藤志郎が帰宅すると鯛吉が居間で新衣紗と話しています。鯛吉のお客さんがアスパラガスをたくさんくれたので、おすそわけにきてくれたそうです。藤志郎の目が輝きました。
大学で金融を勉強中の初野新衣紗(はじめの・にいさ=上)と父の藤志郎(とうしろう=中左)、母の利子(りこ=中右)、隣に住むファイナンシャルプランナー・税理士の有賀鯛吉(ありが・たいきち=下)
にいさ 嫌よ、パパ。せっかく今から食べようと思ってるのに。引っ越し祝いは自分のお金で何か買って。
とうしろう ひさびさに株を買って、ドカンともうけるつもりなんで、軍資金はとっときたいんだ。
りこ あなた!
とうしろう うわ、いつの間に後ろに!
りこ なんだか余裕があるみたいだから来月のお小遣い、減らそうかしら。
とうしろう 株なんて冗談だよ。それにしても会社員はつらいよ。交際費が必要でも税金はまけてくれないんだからな。自分で商売をしている友達は、いろいろ経費を計上しているのに。
たいきち 実は会社員も経費は認められていますよ。
とうしろう そんな覚えはないぞ。
たいきち 会社員の所得税を計算するとき、実は年収に応じて経費とみなす額が決まっていて、これを給与所得控除と言います。例えば年収600万円なら給与所得控除は174万円です。結構大きな金額でしょ? 600万円からこれを引いて残る426万円が給与所得です。
にいさ 給与所得控除を増やせば所得が減って手取りをふやせるってこと?
たいきち 収入に対して一定の計算式で決まるので難しい。仕事で実際に使った費用の合計額が給与所得控除の半分を超えたとき、その超えた分だけ給与所得控除に上積みできる特定支出控除という仕組みもあるけど、条件は厳しい。会社員が自分で節税できる余地が大きいのは主に所得控除という項目だよ。
とうしろう どうすればいいんだい?
たいきち 何を所得控除できるかを知り、忘れずに差し引くのです。例えば親が大学生の子どもの国民年金保険料を払っていれば社会保険料控除という所得控除で差し引けますが、つい忘れがちです。災害などで損害を受けたときに使える雑損控除もありますが、知らずに申告しない人もいます。