普段お世話になっている先生への献本に添えた手紙
(文・宮野公樹)
○○先生へ
お世話になっております。宮野です。この4月に『研究を深める5つの問い』(講談社ブルーバックス)という新書を出しましたので一冊お送りさせていただきますね。普段、いろいろ議論させてもらっている○○先生に、お読みいただければ幸いです。
この本は僕なりの「学者としての責任」を果たすものなんです。
正直にいうと新書ではなく分厚い装丁のいわゆる立派な専門書を書いて、学問論や科学論の領域の学者として一人前に見られたい気持ちもあります(笑)。偉大な知の巨人たちがそうしてきたように。でも、先人たちが立派な専門書で如何に「いい問い」を立てようが、結局、この学術界は変わってない! という思いがどうしても僕にはあるのです。
それは、「問いを立てる」ことだけで満足していたからじゃないか? 「問いを立てる」ことだけでなく、それを「届ける」ことも必要じゃないのか?
つまり、「問い」の対象を明確にし、その対象に「問い」をわかりやすくしっかり伝え、理解してもらい、うまくいけば何かしらの行動にもつなげてもらうようにする努力。これをしなかったために、せっかく素晴らしい「問い」を立てたとしても現制度の対策として提案されることもなく、政策として具体化することもなかったのではないか。学術界がどんどん産業化してしまうこと、成果主義、商業主義が進行することを止められなかったのではないか。本や記事さえ書いていれば社会批判をしているのだというのは、もはや成り立たないのだ!
しかしまた、このような青臭い学問論、世代論を振りかざして先人たちに「責任をとるべし」と言うだけでは、ある意味僕もまた「問い」を立てるのみの人になってしまう・・・・・・!
そこで、僕自身、「少しでも学術界をよくして現在の若手たちにバトンタッチする責任があるはずだ!」と思うに至り、とっつきやすい新書として世におくりだすべく筆を執りました。
特に、若手研究者やこれから研究者になろうとする人たちが読みやすいよう、専門用語の使用は極力避け、「誰それがこう言うように」という引用をできるだけ減らし、わかりやすい日常のことばで伝えようとしました。こうした「問い」を「届ける」工夫は、思った以上に大変な作業でしたが、その中で僕自身が多くの気づきを得られたことは収穫でした。
こうした作業は、僕自身が考える「これからの学者像」の実践でもあります。
これからの学者は「問いを立てる」ことに加え、それを「届ける」ことも「仕事の範疇」とすべきではないかと考えます。それは単なる研究広報的なアウトリーチを強化せよというのではありません。むしろ、「届ける」工夫をする作業を、自身へのフィードバックを得る機会とするのです。学者が日常の世界から乖離してしまいがちな状態を、この「届ける」という行為で防げるのではないかと思うのです。
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