防災シェルターが水に浮く
津波から家族を守る“箱舟”
N.C.P(神奈川県平塚市)
東日本大震災の折、津波は人々に襲いかかり、多くの命を奪っていった。
N.C.P(神奈川県平塚市)が開発した防災シェルター「ノア」は、地震や津波に耐える球体構造をした新しいタイプのシェルターだ。小型で家庭にも設置できるため、短時間での避難が可能になり、次の災害への備えとして注目が集まっている。
■すぐに避難できる場所を
東日本大震災では、死者・行方不明者が2万人近くに上った。中でも津波は、地震発生からわずかの間で町に襲いかかったため、多くの命を奪った。高台が家から離れた場所にあることも多く、人々には避難する十分な時間が残されていなかったのだ。
N.C.Pが開発した防災シェルター「ノア」は、そうした地震や津波の被害から家族の身を守ることができる救命カプセルだ。直径1.2メートルの球形のシェルターで、大人4人が中に入ることができる。外殻が頑丈な強化プラスチックでつくられているため、内部に避難していれば、地震で建物が崩壊してもその重みに耐えることができる。
その上、完全な防水加工が施されており、中に人を乗せたまま水に浮く設計になっている。そのため、たとえ津波に襲われたとしても、水上に浮き上がり、救命カプセルとしての役割を果たす。津波が来ても、内部は安全なので、家族の命を守ることができるのだ。
これまでの防災シェルターは、国や県などが大勢の住人を収容することを想定した大規模なものが多かった。だが、急に襲い来る地震や津波に対しては、住人がその場所まで避難する時間がない。また、シェルターが地中に掘られていることも多く、水害に対しては弱点となっていた。
一方、「ノア」のような小型のシェルターならば、家庭でも設置可能だ。シェルターが家にあれば、すぐに避難もできる。
また、防水加工が施されているので津波にも強く、内部に非常食などを用意しておけば、シェルターごと波にさらわれても安全を保つことができる。「子どもやお年寄り、身体の不自由な人がいても、家族の誰もが安心して避難できるシェルターをつくりたかった」と同社の田中勉社長は語る。
■津波や洪水でも安心
もともと同社は、水圧を利用した小型の発電システムなどを開発している会社だ。だが、近年、首都圏でゲリラ豪雨や台風が続発し、洪水などの被害が増えていた。その状況を見て、同社では、洪水から家族の命を守った〝ノアの箱舟〟のような、水に浮く家庭用シェルター「ノア」を考案。特許を取得し、2008年からは自社のウェブサイトで図面を公開していた。 そんな中、2011年3月、東日本大震災は起こった。その直後から同社には、サイトで図面を見た人から「ノア」への問い合わせが相次ぎ、「実用化してほしい」という声が数多く寄せられた。
そこで田中氏は「ノア」の製作に乗り出すと、まずは実際に被災地を訪れ、津波被害の状況を見て回った。「津波の破壊力は想像以上で、図面に改良を施す必要があった」と田中氏は明かす。
当初、図面では「ノア」は半球形をしていたが、どの方向から水圧が掛かっても耐えられるように、テニスボールのような球体にした。また、完全に水没しても、安定して浮上できるように、重量を約70キロに抑え、中に乗った人の体重で重心を保てるようにした。
こういった気密性の高いシェルターの扉を閉めるには、通常であれば外部からロックする必要があり、開閉に時間が掛かるものだ。だが、それでは扉を閉めるのが間に合わず、津波に襲われてしまうこともあるだろう。
そこで「ノア」では、家族全員がシェルター内に避難した状態で、内部でレバーを回すだけで扉を閉められるようにした。これにより、家族がシェルター内に揃った状態で、落ち着いて扉を閉められるようになる。津波が目の前まで迫った緊急時でも、パニックに陥らず、より短時間で安全に内部を気密状態にすることができるように、工夫が施されているのだ。
2011年10月に発売が開始された「ノア」は、これまでの約1年間に200台が販売されている。4人乗りのほか、6人乗りも開発され、価格は48万900円(税込み)から。
現在、日本各地の沿岸部の市町村や漁業団体では、「ノア」を配備する人たちが徐々に増えている。また、東海・南海地震などの心配がある西日本でも、設置する動きがあり、「ノア」は次の震災に備える一手として有望視されている。
もう震災は、起こらないに越したことはない。だが、もし次に起きた場合は、「ノア」によって津波から生還する人たちも数多くいることだろう。
<Company Profile>
株式会社N.C.P
神奈川県平塚市桜ヶ丘2-13
0463-32-7777
http://www.newcosmopower.com/
