【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は11日、ブリュッセルでユーロ圏財務相会合を開き、交渉が難航するギリシャ金融支援問題を協議する。凍結中の支援融資を再開する条件である財政改革を巡ってEU側とギリシャ政府の隔たりはなお大きく、今会合での決着は厳しい見通しだ。ギリシャの資金繰りが深刻さを増すなか、いまの支援を再開する期限である6月末が迫ってきた。
EUは国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)とともに財政難に苦しむギリシャへ金融支援を手掛けている。だが、「反緊縮」を掲げるチプラス政権が財政規律を緩ませるとの懸念から、約72億ユーロ(9700億円)の支援融資を凍結している。納得できる財政改革案を示すまで融資に応じない構えだ。
72億ユーロはギリシャ政府の年間歳出の1割弱に当たる。チプラス政権は融資なしでは資金繰りに窮すると訴え、早期再開を求めている。ただユーロ圏高官は9日、「最終合意がすぐ目の前にある状況はまだ遠い」と述べ、11日会合では決着しない見通しを示した。
債権団はギリシャに年金減額や最低賃金の引き上げ凍結などを求めるが、同国は応じていない。
ギリシャは7月から8月にかけ計100億ユーロ超の大量の国債償還を控え、対立したままで6月末の支援の期限を迎えれば、72億ユーロの融資は失効する。その後の支援は白紙状態で、7月には資金不足に陥る懸念が強い。
早ければ5月末にも緊迫する局面があるかもしれない。6月末までに融資を受けるには、その1カ月前には事務レベルでの合意が必要になるとユーロ圏高官は説明する。
ギリシャは5月12日が7.5億ユーロをIMFへ返済する期限だ。5月末には年金支給や給与支払いで計25億ユーロの資金を用意しなければならない。
資金繰りに窮したギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥る懸念が市場で強まれば、原油価格の反転などで不透明感を増す金融市場を一段と揺るがすかもしれない。
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