東京大学の酒井寿郎教授らの研究グループは、ヒトや哺乳動物が寒冷時に体温を維持するには、従来知られていた「転写因子」と呼ばれるタンパク質群の働きだけではなく、熱産生をつかさどる遺伝子DNAの急速な立体構造変化が必須であることを解明した。
ヒトや哺乳動物は、からだが寒冷という危険な状態にさらされると、交感神経からノルアドレナリンというホルモンが分泌されて、熱産生を専門に行う褐色脂肪組織ですみやかに熱が産生される。これまでに、DNAが巻き付いているヒストンタンパク質のメチル基を除く働きのあるJMJD1Aタンパク質を欠損したマウスは低体温に陥ることが分かっているが、その詳細は明らかになっていなかった。
今回、研究グループは、質量分析解析から交感神経刺激によって核内のJMJD1Aの265番目のセリン残基がリン酸化されることを見出した。そして、JMJD1Aのリン酸化は、交感神経からの刺激があってから数分で認められ、これと同期して遺伝子の高次構造が変化し、さらに熱産生遺伝子の発現が促進されることが分かった。
さらに、DNAが巻き付くヒストンタンパク質の脱メチル化酵素として発見されたJMJD1Aは、リン酸化で誘導されるタンパク質複合体・動的な遺伝子立体構造変化によって転写を促進させ、熱産生・エネルギー消費を制御するという、数分の速さでの急性応答に関与するという従来知られていなかった別の機能をもっていることも明らかになった。
今後は、このアミノ酸のリン酸化を制御するタンパク質を明らかにすることで、低体温の治療、あるいは、熱産生・エネルギー消費が低下して起こる肥満症への治療法に繋がると期待されている。
なお、この内容は「Nature Communications」に掲載された。論文タイトルは、「JMJD1A is a signal-sensing scaffold that regulates acute chromatin dynamics via SWI/SNF association for thermogenesis」。
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