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悪役令嬢は転生者で無表情なヤンデレです。 作者:五十嵐

恐怖

今回は嫌な表現があります
苦手な方はすみません。

※表現がわかり辛いという指摘があったので書き加えさせていただきました。
やはりわからないという場合はお手数ですがまた教えてくださると嬉しいです
義兄様がいないとき送迎は基本来ない。
だから電車やバスをつかって屋敷まで帰らなくてはならないから少し面倒くさい。
因みにヒロインちゃんは終わりを告げる鐘が鳴ってすぐに話しかけてきたが、用事があるからと巻いてきた。
あの子苦手。

送迎だと30分でつく道のりは電車やバスを使うと50分かかる。
普段からほとんど運動することの無い愛世(わたし)にとってただの苦痛である。
人気の無い電車に乗り込み、空いてる席に座り小説を取り出した。
最寄り駅まではあと3駅ある。
放送を聞きながら読書をする時間くらいあるだろう。
そう思い本を読んでいると隣に人が座ってきた。
他にも空いてる席はある。なのに何故、(ここ)に座ったのか。
変な人もいるもんだと隣を横目で確認し、そっと視線を本に戻した。

わー、テンプレだなぁ。隣にいるの攻略対象じゃん。
しかも一瞬目があったし。絶対確信犯だよこの人。
隣に座っていたのは生徒会長の妻神 刄だった。

「君が噂の義妹ちゃん?」

「…噂…とは?」

何で話しかけてくるのかなー私何かしたかなー。

「新入生に生徒会補佐の夢裂 世名サマが溺愛していらっしゃる義妹君がいるって噂だよー。」

「はぁ…」

そんな噂になってたのか。
初めて知ったな…
てことは、義兄様もご存じなんじゃ?!
は、恥ずかしい…義兄様は迷惑に思ってないだろうか。
羞恥で思わずうつむいてしまった。

「あー、そうそう、俺は妻神 刄ね。
えーっと?夢裂 何ちゃん?」

「愛世、です。」

今日はよく攻略対象に話しかけられる日だ。
あと名前もよく聞かれる日だ。嬉しくない。

「愛世ちゃん、可愛い名前だねぇ。
ところで今日世名はー?」

「義兄様なら…もう、家かと。」

「へぇ?噂では一緒に帰ってるらしいけど…これデマなの?」

「いえ…普段は、一緒です…」

「そっかそっか、ところでさー

何でそんなイライラした顔してんの?」



驚き、ばっと相手の顔を見ると、キョトンとしていた。
でも瞳は探るように見つめてきていた。
義兄様以外が私の表情の変化に気がついた。
それがすごく恐ろしかった。
私じゃない愛世が、彼に惹かれていたから
『この人も私のことをわかってくださるんだわ。
この人も私を愛してくださるに決まってる!』
違う、違うよ愛世。だって彼の目に私たちに向ける愛は欠片も写ってない。
この人は愛してくれない。

心の中で葛藤が繰り広げられ、言葉を口にできず互いに無言でいると、降りる駅についたようだ。

「ぁ…私は、これで…さよなら、生徒会長様…」

この場から逃げるように、生徒会長と視線を会わせないように電車を降りた。
背中に疑惑の視線が刺さっていたのには気がつかないふりをした。

まだ落ち着かない呼吸を整え、屋敷の扉を開けた。
どうせ誰もいないだろうと軽い気持ちでリビングにはいると、タイミング悪く父様も書斎からリビングにはいってきた。

「と……さま…」
は家族相手だとさらに口調が減る。
つまり私は義兄様以外とまともに話すことはできない。

「なんだ、生きていたのか役立たず。」

私の存在を否定する目、唾を吐き散らし罵る口。
前の私だったら泣いていただろう。
だが私はそんなことなかった。
むしろガツンといってやる、とまで思っていた。
でも(あいせ)が怯えてしまい、声が出せなかった。
大丈夫と言い聞かせても、怖いの一点張り。
どうしようもないと思い踵を返して部屋に戻ろうとした。

「まぁ待て。
役立たず、俺の役に立たせてやるよ。」

腕を捕まれ、逃げれなくなった。
やばい、何かされる。
そう本能的に察し、なんとか逃げようと足掻いたが普段から動かないため筋肉がほぼ無い腕じゃ成人男性の力に勝てるはずがなかった。

