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ノンアメリカニゼーション。

ごく普通の日本人がアメリカの田舎で生きていく記録。

アメリカと日本の大学院の違いとは

ご無沙汰しております.期末試験で忙しくしばらくブログ放置状態でした.また少しずつ時間を見つけて更新していきます.




さて,今日は久々にまじめな記事.アメリカと日本の大学院を比較しながら,その違いについてまとめていきたいと思う.アメリカの大学院を目指そうと思っている人に参考にしていただけたら嬉しい.理系大学院に在籍しているため,あくまで内容は理系大学院が中心.








アメリカの大学院はアメリカ人ばかりではない


まずはじめに,学生の出身国の割合について説明したい.日本の大学院に行ってみると,勿論日本人の割合が高い.日本ナンバーワンの東京大学ですら,大学院生の留学生の割合は20%程だ.それに比べ,アメリカの大学院では留学生が大半を占めている.俺の学科ではなんと大学院生の90%以上が留学生だ.インド・中学を中心に,他にもアジア・ヨーロッパ・南米と世界各国から留学生が集まっている.


これには利点も欠点もある.全てのミーティングや会話を母国語で行うのは,やはり研究をスムーズに進捗させることに繋がる.難しい概念も母国語なら他人に伝えるのも難しくないだろう.しかし,研究者にとって英語は必要不可欠なものでもある.研究発表や論文執筆は英語が基本.また,他の国の研究者とコミュニケーションをとるのにも英語は必須である.アメリカの大学院では日々研究の中で英語に触れることができるため,そのようなときに英語で困ることはない.


また,色んな国の人と一緒に勉強したり,ときには遊んだりすることで,他国の文化・料理・歴史なんかに触れることもできる.「やっぱりフランス人パリジェンヌはプライド高そうだなぁ.」とか,「インド人計算はえぇぇぇ!」とか予想通りだったものもあるし,「ブラジル人でもサッカー嫌いな人も結構いるんだー.」とか意外なものもあったり.やっぱり実際会って話してみると面白い.



アメリカの修士課程は授業だけ


日本の大学院との大きな違いは修士課程の内容.日本で修士課程というと,ずーっと研究をしているイメージが強い.勿論授業を取る必要もあるが,レポートを出しさえすればAがもらえたりするため,授業の準備に割く時間はほとんどない.その代わり,研究に多くの時間を割き,学会発表に行ったり論文を投稿したり,研究面で非常に忙しくなる


アメリカの修士課程は,学校や学科によってかなりシステムが異なる.工学部(Engineering)の分野では,2年間授業を取るだけという場合が多い.授業を取ってある程度の成績を取れば,修士号を取ることができる.研究は一切しない.俺の学科では7〜8割の修士課程の学生がこのタイプに当てはまる.


修士号の中にもThesis optionと呼ばれるものがあり,これは研究をして修士論文を発表するのが目標となる.2年間授業も取った上で研究もするので,かなり忙しくなる.授業を3つとるとほとんど研究に時間が割けないため,まともに研究ができるのは最後の半年くらいしかない.日本の修士課程に比べると研究の質は劣るだろう.その忙しさの故に卒業が遅れることもあるが,アメリカの大学院では具体的な卒業年数が定められていなく,また企業の採用も年中行われているため,柔軟に対応して卒業時期を決めることができる.


このように修士課程の中にもいくつかタイプがある.また,修士号は博士課程を途中でドロップアウトした人にも与えられるため,博士課程で生き残れなかった残念賞的な扱いもあるとかないとか...



アメリカの博士課程入学に修士号はいらない


日本の博士課程に入るためには,まず修士号(2年)を取得する必要がある.その後,博士課程で3年研究をし,最終的に博士号を取得する.順調に行けば合計で大学院に5年在籍することになる.


アメリカでは博士課程(Ph.D. Program)に入るために,修士を必要としない場合が多い.日本の修士と博士を合わせたようなプログラムになっており,最初の1〜2年目で授業で研究を行うための基礎力を養い,そこから3〜4年間研究を行い,博士号を取得するという流れになっている.事前に修士号を取ってからだと卒業が多少短くなることもあるが,学部卒で博士課程に入ったほうが最終的に若くして卒業する傾向にある.


1〜2年目の最後に,博士課程で研究をしていくに相応しいかどうかの試験(Qualifying Exam)を行い,そこで合格できないとその時点で退学になってしまう.その場合,先程も述べたように残念賞として修士号が与えられる場合がある.俺の代は無事全員合格したのだが,一年上の代はなんと半分の学生が試験に落ち,大学を去っていったらしい.恐るべし...



アメリカの博士課程はタダで行ける!


一番大きな違いであり,俺がアメリカの大学院に行く大きな決め手になったのがこれだ.アメリカの大学院では,Research Assistant(RA)として研究やプロジェクトに参加したり,Teaching Assistant(TA)として働くことで,学費+生活費を学科が出してくれる.アメリカの上位校の学費は非常に高いが,博士課程として入学すれば全て学科が支払ってくれるのだ.更に,地域にもよるが大体月15万〜20万の給料が生活費として払われる.これだけあれば一人暮らしであればなんとか暮らしていける.また,日本から奨学金を持ってくれば,働く必要もなく自身の研究により専念することもできる.


それに対し日本の大学院では,修士博士問わず,基本的に自分で学費を払わなければならない.奨学金もあるが,給付奨学金(返済義務のないもの)を取るには努力も運も必要になるだろう.一般家庭であれば,学士・修士・博士と約9年間も通わせるのはなかなか経済的に難しいだろう.日本の博士課程は就職先が狭まるリスクもあるため,返済義務のある奨学金を借りるのも最善とは言えない.



卒業後の進路は教授だけじゃない


日本の大学院では,博士課程に入っている人はほぼ全員教授になることを目標としている人たちだ.しかし,ポストが空いていなかったり,抜きん出たの研究実績が必要だったり,実際には非常に狭き門だ.博士課程からの民間企業への枠も多くはないため,就職することもなかなか難しいのが現状だ.


アメリカの企業は,博士号取得者も積極的に採用する傾向にある.実際,俺の周りの博士課程の友達も教授になりたいと言う人より,民間企業に就職することに興味を持っている人が多い.研究職ではより専門的な知識を持っている人が必要だと考えられており,そういうポジションには博士号を持っている人が多く採用されているのだ.日本での就職については,ボストンキャリアフォーラムで博士課程の学生を募集している企業もあるのでチャンスはなくはない.



あとがき


いかがでしたか?簡単にまとめると,

日本 アメリカ
留学生 少ない 多い
修士課程 研究中心 授業中心
博士課程の入学条件 修士号 学士
博士課程の経済面 自費or奨学金 学科持ちor奨学金
博士課程の主な就職先 教授 教授or民間企業


他にも細かいところでは色々違うこともあると思いますが,大きく違うのはこの辺です.一概にどっちが優れてると言うことはできないと思うので,自分が大学院で何をしたいのかをよく考え,どちらの大学院に進むべきか決めて頂ければと思います.質問等ありましたらコメントくださいねー.




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