。
母親はどうでしょう?母親って九条美千代の?ええ。
あの人やたら娘かばってるし峰岸さんの事も快く思ってなかったような口ぶりです。
無口で…。
なんか気持ちの悪い人でしたわ。
娘の窮地を救うために母親が殺したとは考えられませんか?ね。
(森田)九条美紀は一晩中自宅にいたと証言している。
もし母親が犯人なら自分や娘が疑われるような殺し方はしないだろ。
そもそも犯人の目的は本当に峰岸さんだったんでしょうか?どういう意味だ?峰岸さんが3年前まで勤めていた工場に話を聞きにいってきたんです。
峰岸さんはとてもおとなしく決してもめ事を起こすようなタイプではなかったそうなんです。
そういえば家宅捜索でも人付き合いを証明するような物はなんにも出なかったわよね。
つまり峰岸さんを恨んでいる人物もいなかったという事なんです。
じゃあ犯人は誰を?峰岸さんと九条さんって背格好似てますよね?暗闇の中で犯人が見間違えたんだとしたら…。
峰岸さんは九条美千代と間違えられて殺されたって事ですか?そう考えると背中から一突きにされたという状況にも説明がつくんです。
峰岸さんはあの日いつも使っている補聴器を修理に出していたんです。
ええ?ちょ…ちょっと待ってください。
被害者は耳が不自由だったんですか?ええ。
幼い頃耳の病気を患って。
そのせいで侵入してきた犯人に気づけなかったんだとしたら…。
もう一度現場周辺の聞き込み徹底してやってみましょう。
(仙堂・遠山)はい。
(遠山)ごちそうさまでした。
(仙堂)ほら行くぞ!ああ…すいません。
(ノック)あのわたくし月島中央署の糸村といいます。
何かご用ですか?はい。
ちょっと見て頂きたいものがありまして。
これは峰岸さんの筆箱の中に入っていたものなんです。
彼女がなぜ折れた絵筆を持ち歩いていたのかお心当たりありませんか?これ…私の絵筆です。
えっ?そっか…。
そんなに嫌だったんだ私の事。
出会った頃はそうじゃなかったのに…。
確か3年前でしたよね?峰岸さんをアシスタントになさったのは。
ええ。
その頃私絵を描く事に行き詰まってて気分転換兼ねて隅田川沿いの遊歩道によくスケッチに出かけたんです。
へぇ〜なかなかいいタッチしてるじゃない。
(美千代の声)その時そこで百合子も絵を描いてて…。
ちょっといい?でもこの辺をこういう感じで…。
こうした方がもっとよくなるかも。
ほんとだ!すごい!あの…いきなりこんな事ずうずうしいとは思うんですけど私に絵を教えてくれませんか?お願いします!私がどれだけひどい事しても嫌な顔ひとつ見せずに献身的に尽くしてくれたわ。
私が頼んだ色と違うでしょ!えっ?せっかく気分が乗ってきたのにどうしてくれんの!?すいませんすぐ買い直してきます!もういい。
ほんと使えないんだから。
すいません…。
(美千代)へぇ〜。
随分上達したじゃない。
一度ちゃんと描いてみる?いえ…。
最近手の痛みがひどくて筆がなかなか持てないのよ。
ほら描いてごらんなさいよ。
ねっ。

