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東京電力とソフトバンクが、電力小売り事業を共同で行う新会社を設立することが、本誌の取材で分かった。2016年の電力自由化に向け、“異色”のタッグが練る秘策とは。(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)
4月28日、東京・内幸町の東京電力。最高幹部ら約15人が集まる会議室には張り詰めた空気が漂っていた。
「ソフトバンクとの提携は、早く進めていくべきだ」
取締役のうち数人が厳しい口調で提案すると、廣瀬直己社長は「携帯3社の話を、きちんと聴いて判断したいと思います」と、真剣な面持ちでそう答えた。
週刊ダイヤモンドが、5月2日・9日合併号で真っ先に報じたように、東電とソフトバンクの提携交渉が最終段階を迎えている。東電は4月、NTTドコモ、KDDIを含む携帯電話3社から事業提案を募集し、その中でソフトバンクを選ぶ方向で決着を迎えつつある。
東電とソフトバンク。片やかつて経済界を動かす影響力を持った巨大組織と、強烈な個性を持つ社長が率いるベンチャー上がりの大企業──。両社の社風には、相いれる部分はなさそうだが、なぜこんな組み合わせが成立するのか。
「3社のうち、ソフトバンクだけが、東電との新会社設立を提案してきた」と、東電幹部は打ち明ける。「電力の競争時代に向け、東電だけにコミットして、新たなビジネスを展開する覚悟があった」。
通信会社では、電力会社1社と組むより、各地域の電力・ガス会社と組むことで広範囲での電力販売を狙う動きもあるが、ソフトバンクは国内電力市場の3分の1を担う東電に絞って交渉を続けてきた。その戦略が、この“異色タッグ”の背景にあるのだ。
実は、東電内では、1999年にソフトバンク、米マイクロソフトの3社で設立したインターネット会社「スピードネット」で失敗した経験があり、ドコモを推す声も根強かった。だが、ドコモの提案は「電力を魅力的なコンテンツと思っていない」(東電関係者)との判断で、ソフトバンクとの提携が13日の取締役会で決定しそうだ。
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