東日本大震災では、死者・行方不明者が2万人近くに上った。中でも津波は、地震発生からわずかの間で町に襲いかかったため、多くの命を奪った。高台が家から離れた場所にあることも多く、人々には避難する十分な時間が残されていなかったのだ。
N.C.Pの田中勉社長と、同社が開発した防災シェルター「ノア」 |
N.C.Pが開発した防災シェルター「ノア」は、そうした地震や津波の被害から家族の身を守ることができる救命カプセルだ。直径1.2メートルの球形のシェルターで、大人4人が中に入ることができる。外殻が頑丈な強化プラスチックでつくられているため、内部に避難していれば、地震で建物が崩壊してもその重みに耐えることができる。
その上、完全な防水加工が施されており、中に人を乗せたまま水に浮く設計になっている。そのため、たとえ津波に襲われたとしても、水上に浮き上がり、救命カプセルとしての役割を果たす。津波が来ても、内部は安全なので、家族の命を守ることができるのだ。
これまでの防災シェルターは、国や県などが大勢の住人を収容することを想定した大規模なものが多かった。だが、急に襲い来る地震や津波に対しては、住人がその場所まで避難する時間がない。また、シェルターが地中に掘られていることも多く、水害に対しては弱点となっていた。
一方、「ノア」のような小型のシェルターならば、家庭でも設置可能だ。シェルターが家にあれば、すぐに避難もできる。
また、防水加工が施されているので津波にも強く、内部に非常食などを用意しておけば、シェルターごと波にさらわれても安全を保つことができる。「子どもやお年寄り、身体の不自由な人がいても、家族の誰もが安心して避難できるシェルターをつくりたかった」と同社の田中勉社長は語る。
「ノア」の重量は70キロ程度。女性だけでも楽々と持ち運べる |
■津波や洪水でも安心
もともと同社は、水圧を利用した小型の発電システムなどを開発している会社だ。だが、近年、首都圏でゲリラ豪雨や台風が続発し、洪水などの被害が増えていた。その状況を見て、同社では、洪水から家族の命を守った〝ノアの箱舟〟のような、水に浮く家庭用シェルター「ノア」を考案。特許を取得し、2008年からは自社のウェブサイトで図面を公開していた。 そんな中、2011年3月、東日本大震災は起こった。その直後から同社には、サイトで図面を見た人から「ノア」への問い合わせが相次ぎ、「実用化してほしい」という声が数多く寄せられた。
内部は意外に広く、数人の大人が座れるスペースがある |
そこで田中氏は「ノア」の製作に乗り出すと、まずは実際に被災地を訪れ、津波被害の状況を見て回った。「津波の破壊力は想像以上で、図面に改良を施す必要があった」と田中氏は明かす。
当初、図面では「ノア」は半球形をしていたが、どの方向から水圧が掛かっても耐えられるように、テニスボールのような球体にした。また、完全に水没しても、安定して浮上できるように、重量を約70キロに抑え、中に乗った人の体重で重心を保てるようにした。
こういった気密性の高いシェルターの扉を閉めるには、通常であれば外部からロックする必要があり、開閉に時間が掛かるものだ。だが、それでは扉を閉めるのが間に合わず、津波に襲われてしまうこともあるだろう。
レバーのハンドルを回転させると、扉が密閉され、水が漏れてこない気密状態になる |
そこで「ノア」では、家族全員がシェルター内に避難した状態で、内部でレバーを回すだけで扉を閉められるようにした。これにより、家族がシェルター内に揃った状態で、落ち着いて扉を閉められるようになる。津波が目の前まで迫った緊急時でも、パニックに陥らず、より短時間で安全に内部を気密状態にすることができるように、工夫が施されているのだ。
2011年10月に発売が開始された「ノア」は、これまでの約1年間に200台が販売されている。4人乗りのほか、6人乗りも開発され、価格は48万900円(税込み)から。
現在、日本各地の沿岸部の市町村や漁業団体では、「ノア」を配備する人たちが徐々に増えている。また、東海・南海地震などの心配がある西日本でも、設置する動きがあり、「ノア」は次の震災に備える一手として有望視されている。
もう震災は、起こらないに越したことはない。だが、もし次に起きた場合は、「ノア」によって津波から生還する人たちも数多くいることだろう。
<Company Profile>
株式会社N.C.P
神奈川県平塚市桜ヶ丘2-13
0463-32-7777
http://www.newcosmopower.com/
※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。