小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?) |
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全目次
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1. トルクと馬力
1-1. はじめに
1-2. トルク
1-3. 馬力
1-4. 基本のまとめ
1-5. トルクアップの体感方法
1-6. トルクと馬力は比べられない
1-7. ドリルのトルクと回転数の関係
1. トルクと馬力
1-1. はじめに
トルクと馬力の話は自動車雑誌等にしばしば出てきますが、両者の差が感覚的に分かり難いので、正確に認識されている方は少ない様です。
また図書館で調べてもいきなり難解な絵と計算式が出てくるし、ネットで調べても意味不明な解説、もしくは明らかに間違った記述があり、どうしてもしっくりこない様です。
と言う訳で、ここでは難しい計算式は極力省略して、小学生にも分かる様にトルクと馬力の違いを分かり易く説明してみたいと思います。
また比較的誤解の多いクルマの基本的特性をお伝えして、最後に峠で本当に速い国産車を定量的にイメージしてみたいと思います。
と思って書き始めたのですが、思い付くまま書き込んでいるうちに、いつのまにか計算式まで入って長くなってしまいました。
このため、難しい部分、或いは不要な部分は遠慮なく読み飛ばして下さい。
多少独りよがりの部分はあると思いますが、本書を機会に、少しでも算数と理科と英語に興味を持って頂ければ幸いです。
1-2. トルク
先ずトルクとは、クルマのタイヤを回すための力です。
感覚的に分かり易くするため自転車を例にすると、ペダルを押す力(下図の赤矢印)です。

ですので、トルクが大きいというのは、ペダルを押す力が強いという事です。
ではペダルを押す力が強いと、どうなるでしょう?
そうです、自転車の出だしが良くなる。すなわち加速が良くなります。また登り坂でも軽々進む事ができます。
1-3. 馬力
次に馬力ですが、トルクはあくまでも瞬間的な力なので、その力を持続する事によってどの程度の仕事を行なえるのかを表すために考えられた指標(ものさし)が馬力です。
もっと正確に言うと、ある決められた時間内に、どれだけ重い荷物を、どれだけ遠くまでに運べるかを、馬何頭分に当たるかで表示したのが馬力という訳です。
自転車の場合、ペダルを踏む力に、ペダルの回転数を掛ければ簡単に出ます。
それでは 自転車において、ペダルを強く踏んで、なお且つ一生懸命回すとどうなるでしょう?
そうです、スピードが速くなるという訳です。
もし自転車に荷物を乗せていたとすると、人が担ぐより短時間で遠くに運べますので、これが馬の力=馬力になります。
1-4. 基本のまとめ
以上をまとめると以下の様になります。
トルクとは瞬間的な力(英語でフォースと呼びます)で、大きければ大きいほど出だし(加速)が良くなります。
馬力とは継続的な力(英語でパワーと呼びます)で、大きければ大きいほどスピードが出て、荷物を早く遠くへ運ぶ事ができます。
一般的に馬力が大きいクルマほど出だし(加速)が良いと思われているのですが、加速に影響するのはトルクの方だというのは、先ほどの自転車の例で概ね分かって頂けると思います。
またこれをもっと感覚的に表すと、トルクとは瞬発力(短距離走)で、馬力とは持久力(マラソン)と言えるかもしれません。
これでトルクと馬力のおおよその差は、ご理解頂けましたでしょうか?
1-5. トルクアップの体感方法
今までは自転車を例に説明してきましたが、それではクルマにおけるトルクの体感方法についても、ここで述べておきましょう。
例えば自分でクルマを運転しているとして、アクセルを踏むと加速します。
この加速感がトルクになり、達した速度が馬力の結果になります。
すなわち、最高速を決めるのは馬力ですが、そこに到達する時間を決めるのはトルクなのです。
更にもし自分のクルマのトルクがアップした場合の体感方法ですが、ターボを付けたり燃料を変えたりせずに簡単に味わうことができます。
例えば一般道を走っていて、長めの下り坂に差し掛かったとします。

そうすると、アクセルを踏まないでもクルマはゆっくり加速し始め、更にアクセルを踏むと平らな道より軽々と加速するのが体感できると思います。
これこそがまさにトルクアップの効果で、どんなに重いクルマであってもトルクが大きければ軽々と進める(加速できる)というのが実感できると思います。
これを逆に言うと、どんなに軽いクルマであっても、トルクが無ければ気持ち良く加速できないという訳です。
1-6. トルクと馬力は比べられない
この章の最後に、どうしてもこれだけはお伝えしておかなければなりません。
後ほど本書において、”トルク重視のクルマ”と”馬力重視のクルマ”の比較を行ないますが、これは明らかに不正確な表現です。
なぜならば前記しました様に、馬力=トルク×回転数ですので、もし回転数が一定であれば、トルクが上がれば馬力も自動的に上がりますので、比較する意味がありません。
同じ掛け算の式である総額=単価×個数を例にすると、総額が馬力で、トルクが単価で回転数が個数になります。
この場合、もし売れた個数が同じであれば、総額と単価のどちらが大事かなどとは誰も議論しません。
比較するのであれば、単価を重要視するか、個数を重要視するかです。
話をクルマに戻すと、比べるのでしたらトルク重視か回転数重視かです。
ただし本書においては分かり易さを優先するため、”回転数重視”の代わりに、一般的に使われる”馬力重視”を使う事にさせて頂きます事ご容赦願います。
1-7. ドリルのトルクと回転数の関係
ここまで読んで頂けると、以下のトルクと回転数と馬力の関係について、何となく分かって頂けたのではないでしょうか?
馬力=トルク×回転数
という訳で、ここで少々クルマから離れて面白い事をお伝えしたいと思います。
ドリルを使って鉄板に直径1mmと10mmの穴を開けようとしています。
使用するボール盤は、ベルトの位置を変えて速度を高/中/低速の3段階に調整できます。

さて効率良く1mmと10mmの穴を開ける場合、ドリルの回転数をどう設定すれば良いでしょうか?
感覚的に考えると、細い1mmのドリルを高速で回転させると鉄板に合たった瞬間にポキッと折れそうな気がするので1mmのドリルは遅く、10mmのドリルは勢いを付けるために早く回した方が良い様にだと思いませんか?
逆です。
もし1mmのドリルを低速回転するとその分トルクが大きくなるため、少しでも鉄板に強く押し当てると簡単に折れてしまいます。
ですので高速回転にしてトルクを小さくしなければなりません。
またもし10mmのドリルを高速回転させるとトルクが小さくなるため、少しでも鉄板に強く押し当てると簡単に止まってしまい穴を開ける事ができません。
ですので低速回転にしてトルクをアップしなければなりません。
同じモーターの馬力(パワー)であっても、低速/高トルクにするか、高速/低トルクにするかで作業効率が全く違う事を分かって頂けたでしょうか?
これをクルマに当てはめると、最も力(フォース)を必要とする発進時はギアをLoに入れて低速/高トルクにし、負荷の少ない定速走行時はギアをTOPに入れて高速/低トルクにするという訳です。
これでトルクの馬力は違いはおおよそご理解頂いたと思いますが、もう少し詳しく知りたい方は、次にお進み下さい。
多少難しくなりますが、その分面白い話が盛り沢山です。
第1章:トルクと馬力

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