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 全国に九つある公営の地下鉄事業。人口減社会の到来で将来的に運賃収入の大幅増が見込めないうえに、ほとんどの事業体が累積赤字の解消に頭を悩ませている。そんななか、広告や商業スペースの展開といったビジネスを強化し始める自治体も出てきた。

 今月初めの朝、福岡市営地下鉄天神駅(同市中央区)の構内。弁当店「博多いもっ子屋」(同市南区)の女性店員がおにぎりや弁当を買った通勤客らに声をかけていた。「この時間に売らないと商売にならないよ」。店員はそう言うと、慌ただしく商品の補充を始めた。

 同店は、福岡市が昨年5月に始めた月替わり店舗「f space」に入居している。広さ約8平方メートルで、1カ月のテナント料約20万円。1カ月から最大3カ月まで出店できる。市の担当者は「九州の中心地の天神駅にアンテナショップを出したい企業ニーズに応えるのが狙い」と話す。7月までに6社が出店する見込みで、市はこの方式を天神駅以外に広げることも検討している。

 札幌市は、南北線などの3路線を運行する。だが、人口減に伴い、2018年度までの3年間で地下鉄の利用客は毎年3千~4千人程度減少すると試算。本業が縮小する中、駅構内のスペースを使ってテナント収入を増やそうと取り組む。

 12年6月に東西線などが乗り入れる大通駅(同市中央区)に出店したコンビニエンスストアは、駅構内の壁際に商品を並べるスタイルだ。店舗の規模は幅約15メートル、奥行き2メートルほどで、狭いスペースを有効活用しようと工夫する。昨年9月にも同様のコンビニが出店し、あわせて年間1千数百万のテナント料が入る。

 駅構内を活用した「副業」としては、商業エリアをつくって賃料収入や運賃収入の増加を図る「駅ナカ」が定着しつつある。05年にJR東日本や東京メトロが始め、公営地下鉄でも大阪市(3駅44店舗)などが積極的だ。