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 祭典のフィナーレで夜空を流星群で飾ったり、記念日に流れ星を贈ったり。こんな夢が人工衛星から流れ星の「もと」を落とすことで、かなうかも知れない。素材や飛んでくる方向がわかっている人工流れ星の観測で、宇宙から届く流れ星や高層大気の新たな研究への期待も広がる。

■イベントで要望あれば

 のぞき窓の奥が、直視できないほどまぶしく光った。

 「マイナス0・86等!」

 昨年12月、相模原市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の実験室。真空容器で、秒速5キロに加速したプラズマが人工流れ星のもとになる粒を蒸発させた。

 日本大航空宇宙工学科の阿部新助准教授は手応えを感じた。空が明るい都会でも見られるよう、1年かけて光の強さを高めてきた。実験では金属や鉱物のほか、本物の隕石(いんせき)も蒸発させた。粒の密度や材質を工夫し、当初の実験よりも明るさを約20倍に高めた。夜空に輝く恒星で最も明るいマイナス1・5等のシリウスに近づいた。

 人工流れ星は、ベンチャー企業「ALE(エール)」(東京都)が計画する事業だ。流れ星のもとになる粒を載せた超小型衛星を打ち上げて地上約500キロの軌道を周回させ、イベントなどで要望があれば粒を放出して希望の場所の上空に流れ星を出現させる。衛星の開発費は10億円ほど。大型衛星に相乗りする形で2017年に打ち上げ、18年の事業開始を狙う。

 粒は人工衛星から落とすため、地球外から突入する天然の流星より速度は遅い。それだけに光る時間は長めで数秒続く。岡島礼奈社長は「一瞬じゃないから願い事を唱えやすい。希望の場所に流すサービスから始め、将来は衛星を増やして時刻の求めにも応えたい」と話す。

■他の衛星に衝突しない?

 人工流れ星を放出する衛星は50~80センチほど。重さは100キロ前後の超小型衛星だ。

 帝京大航空宇宙工学科の渡部武夫講師によると、載せられる粒は500~1千個。打ち上げ時の振動で粒同士がこすれて壊れないよう別々に収納する必要があり、超小型衛星2機を作った実績のあるベンチャー「アクセルスペース」(東京都)とともに設計を検討中だ。渡部さんは「多く積めれば一つ当たりの費用が抑えられる。限られたスペースにもっと入れられるよう工夫したい」と話す。

 人工衛星は、猛スピードで地球を周回するため、粒を放出するのは、流れ星を発生させたい場所の上空ではなく、人工衛星の軌道で地球の3分の1周手前になる。例えば日本で見たいなら放出は南極上空だ。

 首都大学東京航空宇宙システム工学コースの佐原宏典准教授は「放出する角度が1度ずれると突入地点は30キロくらい変わる。地上から見て南の空か北の空かまで精度を高めるのは難しい」と話す。ALEも「初めは1個ずつではなく、シャワーのように流星群を流すところから始めたい」という。

 ほかの課題もある。ALEが計画を発表したところ、放出した粒が別の衛星に衝突しないか、宇宙ゴミにならないかといった懸念が寄せられた。落下軌道に別の衛星が入ってきそうな場合には放出しない方針だ。