(美千代の声)軽く言ったつもりが見事に打ちのめされたわ。
(美千代の声)それくらい素晴らしい絵だった。
それが2年前日本美術連盟の大賞を取った作品よ。
事件当夜峰岸さんと何かあったんですか?あの人私を蹴落とそうとしたの。
蹴落とす?
(美千代の声)百合子は私に内緒でエージェントの城田と接触して自分を売り込もうとしたのよ。
誤解です美千代さん!私そんなつもりありません!
(美千代)私が今までどれだけ苦しんできたと思う?九条実篤の娘だからって勝手に期待されて比べられて陰で才能ないって言われて…。
それがどんだけ苦しかったかあんたにわかる!?美千代さん…。
(美千代)他人の才能に寄生していい気になってる私の事見てバカにしてたんでしょ!違います。
本当に違うんです!もう解放してやる。
どこにでも行きなさいよ。
美千代さん…。
(美千代)私もう疲れた…。
手の痛みは引かないし絵なんか描いたって苦しいだけよ!
(美千代の声)彼女私を憎んでたのよ。
この折れた筆持ってたのだって私に早く筆を折れって宣告したかったんだわ。
その手袋ですがもしかして痛みを和らげるためですか?ああ…。
ごまかしごまかしやってるうちに腱鞘炎が悪化しちゃってね。
今では私は絵筆も持てなくなってる。
私はもう絵も描けないのよ。
自宅周辺を徹底的に洗いましたが収穫ゼロです。
そっちは?家の様子をうかがう不審な男を見たという目撃者がいたんですが…。
よくよく聞いたら例の写真誌のカメラマンでしたよ。
おかえりなさい。
(遠山)ああお疲れさまです。
糸村さん聞き込みさぼってどこ行ってたんですか!うん九条美千代さんに会ってきた。
あっ峰岸さんやっぱり彼女のゴーストライターだったらしいよ。
(響子・横山)えっ?
(遠山)はい?それ自分で認めたの?はい。
(携帯電話)はいもしもし糸村です。
あのね事件に直接繋がるようなブツは出ませんでしたけどね筆の柄にねなんかちょっと微量の紙粘土が付着してました。
紙粘土?それと…あっ…。
(不通音)早いよ。
説明も出来ないよ。
(東)やぁみんなお疲れさん。
(仙堂)あっ署長!署長!腰大丈夫なんですか?全然大丈夫じゃないよ。
今週末社交ダンスの大会があるっていうのにさ…。
じゃあ今回は棄権ですか。
コルセットで今ほらこうやって保護してるからさ多少痛みは緩和されると思うんだよね。
署長!それです!
(仙堂)えっどうしました?い…糸村君!おいちょっとこれ見てくれ。
(仙堂)はい?ネット上に絵画のオークションサイトがあるんだが市場に出回ってる九条美千代の絵が先週5枚も落札されていた。
(横山)えっどういう事ですか?彼女の絵が高騰すると踏んだ人間が買いあさったんだ。
一般的に絵の価値が上がるのはその作家が賞を取った時か引退した時もしくは死んだ時だそうだ。
って事はこの落札者は九条美千代さんが襲われる事を知ってたって事ですか?
(遠山)落札者の名前は…羽田祥子!
(森田の声)九条宏明の新しい恋人だ。
六本木のオンブレットというキャバクラで働いてる。
横山!行くぞ。
はい!せ〜んどう仙堂仙堂仙堂仙堂仙堂仙堂仙堂仙堂仙堂仙堂仙堂…。
はいはいはいはい。
遠山。
はい。
(遠山)おい横山行くぞ。
(横山)はい。
じゃあ仙堂はうーん…その写真週刊誌のカメラマンにうちの前を不審者が通らなかったかどうかそれちょっと確認しといて。
了解。
みんな頼もしいな!私もしっかりしないとな。
イッ…!おお〜イッテ〜。
やっぱりそういう事か…。
(森下靖子)所長もうすぐ戻ると思いますので。
どうぞお構いなく。
(靖子)あの…百合子ちゃん殺した犯人見つかったんですか?いえそれはまだです。
私…百合子ちゃんと小さい頃から姉妹のように育ったんです。
気持ちいいね!ねえ見て見て!なんでもないよーだ!嘘つき!アハハハッ!
(靖子の声)彼女よく言ってました。
自分は絵を描くことに救われたって。
絵を描く事で世界が開けたと。
きっかけは中学の時の写生会だったんですよね?ええ。
あっちょっと待ってください。
確か…。
ありました。
その時の写真です。
右端にいるのが百合子ちゃんです。
あの…これって勝鬨橋ですよね?はい。
隅田川の遊歩道から撮ったものです。
(美千代の声)気分転換兼ねて隅田川沿いの遊歩道によくスケッチに出かけたんです。
その時そこで百合子も絵を描いてて…。
(靖子)おかえりなさい。
(北川)はい。
所長さんすいませんちょっとお尋ねしたい事があるんですが。
あっ!すいません羽田祥子さんですよね?ちょっと署までご同行願えますか?えっ?何?1週間で5枚。
金額にして…400万円。
絵に全然興味のないあなたがどうしてこんなに九条さんの絵ばっかり買ったりしたの?だってヒロ君が電話で話ししてたんだもん。
彼女の絵の値段が最低でも倍になるって。
ヒロ君?九条宏明だ。
奴は誰とそんな話をしてた?知らな〜い。
いらっしゃいませ。
月島中央署の水沢といいます。
九条宏明があんたに金もらってアリバイを偽証した事を吐いたよ。
この画廊の事も調べさせてもらったわ。
経営が行き詰まってやばい筋からも借金してたそうね。
返さないと自分が危ないとでも思った?本当の事を言ってください!返済期限が迫っていて…どうしようもなかったんです。
美千代先生が死ねばうちで抱えている絵が高く売れるんじゃないかと思って。
(ため息)あなた彼女の代理人でしょ?そんな事したら二度と彼女の絵が売れなくなると思わなかったの!?美千代先生はもう絵を描いてなかったんです。
峰岸百合子さんが美千代先生のゴーストだったんです。
あなたその事知ってたの?えっ?いつそれに気づいたの?美千代先生がコンクールで受賞したこの作品を見た時です。
長年彼女の絵を見てきましたから彼女のタッチでない事はすぐわかりました。
だから美千代先生が死んでも峰岸百合子さんを売り出せばいいと思って…。