「はな、してッ!」

「黙れ!」

頬にジンとした痛みが走る。
殴られた、でもそんなことは気にしてられなかった。
きっとここで助けを呼んでも誰も来ない。
義兄様は帰ってきているのだろうか、部屋にいるのだろうか。

「やだッ!義兄様…義兄様ッ!」

「あのガキが来るとでも思ったのか?!
何にも執着しない、興味も持たない人形のようなあのガキが!」

「義兄様!」

「そもそも俺は反対だったんだよ!いくら優秀だからってあんな愛想も良くないガキを養子にとるなんてよォ!
どうせテメェもあのガキが気に入らねぇんだろ?だったら色仕掛けのひとつでもして追っ払えよ!
ついでにテメェもいなくなりゃ穀潰しが減って清々するぜ。」

父は私を床に押し倒し喚いた。
醜い、何て醜い生き物なんだろう。
欲望に濡れた目が、嫉妬に溺れた感情的な言葉が、ひどく汚く見えた。
私は無意識のうちに何度も何度も義兄様を呼んだ。
例え殴られようと気にしなかった。
制服を引き裂かれても、太股を触られても、義兄様を呼んだ。

「にぃさま、にいさま、にいさま…」

「うるせーってんだよ!」

首を絞められても、義兄様を呼ぶのをやめなかった。
助けて、義兄様…!


*****


結局、義兄様は来なかった。
ただの布切れと化した制服を羽織直し、部屋に戻った。
所々についた白濁はティッシュで拭き取った。
なかに出されなかっただけましなのかもしれない。
冷静に思考回路が働くのを考えると、父にされた行為に傷ついてる訳じゃないと思う。
出てくる感情と言えば何故か諦めだけで、抵抗もする気が起きなかった。

……義兄様は私の姿を見てなんと言うだろうか。
汚いと批判するだろうか。それでもいいかもしれない。
義兄様に会いたい。あって否定されたい。
じゃなきゃ多分、穢されたと実感できないから。

私服に着替え、制服がボロボロになってしまったことの謝罪もかねて義兄様の部屋を訪ねた。
別にいなくてもいい、居なかったら書き置きをしておけばいい。
そう思いノックをすると返事が帰ってきた。
義兄様、いたんだ…
控えめに扉を開くと義兄様はベッドで読書をしていた。

「失礼します…」

「嗚呼、愛世だったんだね。
どうし……愛世、おいで。」

此方を見て義兄様は微笑み、私が近づいたとたん義兄様は顔をしかめ私の腕を引き、ベッドに倒れ混んだ。
体制的には義兄様が私を押し倒してるような形だ。私得。

「にぃ、さま…?」

「愛世…誰にやられた。」

今まで聞いたこともない声。
低くて背筋がゾッとする冷たい声。
私は恐怖で声がでなかった。

「答えろ愛世。誰だ。」

「とー…さま、です…」

声を振り絞り聞こえるかどうかわからないくらいか細かったが義兄様はしっかり聞き取り、抱き締めてくれた。

「怖かっただろう、もう大丈夫だ。
愛世はよく頑張ったね。」

「にーさま…私、穢い…」

私に触ると綺麗な義兄様が穢れてしまう気がした。
だから拒絶しようと思った。
でも体は言うことを聞かなくて、義兄様に抱きついてしまった。

「穢くなんかない。愛世は綺麗だ。
大丈夫、そんな穢れはシャワーを浴びれば綺麗になるよ。
ほら、シャワーを浴びにいこう?着いていってあげるから。」

起き上がりベッドから降り柔らかく微笑んだ義兄様が美しすぎて直視できなかった。
自分もベッドから降り、義兄様と視線を会わせないように俯いた。
そして俯いて初めて気がついた。

私、泣いてたんだ。

表情筋がニートだから無表情で泣いてるのはなかなかシュールだろう。
でも止まらなかった。
義兄様が私を否定しなかった。この事実に安心したのか、本当は怖かったけど強がってたのが我慢できなくなったのか…両方かもしれない。

義兄様は何も言わず私を抱き抱えてシャワールームまで運んでくれた。
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