沖縄知事:「辺野古中止、決断を」 防衛相に要求

毎日新聞 2015年05月09日 23時42分(最終更新 05月10日 00時00分)

中谷元防衛相(左)との会談に臨む翁長雄志知事=那覇市の沖縄県庁で2015年5月9日午前11時6分、佐藤敬一撮影
中谷元防衛相(左)との会談に臨む翁長雄志知事=那覇市の沖縄県庁で2015年5月9日午前11時6分、佐藤敬一撮影

 中谷元防衛相と沖縄県の翁長雄志知事は9日、県庁で会談し、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を巡り協議したが平行線に終わった。中谷氏が在沖米海兵隊の抑止力と普天間の危険性除去の重要性を強調して移設に理解を求めたのに対し、翁長氏は「工事の中止を決断してほしい」と要求。協議を継続することでは一致したものの、政府と沖縄の溝は一層深まった。

 両氏の会談は、翁長氏が昨年12月に知事に就任して以降初めて。約30分間行われ、冒頭の約20分が報道公開された。

 中谷氏は冒頭、沖縄県・尖閣諸島など東シナ海での中国の海洋進出が活発化していることを、資料を用いて説明。中国機への航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)が急増していることも挙げ「米軍の存在は自衛隊の抑止力を補完する不可欠なものだ」と在沖海兵隊の存在意義を説明した。移設問題について「問題の原点は、普天間を固定化させないことだ」と強調した。

 また中谷氏は、防衛庁長官として普天間問題に関わった過去に触れ「どう考えても普天間を辺野古に移設するのが唯一の解決策と確信している」と述べた。会談後、記者団に対し「一日も早く移設するように手順に従って実施している」と述べ、夏にも埋め立て工事に着手する予定を変えない考えを示した。

 一方、翁長氏は会談で、中谷氏が「今話し合っても溝が深くなるだけだ」などと述べて、会談に応じてこなかったことを「高飛車な発言だ。県民に寄り添って理解を得るよう努力したいという政府の方針とはほど遠い」と厳しく批判。「かたくなな固定観念から脱し、工事の中止を決断してほしい」と求めた。政府の移設方針堅持を「日米両政府が固執すると、日米安保体制に大きな禍根を残す」とけん制。会談後の記者会見で「あらゆる手段を講じた場合、辺野古基地はできないと確信するに至っている」と移設を阻止する姿勢を強調した。

 中谷氏は会談後、普天間飛行場に隣接する宜野湾市役所を訪れ、屋上から視察した。【飼手勇介、佐藤敬一】

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