(刺す音)
(城田)でもまさか峰岸百合子さんだとは思わなくて…。
立ちなさい。
(ため息)美千代さんこんにちは。
何か?百合子さんを殺した犯人が捕まりました。
ニュースで見ました。
少しお話ししてもいいですか?話す事はもう何もありません。
3分でいいんです。
僕に時間をもらえませんか?これを見てください。
これちょっと見ただけではわからないんですが…。
ほらピッタリはまるんです。
ちょっと持ってみてもらえますか?これは百合子さんの部屋にあったものです。
持ってみておわかりのようにこの造形物は握った時に手に負担がかからないようにデザインされています。
百合子さんはそのためにあなたの筆を折ったんです。
百合子さんが耳に障害を持っていた事はご存じですよね?
(美千代)はい。
そんなハンデを持った百合子さんだったからこそあなたが腱鞘炎に苦しんでいる姿を見ていられなかったんだと思います。
あなたにもう一度絵を描いてもらいたくてあなたが痛みを感じずに筆を握る事が出来るようそれを作っていたんです。
そんな…。
でも百合子は城田さんに…。
それはあなたの誤解です。
百合子さんは城田にあなたの腱鞘炎の事を打ち明け展覧会を延期してあなたが治療に専念出来るようにと頼んでいたんです。
えっ!?あなたに誤解されていても黙っていたのは腱鞘炎の事を人に話して心苦しく思ってたんでしょうね。
なんで…なんで私にそんな事まで…?それは…百合子さんがあなたのお姉さんだからです。
えっ!?百合子さんの亡くなったお母さんは美大にいた頃学校の講師と不倫関係に陥り一人で子供を産みました。
そのお相手こそがあなたのお父さん九条実篤さんだったんです。
九条さんは世間の目もあってまだ幼かった百合子さんを施設に預けました。
百合子さんが中学生の時九条さんは施設の子供たちを招いて写生会を開きました。
その頃の百合子さんは人に心を開こうとはせず絵も描こうとはしませんでした。
そんな百合子さんに声をかけてくれた女の子がいたそうです。
この写真の右から2番目の子です。
これは…。
はいあなたです。

(美千代)一緒に描こう。
その時から百合子さんは絵を描く事で感情を表現する事を覚え人とも関わる事が出来るようになったそうです。
百合子さんはあなたに救われたんです。
私なんにも覚えてない。
普通はそうです。
でも百合子さんにとってはきっと特別な体験だったんです。
百合子さんはあなたが描く作品をずっと見守っていたんだと思います。
そして恐らくあなたが壁にぶつかっている事に気づいたんじゃないでしょうか。
だからこそ偶然を装ってあなたと出会いアシスタントになる事を志願したんだと思います。
絵を破いたのもあなたの代役を務める事があなたを追い詰めていた事に気がついてしまったからだと思います。
今度は自分があなたを闇から救い出してあげたいと思って…。
昔のようになんの濁りもない絵をあなたに描いてもらいたい。
百合子さんはそう願っていたんではないでしょうか。
嘘だったんです。
腱鞘炎…本当はもうとっくに治ってたんです。
私百合子の才能を認めたくなくて…負けるのが怖くて…ずっと嘘ついてたんです。
百合子…ごめんね…。
ごめんね…。
2015/05/08(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
遺留捜査3[再][字]

「折れた絵筆」

詳細情報
◇番組内容
遺留品が語る、三分の真実—風変わりな刑事・糸村聡が帰ってきた!彼は事件現場に残された“遺留品”から声なき遺体が訴えたかったメッセージを読み取り、伝える…。
◇出演者
上川隆也、斉藤由貴、正名僕蔵、眞島秀和、波岡一喜、甲本雅裕、西村雅彦、三宅裕司 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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